「……なさい……キト……起きなさい、アキト」
声と同時に体を揺すられて目が覚める。……どこだ、ここ。
半分寝ぼけた目で声がした方を向くと、そこには赤みがかった茶色の髪をした女性が立っていた。
「そろそろ港に着くわ。今のうちに支度を済ませておきなさい」
そう言い残すと女性は部屋を出て行った。
港? あぁそうか、と少し経って意識が鮮明になったことで今自分が船の中にいることを思い出す。支度を済ませて部屋から出ると、先ほどの女性が言ったとおり目的地が間近へと迫っていた。
「あれが”シンオウ地方”か」
シンオウは北に存在する地方で、年中雪が降り続ける場所があるなどなかなかに珍しいところだ。
甲板の方へ向かい辺りを見渡すと、目的の人物が長い髪を風になびかせていた。
「おはよう、ティア」
彼女の名前は”ティア”。先ほど俺を起こしてくれた見た目20歳ほどの女性で、幼いころに縁あって今では一緒に旅をしているパートナー的な存在だ。
「おはようアキト。長い船旅だったけど疲れてないかしら?」
「大丈夫。ちょっと寝る前に伝承読み漁ってて眠いけど問題ない」
「またあなたという人は……ほどほどにしておきなさい」
やれやれといった感じで言われたことから察するに飽きられてしまったらしい。ただこれに関しては仕方ないというものだ。何せシンオウの伝承、シンオウ神話というものはなかなかに話がぶっ飛んでいて興味が絶えない。
ポケモンが悪を退けただとか、守り神として人々を救ったなどの伝説は各地方に割と存在するのだが、ポケモンが一からこの世界を創造したなんてのは世界広しといえどここにしかないだろう。
ここシンオウ地方へとはるばるやってきた理由というのもその神話に関する遺跡などの調査をするためだ……とか言えたらかっこよかったんだろうが実際のところはある人に呼ばれて無理やり連れてこられただけだ。
あの人見た目はクールでかっこいいんだが、性格は割と強引で子供っぽいところがあるから被害を受ける側としてはたまったものではない。
「人間っていうのは本当にみんな伝説が好きね。私にはよくわからない感覚だわ」
「神秘の塊みたいなものだからな。俺ら人間はそういうのに興味を持つようにできてるんだよ」
「そう」
話を振っておいてすぐに興味を無くしたのか話を終わらせるティア。興味ないなら最初から聞くなよ、と思わなくもないが彼女からしたらそれも仕方ないことなのだろう。何せ彼女自身が地方が違うとはいえ、伝説のポケモンと称される”ラティアス”なのだから。
そう言うと疑問符をうかべる人もいるかもしれないが別にこれは俺の頭がおかしくなった訳では無い。ティア曰く伝説のポケモンと呼ばれる存在達は大体人に変身する能力を持っており、人の生活に溶け込んでいる者も意外といるらしい。
普段よく見る人が実は伝説のポケモンでした、なんてこともありえるようで人間側として言わせてもらうと割と気が気で無い。
そうこうしているとようやく船が到着したようで停船する。
「まぁ、なんだ。今回もよろしく頼む」
「言われなくてもあなたは勝手に危険ごとに首を突っ込むからこっちも目が離せないわ」
「そうですか……」
なんとも締まらないがこうして俺とティア、二人のシンオウでの旅が始まりを告げた。
ポケモンにわかですが精一杯頑張りたいと思っています。