そんな時、一誠はある事を悩んでおり・・・。
「・・・はぁ」
月明かりが照らし、皆が寝静まっている時間に一誠は台所で水を一杯飲みながらも軽くため息をついた。
溜め息の理由は修行をしてきた結果にあった。
吉良達も同行して行われている修業のうちの一週間は何事もなく終了し、修行も個人練習の他にもレーティングゲームで想定される連携と言った練習も行われ始めている。
けれども、一誠は修業を重ねている内に自分が他の面々よりもかなり劣っていると思い始めてしまっているのだ。
「・・・少し、夜風にでも当たるか・・・」
そう呟きながらも、一誠は気分転換でもしようと台所から出るとそのままテラスの方へと向かっていく。
そのまま一誠は外に出て夜風を浴びながらも深呼吸をしたその時、急に少し大きめな音と共に風が強く吹く。
何事かと思う一誠は風が吹いてきた方を見るとそこにはウィザード・ハリケーンスタイルの姿があった。
一誠はその姿を見て、目の前で変身した時の姿であるフレイムスタイルに似ていたのでクロウかと思ったが、そう思っていた彼の目の前でウィザードは姿を変えてディレイドの姿に戻った。
その光景を見てクロウと同じ姿になれるのか、と驚いている彼に気づいたのかディレイドが声をかける。
「あれっ?何してるの?一誠君」
「そ、そういうお前も何してたんだ?変身してるけど・・・何かあったのか?」
「一誠?吉良?どうしたの?二人揃ってこんな時間に・・・しかも、吉良は変身してるけど・・・」
ディレイドは一誠がいる事に驚きながらも、どうしたのかと尋ねる。
そんな彼に対して一誠も思わず同じ事を尋ねてしまう中、ネグリジェ姿のリアスが二人に歩み寄ってきた。
「えーと・・・何か眠れないから体動かしたら少しは眠れるかと思って色々とカードを試してた所だったんです、一誠君は?」
「俺もちょっと寝付けなくて、気分転換に夜風でも浴びようかと思ってたんだ」
「そう・・・丁度いいわ、少し話をしない?」
リアスに対して苦笑いしながらもディレイドの変身を解除した吉良が答えるのに続くように一誠も答える。
それを聞いたリアスは、微笑みながらも話をしないかと行って来たので二人はその申し出を頷くことで答えてそのまま彼女と共に移動する。
テラスに置かれてあった椅子に座るリアスを余所に、その傍に本が幾つも置かれてあった事に気づく。
「部長。その本は・・・」
「レーティングゲームの資料よ・・・でも、こんなものを見ても気休めにしかならないかもね」
「どうしてですか?」
「この本は研究された戦いのマニュアル、普通の上級悪魔とならこれを読んでいれば戦う事は出来るけど、ライザーはそうはいかない。ライザーはフェニックス・・・不死鳥なのだから」
「不死鳥・・・ですか」
「そう、文字通り死なない鳥・・・攻撃をしてもすぐに傷を再生してしまう。それにライザーのレーティングゲームは十回して結果は八勝二敗、その二敗は懇意にしている家計への配慮でわざと負けただけだから実質負けなしよ」
「っ・・・そんな相手、どう倒せば・・・」
「倒せない事は無いわ、方法は二つある。一つは圧倒的な力で押し通す・・・もう一つは起き上がる度に何度も何度も倒して行き相手の精神を潰すと言うもの」
「む、難しそうですね・・・」
「えぇ、確かに難しいわ。前者は一撃で肉体も精神も奪い去るほどの力がないといけないし、後者はライザーの精神が尽きるまでのスタミナを維持し続けないといけないわ」
「あの・・・精神を潰す、ってそんなに効果があるんですか?」
「えぇ、あるわ。フェニックスだから不死身とは言えどもそれはあくまでも体だけ。精神・・・心までは不死身じゃないの。だから相手を倒せば倒すほど相手の精神は疲弊していく。フェニックスの精神を潰せば再生も止まって相手も倒れるの」
