艦娘の思い、艦娘の願い   作:銀匙

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file44:深海棲艦ノ行列

4月18日昼 岩礁

 

「今日モ居ナイネ」

「モウチョット、待ッテミヨウ」

「ソロソロ、入レナイカモ、ネ」

 

同じ頃、提督室

 

「てっ、提督!が、がが、岩礁に!」

部屋に飛び込んできたのは青葉である。

秘書艦の扶桑がにこやかに応じる。

「ハイ、背伸びをして深呼吸~♪」

「すー・・・・はー・・・」

「もう1度♪」

「すー・・・・はー・・・」

「落ち着きましたか?」

「はーい・・って、違う!違うんです提督!」

「どうした青葉さんや」

「岩礁に!深海棲艦が!並んでるんです!」

「は?青葉、エンタメ欄の記事に困ってるからと言って」

「違います!本当なんです!」

「えー?」

 

「ホントだ・・・」

提督は岩礁側の監視小屋にたどり着き、据え付け型の大型双眼鏡で見ていた。

「よく裸眼で解ったな青葉」

「ジャーナリストは観察眼が大事です!」

「ふむ。これは偉い。褒めてあげよう」

「ソロル新報を朝晩2回発行して良いですか?」

「それは文月と相談してください」

「ダメって事じゃないですか~」

「しっかし、小屋に向かって行儀よく並んでるなあ・・・」

「そうなのですか?」

「ほれ、扶桑も見てみ」

「・・・・あ。なんか可愛いですね・・・」

「うむ」

提督は考え込んだ。攻撃するつもりなら、あの数が居れば小屋なんて一瞬で粉だ。

待ち伏せならDMZ指定の外で潜って待ってるだろう。

小屋に並んでるってことは・・・あ。

「青葉!」

「なんですか!?」

「特大記事が書けるかもしれないがアルバイトしないか!」

「やります!何でも言ってください!」

「鳳翔の店で大鍋一杯のカレーとご飯を作ってもらってきなさい!ほいお金!」

「は?」

「理由は見れば解る。多分間違いない。さぁ行ってきなさい!」

「い、いってきまーす」

「扶桑!」

「はい」

「研究室の夕張と、スコーピオンに居る蒼龍、飛龍に来るよう伝えてくれないか?」

「はい」

「ちょっと遠いな。よし、後で間宮の店で何か食べなさい」

「うふふ。頂きます」

 

「提督!お呼びですか?」

「お、すまないな3人とも。扶桑もお疲れ様」

そこに青葉が大鍋と御ひつを乗せた台車と共に現れた。

「ふえー、カレー重いですぅ」

「カレー?」

「そう。深海棲艦達が来てるんだ。小屋を先頭に並んでる」

蒼龍がピンときた顔をした。

「・・・あ」

「多分、あの子じゃないかな」

 

「うっは!凄い数だな!」

岩礁の小屋に近づくと、その数が次第に分かってきた。

イ級やチ級など、20体は居るだろう。

行儀よく並んでいたが、提督達を見つけると大きく手を振ったりしている。

「な、なんですかなんですかこれ!」

「青葉、しっかり取材しろよ!」

「任せてくださいっ!」

 

「テートクー」

「マタキター!」

「カレーテートク!」

「なんだそのカレー提督って」

青葉はシャッターを切りまくっていた。提督になつく深海棲艦!信じられない光景です!

夕張は録画し続けていた。次のオフには秋葉原へNASとHDD買い足しに行こう。

そして。

 

「イタダキマース!」

「コレガ、カレー・・・」

「オイシイ!」

提督達は早速深海棲艦にカレーライスを振舞った。

なんとまあ、皆、上手に食べるわと夕張は思った。特にイ級。

青葉はヘブン状態だった。1面からエンタメ欄まで埋め尽くす勢いですよ!特にイ級の器用さ!

