「なにィ!」
何人ものヤンデレが貴様を襲うぞ!覚悟していろ!
──次回から、マジでお前を襲いに行く。
(今回はヤンデレ成分ゼロに近いです)
あれ以来、僕は毎日愛を囁かれ続けた。
摩耗する精神、擦り切れるココロ、しかし食事は毎日きちんと与えられ、餓死することもできない。
そもそも僕に死ぬ気はないが、このままでは精神が死んで人形みたいになってしまう。
ほら、今日も──。
「…よし、起きてるな」
「───」
朝、と思しき時間帯に有咲はやってくる、手にパンや飲み物を持って。
僕の起床を確認して、強引に食事をさせる。
人形遊びが意外と好きらしく、何かと僕という人形を可愛がっては頭を撫でる、心地はいいが、居心地は最悪だ。
これがおおよそ3週間ほど、精神も病むというもの。
しかし僕は無事だ、この時は壊れない強靭な心に感謝した。
「よしよし……」
ペット感覚だ、何かを愛でるのに慣れているように思える、こう考えると僕は彼女のことを何も知らない。
ただ狂っている、病んでいると一括りにして理解を拒んでいる。
…それこそ、唯一の愚行なのでは無いだろうか。
彼女は一途だ、僕が抵抗さえしないならきっとよく接してくれる、逆に僕はそれを拒み続け、あまつさえ彼女を傷付けた、それは酷いこと、責任を感じるべきものなのではないか…。
「じゃあ、私は行ってくるから。良い子にしてろよ?」
そう言い残し有咲は去ってゆく、どこへ、と聞く必要もない、高校だろう。
静寂が精神を侵しに来た。
思考がぐるぐると堂々巡りをする、あれだ、これだと。
認めることを迫る、受け入れることを迫る、何より、このままであることを拒む。
頭がおかしくなりそうだ。
僕はひたすらにこの状況からの解放を望む、呑気に考える暇も潰え、ただただそれしか望まない。
これも一種のツケだと言うのなら払う、だから、何とかしてくれと。
「──ぁ、あ」
短い声が喉から零れる、乾いた声だ、先ほど飲み物を口にしたばかりだと言うのに、阿呆のように口を開けていたせいでもうパッサパサになってしまった。
このまま、死ぬのだろうか。
そんな考えが頭をよぎる、嫌だ、と脳が反応する。
ならどうやって、否定ができるのは知恵か力があるものだけだと。
僕はそれを持たない、なんてことの無い平凡な人生を目指していたから。
──それが間違いだったとは、思いたくはない。
椅子に拘束された体は動かず、手足はぴったり椅子に縛り付けられている、あぁこれは無理だ、マジックでもしない限り出ることは不可能だ。
そう考えて、僕はまた、瞼を閉じた。
───そして、乱暴な衝撃によって目を覚ました。
「つまんねえ事に付き合わせやがって、このツケは高く付くぜ、如月」
手足が動く、縛られていた手足は痕が残っているものの何の問題もなく動く、そして椅子から立ち上がる。
少しよろけ、壁にぶつかる、その壁にもたれかかると段々と足元が安定してきて感覚が戻ってくる。
「
「あんまりにもお前の帰りが遅いから見に来た。
立てるなら帰るぞ。
市ヶ谷に戻ってこられるとここまでの道のりが泡になるし、めんどくせえしつまんねえ」
相も変わらずスーツにタバコ、しかしどこか雰囲気が違う、そしてそのまま部屋から階段を昇って出ていってしまう。
改めてこの部屋を見渡してみると、無機質な白塗りの壁に照明が1つ、奥の方に階段があり、本当に僕をぶち込むためだけに作った部屋だと理解した。
というか、我ながら立ち直りが早い、黄金メンタルは伊達では無いな。
そうして部屋の中をうろちょろして見ていると、階段から蛇穴が駆け下りて来た。
「お前!早く来いっつってんだろうが!」
「あーれー……」
文字通り襟首を掴まれて引きずられていく、さすがに階段は降ろしてくれたが、かなり雑だった、本当に教師やめろ。
階段を上がると謎の取っ手の着いた天井を掴んで押し上げた、数週間ぶりの日光、なんてものは無く薄暗かった。
だってそこは蔵のはず、蔵の……。
「…って、蔵のはずじゃ……?」
「ンなもん嘘に決まってるだろ、蔵に隠し部屋なんてあるか。
ここは地蔵通り商店街の空き家、元からあったモンを利用したらしいな、市ヶ谷は」
なるほど、僕にさえ本当のことを言わなかったのか、なんという大嘘つき、愛する人にぐらい本心をさらけ出してもいいんじゃないか。
というかサラッと流したが、なぜこの人は蔵の隠し部屋うんぬんを知っているのだろう。
「とにかく離れるぞ、お前の家はダメだ、俺の家に匿う」
「あ、はい──なんで僕の家がダメなんですか?」
「説明はあとだ、いいから来い」
どこか焦っているように見える蛇穴は窓を開けてそこから出ていく、僕も手を借りてそこから出るが、いまいち理解が追いついていない。
裏道をわざわざ好んで歩いていく蛇穴、僕的には日光をもう少し浴びたいのだが、表には出るなと言われた。
なに、僕指名手配でもされてんの?
「お前が他のやつに捕まってると俺に報酬が入んねえ、いいか如月、俺とお前は良好なウィン・ウィンの関係を築いている、分かるな」
「ええ、分かりますよ、僕にメリットが少ないですけど」
「今にわかる、お前は俺と約束してて良かったってな」
ほら、大通りに出るぞと急かされる、正直そこまでの光景は想像していなかったが、僕が見たのは想像以上、いや、想像出来るはずのないものだった。
行方不明者捜索の張り紙がそこらじゅうに張ってあり、そこには僕の顔写真とフルネームが。
そしてご丁寧に見つけたら電話くださいの文字と、電話する先の番号まで。
そして、大通りに出たことで視線は僕に集まった。
「──逃げるぞ!」
次々に電話やスマホを手に取る通行人と店の人々、そして蛇穴の一声で僕の心臓は跳ね上がり、つられて走り出した。
「ちょちょっと!?これはどういう──」
「お前は自覚症状がねえからタチが悪ぃな!
包囲網だよ!お前はこの街から出られねえ!
そんでもって、お前はお前にゾッコンな奴らに追われる身ってことだ!」
「え、えぇぇぇぇぇぇ!!?」
──
さぁ始まりました【如月包囲網】!
実況はわたくしカタリナ騎士と!
「今回だけで荒々しさが3割増した蛇穴だ」
次回は如月くんが大量のヤンデレに追っかけまわされるぞぉ!というか更新早いねえ!前の投稿いつだっけ!
「知らん。
というか、今回は俺が如月を助けるんだな。
ウィンウィンの関係だし、まぁ当たり前だ。
上げた生活水準ってのは落としにくいからなぁ」
うーんこのロクでなし高校講師とヤンデレコード
次回!如月包囲網!如月絶体絶命!次回もぜってー、見てくれよな!