コラボ作品も手を抜かないようにしますんで、何卒お慈悲を。
今回はとある人が再登場します、タイトルで察して。
◇◆◇入院生活1日目◇◆◇
味薄い……薄くない?
あのあと看護婦さんも持ち場へ帰っていって、その後別の人がお盆に乗った食事を持ってきた、固形物はあるのだが味がとんでもなく薄い、これもう生でしょ。
だが用意されたものは食わないと失礼という精神に則り、食事を終える、幸いにも折れたのは片足のみなので杖を使えば歩くことは可能だ、肋骨?もう治ったでしょ(適当)
ヒュッ、と息を吸うと脇腹が痛む、まぁ些細なことだ、寝違えと同じようなもの。
「外出禁止とか言っておいて杖を置いておくのはどうなんだろ」
ベッドに立てかけてあった杖を手にして、ギプスの着いた片足を上げる、痛みはない、ヒビは大したものじゃなさそうだ。
そのままベッドから片足を落として、杖を着いて立ち上がる。
酷い有様だ、備え付けの鏡に映る姿はまんま怪我人、いや怪我人なんだけども、いかんせん自覚がない。
そのまま扉に手を掛け、部屋を出る、通路と言うだけあって人がそれなりに多い、大半は老人、子供がちらほら、そして見回りや書類を運ぶ看護師もちらほらだ。
触れるべきところはない、至って普通だ、病院には来たことがあまりないが。
「……」
知り合いの顔は当然ない、立ち止まっていても注目されるだけだ、どこかへ移動をしよう、何より、目的を持たないと心が壊れそうだ。
◇◆◇中庭◇◆◇
どうやら僕が居た病室は2階だったようで、階段を下りると仕切りのガラスに阻まれた先に、もはや1つの公園と言っていいレベルの広さの中庭があった。
あるのはベンチ程度だが、行き先をそこに決めて入口を探す。
どうやら仕切り硝子のどこかに扉があるらしい、紛らわしいな、見つけにくいし、覚えろということか。
硝子の1つに取っ手が着いていて、それを持って引っ張る。
──あっこれ押すタイプだ。
「見られてませんよーに…」
完全に恥をかいたがまぁ気にしない、限界まで開けると中庭に出る、地面に生えた草は裸足でも特に問題はなく、すぐにベンチまで移動すると腰を下ろす。
外から中を遮断するように生え揃った木々は風が吹く度葉っぱを揺らし、まるでさざなみのような音を立てている、静か、と言えばその通りだが、木々のざわめきはそれをかき消していた。
しばらくたった頃だろうか、僕の座っている位置のすぐ横に、缶コーヒーが放置されていることに気付いた。
それを持って軽く揺らすと、中に液体は入っていない、空だとすぐにわかった、前へと目をやると近い位置にゴミ箱があるのが見え、立つのも面倒だと考えて、缶を投げる体制に入る。
多分、投げても届くだろうと缶を投げた、途中までは良かったのだが、不運なことに風が吹いて大きく軌道を逸れる、非常にまずい。
手を伸ばす、まぁ届かない。
このまま缶は地面に落ちるのか、と思って目を逸らしたが、缶が地面に落ちる音はしなかった。
妙に思って視線を移すと、そこには見知った少女がいた。
「……紗夜、さん」
「お久しぶりです、如月さん」
◇◆◇
少女は微笑んでいた、目のハイライトはある。
いや、それより、逃げられないという事実が僕を追い詰める。
「え、えっと?なにか、御用で?」
「お見舞いに来ただけです、入院した、と聞きましたので」
「それは良かった(?)」
やった今回は殺されない、というかそもそも病院内だから手を出そうもんなら色々と問題が発生する、今回ばかりは問題なさそうだ……。
缶コーヒーをゴミ箱にしっかりと捨てて、隣に腰掛けてくる、恐怖はまだ感じない、でも期待はしないよヤンデレだし。
「その怪我は、どうして?」
「レイヤさん」「RASですか?」
「階段から転げ落ちました!!」
僕の意思は関係ない、ただ、RASにもいい人達は居るんだ、悪い人が居るだけで、それが巻き添えになるのは解せない、悪のせいで善が傷つくのはあってはならないのだ。
故に僕は嘘をつく、決して怖いからじゃない。
「そうですか、それなら良かったです、如月さんに手を出す人は消す必要がありますから、如何なるもの、如何なる理由でも」
「やだ恐怖。
お見舞いに来てくれたところなんだけど、僕そんな酷い怪我でもないし、5日後には退院できるよ?」
「なら、温泉には間に合いますね」
「まーた温泉ですか」
温泉温泉、僕の自由意志を剥奪しておいてよくそんなことペラペラと言えるな、でもこれは僕の記憶を探ることとして外せない行為だ、前のれおなから見て、もっと優しい人じゃないと恐らく殺される。
友好関係を築きつつ、刺激しない程度に接していこう。
「当日は私が迎えに来ますから、ニゲナイデクダサイネ?」
「取引をしましょう(焦)」
「……何か?」
「ポテトを沢山あげます」
──静寂!ポテトという得には弱い!それが氷川紗夜なのだ!
