3月28日夜、鎮守府内食堂
「ふ・・ふ・・フッザケルなよぉっ!」
最初に声を上げたのは摩耶だった。
夕食を食べずに波止場で泣いている赤城を羽黒が見つけたのは、2時間ほど前の事。
赤城が食事しないなんてこの世の終わりだとざわめく艦娘達に、食堂で会議を開くと言ったのは長門だった。
長門が冗談は苦手なのを知っている艦娘達は、本当に世の終わりかと青ざめた顔で食堂に集まった。
そして、赤城が提督の一件について打ち明け、長門が足りない部分を補っていた。
提督と居るこの鎮守府生活が唐突に終る事を理解し、そのあまりの経緯に艦娘達は怒りで蒼白になっていた。
それにしても。
赤城は長門がなぜ知っているのか疑問だった。そのまま問うと長門は
「なに、少し前に悪い噂を耳にしてな。かけていた網にたまたま引っかかったのだ」
と答えた。
そして、長門が説明を続けた。
異動先は単なる岩礁で建物を作れるような陸地はほとんど無く、深海棲艦の報告例は多数ある。
赴任時に僅かな食料と銃を渡されるだけで秘書艦も居ない。
深海棲艦に喰われて悶え苦しむ前に銃で自決しなさいと言うことだ。
これを大本営では「お膳立て」と呼んでいるらしい。
ここで摩耶の怒りがついに限界を超えたのである。
それに呼応するかのように、
「クソ悪趣味にも程があるぞ!」
天龍が食堂の台に拳を叩きつけた。分厚い木製のテーブルがミシミシと悲鳴を上げる。
「ん~、こればかりは天龍ちゃんと同じ意見かなぁ」
龍田が愛用の刀を見上げながら薄く笑っている。本気で怒っている証拠だ。
「龍田。お前はこっち側に居てくれ。私一人にブレーキ役をさせるな」
長門が溜息交じりに言った。そして、
「とはいえ、私はこの異動措置が許せない。よって大本営に一泡吹かせてやりたい」
一斉に艦娘が長門を見た。
「これから話す事は明らかに規則に反する事だ」
長門はここで言葉を切り、面々の顔を見てから、言葉を継いだ。
「悪しき作戦に加担したくない者を私は責められぬ。皆一旦食堂を出よ。5分後、戻った者と話を続けよう」
そういって長門は席を立ったが、誰も席を立たない。
「・・皆?」
「長門、そんな必要ありませんネー」
と言ったのは、金剛だった。
「私達が提督を見捨てるなんてアリエマセーン」
「わ、私も提督さんに恩返ししたいです!」
羽黒がはっきり言うのは余程の時。確かに今は、そういう時だ。
「あ、そうそう。僕が開発した艦対地ミサイルを大本営に撃ち込むかい?すぐ出せるよ」
最上、さらっと物騒な事を言うな。皆うなづくな。
「提督は球磨の妹達を立派に育ててくれた親みたいなものだクマ。親の仇は討つクマ」
球磨、その鉤爪はどこから取り出した。そして研ぐのを止めろ。多摩も真似をするな。
まったく、普段の冷静さはどうしたんだ。
そうだ、クールといえば加賀だ。こういう時こそ冷静な一言を。
「加賀、何か考えはあるか?」
「少し待ってください。彗星で何回空爆すれば大本営を街ごと焼き払えるか計算してます」
ダメだ。冷静に怒り狂ってる。
「ま、待て!皆もちゅつけ・・っ!!」
痛い。噛んだ舌も心も痛い。ええい、冷たい目で見るな。狙ってない。狙ってないんだ。
「・・・・私達が大本営を攻撃すれば相手の思う壺だ。当然提督が首謀者扱いされる。それはダメだ」
「長門さん、なにか策があるのね?」
ありがとう扶桑、お前だけが頼りだ。
「そうだ。改めて聞くが、本当に誰も降りないんだな?」
艦娘が一斉にうなづく。目が泳いでるものは無い。大丈夫だな。
「よし。簡単に言えば、鎮守府ごと異動してやろうということだ」
「!?」
「我々は兵器である。そうだな、赤城」
「はい。提督にそういうと物凄く怒られますが」
「うむ。兵器であるがゆえに機械で作る事が出来る。我々自身も、その装備もだ」
「確かに」
「そして新しい鎮守府が出来る有様を昔見た事があるが、妖精は建物も僅かな時間で作れるのだ」
「えっ!?」
「つまり、妖精以外はすべて作れるという事ね?」
「そうだ扶桑。この鎮守府を動かすのは面倒だが、妖精を連れて行くのは訳のない事だ」
「でも、それこそ建造したての子達はLv1よ?高性能の装備なんて扱えないわ」
「不知火」
「何でしょう?」
「大本営に渡しているリストの項目に、艦娘のLvはあるか?」
「ありません。艦種別の名前一覧と、在庫を含めた装備一覧、それに各資材の残量だけです」
「改かどうかも無いのか?」
「ありません。総数を知りたいだけだと言ってましたから」
「やれやれ、呆れたザル管理だな」
木曾が呆れたように肩をすくめる。
「つまり、装備は在庫としてあれば良いということだ」
「なるほど、資料のウラをかくって事か」
「でも、妖精はどうするの?それと高練度って事は知ってるんじゃないの?」
「妖精は連れて行く。この鎮守府には残さない。細工する手は考えてある」
「それにしても、なぜ提督を自決させるのかしら?」
「命令に背く司令官の処分方法らしい」
「うっ」
「確かに我が提督は、あの件以来、出撃をほとんどしていないからな」
艦娘達の脳裏に浮かんだのは、この鎮守府の大転換を促した4年前の出来事だった。
贔屓目に見ても、命令には従っていないかもしれない。
しかし、それは命令が命令だからだ・・・
青葉です。皆の会合なのに出番がありません!
これについて作者さん、一言お願いします!
「長門はワシの嫁」
はい!頑張ってLV99まで上げてください!
現場から青葉でした~