3月30日昼、南西諸島海域
提督に承認してもらった本日の「演習」。
それは2戦隊12隻を使った、信管を抜いた模擬弾による紅白戦と書かれていた。
演習海域として指定された緯度経度はソロル本島。
長門は海域に到着すると、鎮守府に演習開始を伝えた。
そして手信号で合図すると、インカムの周波数を切り替えた。
「戦艦諸君、重巡諸君、実弾への換装。完了を報告せよ」
「比叡、完了しました」
「霧島、完了」
「日向、完了した」
「高雄、完了です」
「愛宕、完了よ~」
「古鷹、装填完了!」
「利根、準備万端じゃ!」
さすが皆、手際が良い。気持ちが良いな。
「よし、空母諸君、索敵ならびに爆撃に入れ」
「飛鷹攻撃隊、発艦開始!」
「龍驤や。艦載機のみんな!お仕事お仕事ー!」
「千歳水上爆撃機隊、行け!」
全機飛び立った事を見届け、最後の1隻に声をかける。
「夕張、海域状況はどうだ?」
夕張は特殊なゴーグルをかけていた。目の前に170インチの仮想ディスプレイがあるように見える。
映し出されているのは、航空部隊の探査状況だ。
「データもバッチリね!長門さん、転送するわ!」
長門もゴーグルをかけた。
なるほど、ソロル本島はそれほど深海棲艦は居ないが、岩礁の先、本島の反対側に密度の高い地域がある。
しかし、凄いなこの装備。深海棲艦が欠伸をしているのまで見えるぞ。
よし、鈍った肩を温めるか。
「夕張はここで空母勢と待機」
「解ったわ、引き続き索敵を続けます!」
「うむ。航空部隊は全機岩礁近海へ移動、敵を見つけ次第爆撃開始」
「指示します!」
「比叡、霧島、高雄、愛宕はソロル本島周辺域で展開、見つけ次第攻撃」
「解った」
長門はゴーグルを外し、ニッと笑う。
「日向、古鷹、利根は、この長門に続け。敵本陣を殲滅するっ!」
「了解!!」
最近諸々溜まっていた鬱積、全て晴らさせてもらうぞ!
3月30日夕方、鎮守府
「提督、今日の演習結果だ。報告を聞くか?」
「ご苦労だったね。紅白戦は新しい形式だったね。どうだった?」
「うむ、久しぶりに動いて気持ちが良かった。スッキリしたぞ」
「そうかそうか。じゃあ補充と入渠を済ませなさい。模擬弾でもダメージ確認は怠らないように」
「そうさせてもらう。あ、これが今日の消費状況だ」
「どれどれ」
消費量:弾薬820、燃料1380、ボーキサイト338
「・・・・・。」
「ん?提督、どうした?」
「ケタ間違えてないよな」
「うむ、補給した時のメーターの合算だから間違いないが?」
「は、はは、ははははは・・・・・」
「ん?そんな泣くほど嬉しいか?そうか」
「アハハハハハハハ」
「ハハハハハハハ」
「・・・他の演習はキャンセルだ」
「えっ?」
「私は夕食まで寝る。起こすな」
「あ、あぁ」
「ゆっくり疲れを取りなさい」
「提督の方が疲れているのではないか?」
「少しめまいがしただけだ」
とほほ、1海域に戦艦艦隊を2度派遣した位の消費量じゃないか。
紅白戦じゃなくて実戦だよこれじゃ・・
ヨロヨロと歩いていく提督を首を傾げて見る長門。
提督はどうしたのだ?心労か?
まぁ本日必要な「演習」は行ったし、他はブラフだから問題無い。
持参した「演習完了」と書かれた紙を見下ろし、ニコッと笑う。
提督、ソロル本島近海の深海棲艦数はこの鎮守府近海と同レベルまで減らしたぞ。安心するが良い。
さて、入渠してくるとしよう。主砲周りは小破寸前だ。
久しぶりに修復バケツを使わねば、な。
長門さん、もう提督の財布のライフはゼロよ!
いや、別に追加課金してないけどね、資材がね、バケツがね・・・・