「なるほど・・・」
「あ、部長。一ついいですか?ずっと気になってたんですけど・・・どうして部長は今回の縁談を破断させようとしているんですか?」
「・・・・夢があるの。小さな夢だけど・・・」
「夢・・・?」
一誠の質問を聞いたリアスは少し寂しそうな表情となる。
その事が気になった一誠を余所にリアスは口を開いた。
「・・・私は、私の事をリアスとして愛してくれる人と結婚したいの」
「ど、どういう事ですか?」
「悪魔の社会では誰しも私の事をリアス・グレモリーとして見るの、誰も私をリアスとして見てはくれない・・・だから、人間界での生活はとても充実しているの」
「・・・部長さんを普通の女の子のように見てくれるから、ですか?」
「えぇ・・・残念だけど、ライザーは私をリアス・グレモリーとして見て、リアス・グレモリーとして愛している・・・もちろん、グレモリー家の人間である事は誇りよ?でも。私はこの小さな夢を大事にしたい・・・矛盾した想いかもしれないけれど、せめて結婚する相手にはただのリアスとして見られたいの」
「部長さん・・・」
寂しそうにしながらも語るリアスを見ていて、何か声をかけたいと思う吉良だったが何も思いつかない。
どうしたものかと考えていると、一誠がリアスに対して声をかける。
「俺は部長の事、部長として好きです」
「えっ?」
「グレモリー家の事情とか悪魔の社会とか、俺にはさっぱりですけど・・・俺にとって部長は部長であって・・・えーと、早い話!俺にとっていつもの部長が一番です!」
「あ・・・ありがとう、一誠・・・」
「あ、あれ?何かまずかったかな・・・」
「いや、全然問題ないと思うよ?」
「そ、そうか・・・?」
一誠の言葉に目を丸くするリアスに対して自分が思っている事を素直に言う一誠。
それを聞いたリアスは顔を赤くしてしまい、それを見て何か変な事を言ったかと思う一誠に対して吉良がフォローを入れる。
それを聞いて少しホッとしながらも話題を変えようとした時にある事を思い出した。
「そういえば・・・前に、木場から聞いたんですけど部長は『紅髪の滅殺姫(べにがみのルインプリンセス)』・・・滅殺姫と呼ばれる程の天才だって聞きました。そんな部長の初戦の相手がライザーみたいなやつだなんて・・・」
「・・・天才って言葉、あまり好きじゃないわ」
「えっ?」
「私の才能は天から授けられた才能じゃなく、グレモリー家が代々培ってきたものの結晶、私はそれを受け継いだ・・・私の力はグレモリー家と私のものよ、だから、私は負けない。戦う以上は勝つわ!勝たなければならないの!!」
「・・・・やっぱり部長は凄いです・・・それに比べて、俺なんて・・・」
「一誠・・・?」
一誠の言葉に対して、まるで自分に言い聞かせるかのように答えるリアス。
その言葉を聞いた一誠は悔しそうに呟いたかと思うと、そのまま心の内を語り始めた。
「・・・修業を始めて、嫌って程にわかりました。自分が一番役立たずだって・・・どんなに凄い神器を持っていても・・・俺じゃ意味ないって・・・それなのに一人で突っ走って、みんなに迷惑かけて・・・俺なんて・・・てんでダメなんですっ!!」
「・・・一誠君がダメな奴なら、僕はもっとダメな奴だね」
「「え?」」
一誠が泣きそうな表情で話す内容を静かに聞いていた吉良が口を開く。
吉良の言葉にリアスと一誠が面食らった顔になる中、吉良はポケットの中に入れていたディレイドライバーを取り出す。
吉良は取り出したディレイドライバーを見たかと思うと、すぐに二人の方を見ながらも続ける。
「確かにディレイドの力は凄いけど・・・僕自身には一誠君のような凄い力も部長さんや他の皆みたいな才能もない・・・だから、僕の方がダメな奴だよ」
「っ、そんな事――」
