今回は予定を変更してはぐみの病みと闇をお送りするよ、薫さん待ってた人はごめんね。
ちなみに今回、如月くん痛い目見るよ、おかしいね笑顔にしようとしただけなのにね。
もう言う必要もあるまいて…評価画面に飛べます。
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出会った頃は、純粋な娘だったのになぁ。
◇◆◇◆◇
僕こと如月準の趣味、それは家でゆっくりする事だ。
ひまりの去った次の日、僕は自分の家のリビングでゆっくり本を読んでいた。
ペらぺらとページをめくり、時に手を止めて外を眺める。
「誰にも邪魔されない時間。
喜びはない、その代わりに深い絶望も悲しみもない。
『植物のような人生』を、それが僕の人生の目標」
ジョジョの奇妙な冒険四部ダイヤモンドは砕けないより川尻浩作のセリフ、あの人は矛盾しているからこそあのセリフはネタに思えるが、僕からすると目指すべき人生だ。
だが、そうさせてくれないのが世界、主にバンド娘なわけで。
ピンポーン、とチャイムが鳴る、鳴らさずとも分かる、バンド娘だ、あの手この手を使って僕の平穏を邪魔しに来る心を壊した怪物ども。
「宅配便でーす!」
「今いきまーす!」
前言撤回、こういうこともあるだろう。
「ハンコお願いします」
「はい、お疲れ様でした」
「今後ともご贔屓に〜」
ごくごく普通の宅配便を受け取る、中はなんだろうか、実家から大量の野菜でも送られてきたのだろうか。
そう思ってなかなかの大きさがあるダンボールを室内に置く、重さもなかなか、人1人ぐらい入ってそうだ。
「……流石にないよね」
中に人が入ってるなんてそんな、有り得るはずがない。
「なんか寒気してきた……というか荷物頼んでなかったし、僕実家無かった。
引き取ってもらおう、うん、そうしよう」
この判断をもっと早くしていれば、何か違ったのだろうか。
「やっ───ほーーーーーー!!」
突然ダンボールが内側から開かれ、中から元気な声と共にオレンジ色の髪をした少女が現れる。
「すいませんAmazonですか荷物が間違ってました今すぐ引き取り来てください」
「何してるの〜?」
「何してると思う〜?」
「んー……分かんない!」
「そっか〜、じゃあなんではぐみちゃんはここに居るの〜?」
「きーくんが好きだから!」
「愛っていうのは本人と通じあってようやく愛になるんだよ〜?」
「通じあってるよ?」
「通じあってないよ?一方的な愛の押しつけだよ?」
「ツウジアッテナイノ?」
「つつつつ通じあってませんよ?」
こう答えるのが精一杯の抵抗だ、何せもう一言余計に言おうものなら今すぐ絞め殺しにかかってきそうなほど不安定な精神をしている。
事実、以前は絞め落とされそうになった、兎か僕は。
「───ナンデ?」
目からハイライトが完全に消える、怒っているというよりなんで通じあっていないのか本当に分からないらしい。
「分からないってことは心が通じあってない証拠じゃないかな?」
「はぐみが通じあってると思ってるんだから通じあってるんだよ?
なんで分かってくれないの?分かってくれないきーくんは、笑ってくれないきーくんはきーくんじゃないのに、なんで?」
さすがに踏み込みすぎた感がある、ここは一時バックするべきだ。
「はぐみはきーくんに笑って欲しいだけなのに、その為にはぐみときーくんが愛し合わなきゃいけないのに。
あっ!分かった!」
「……あの、すいません、なんですか?その……包丁?いやナタ?なんで持ってるんです?」
手遅れ感がすごい、はぐみは自分の入っていたダンボールの中から刃渡り7センチ程の刃物を取り出すと、逆手持ちにして笑う。
「きーくんの口を裂けば、ずっと笑っててくれるよネ?」
「ジェフザキラーみたいなこと考えますね、とりあえずその刃物を置きなさい危ないから笑ってあげるから僕死んじゃうから」
ダンボールを室内を持ち込んだことが仇になった、逃げ場はない、いや、もし逃げたとしても地元ソフトボールエースで運動神経バツグンのこの子から逃げ切れる自信はない、こっちは成人して以来運動などしていないのだ。
「ナンデ?なんで逃げるノ?はぐみのこと嫌い?」
とても、嫌いだァ!!と言える空気ではない。
「えーーっとね、いいかなはぐみちゃん?」
「やっぱりはぐみのこと嫌い?」
「僕、はぐみちゃんのことは嫌いじゃないよ?(好きでもないけど)」
そう、闇と病みさえ除けば純粋無垢な恋心を持つ少女なのだ、嫌う要素はないし、言ってしまえば一途だ。
嫌う理由はないと思う、闇と病みさえなければ。
「じゃあ、はぐみに笑って見せて?」
お望み通り、はぐみに笑ってみせる、初めからこうすれば良かった。
「……きーくん」
「はい如月です」
「はぐみ、きーくんが好き」
「知ってますよ」
あれ、どうして刃物を置いてくれないんだろう。
「はぐみね、きーくんにはずっと笑っててほしい」
「……うん?」
あれ、なんか不穏だぞ。
「だから、はぐみ……やっぱりきーくんの口、裂いちゃうね?」
「───え?」
笑顔のまま、刃物が振り抜かれる、それと同時に焼けるような痛みが頬に走った。
恐る恐る頬、口元付近に手を置くと尋常ではない痛みと血がべったりと付着した手が、あった。
斬られた、切られた、裂かれた。
遅れて痛みがやってくる、耐えきれずに崩れ落ちる、このまま出血多量で死ぬのだろうか、考えてみれば当然だ。
楽観視していた、人の闇というものを、いつか離れようという考えが甘かったのだ、早く逃げて、誰も僕のことを知らないところでやり直せば良かった。
いやそもそも、なぜこの娘達は、僕のことを……。
意識は闇に沈んだ、血溜まりの中僕は最後に、鳴り響くサイレンを、聞いたのだった。
「──コレデヤット、ワラッテクレル、ネ」
◇◆◇◆◇一ヶ月半前◇◆◇◆◇
「地元ソフトボールの数合わせですか?大丈夫ですよ」
笑ってない。
「勝ちましたか?それは良かった、では僕はこれで」
─笑ってない。
「今回の演奏、いつも以上に良かったよ。仕事が増えるのは大変だけど、ハロハピはみんなを笑顔にするからね、そこまで苦じゃないかな」
──笑顔になってない。
「笑顔、ですか?ハロハピはみんなを笑顔にしてますよ。
…僕?僕は別に、笑う理由がありませんしね」
───どうして?
「僕のことが好き?はぐみちゃんには僕以上にふさわしい人がいるよ」
────どうして笑ってくれないの?
優しくて、カッコよくて、謙虚で、他人のことを考えて、顔も良くて、それなのに、なんで笑えないんだろ。
「──はぐみが、笑顔にしてあげなきゃ。
どんな手を、使ってでモ」