艦娘の思い、艦娘の願い   作:銀匙

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天龍の場合(34)

 

天龍組の一同がほっと一息ついた昼時、鳳翔の店。

 

「いらっしゃいませ。あら、天龍さん。お久しぶりです」

「鳳翔さん、邪魔するぜ」

「それに可愛い子を大勢連れて・・どうなさったんですか?」

「今日は教え子全員で来たんだ。この村雨が白星食品の入社試験に合格したんだ!」

「あらあら、それはおめでとうございます」

「だから、串カツを皆で頂こうと思ってさ」

「まだお昼の時間には早いですから貸切でしょう。お好きな場所にどうぞ」

「じゃ、カウンターにさせてもらうぜ」

白雪がニコニコ笑って言った。

「先生に日頃の感謝の気持ちを込めて、今日は先生の分、皆で奢るんです。串カツとデザートを」

天龍はおずおずと5人を振り返った。

「なぁ、本当に俺の分奢ってくれんのか?無理しなくても大丈夫だぜ・・ん?デザート?」

「はい。幾つかとっても有名なのがあるんですよ!」

村雨がにこりと天龍に笑いかけた。

「私が最後でしたけど、白雪さんも、川内さんも、祥鳳さんも、伊168さんも皆、天龍先生に救われました」

「え・・」

「感謝の気持ちを形にするのって何かきっかけが必要ですから、今日は丁度良かったんです」

伊168がニヤリと笑った。

「村雨ちゃんが不合格だったら思い切り水を差す所だったわよね~」

「ほんとですよ!受かってて良かったぁ!」

天龍は困ったような照れたような笑顔で

「お、俺は大した事してないぜ。お前らで互いに治しちまったじゃねぇか」

「でも、私達をしっかり受け止めてくれたのは天龍先生一人でした」

「クラスで浮いたり、テストに白紙回答した私達を信じてくれた」

「天龍先生が居たから私達は集えたし、やりたいようにさせてくれたから心の傷を治す事が出来た」

天龍は真っ赤になりながらバタバタと手を振った。

「お、おいおい、なんだよ、そ、そんなに持ち上げやがってさ。あ、あー、午後は雷か?敵襲か?」

川内が笑った。

「あっはは、先生可愛い~」

「おっ、俺は天龍様だぜ!こっ、怖い事を売りにしてんだ!がおー!」

鳳翔が平皿とご飯を手渡しながら、

「じゃあ今日は皆さんのお祝いなんですね。心をこめてサービスいたしますよ。ではオーダーを!」

「玉ねぎ!」

「うずら!」

「ナス!」

「チーズ蒲鉾!」

「はさみレンコン!」

「イカホタテ!」

 

1時間後。

 

白雪がチラリと見渡した。

「・・・み、皆さん今まで見た事ない位食べましたね。そろそろ終了ですか?」

「ちょ、調子に乗って・・食い過ぎた奴・・・手を上げろ・・」

「せ、先生だって・・その串の数は尋常じゃないじゃないと・・思います・・ううっ」

「多分、うずらの卵、20個は食べました・・」

「ソースがケースの半分まで減ったわ・・・誰も2度付けしてないのにこれって凄くない?」

遠目に解る程の丸いお腹を抱えた天龍組の面々に、鳳翔は

「皆さんには少し多過ぎましたね。美味しそうに召し上がるのでつい・・すみません」

と、頭を下げた。

「鳳翔は何度も止めてたから悪くねぇよ」

「そうですよ、ご飯を2回も御代わり頼んだのは私です」

「本当に、本当に鳳翔さんのお料理は美味しいわぁ・・幸せ・・」

そんな中、白雪は静かにメニューをじっと睨んでいたが、意を決したように鳳翔に手をあげた。

「すみません、私、デザートに白玉あんみつお願いします。バニラアイス多めで」

「解りました。少々お待ちくださいね」

鳳翔が去ると、面々がギロリと目玉だけ白雪に向けた。

「デ・・デザート・・だと・・」

「しまった・・鳳翔の白玉あんみつは絶品だって・・今思い出したぜ・・」

「お、おのれ・・静かに余力を残してたのね・・」

「奪いたいけど・・・胃が破裂する・・」

「せ、せめて、アイスを・・・うえっふ、無理」

白雪は溜息を吐くと、

「一応、食べる前に言ったんですけどね・・・」

そして鳳翔が運んできた白玉あんみつを受け取ると、

「うひょおおお、本当に美味し~い!ひゃあ!最高です!」

と、羨望の眼差しの中をムシャムシャ食べ進めたのである。

 

「ごちそうさまでした~」

ガラガラと引き戸を閉めると、天龍がうーんと伸びをした。

「んー、本当にマジで食いまくったなぁ!皆、ごちそうさん!タダ飯最高だぜ!」

「それにしても先生、良く割引券なんて持ってましたね」

「衣笠に貰ったんだ」

「鳳翔さんもオマケしてくれたから一人分より安く済みました。先生、ありがとうございました」

「礼は衣笠に言いな。いつかソロル新報の定期購読でもしてやれよ」

川内が考える仕草をしながら呟いた。

「鳳翔さん大丈夫かな?ちゃんと黒字なのかなあ?」

天龍はにっと笑うと、

「鳳翔はきちんと計算してる。例えばああいう奴が来ても潰れないように、な」

村雨が天龍の指差す方を見ると、親しげに話しつつこちらに歩いてくる赤城、加賀、飛龍、蒼龍が見えた。

「・・・・あ」

「掃討部隊が・・」

「草木の1本も残らなさそうですね」

蒼龍が天龍達に気付き、手を振った。

「おーい!皆も鳳翔さんのバイキング行くの~?」

「私達は開店と同時に行ったんですよ。だから今帰りです」

「あ、良いんだ~!」

「ちょっと食べ過ぎちゃいました」

「何が美味しかった?」

白雪はうむと頷いて

「白玉あんみつですね」

と、言い切った。

すると赤城がぽんと手を打ち、

「そうです!鳳翔さんの白玉あんみつは絶品です!白雪さんありがとうございます!忘れてました!」

それを聞くと加賀が溜息を吐きながら、

「お願いですから、あんみつを桶に入れて持ってきてと頼まないでくださいね」

「ええっ!?なぜですか!?」

「デザートは涼しげな器で頂くから良いのであって、桶に山盛りのあんみつなんて見るだけで・・・」

「普通の器なんて何十回とお代わり頼まないといけないじゃないですか」

「1回で我慢しなさい。それと、串をテーブルに平積みするのもダメですよ」

「なぜっ!?」

「この前雪崩が起きて大変な事になったじゃないですか。あまり鳳翔さんに迷惑をかけてはいけません」

「串入れなんてすぐ一杯になるから良いアイデアだと思ったんですけど・・・」

「そういう問題ではありません」

異様な会話に呆然とする天龍組に、飛龍が苦笑しながら

「いつもこんなんだよ。じゃあ、またね」

と、言いながら店に向かって行った。

立ち尽くす6人だったが、伊168がぽつりと

「私達なんて・・全然平気だね」

「串で雪崩が起きるって、どれくらいの本数が要るんだろう」

天龍がうーんと考え込み、ふむと頷くと、

「よし、腹ごなしにバイトすっか!」

「え?どういう事?」

「さっきの礼に、鳳翔の店の裏方手伝うんだよ。片付けとかなら出来るだろ?」

「あ、良いですねそれ!」

「皆、腹は落ち着いたか?」

「動いても大丈夫です。戻しません!」

「よし、じゃあ鳳翔に聞いてみるか」

 

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