色々してたら全員病んだんですけど!?   作:ロウ・トウヤ

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今回は弦巻こころ回だと言ったな。
「そ、そうだ大佐、助けて──」
あ れ は 嘘 だ
「ウワァァァァァァァ!」

※今回はこころ回です

DMにてランキング入りしていることを知り、喜びつつ夜の八時に寝オチ、夜中に目を覚まし確認すればランキングにくい込む我が作品。

どれもこれもこの作品を応援してくれる人のおかげであり、3日でアクセス1万という過去最高の数を記録。

感謝してもしきれません、というわけで早めの投稿です。

今回のこころんはお世話してくれます、良かったな如月。

「で、生きては帰れますか?」

男としての尊厳を失うかもしれんが帰れるぞ、喜べ



花咲川の闇深空間

壊れてしまった人が居る。

それを治してくれる人もいる。

壊れてしまった人は、それで治った形を保った。

しかし治ってはいなかった。

──なぜか?それは簡単。

 

古傷があり、それを叩く。

表面上は叩かれた傷を癒すが、そもそも古傷の方が深かった場合それは完全に治ったとは言えないわけだ。

 

つまり、彼はもう直しきれないほど、既に壊れてしまっている、ということ。

 

───如月くん、どうなるんでしょうね?

 

◇◆◇◆◇花咲川女子学園◇◆◇◆◇

 

「えー、如月準です、えー、唐突な転入ですが、えー、よろしくお願いします」

 

僕こと如月準は、今女子学園に居る、それも転入生としてだ。

一応補足しておくと、僕は20歳の成人男性ではあるが高校生に見られるほど若く、童顔と言ってしまえばそうだった。

 

しかし、僕がここに転入したのはとあるわけがある、理由とルールを全てねじまげることの出来る頭のおかしい権力の持ち主。

 

──弦巻こころ、である。

 

◇◆◇◆◇

 

あの日、僕はサークルから逃げ出した。

積み重なったものは僕の心を蝕み、今、心の破壊の直前まで行った。

無我夢中で走り抜け、がむしゃらに距離をとった、その先で出会ったのが、弦巻こころだ。

 

「……ここ、ろ───」

「大丈夫かしら?ほら、笑いましょう?」

 

肩で息をする僕の手をそっと掴んで、にっこりと笑ってそう言ってくれる、だんだんと落ち着いてくる、その間、こころはずっと手を握っていてくれた。

 

「…大丈夫、大丈夫よ。

私が守ってあげる、誰にも傷付けさせないから、だから、今は笑いましょう?笑ってるなら、あなたが幸せなら、私もちゃんと守ってあげれるの」

 

暖かく抱擁される、壊れかけた心が修復されるような感覚、僕はこうしてこころに守ってもらった。

─そうでもしなければ、僕の心はとうの昔に砕け散っていたことだろう。

 

──いや、もう壊れていたのかもしれない。

 

◇◆◇◆◇

 

こころは『僕を守るため』と称し、僕を強引に高校生まで戻した。

どんな手段を使ったかは分からない、ただ、あの時、僕は安息を求めるために首を縦に振ってしまった。

 

弦巻こころは、確かに『病んでいる』、それは間違いない。

ただ、動機は他のバンド娘たちと比べていくらかマシだ、『僕を守るため』に動いてくれる、その為ならなんだってするし、国だって動かすことが出来る。

 

最強の味方であり、最凶の敵だ。

冷静に考えれば、こころさえ味方につければ不安要素など一切なくなるだろう。

 

事実、この高校の大人たちは弦巻家に買収されるか、脅迫されて僕の入学を認めてしまった。

 

 

 

「……なんともまぁ、理不尽な話で」

 

今日は転入初日、挨拶を終えすぐ様トイレに逃げ込んだ。

学年は2年、言わずもがな、こころと同じクラスだ。

 

ここには当然男のトイレなどないが、教員用を使わせてもらっている。

教師は黙認、文句など言おうものなら消されるし。

 

「どうなるんでしょうね…」

 

冷静に考えてみれば、弱みに付け込まれたと分かる、あの時弱っていた僕に『守ってあげる』と言って近付いてくる、詐欺師っぽいな。

 

窓から空を眺めて、もう鳥になりたいと考える。

ただ、口に出すと『叶えられる』可能性があるので口には出さない。

 

何を考えているか、現実逃避の域に到達しても、目の前の現実は現状から逃げることを許さない。

 

実際、今学校の授業開始のチャイムが鳴り響いた。

このまま帰っても誰も文句を言わないだろうが、身の危険を感じるので、とりあえず初日は大人しくすることにした。

 

──のだが。

 

〜休み時間(1)〜

 

「元気?元気ね!今日からは私がずっとお世話してあげるから、もう悲しい顔はしなくていいのよ!」

 

〜休み時間(2) 〜

 

「授業はどうだったかしら?長かったから喉が乾いてると思うの、だから飲み物を持ってきたわ!ほら、飲んで?」

 

〜休み時間(3) 〜

 

「もうすぐお昼よ!喉は大丈夫?お手洗いにも行きたくない?