「そんな事ないぞ、吉良」
少し困ったように笑みを浮かべて告げた吉良の言葉を聞いてそんな事は無いと言おうとする一誠だったが、一誠が言い切る前に別の誰かが先に言ってしまう。
その声はリアスでもなく、誰の声だと驚きながらも声のした方を見ると何時もの格好の紫音の姿があった。
「紫音さん、どうしてここに・・・」
「少し眠れなくてな・・・それはそうと吉良、お前に何もない訳がないだろ?お前にもちゃんと大きな力となりうるものが間違いなくある」
「っ?大きな力となりうるもの、ですか・・・?」
紫音がいる事に驚く吉良に対して笑いながらも吉良に声をかけながらも歩み寄る。
紫音の言葉に首を傾げる吉良に対して紫音は続ける。
「あぁ、それは・・・お前の優しさだ」
「優しさ・・・?」
「純粋に他者の事を考え、思いやり、手を差し伸べる・・・そんな事が出来るお前だからこそ、お前が世界を旅して共に過ごし、共に戦った戦士達がお前に力を与えてくれる。それがあるからこそ強い力を得られる・・・カメンライドとスキルライドと言う形でな・・・あ、言っておくが兵藤。お前も吉良と同じで駄目な奴なんかじゃないからな」
「えっ?」
紫音の言葉に思わずきょとんとしている吉良に対して優しい口調で続けた紫音はいきなり一誠に話を振る。
話を振ってくるとは思ってなかった一誠は少し戸惑ってしまうが、それを気にせずに紫音は続ける。
「お前はこの修行で間違いなく強くなっている。気づいていないだろうが、少しずつお前も実力をつけてきているんだ。だから、吉良共々自信を持て」
「そう、かな・・・けど・・・」
紫音の言葉は嬉しく思えるが、本当にそうなのだろうかと不安になる一誠。
すると、そんな彼の姿を見たリアスは一誠を優しく抱き寄せる。
「ぶ、部長・・・?」
「・・・自身が欲しいのね?一誠・・・良いわ、貴方に自信をあげる。だから、今は少しでも体と心を休めなさい・・・眠れるまで私が傍にいてあげるから・・・」
「う・・・ぐっ・・・!」
「・・・お邪魔、みたいですね・・・」
「あぁ・・・邪魔者は退散するとするか」
リアスの行動に戸惑う一誠の頭を撫で、優しく語りかけるリアス。
すると、声を殺して一誠は泣き始めてしまう。
そんな彼に対して何も言わずただ抱き寄せた状態のままで頭を撫で続けるリアスを見て、吉良と紫音はその場を後にするのであった・・・。
翌日・・・
「一誠、赤龍帝の籠手を使いなさい」
「え、でも修行中は使っちゃ駄目だって言いませんでしたっけ?」
「私の許可無しでは使っちゃ駄目、と言う意味よ・・・佑斗、一誠の相手をお願いできるかしら」
「分かりました」
特訓を始めようとする前にリアスは一誠に赤龍帝の籠手を使うように指示を出した。
それを聞いた一誠は少し困惑した様子で尋ねて来たのに答えながらもリアスは木場に指示を出し、木場は木刀を構える。
「よし・・・来い!赤龍帝の籠手!」
《Boost》
「一誠、そのまま倍加を使い続けなさいっ!」
「は、はいっ!」
《Boost》
木刀を構えた木場を見た一誠が叫ぶと共に赤龍帝の籠手が出現する。
そして、そのまま倍加の力を発動されると同時にリアスが一誠に指示を出す。
それを聞いて倍加の力を発動させ続け、倍加の力が発動して12回目の所でリアスが倍加の力を止めるように指示を出した。
「ストップ・・・一誠、分かる?今までの貴方ではここまでの強化には耐え切れなかったわ」
「あっ・・・!」
「紫音の言った通りでしょ?貴方だって修行の成果がちゃんと出ているのよ・・・さぁ、そのまま佑斗と戦ってみなさいっ!」
「分かりました!行くぜ、赤龍帝の籠手!」
《Explosion》
「っ?今のは・・・」
「あの音声と共に一誠は倍加した力を維持したままで戦う事が出来るのよ・・・佑斗!」
