人類が滅亡した的な世界で目を覚ましたけどTSしてたんで帰るのやめます   作:人は誰しもTS願望を秘めているのだ!

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第2話

速報、高校生くらいの少年少女を拾う。これだけ聞くと、何が何だかわからないな。少年たちを助けた後、とりあえずドラゴンの死体はそのまま放置して、四人を連れて俺が現在身を置いている神社に向かった。

 

本当であれば、助けて事情を少し聞いてはいさようならって風にするつもりだったのだが、どうやら事情が特殊らしい。なんとなく、この世界に来たばかりのころの俺と反応が似ており、カマを掛ければドンピシャだったためとりあえず新宿で唯一安全と言えるこの場所に案内したというわけだ。

 

居住空間として改造した社務所に、四人を招き各々の事情を聴き、この世界について簡単に説明した。大体の説明は終えた。時間にして40分程。内容的にはそれほど、濃い話はしていないが相手も俺も混乱していたから話が進まなかった。

 

 

「とりあえず、情報を整理しようか。君らは、気が付けばここにいて困惑していると、ドラゴンが現れ追いかけられたと」

 

「はい」

 

「………さっき、説明した通りおそらく君らの知っている新宿とこの新宿は似て非なる別世界だ。っていうか、新宿だけじゃなくおそらくこの世界はその者が君らからすれば異世界ってことになる」

 

「………信じられないですけど、信じる以外の道はないですよね………」

 

「残念ながらね」

 

そう言って、俺は四人を改めて観察する。今もはっきりと受け答えをしている少年が太一君。関西弁を使う糸目の少年が萩原大清。盛大に取り乱して、錯乱した後今は死んだように魂が抜けている女の子が麗華ちゃん。ドラゴンに食べられそうになったというのに、受け答えがはっきりしていた肝の据わった少女は、夕凪というらしい。

 

四人の中だと、太一君が主人公気質で萩原君はちょっとオタク気質だ。ただ彼も彼で、結構肝の据わった子だ。良くも悪くも、麗華ちゃんは普通の女の子と言った感じだ。

 

美少女ボディーの特殊スキルである魅了もどき(勝手にそう呼んでいるだけ)で、相手に安心感を与えるように心がけていたからというのもあるだろうけど、三人ともメンタル強すぎじゃない?

 

 

 

「君たちに提示されている選択肢は三つだ。一つは、もとの世界への帰還を目指して色々模索する道。二つ目は、この世界で生きていくという道。三つ目は、すべてを諦めて死ぬって道」

 

「「「………………」」」

 

「フフ、冗談だよ。そんなに深刻そうな顔をしないでよ。君らも混乱してるだろうからね。今日は休むと良い。詳しい説明は、明日にしたほうがいい」

 

ウインクをすると、太一君や萩原君だけでなく夕凪ちゃんも顔を赤くした。流石は、美少女!これだから、美少女ボディーは捨てられないぜ!!!

 

「一つ質問してもいいですか?」

 

「何かな?」

 

「凛音さんは、どうして俺らを助けてくれたんですか?」

 

「………?」

 

素で首をコテンと傾げる。すると、若干太一君は顔を赤くしうろたえたものの、真面目な顔を作り直して、俺に問いなおす。

 

「あ、いえ。えっと、何でここまで親切にしてくれるのかなって?」

 

………なるほど、まあ確かに俺も最初はだれを信じればいいのかよく分からなかったしな警戒するのは正しい判断だな。

 

「昔、君たちと似たような境遇に置かれたことがあってね。放っておけなかったのさ。まあ、信じるか信じないかは君たちで決めると良い」

 

答えを聞く前に、俺は部屋を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

凛音が部屋を出てしばらくすると、器用に四つのお盆をもって部屋に入ってきた。瞬間、太一たちの鼻腔を強烈な肉特有の香りがくすぐる。瞬間お腹が警報を鳴らす。

 

 

「「おぉぉ!」」

 

太一と大清はつい声を漏らしてしまった。

 