「1日、私とデートをしてくれるなら」
「ええいいでしょうとも!───ん?」
小声で提示された条件、今、彼女はなんて言った?そして僕はなんて答えた?勢いで答えたのか?もしかして。
訂正だ、訂正を─。
「言質はとらせてもらいました。
今更、冗談だとは言わせません」
ふむ、忘れていた、僕に決定権はないし、自由意志も剥奪されている、今回に限っては足まで折れているのだ、接近されても迂闊に離れることは出来ない。
ベンチの上にぺたんと置いていた手に手が重ねられ、絡む、なんとも言えないような感覚が僕を襲い、すぐさまそれは消えてなくなる。
「以前、性行為の有無は尊重すると言いました」
「あ、はい、それだけですけどね」
「撤回します、今後は機会があればいつでも奪い去ります」
「はぁ?いやいやいや、そんな都合のいい話がまかり通るわけないでしょう、自分の言ったことさえ守らないとか人として終わってますよ」
「──それは、如月さんの方です」
「……え?」
「言ったことを守っていないのは、如月さんの方です」
冷静に言葉を並べられ、気圧された、これはきっと、以前の僕が紗夜さん相手に約束をしてしまったに違いない、でも彼女は僕の記憶消失の件について全くもって理解がない。
つまり、言ったことを守っていない状態になるのだ。
──理不尽すぎない?
「い、一応確認しておきたいんだけど、僕って何か約束してたっけ?」
「はい、いつか日菜ではなく私の元へポテトの束を持ってプロポーズに来ると」
「何を言っているんですか???」
頭大丈夫かなこの人、真面目に何言ってんの?ポテトの束って何、食べるの?花束の代わりを?何そのプロポーズぜんぜんロマンティックじゃない、僕そんなことしたくない。
まぁ、少し考えればありえないと分かる。
「…人の記憶捏造するのほんとやめて欲しいんですけど、ほんとに、困るし、混乱します」
「後半は冗談ですが、前半は事実です、日菜ではなく私を選んでくれる、と」
「……まじ?」
「事実です」
彼女の目のハイライトは薄く消え始めた、これは『疑ったら殺す』の意である、これからヤンデレと関わる人は気をつけよう、ミス1つで身体に傷が付くぞ。
「えっと、それはどのような時に───」
なぜ昔の僕はそんなことを言ってしまったのか問い質す直前に、けたたましい着信音が中庭に鳴り響いた、僕のスマホはお釈迦になっているので当然紗夜さんのものになる。
「……はい、はい。
…分かりました、今行きます」
「えっと、何か?」
「Roseliaの今後について至急話し合うと、これ以上は話せません」
「タイミングェ……」
「……帰る前に、これを」
聞きそびれることになることに落胆していると、空いている手に1つの花を渡される、丁寧な包だ、これは……僕は花に詳しくない、紫色?
「紗夜さん、これはって、行っちゃった!?」
少し花を眺めているうちに、紗夜さんは仕切りガラスの向こう側へ行ってしまった、残されたのは花と杖、そして何故か紗夜さんの居た位置にマ〇クのポテト。
いやなんで?なんで入院患者にポテト置いてくの?貰ったからには食べるけどさ、失礼だし。
その後、しばらくポテトを齧っていると何故か看護婦さんに止められ、精密検査を受けさせられた、その時に花は没収されたが、病室に戻ると花瓶に添えられていてホっとした。
今回、彼の病室に添えられた花は『紫のアネモネ』
◇◆◇
〜過去の如月〜
『え?あ、はい。
そりゃ日菜ちゃんより紗夜ちゃんをとるけど。
だって仕事の手伝いでしょ?真面目な紗夜ちゃん選ぶに決まってるじゃん、勘違いしてない?』
また深夜投稿かお前。
そうだよ。
今回のはまぁ、伏線じゃないです、ストーリーの大筋に影響しないんで、キャラ1人に対する小ネタみたいなもの、ですかね?
今回は紗夜さん再登場回でした。
え、なに?既存キャラ消化されてないのに復刻?ポケマスかよ?
やめるのです、作者は全キャラを完全に把握している訳では無いのです。
故に次の投稿は1週間ぐらい空くのです、ストーリー本格的に進めるから。
では、また次回。