 

満腹で横たわる深海棲艦の1隻へ、蒼龍が近づいていった。

「イ級ちゃん、元気?」

「・・・アノ、ヲ級、ダヨネ?」

「そうよ」

「ソッチハ、楽シイ?」

「そうねえ。提督は相変わらず変だけど」

「ソレハ、ワカッテル」

提督が盛大にくしゃみをした。

「カレー食べに来たの?おいしいよね」

「ソレモ、アルケド」

「けど?」

「私モ、ソッチニ、戻リタイ」

「そっか」

「戻レルカナ?」

「相談に乗るよ。他にもそういう子が居るのかな?」

「補給組ハ大体、ヲ級ノ話ニ、興味ヲ持ッタケド、マダ半信半疑」

「そうでしょうね」

「アト、デキレバ」

「何?」

「イツ来レバ会エルカ、知リタイ。何日モ待ッテタカラ、疲レタ」

「そっか。頑張ったね。まずは会う日を決めましょうか」

「ウン」

 

「提督!」

「なんだい?」

「カレー曜日を決めましょう」

「なにそれ?」

「深海棲艦の子達と会う日です」

「なるほど。カレー曜日か。まあ金曜日が妥当か?」

「そうですね。お昼のカレーを多目に作ってもらって持って来たら良いですし」

「こっちで皆とカレー食うのも良いだろう」

「カレー、金曜日?」

「オ昼ニ来レバ会エル?」

「そうよ。金曜日のお昼。カレー作って待ってるわ」

「カレー曜日!金曜日!オ昼!解ッタ!」

「食事の後で相談があれば聞くわ。それで良いかしら?」

「ウン!解リヤスイ!」

「今日相談したい子は居る?」

「今日ハ皆疲レテルカラ、今度ノ金曜ニ、マタ来ル」

「そっか。偉かったね。待たせてゴメンね」

「ウウン。マタ会エテ、嬉シカッタ」

「そうね」

「ア、アノ」

一隻のチ級が近づいてきた。

「金曜日ハ、カレーラーメンモ、アル?」

「提督、どうします?」

「良いんじゃないの?箱で買って備蓄しとけばいい」

「アリガトウ!食ベテミタカッタ!」

「どういうこと?」

「カレーラーメンハ、オイシイッテ記憶ガアルケド、他ガ思イ出セナイ」

「そっか。うん。用意しとくね!」

「金曜日!マタ来ル!」

「皆、またおいで!」

「マタネ!提督!」

「金曜日!オ昼!カレー!」

そうして深海棲艦達は海に帰っていった。

見送った後、提督は二人を見てマズい事に気付いた。

青葉と夕張の目が星になってる。この場面で遭遇させてはいけなかった気がする。

「夕張さん!青葉感謝してもしきれません!後で必ずお返しします!」

「メモリカードの予備なんて幾らでもあるからあげるわ!」

「良いのですか!青葉嬉しいです!」

「その代わり、データ頂戴!」

「秘密を守れますか?」

「もちろん!」

「このスクープのピンチを救ってくれた恩返しです!過去分も全部どーんと差し上げちゃいます!」

「あ、あの、青葉さん」

「なんですか提督?」

「私のネタは止めてください」

「えー」

「・・誰がここに連れてきたのかな?」

「外します!」

「よし」

「あ、え、わ、私のもあるのかしら?」

「扶桑さんはないですよ?あ、提督の布団を」

「きゃあああああ!そのネタまだ持ってるの!?」

「写真付きで持ってます!」

「そ、それは止めて。お願い」

「渡すものが無くなっちゃいます・・・」

「青葉さん、別にエンタメ欄はいいよ。調査の情報源にしたいのよ」

「そうですか?じゃあ真面目に書いた1面とか社会面が良いですね」

「ええと・・・扶桑さん?私の布団に何したの?」

「何でもないです!何でもないです・・・・」

そういえば青葉も趣味の為に大量のデータを持ってるよな。

ふむ、この出会い遭遇は吉と出るか凶と出るか。

しかし、私の布団に何したんだろう・・・気になる。

 

 




長門型抱き枕欲しいです。
と、思ったら見つけたので、ついポチってしまいました。

長門「おっ、お前・・・」

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