それで、あらすじを現状にどうにか合わせようかとしてるんですが、あまりにも話がありすぎてどこをかいつまんで書けば良いのかと途方に暮れてます。
とほほ。
伊勢が提督を訪ねた日の翌日。
コン、コン。
「どうぞ、開いてますよ」
本日の秘書艦である加賀の涼しげな声に呼応するかのように伊勢が入ってきた。
「おはよ提督。部屋は特に問題無いと思うよ」
「そうかい?」
「ただ・・」
「ただ?」
「豪華過ぎて落ち着かなかったわ・・あはは」
「内装、そんな派手だったっけ?」
「ううん。落ち着いてて趣味は良いんだけど、やたら高級感が溢れてるから気が引けるのよ」
「まぁあれは大本営の中将や大将が来ても問題ないようにって作ったらしいからね」
「あー、納得。あたしにはちょっと豪華過ぎって思った」
「だとすると、受講生向けに一部改装してみるか・・」
「ま、分相応の部屋の方が落ち着くわね」
「考えておく。ところで、基地の子達の件、こんなのはどうかと思うんだが」
「なになに?」
その後。
提督は妙高と最上、そして三隈を呼んだ。
「というわけでな、異動希望者を招いておさらい教育を受けてもらおうと思うんだ」
妙高が頷いた。
「ええ」
「人数はその日受け入れられる分で良いが、上限はどのくらいにする?」
「そうですね、念の為25人を最大として良いですか?」
「解った。あと、日程は日帰りではなく、1泊2日にしようと思う」
「おさらいコースは軽めの1日で終わりますから、日帰りも可能ですけど・・」
「なんというかね、鎮守府の空気に慣れてもらおうと思ってさ」
面々はなるほどという表情で頷いた。
「いずれ赴く鎮守府とは違うと思うのだが、深海棲艦の頃よりは近いだろうと思ってね」
「そうでしょうね」
「うちに興味を持つ子が居るなら、来てくれても良いしね」
「さりげなくPRってわけね」
「ああ。だから2日目は基地に日暮れには帰れるように早めに出航させる」
「実質は1日だけど、泊まる事で長めに置いて、雰囲気を思い出させるって事ね」
「そういうことだ」
最上が手を挙げた。
「えっと、ここまでの移動手段はどうするんだい?」
「そこなんだけどね最上さん」
「うん」
「途中で迷われても困るからさ、往復用の船を1隻作れないかな?」
「小型で良ければすぐ作れるよ」
提督は伊勢に言った。
「じゃあこちらの準備が整ったら往復用の船を送るから、それを合図にしてほしい」
「うん、こっちもそれで準備しておくわ。あ、その船って私達も乗って良い?」
「勿論。往復したい時には使うと良いよ」
「よし、じゃあ私、基地に戻るね」
「もう戻るのか?」
「日向が心配するしね」
「最上、今日返す営業船は無い?」
「伊勢が乗って来たNO3を返すよ。もうメンテ終わってるし」
「早いね」
「特に問題が無かったからね」
「じゃあ帰りも営業船に乗って行けるのね。楽で良いわー」
「営業船の乗り心地はどうだった?」
「静かだし、揺れないし、速いし、何より攻撃回避してくれると思うと安心よね」
「あは、褒めてもらえて嬉しいよ」
「じゃあ営業船で帰りなさい。土産は何か買うのかい?」
「間宮さんのとこでケーキとクッキーを予約してるの。あ、もう出来るわね」
「じゃあそれと、これも持って行きなさい」
「あ、黒蜜羊羹。良いわね。ありがと!」
「気を付けて帰るんだぞ」
「解った。じゃあ皆、よろしくね!」
こうして伊勢は再び営業船に乗って帰った。、
鎮守府ではその後、妙高が中心となって教育プログラムの調整を進めて行ったのである。
伊勢が帰ってから3日後の日没頃。
管制室で久しぶりにアラートが鳴った。
「なに?正体不明の船舶だと?」
東雲組の妖精達の報告を受け、日向は双眼鏡を覗いたが、
「大丈夫だ。先日話した往復用の船だ。そうだ、あれが毎日来るようになる」
と言い、インカムで伊勢を呼んだ。
「まーた目に悪い配色ねえ」
「あぁ。最上の奴、蛍光イエローで船体を塗らなくても良い気がするんだが」
船体側面に大きく「ソロル-基地往復船」と書かれた船。
大きさは勧誘船より小さく、定員は40人程だ。
毎日研修生を乗せて往復し、時折日向達も乗るという意味で適切なサイズである。
鎮守府に連絡したところ、上限までOKとの答えが帰って来た。
また、船は自動的に0700時に出航するという。
行く順番は相談済だったので、第1陣の25名を送り出す事にした。
その中には北方棲姫の部下で、艦娘に戻っていた子も混じっていた。
翌朝出航した船は、再び昨日と同じ時間に空の状態で帰って来た。
鎮守府に聞いた所、14時頃に鎮守府を発ったという。
伊勢は頷いた。
「結構速いわね、島風でも追いつけないかも」
日向は腕を組んだ。
「さてさて、明日の夜に何を学んで帰ってくるかな」
翌朝。
第2陣も上限までOKと確認したので、予定通り25名を送り出した。
その日の夜、帰って来た船に乗っていた子達は目をキラキラさせていた。
「久しぶりの鎮守府の雰囲気、凄く楽しかったです」
「忘れてた事が幾つもあって、おさらいしてもらって良かったなって」
まずは良かったと、日向も伊勢もホッと息を吐いたのである。
「ソウデスカ、ソレハ良カッタデスネ」
北方棲姫は教育に行った部下の報告を聞いていた。
体験した方が営業に役立つだろうという判断だったのだが、
「楽しかったですよ、忘れてる事も結構ありました」
そういっててへへと頭を掻く部下に、北方棲姫は笑いながら
「楽シカッタノナラ、艦娘化シタ子達ハ全員受ケレバ良イ」
と、頷いたのである。
その後もほぼ毎日25名ずつOKのやり取りがあった。
時折、
「昨晩勧誘船で団体さんが来てしまったの、今日は御免なさいという事で」
と言って中止になる日もあったが、概ね順調な日々が続いた。
教育を受けた子が日向に送ってきた手紙によれば、異動先で役に立ったそうである。
日向は桐の小箱をそっと取り出し、蓋を開けた。
基地を始めて以来、旅立って行った子達が送ってくる手紙が入っている。
日向はふふっと笑うと、届いた手紙をそっと仕舞った。