「はいっ!!」
リアスの言葉を聞いてハッとなる一誠。
リアスの言う通り、以前に倍加の力を限界まで使って見た時よりも明らかに倍加できる回数が増えているのだ。
その事に一誠が気づいている中でリアスが指示を出し、一誠がそれを聞いて頷いて答えた後に力強く叫ぶ。
その途端、赤龍帝の籠手からは先ほどとは違う音声が響き、それに驚くアーシアにリアスが説明しながらも木場に声をかける。
リアスの言葉を聞いた木場は返事をした後、一誠へと向かって持っている木刀で斬りかかる。
一誠は赤龍帝の籠手で木刀の一撃を防ぎ、お返しと言わんばかりに木場に対して蹴りを放つも瞬時に距離を取られてしまい空振りに終わる。
「一誠!魔力の塊を撃つのよっ!!」
「っ、はいっ!!」
リアスの指示を受けた一誠は魔力の塊を作り出す。
だが、その魔力は魔力の特訓の時と同じで米粒程度の小さなものであった。
「(くっ、やっぱりこれくらいの塊しか・・・でもっ!)いっけぇぇぇっっ!!」
米粒程度の魔力の塊しか生成できない事に悔しく思いながらもリアスの指示通り魔力の塊を再び向かってきている木場目掛けて撃つ。
その途端、大きな音を立てながらも米粒の魔力の塊から放たれるとは到底思えないような威力の魔力が放たれる。
向かってくる魔力を見て驚きながらも木場は何とかそれをかわすと、その背後にあった山に命中。
その途端に派手な爆発が起こり、驚きながらも一同が爆発の起こった山を見ると見事に山の一部が消し飛んでいたのだ。
「山が・・・!」
「無くなっちゃいました・・・」
「すっごーい!やるじゃん一誠!」
《Reset》
「うぁ・・・!」
「って、一誠!?大丈夫!?」
「一誠さん!」
「おい、大丈夫なのかあれは?」
「大丈夫、魔力を使い果たしちゃっただけよ」
山が消し飛んでしまっている事に驚きを隠せない一同。
それを余所に目を輝かせたレヴィが一誠に向かって声を上げた途端に響いた電子音声と共に一誠がその場で膝をついてしまう。
何事かと思いながらもレヴィはアーシアと共に駆け寄って肩を貸してあげる中で、紫音が心配した様子で尋ねて来たのでリアスが大丈夫と返しながらも木場に声をかけた。
「佑斗、彼はどうだった?」
「正直、驚きました・・・僕は最初に放った一撃で決めるつもりだったんですが、彼の防御を崩しきれなかった。それに・・・最後に放ったあの一撃、上級悪魔レベルの物です」
リアスの言葉に対して、少し驚いた様子で木場が告げると同時に彼の持っていた木刀が音を立てながらも折れた。
その光景に吉良達が驚く中、レヴィとアーシアによって支えられながらも立った一誠にリアスが声をかけた。
「一誠、貴方はゲームの要・・・貴方の攻撃力は状況を大きく左右させることができる。私達を、そして自分自身を信じなさい」
「皆と、自分自身を・・・信じる・・・」
優しく微笑みながらも告げたリアスの言葉を呟く一誠。
そんな彼を見ていた吉良は、疲労した様子でありながらも一誠は少し自信がついているようにも見えた。
少しほっとした様子の吉良を見たシュテルがどうしたのかと尋ねようとしたその時、突然一同の近くに魔法陣が現れる。
何事かと思う一同の前で魔法陣が一瞬眩く光り輝き、光が収まると魔法陣が無くなっており魔法陣があった場所にはグレイフィアの姿があった。
「ぐ、グレイフィアさん!?」
「急にやってきてしまい申し訳ありません、少しご相談したいことがありまして・・・」
「相談?何かあったの?」
「いえ、その・・・相談したいことがあるのはお嬢様たちにではなく・・・秋山様にです」
「え?僕にですか?」
突然現れたグレイフィアに驚く一同に対し、軽く一礼しながらも申し訳なさそうに話し始めるグレイフィア。