私はあなたをずーっと、お世話してあげるから!いつでも頼って頂戴!」

 

 

周りの生徒がドン引きして僕に近付くことが無くなるほどのおせっかい、そもそも何かと話しかけてくるので他の病み娘たちも僕に近付けない。

 

良くも悪くも、目立ちすぎている。

 

そして、昼休み。

 

 

「お弁当を用意したわ!一緒に食べましょう!」

「アー、スコシオナカイタイナー。ゴメンココロー。

───お手洗い行ってきますね!では!」

 

このままではダメ人間になってしまうと本能が感じ取り、こころを撒きながら教員用トイレへと向かい、また引きこもった。

 

「ここならもう誰もこない、何せ男子用トイレはここにしかないし、生徒はここに入れないからね……あー疲れた…」

 

こころは過保護すぎる、彼女の言う幸せが何かは分からないが、笑顔と幸せを同一視しているのは確実だろう。

はぐみよりはだいぶマシ、と言えばマシだが、五十歩百歩だ。

 

壁にもたれて時間を潰していると、お腹が大きな音を立てて鳴る、そういえば今はもう昼休み、昼飯時だった。

 

「……え?まさか便所飯?嫌なんですけどぉ…」

 

ここから出れないとなれば便所飯。というか、そもそも飯がないのだから便所飯でもない、便所だ便所。

 

悲しいが変に出て病み娘に見つかってもヤバイ、つまり詰みと言うことだ。

 

トイレの窓付近の壁にもたれ、でじっとし続ける。

惨め、あまりに惨め、しかしその時間は、不意に終わりを告げる。

 

「ここにいたのね!早く戻りましょ!」

 

響く声、その声には当然聞き覚えがある。

振り向く、そこには黄色い髪を下げた少女、いや言わずもがな、こころだ。

 

ここは女子トイレでは無いはず、などなどの考えが頭を巡るが、その前に腕を掴まれた。

 

そして、トイレとは基本的に出口は1つしかない。つまり、逃げ場はない。

 

というわけで。

 

「あなたのためにお弁当を用意してきたの!食べましょう!」

「あ、ちょ、待ってぇぇぇ───」

 

強制連行となります。

 

◇◆◇◆◇屋上◇◆◇◆◇

 

屋上、絶好の昼飯スポットかと思いきや誰もおらず、誰かが用意したであろう僕とこころのお弁当しか無かった、そしてこれまた用意されていた敷物の上に腰を下ろすと、こころが卵焼きを箸で挟んで差し出してくる。

 

「ほら、あーん♡」

「いや、自分で食べれるから…」

「ダメよ、喉につまらせたら大変だわ!」

「要りませんって!」

 

自分を子供扱いされるというのは気分が悪く、軽く手で払ってしまう。

守ってもらう、それは結構な事だが、過剰なのはさすがに良いだけのものでは無い。

 

ただ、それは迂闊だったらしい。

 

「あのですね、守ってくれるのは良いんですけど、僕は子供じゃ───っぐっ!?…っ、ぁっ…!?」

 

拒否して、言葉を発す、その空いた口に強引に口付けをされ、液状化した何かが流し込まれる。

恐らくだが卵焼き、吐き出そうと体は動くが、頭を抑えられて吐き出すことが許されない。

 

そしてそのまま、飲み込んでしまう。

 

「──っ、げっほ…!……急に、何をッ…!?」

 

口付けから解放され、涙目になりながら目の前の少女。

こころを睨みつける、しかしそれで見たのは深い深い、ハイライトの消えた、呑み込まれるほどの闇に染まった、こころの目だった。

 

「私はあなたを守る、その結果たとえ。

あなたを傷つけることになっても

 

「……それ、は」

 

声が震える、それは怒りではなく恐怖。

毎回こころは僕を守ってくれていたが、その裏にはこんな考えがあったなんて知らなかった。

 

やはり、僕は甘く見ていた。

 

これは『世話』ではない、『飼育』というものだ。

自分のものを守るように、こころは僕を守ってくれていた。

 

──所詮、モノ扱いだったのだ。

 

「さぁ、食事を続けましょう!

笑って?私はあなたの幸せを想う、私はあなたの笑顔を望む。

ダカラ、ネ?アナタハ、ワタシノオモウママニお世話サレテ、ワラッテ、シアワセニナッテレバイイノ

 

これは──愛なのか?恋なのか?そこに、恋愛という感情は点っているのか?

 

いや、きっと愛だ、守る、庇護心、それは愛から来るもの、恋より出でしもの。

幸せにしたいという考えは、愛以外の何物でもないからだ。

 

──その考えは言葉にならない、彼女の世話を、幸せにされる拒否権は僕にない。

なぜなら、僕は彼女のモノだから。

 

──少なくとも今は、従うしかないのだ。

 

 

◇◆◇◆◇弦巻こころの恋◇◆◇◆◇

 

笑わない人がいて、ずっと疲れているように見えた。

ダカラ、私はそれを笑顔にしようとした。

 

「笑顔ですかー、分かりませんね〜、はぐみちゃんにも聞かれましたけど、笑う意味が無いんです。

幸せがない、とは言いませんよ、僕だって美味しいものを食べたり、素晴らしい作品に出会ったりすれば幸せだと思いますとも。

あ、最近なら優しい人に守られたり、お世話される系の奴に幸せを感じましたね、うん。

 

それは置いといて、僕は仕事は仕事と割り切るタイプでして、つまり。

あなたと言葉を交える。『これも仕事の1つ』ですよ、接客です」

 

───そう、そうね!その通りだわ!

『幸せは人によって違う』んだもの!ええ!それなら私はあなたにとっての幸せを追求してあげる!

 

絶対に、あなたを守るわ!そうすればあなたは幸せを感じる、笑ってくれる!

 

私は、そうやってあなたを幸せにしてあげる。

 

それを邪魔するなら、タトエアナタデモ、ユルサナイ

 

 

 




今回は……なんでしょうね。

これも如月くんの発言が原因なのですが、こころの早とちりが過ぎるというか、これ如月くんと関わった人が歪んでいる気が。

……やめておきましょう。


次回に続く
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