艦娘の思い、艦娘の願い   作:銀匙

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file09:提督ノ瞳

3月31日朝、鎮守府

 

打ち合わせから30分ほどが経過していた。

細かな内容を素早く話し合うと、早速陸軍開発部に連絡してきますと出て行った事務方を長門は目で追った。

事務方、恐るべし。首根っこをがっちり掴まれた気がする。

さて、もう1つの話を済ませねば。

「残った諸君はもう少し聞いて欲しい。敵の件だ」

艦娘達の表情が、すっと強張った。

 

「加賀が説明した通り、深海棲艦が司令官に化けた。これは新たな脅威である」

艦娘達はうなづいた。

「昨夜はelite級であったが、どれくらいのレベル、どれくらいの艦種が出来るかは解らない」

「更に、深海棲艦反応はあるが、変身中は位置特定が出来ないのだ」

夕張が立ち上がった。

「古鷹さん、加賀さん、昨夜のデータを残っているだけで良いので私にください。徹底的に調査します」

「そういう事は夕張が得手とすることだな。今日から任せて良いか?」

「頑張ります!」

「うむ、任せる」

「えっと、響ちゃんと一緒に取引場所に来たのよね。それまでの敵の様子はどうだったのかしら?」

「響の話では、姿形は司令官と見分けがつかず、鎮守府内でも人の行動として不自然な所は無かったそうだ」

響が口を開いた。

「でも、今考えれば言葉遣いが荒かったりおかしい所はあった。もっと早く気づいていれば、司令官は・・川内は・・」

こらえきれなくなった響は、さめざめと泣き出した。

「私はまた一人だけ生き残ってしまった。また仲間を守れなかった。もう一人ぼっちは嫌だ」

加賀が口を開いた。

「先程も言ったとおり、響さんは加賀の命の恩人です。それにこうして、仲間を守る意味を理解しています」

しゃくりあげる響を加賀が抱きよせる。

「でも、響さんはまだ、己を守り、仲間を守る戦い方を知らない。だから私達の仲間に加えたいと思います」

長門が言葉を継いだ。

「響、許せよ。一応皆に言っておくが、この響は深海棲艦反応は無い。化けている可能性は無い」

加賀は長門を見た。そうだ。私が気づくべきだった。

長門は加賀にも頭を下げたが、加賀は首を振った。

「長門さん、辛い役割をさせてしまいました。すみません」

「いや、良い。響、疑った事を詫びる」

「ううん、それは大事な事だと思う。調べてくれてありがとう、長門さん」

「ありがとう。さて、提督にはどこまで説明したものか。取引の事は秘匿しているしな」

艦娘達はめいめい考えを話し、さざなみのように広がっていった。

それを制したのは、扶桑だった。

「長門さん、加賀さん、ここは私に預けて頂けますか?」

「扶桑?」

「響さん、ちょっとお話しましょうか」

加賀を抱きしめる力を強める響を見て言葉を継いだ。

「大丈夫。加賀さんにも来て頂きますから。一緒に、ね」

響は加賀に振りかえった。加賀はうなづいた。

「扶桑さんは信頼できます。大丈夫。私も傍に居ます」

扶桑に振り向いた響は、おずおずと口を開いた。

「ふ、扶桑さん。よろしくお願いします」

扶桑はにこりと笑った。

「はい、良いお返事ですね」

長門が口を開く。

「一応、作戦概要は教えてもらっても良いか?扶桑」

「ええ、聞いてください」

 

 

「え?なに?なんだって?」

提督は、報告を聞いて驚愕した。

今日は最後の任務を承認する日かと感慨に浸っていたら、朝から居並ぶ面々にとんでもない報告を受けたのだ。

昨日デイリー任務を1つ忘れて夜に鎮守府近海に出撃したこと、帰還する途中に敵と交戦して加賀が被弾したこと、

ドロップした響が、敵艦が殺害した司令官に化けられる能力を見たといっていること、その際異様な深海棲艦反応があったこと、

それらを加賀と扶桑が矢継ぎ早に報告したのである。

ショッキングな内容が次から次に出てきた後、さらに響が涙ながらに鎮守府の壊滅まで告白したのである。

提督はまず、怯えた様子の響を見てこう言った。

「扶桑」

「はい」

「今日は秘書艦の当番ではないが、すまないが使いを頼む」

「なんでしょうか?」

「間宮さんの店にこの子を連れて行きなさい。ほら、財布を渡す」

「あ、はい、解りました」

「君は響君といったね」

「はい、提督」

「私は今日でここを去るが、この鎮守府で君を保護すると私から大本営を説得しておくから心配要らないよ」

響は提督の目を見た。優しく温かいが、とても深い悲しみを知っている目だ。

提督は言葉を続ける。

「苦しい記憶を忘れるのは無理だしその必要も無い。その時の思いを、決意を忘れず、未来の糧としなさい。

 ここに居る艦娘達は仲間を思い、仲間を守る為に己を磨き、素晴らしい実力を持っている私の宝物だ。

 響、君も今から私の宝物だ。離れ離れになっても変わらない。まずは美味しい物を食べ、ゆっくりと体を休めなさい。

 ようこそ我が鎮守府へ」

響は提督と司令官の残像が重なった。

 

「やぁ、君は響というのか。私が司令官だ。こんな小さな鎮守府ですまないが、最大限歓迎するよ」

「何てことだ。そんなに破損して大丈夫なのか?痛くないか?すぐ入渠しなさい。報告書なんて後で良いよ」

「ふうむ、指示が悪いのかな。装備が弱いのかな。どうしたら勝てると思う?」

「川内が来たぞ!二人居れば心強いよ!夜戦が好き?響、教えてもらいなさい。私も一緒に勉強するよ」

司令官・・司令官・・司令官・・司令官。あぁ、あぁ司令官!

 

「響?」

「うわあああああん!司令かああああああん!ごめんなさああああい!」

棒立ちで泣き始めた響。提督が立ち上がったので加賀がとっさに響をかばおうとした。

「て、提督、粗相はお許しください、まだ」

「違う。叱るのでは無いよ」

提督は加賀にそういうと、響を自分の子供のようにぎゅっと抱きしめた。

 

「よし。響、よく耐えた。偉いぞ。さあ思い出しなさい。今、全てを思い出し、全て言葉にしなさい」

「司令官!川内さん!ごめんなさい!ごめんなさああああい」

響は提督に抱きついた。あったかい。ここでは好きなだけ言って良いんだ。思い切り泣いて良いんだ。

加賀は提督を見た。響を優しく抱きしめているが、どこか遠い目をしている。

大本営をどうやって説得する気かしら?

普通は鎮守府間の艦娘移転は鎮守府調査隊が決める筈だが。

でも、と加賀は思った。

提督は沢山の傷を抱える私達を見捨てない。

だから、私はあなたの為、これからも出来る事を、命の続く限り働いてみせますよ。

こんな事恥ずかしくて言えませんけど、提督なら解ってくれますよね。

 

30分以上そうしていただろうか。

ようやく呼吸が落ち着いてきた響の手を扶桑に取らせると、提督は

「後は女の子同士で頼むよ」

と送り出した。

そして加賀に振り返ると

「任務娘を呼んできてくれ。大本営と通信をする必要がある」

と言った。

加賀はうなずき、走り出した。

 




いつかデレ加賀さんが実装されると信じて疑いません。

加賀「艦載機、爆撃用意」
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