その様子を見て心配した様子のリアスに対して首を振ると、そのまま吉良を見ながらも続ける。
何の相談なのかと思う吉良に対して、グレイフィアは予想だにしない事を言い始めた。
「実は・・・サーゼクス様が秋山様と共にレーティングゲームを見たい、と言い出しまして・・・」
「えぇっ!?」
「ど、どういう事ですかそれ!?」
「レーティングゲームを行うことが決まった日、サーゼクス様にその事の報告と共に秋山様の話をしたのですが・・・それを聞いた途端に秋山様にとても興味が湧いたらしく、会ってみたいと言い出したんです・・・」
「そ、そうなんですか・・・まぁ、僕は構わないんですが・・・」
グレイフィアの発言に仰天するリアスと吉良を見ながらも、何やら疲れた様子のグレイフィアが事情を説明してきた。
それを聞いて吉良は別に断る理由もないので一緒に見るかと考えていると、紫音が話に割って入ってきた。
「すまない、そのレーティングゲームを見ると言うのに俺も同行しても構わないだろうか?」
「えっ?紫音さん?」
「貴方は・・・?」
「天宮紫音、吉良の仲間です・・・・実は以前、使い魔の森で騒動を起こした連中が一誠達に仕返ししてくる危険性があるんです。吉良一人でも何とかなるかもしれないけれど、人は多い方がいいですから念のために同行しておきたいんです・・・駄目でしょうか?」
「・・・いえ、構いません。私から話しておきます」
「すいません、助かります」
グレイフィアとの話し合いの結果、紫音も吉良と共にレーティングゲームを見る事となった。
この状況に何か凄い事になったなと思いながらもふと、空を見上げながらも吉良は呟いた。
「そういえば・・・クロウさんの方は大丈夫かな・・・?」
~駒王学園~
「んー・・・今日も終わったぁ・・・吉良君達も何事もなく修行を終えれそうだね」
『えぇ、警戒してはいましたがどちらも特に何も起こりませんでしたね。もうすぐ帰ってこられるんでしたね?』
「うん、そう聞いているけど・・・油断はできないね。何が起こるか分からないし」
下校時間となり、早く光風館に帰ろうと軽く体を伸ばして歩くクロウはエクスと少し小さめの声で話していた。
今の所トラブルは起こってないが修行の期間が終わりリアス達が帰ってくるまでに何か起こらなければいいなとクロウが思いながらも、校舎から出た途端に何やら怒鳴り声と悲鳴が聞こえる。
何事かと思い見てみると、松田と元浜が竹刀を持った道着と袴姿の女子二人に追いかけられていた。
「こらぁっ!!待ちなさいよっ!!」
「この変態っ!今度こそ許さないんだからぁっ!!」
「「うわぁぁぁぁっ!!?」」
「・・・まーた覗きをやったのかな?」
『・・・そのようで』
竹刀を振り回す女子から逃げる松田と元浜を見て呆れるクロウに対して少し呆れ気味の口調でエクスが答える。
クロウの発言の意味はいたって簡単、松田と元浜は今この場にいない一誠共々女子更衣室の覗きの常習犯なのである。
実は吉良が合宿に行った日の帰りに陸上部の女子に追いかけられている二人を見て何事かと思いながらも両者の間に割り込んだ際に事情を聞いた際にその事実を知ったのだ。
ちなみに、クロウは事実を知るや否や笑顔で陸上部の女子に松田と元浜を引き渡しておりすぐさま松田と元浜は女子達にきっついお仕置きをくらっていた。
「・・・ま、これに懲りて少しは大人しくなる・・・・のは難しそうだね」
『そうですねぇ・・・』
松田と元浜のやり取りをそのまま眺めた後、そのまま光風館に帰ろうとするクロウ。
だが、その時何かの視線を感じとると同時に視線のする方を見るとそこには木にもたれかかるようにしながらも立っているサーシェスの姿があった。
「おやおやスペリオル・・・学園生活を満喫しちゃってる割には、勘は鈍ってはいないみたいですね?」
