4月4日昼 ソロル本島
「ふーむ」
自室で古鷹の相談を聞いた長門は天井を睨んだ。
確かに、そうだ。
「あのね長門、新しい子達との役割分担はどうすれば良いかな?」
これが古鷹からの相談だった。
当初の計画では異動を主目的に考えており、4月1日に皆揃おうという所までしか考えていなかった。
後輩達は脱出劇で特に自らを導いた古鷹を大変慕っているので、相談したのだろう。
現在は自主的に食堂の配膳といった手伝いをしているが、先輩が班毎にきちんと動いている事に比べると手持ち無沙汰の感があった。
自主性は役割があり、評価されなければ続かない。いつまでも頼るのは危険だ。
「古鷹」
「なに?」
「あの子達は新入りであり、仲間だ。いずれは戦力として戦ってもらうが、今、どう教育を進めていくべきだろう?」
「鎮守府が出来てないから敷地内射撃演習とかをしようにも設備がないの」
「うむ。」
「また、これまでは新入生は一度に1名とか2名だったから既存班で面倒を見られたけど、今度はそうも行かないよね」
「そうだな」
「ただ、集会場はあるし、机とかの備品なら妖精さんに頼めば作ってくれそうな気はする」
「確かに」
「だからまずは、集会場で座学が出来るくらいの机と椅子、黒板とかを作ってもらえないかな」
「それがあれば我々の打ち合わせにも使えるな」
「うん。会議にも使えると思う」
「なるほど、それは工廠長と相談してみよう。他には?」
「現在の私達の班当番には新しい子達との接点がないの」
「それはそうだな」
「だから、講師役っていう当番を入れるのはどうかな?」
「ほう。それは面白いな」
「人前で話すのは苦手な子も居ると思うけど、その時は他の班員が助けてあげればいいと思う」
「ふむ。一人ではないからな」
「あと、新入りの子達も班を作ってあげたほうがいいと思う」
「そうだな。今はとりあえず友達同士で固まってる感じだからな」
「うん。運営方法は今までの班編成のやり方で良いと思う」
「だが、編成は難しいな。いつまでも新入り組と既存組が分かれてるのも問題だが、今は戦力が違いすぎる」
「そうね。いきなり混ぜて実戦とかになったら可哀想ね」
「うーむ。この辺は先生に聞いてくるか」
「先生?」
「提督だ」
「難しい問題を持ってきたなあ、長門」
「そうであろう?さすがに難しくて一人で答えを出すのは不安だったのだ」
「うーーーん」
ここは提督の家である。
「基本的に古鷹の案は妥当だ」
「そうだな」
「問題はいつ、どう馴染ませるか、だ」
「うむ」
「長門」
「うん?」
「今も班の人数は適正か?」
「そうだな、自然と決まった数だが、6隻というのは艦隊の最大数でもあるし、意思疎通の塩梅も良いんだ」
「とすると、それが倍増するのは困るな」
「そうだな」
「なるほど」
「実力上、我々は実務部隊、新入りは訓練部隊とし、それぞれ班を持つ形でも良い気はする」
「だが、それに慣れると訓練してればいいという慢心につながる」
「うむ。新入りは訓練を始めればあっという間にLVも上がる。不貞腐れる新入りも出てこよう」
「それでいうと、部隊名は特に慎重に名づけるべきだぞ、長門」
「どういうことだ?」
「たとえば、そうだな。長門。」
「なんだ?」
「お前は第2部隊だ」
「・・・・・」
「なんか、第1部隊に比べて、という感じがしないか?」
「そうだな。言われて解った」
「だから序列を思い起こさせるような言葉はつけないほうが良い」
「先輩後輩もか」
「そうだな。部隊名には止めた方が良い。班名は123でも良いがな」
「今もそうだからな」
「あの数字は序列というよりこの当番が1班、というような割当の意味合いが認識されているからな」
「逆に言うと、新入り達にはそれを説明しないといけないな」
「よく気がついたな。その通りだ」
「ふふふ」
「何を各班にやってもらうか、いつから教育かは別として、部隊名と班編成は速やかにやろう」
「うむ」
「長門は部隊名に良いアイデアはあるか?」
「・・・そういうのは苦手なのだ」
「響は?」
「ずっと使うなら、簡単で、皆が知ってて、良い印象のある名前が良いよね。」
「ほほう。良い事を言ったな。」
「えへへ」
「で、具体的には何かあるか?」
「羊羹とか大福とかカレーとか」
「お前は赤城か」
「えー」
ヘックション!
赤城は盛大にくしゃみをした。冷えたのでしょうか。昼は鍋物にしましょう。
「んー、提督、ダメだ。思いつかん」
「羊羹部隊、ダメかなー」
「・・それはイヤだ響。なんか美味しく食われそうだ」
「そっか」
「・・・そうだ」
「なんだ?提督」
「星座はどうだ?」
「正座?」
「座るな。星のほうだ」
「北極部隊とか寒そうだよ」
「南極部隊とか別の意味に取りそうだ」
「どういう意味かじっくり詳しく聞こうじゃないか長門」
「ひざを乗り出すな。セクハラで訴えてやる」
「セクハラになりそうな事を想像したんだな」
「変態提督と呼んでやろう」
「ムッツリ長門と返すべきか?違う。星座だ。山羊座とか乙女座とかしし座とかあるだろう?」
「・・・・。」
「なんだ二人とも」
「提督がまともな事を言った」
「隕石が降って来るのか?警戒態勢を最大に引き上げなければ」
がくりと提督は頭を垂れた。私はどう見られているのだ?こんなに日々真面目にやってるのに。
「でも、それは良いな」
「悪いイメージはないし、序列関係もないし、覚えやすい」
「何と何にする?」
「待て、星座一覧があったはずだ」
3人で星座一覧表を眺めていく。
「強そうなのが良いな。獅子部隊とか良いではないか」
「死につながりそうじゃないか?」
「う」
「てんびん部隊とか?」
「なんだか棒手振りの魚売りみたいだな」
「むー」
「ペガサス部隊!」
「おお!それいいな!」
「1つ決まりだな。後は・・・・」
「羅針盤・・部隊・・」
「振り回されそうじゃないか?」
「うん・・・却下だね」
「ネタとして言ってみたかっただけなんだ」
「解る」
「もう1つはペガサスと似ていない言葉がいいかもな」
「無線とか考えると、そうだな」
「スコーピオン部隊!」
「なにそれ格好良い」
「よし!ペガサスとスコーピオンで良いだろう!」
「そのうち、ペガサス・スコーピオンの紅白戦とか出来るようになると良いな」
「艦隊決戦か!胸が熱いな!」
「教育の詳細は長門と古鷹で出来そうか?」
「困ったら相談に来る」
「それで良い」
「では、早速伝えてくる。ありがとう、提督よ」
「いつでもおいで。待ってるよ」
「ああ!」
元気よく駆けていく長門を、提督はにこにこと見送った。
「あのね、作者さん」
「何ですか古鷹さん」
「ほのぼの回はあって良いと思うのだけど」
「はい」
「思考プロセスをそのままストーリーにするのは、あまり何度も使っちゃダメよ」
「ぎくっ!」
「作者さんのアタマの程度が知れ渡っちゃいますからね」
「スイマセン」
「よしよし」