「おや?麗華さんは寝てしまったのかな?」

 

「はい、疲れちゃったみたいで」

 

そう言って、凛音の疑問に答えたのは夕凪だった。

 

「じゃあ、彼女は私が客室まで運んでおこう。部屋を出て左奥が客を泊めるためのスペースになってるから、食事を終えたら自由に使ってくれ。私は、用があるから食事は共にできない。すまないね」

 

そう言って、軽々と麗華をお姫様抱っこの要領で抱えた凛音は部屋から出ていった。

 

それに呆気にとられながらも、空腹にはあらがえず太一は、食事に向き直る。

 

「「「い、いただきます」」

 

恐る恐ると言った様子で、食事を口に運ぶ三人。瞬間、三人は弾かれた様に顔を見合わせた。

 

「お、おいしい………」

 

肉には味がよく染み込んでいて、口の中に甘辛い味が広がっていく。臭みなど無く、物凄く後を引く美味さだった。

 

レンゲでスープを掬い飲んでみる。これはもうスープだけでメニューに載せられるほどのものだと感じた。大量の出汁が流し込まれたソレは、注意しないと一気に飲んでしまうほど喉越しが良い。あっさり感が半端無い。

 

ものの数分で平らげてしまった3人が満足気に余韻浸っていると、大清が疑問を口にする。

 

「しかし、あの人は何もんなんやろうな?マジで、美人で料理もできて、強くて頼りにもなって、状況が状況なら告白してたわ!」

 

「あははは………太清君結構メンタル強いね」

 

それを聞きながら、呆れたようにも感心したようにも見える夕凪。そんな二人を見ながらも、太一は凛音のことを思い出し顔を赤くしていた。

 

「お、何やねん。凛音さんのことを思い出して悶々としとんのか?若いってええなぁ」

 

「大して変わらないだろ!」

 

そのことに目ざとく感づいた大清は、太一をからかうように声をかける。

 

「そういえば、私たちまだちゃんと自己紹介してなかったよね?」

 

「そうやな」

 

「確かに」

 

「ほな、俺からやな!改めて、萩原大清や。高校2年生。趣味は、ゲーム、読書、弓道や。仲良うしてや~」

 

そう言って、自己紹介を始めた大清に感謝をしつつどうしても気になった部分に突っ込む。

 

「弓道って似合わないな」

 

「太一くん結構失礼やな…」

 

「あ、じゃあ次私がしますね。私は、明日原夕凪です。高校1年生です。趣味は、スポーツ全般と天体観測です。あ、あとゲームも少しします。よろしくお願いします!」

 

「お、年下やん。俺年下好きなんよ」

 

「ナチュラルなセクハラやめろ。ドン引きだぞ」

 

「冗談やって!太一くん、俺へのあたり強ない?」

 

そんな大清の言葉は無視して、太一は自身の自己紹介を始める。

 

「大河原太一だ。学年は、高校2年。趣味は………読書だ。よろしく」

 

「え~それだけなん?太一くんつまんない~」

 

「うるせえ!喧嘩売ってるのか?」

 

「さっきのお返しやって」

 

そうして、三人の夜は更けていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、少年少女を拾った凛音が現在何をしているか言えば………

 

「……自分の身体だけどさぁ、色気半端ないな」

 

鏡の前で、ファッションショーをしていた。凛音は、正直黒セーラーは少し飽きてきたので、新衣装にしようかと思っていたのだが、なかなか決まらない。

 

(しっかし、この体マジで凄まじいよね。どこの二次元キャラなんでしょうって話だよ)

 

動きやすいように改造した浴衣に編み上げブーツを身に着けて、再度鏡の前でポーズをとる。黒を基調とした浴衣は、銀髪によく映える。

 

「決まりだな。………これを見たら、彼らどんな反応するんだろ?」

 

ワクワクと胸を躍らせる凛音。2年前から、美少女ボディーで相手を揶揄うのがやめられない凛音であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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