「サーシェス、今度は何しに来た?」
「まぁまぁ、慌てない慌てない・・・まずは場所を変えさせてもらいますよっ!」
「あ、待て!」
自分に気づいた所でサーシェスはにっこりと笑みを浮かべるが、それに対してクロウは警戒して身構える。
何しに来たかと尋ねるクロウに対してサーシェスは返したと同時にいきなり駆け出し、それを見てクロウは慌ててサーシェスの後を追う。
それから少し走り続けたかと思うと、サーシェスは旧校舎の前で立ち止まっていたのを見つける。
クロウが追いついた事に気づくと同時に、サーシェスは何処からか取り出していたウォーロックドライバーを腰に装着する。
それを見たクロウがウィザードライバーを装着するとともにそれぞれ左に指輪を装着したと共にドライバーを操作する。
≪≪シャバドゥビタッチヘンシーン、シャバドゥビタッチヘンシーン≫≫
「変身!」
「変身」
《フレイム、プリーズ!ヒー、ヒー、ヒーヒーヒー!》
《チェンジ、ナウ》
電子音声と共にクロウが赤い魔法陣を潜り抜けてウィザード・フレイムスタイルに変身する前で、サーシェスは黒い魔法陣を潜り抜けてその姿をウォーロックに変える。
そして、互いに相手を見ながらも右手に指輪を装着するとそれぞれのドライバーを操作してかざした。
《コネクト、プリーズ》
《コネクト、ナウ》
ウィザードは電子音声に合わせて出現した魔法陣に手を突っ込み、ウィザーソードガン・ガンモードを取り出しながらも魔法陣から手を抜くとすぐさまウォーロック目掛けて発砲。
それに対し、同じように出現していた魔法陣に手を突っ込んでそこから先端に刃が付いている横笛を思わせる形状の剣『ハーメルケイン』を取り出し、そのまま飛んできた銃弾を弾くとそのままウィザードに向かって駆け出していく。
それを見てウィザードはウィザーソードガンを連射するも、ウォーロックは放たれた銃弾をハーメルケインですべて弾きながらも突き進み、そのままウィザードに斬りかかる。
ウィザードは自分に対し振るわれたハーメルケインをかわしながらもウィザーソードガンをソードモードに切り替え、そのままウォーロックがハーメルケインで放った突きをウィザーソードガンを使って突きの軌道をそらしながらもウィザーソードガンをウォーロック目掛けて振り下ろす。
ウォーロックは振り下ろされたウィザーソードガンをバックステップでかわして、一旦距離を置く中でウィザードは右手の指輪を付け替えて素早くウィザードライバーを操作しながらもかざした。
《バインド、プリーズ》
「はぁっ!!」
「ふっ・・・甘いっ!!」
電子音声と共にウィザードが右手を前に突き出した直後、ウォーロックの周囲に出現した魔法陣から鎖が伸びる。
だが、ウォーロックは焦った様子も見せずにその場で回りながらも、ハーメルケインを振るう事で自分に向かって伸びてくる鎖をすべて叩き斬ってしまった。
《ランド、フェンサー!ダンデンドンズドゴーン!ダンデンドゴーン!》
「むっ!?」
「うぉぉぉぉっ!!」
鎖を叩き斬った直後に響いた電子音声に驚くウォーロックに対し向かっていくウィザードは砂嵐に包まれ、そのままランドフェンサースタイルへと姿を変えたかと思うとそのままウォーロックに対して斬りかかる。
何とかかわしながらもそのままハーメルケインでウィザードに一撃入れようとするが、ウィザードの振るったウィザーソードガンによって簡単に弾かれてしまう。
危うくハーメルケインを手放してしまいそうになる程の一撃に体勢を崩したウォーロックに対してウィザードが放ったドロップキックが決まり、ウォーロックが思い切り吹き飛ばされて地面を転がる。
「くっ・・・ランドよりも馬鹿力の様ですね」
「一応、強化形態に当たる姿だからな」
「そうですか・・・ですがっ!」
《エクスプロージョン、ナウ》
「うわぁぁっ!?」
ドロップキックを受けて少しきつそうにしながらも返すウォーロックに対し、ウィザードはウィザーソードガンを構えながらも駆け出す。
それに対し、ウォーロックはウォーロックドライバーを操作して右手をかざすと同時に右手を前に突き出す。
直後、ウィザードの周囲で派手な爆発が起こりその爆発に巻き込まれたウィザードは思わず少し後退しながらも膝をつく。
「例え、どんな姿になろうとも・・・そうそう簡単に私は勝たせはしませんよ?」
「確かにそうだな・・・だけど、こっちだって負けるつもりはないっ!!」
「ふっ・・・そう来なくては面白くないっ!」
爆発をまともに受けたウィザードに対しまだ余裕そうなウォーロックが告げる中、ウィザードもまだだと言わんばかりに言い返しながらも立ち上がるとウィザーソードガンを構える。
それを見たウォーロックはすごく楽しそうに返しながらもウィザードに向かって行き、ウィザードも迎え撃たんと言わんばかりにウォーロックに向かっていく。
「ぐぁぁぁぁっ!?」
「「っ!?」」
そのまま戦闘を再開するかと思ったその時、何かの悲鳴と共に吹き飛ばされたかのように二人の間を何かが飛んでいった。
何事かと思い思わず足を止めながらもウィザードとウォーロックが飛んで行った何かを見た途端、ウィザードは驚きを隠せなかった。
何故なら、自分の前には倒れ伏したスワローテイルファンガイアの姿があったからだ。
なぜこんな所に、とウィザードが身構えようとする中で今度はブレイクガンナーの銃口をスワローテイルファンガイアに向けながらも魔進チェイサーが姿を現した。
「っ!?魔進チェイサー!」
「ん?何事ですか?死神」
「・・・こいつ、レギオクライスに突然現れたかと思えばレギオクライスにいた人間達に襲い掛かったんだ。数人ライフエナジーを吸われて殺されてる」
「レギオクライス・・・?」
「レギオネクスの基地である移動要塞です・・・しかし、いまだに信じられませんね。彼はソーンファンガイアの部下にはもったいない位の非常に温厚な性格で、誰かを傷つけるのを嫌っていたのですが・・・」
「正直・・・俺も驚いている。こいつはまるで人が変わったかのようになっているからな・・・」
「お、おのれぇぇ・・・ぐぁぁっ!?」
「・・・まぁ、事情がどうであれもうこいつは排除対象だ。容赦はしない」
聞きなれない言葉に反応するウィザードにウォーロックが説明しながらもスワローテイルファンガイアを見て不思議そうに呟く。
ウォーロックの言葉にチェイサーも答えている間にスワローテイルファンガイアは何とか立ち上がるがそんな彼に対してチェイサーは容赦なくブレイクガンナーの銃弾を浴びせる。
銃弾を受けて倒れたスワローテイルファンガイアを余所に、チェイサーはチェイサーバイラルコアをブレイクガンナーに装填する。
《チューン、チェイサー・スパイダー》
「お、おのれぇ・・・!!」
「・・・終わりだ」
《エクゼキューション、スパイダー》
電子音声と共にファングスパイディーを装備するチェイサーを余所に、スワローテイルファンガイアは何とか立ち上がる。
そんな彼に対して死刑宣告の如く告げながら、チェイサーはブレイクガンナーの銃口を掌に押し付けると同時に響き渡る電子音声と共にクロースパイディーに不気味な紫色の光が纏わったと同時に駆け出した。
「エクゼキュートファングッ!!」
「ぐぁぁぁっ!!?」
そのままスワローテイルファンガイアに対してすれ違いざまにエクゼキュートファングをスワローテイルファンガイアに放つ。
放たれた一撃をかわせずにまともに受けたスワローテイルファンガイアはその場で膝をつくと、突然笑い始める。
「ふ、ふふ・・・はははは・・・!」
「っ?何がおかしい?」
「貴様、攻撃を放つ前に『終わりだ』と言ったな?死神・・・残念だが、終わるのはこのファンガイアだけだ」
「何っ?」
「それは一体どういう意味ですかね?」
「こいつは私が力を取り戻し、私の目的を果たすためにファンガイアの持つ吸命牙とやらの力を得る為に使っていただけだ・・・だが、もう用済みだ。私の力も取り戻せつつあり、さらに嬉しい事に吸命牙の力も手に入ったからな・・・!」
「お前は、一体・・・」
スワローテイルファンガイアの言葉に混乱するウィザード達。
そんな中でウィザードがスワローテイルファンガイアを利用したものの正体が何なのか問い詰めようとするが、その前にスワローテイルファンガイアの体が砕け散ってしまった。
「・・・一体どういう意味でしょうね?あの言葉」
「さぁな、用は済んだ・・・撤収する」
「やれやれ・・・そうしましょうか」
「っ?続きは良いのか?」
「えぇ、邪魔が入ったので興をそがれてしまいましたからね・・・私も撤収しますよ」
「な、待て!サーシェスッ!」
「では、スペリオル・・・・御機嫌よう」
《テレポート、ナウ》
スワローテイルファンガイアの言葉に首を傾げながらも撤収しようとするチェイサーに歩み寄るウォーロック。
それを見て意外そうにしたチェイサーに残念そうな様子でウォーロックがウォーロックドライバーを操作する。
ウィザードはすぐに逃げる気だと理解して阻止しようとするが、その前にウォーロックがウォーロックドライバーに右手をかざす。
それと共に響いた電子音声と共に、ウォーロックとチェイサーは光に包まれてしまったかと思うと光が収まった時には姿を消してしまっていた。
消えた二人のいた場所を見ながらも、ウィザードは変身を解除してクロウの姿に戻ってその場を後にしようとするが何かの視線を感じて振り返る。
けれども、クロウが振り返った先には誰もいなかった。
『マスター、どうかされましたか?』
「・・・いや、なんでもない・・・・・(気のせい、か?)」
何事かと思ったエクスに対してクロウは答えながらも、視線を感じたのは気のせいだったかと首を傾げながらもその場を後にする。
直後、先ほどクロウが視線を感じて見ていた場所の景色の一部が揺らいだかと思うとそこから一人の仮面ライダーが現れる。
その仮面ライダーは全体的に紫の体の上に黒いコートを羽織ったディケイドを思わせる姿をしていたのだが、突然変身を解除して黒いコートを纏う紅い髪の女性へと姿を変えた。
「危ない危ない、気づかれちゃったかと思った・・・しっかし、アイツはディレイドの資格者以外にも妙なのを仲間に引き入れてたのね、本来のものとは異なる強化形態に変身するウィザードなんて見た事ないわ・・・って、ん?」
女性は先ほどまで目の前で戦っていたウィザードことクロウを見た感想を独り言の様にぶつぶつと言っていると突然携帯が鳴りだす。
何事かと思いながらも携帯の画面を見てとある知り合いからの電話である事に気づいて、電話に出る。
「はい、もしもし・・・え?言われたとおりにファイズの世界にいるけど・・・はぁっ!?今すぐにブレイドの世界に行けですって!?ちょっと、こっちの用事が終わってないんだけど・・・って、もしもーしっ!?」
電話に出て、何やら素っ頓狂な声を上げた女性は文句を言おうとするがその前に相手に電話を切られてしまう。
軽く舌打ちしながらも携帯をしまう女性は軽く指を弾くと、彼女の傍にオーロラが出現する。
「・・・ったく、あの博士相変わらず人使い荒いわね・・・とっ捕まったお陰でこき使われる羽目になるなんてなぁ、もぅ・・・」
ブツブツと面倒くさそうに呟きながらも女性はオーロラを潜る。
そして、そのままオーロラと共に女性は姿を消してしまうのであった。
To be continued・・・