転生して超余裕!の世界で世界最高のボディーガードしてるけどなんか文句ある?   作:ミスター髑髏

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愉悦に喰われた仔犬は黒く濁る
その牙もまた、血に塗れる


ケツイと殺意と真黒な心

~十年後~

 

安護邸、道場

 

「父上、ありがとうございました」

「はは。やはり年には勝てないな」

「私には勝てるんですから、皮肉ですか?」

「そういう訳では無いさ。セン、おまえは十分強い。何せ、私から一本取りかけたのだからね」

 

 

かつて、『この世の全ての武』といわれた男がいた。その男は、素手で壊せぬものはないと、もの者を見た者は口を揃えて言った。そして、文字通り、この世の全ての武を心得ていた。

あるときは、ライフル弾を掴み取っても軽い火傷ですみ。

あるときは、見ただけで完璧に相手の動きを真似できたり。

それを妬む者は、彼を人()らざる者として、“人無(ジンム)”と名付けた。

 

限られた者のみが訪れることのできる裏・闘技場《リバース・コロッセウム》で、彼はサーカス団のライオンのような見せ物として扱われていた。しかし、ある時パタリと裏・闘技場へ顔を出さなくなった。

ある者は、死んだのだと。───否。

ある者は、さらなる武の高みへと至ろうとしたのだと。───否。

 

否。否。それらのどちらも否。

利用され、輝き、誇りがあった『この世の全ての武』は、死んだ。しかし、人で無しの“人無”は死ななかった。

 

 

 

 

「フハハハ!司!よくやってくれた!!」

 

法廷に似つかわしくない愉悦の笑い声が響いた。これには、法廷に来ていた後の超人高校生である司、勝人、忍も目を見開いて驚愕した。

 

「君たちは若いねぇ!!若い!フハハハ!若さ故の過ちかな!!?」

「なんだと⋅⋅⋅?」

 

まるで自分たち三人は知らず、ヤマトのみが知っているかのような口ぶりで話すヤマトに、勝人は思わず眉を歪めて聞き返す。それが通じたのか通じなかったのかは分からないが、ヤマトは答えた。

 

「君たちは私の息がかかった者の弱みを握り、脅し、証拠をかき集めたようだ」一旦、言葉を区切る。

「しかし、考えても見なかったのかい?君たちが脅した者も、君たちが握ったその弱みも!!全て、全て。私がすでに持ち合わせていたものだよ?」

「まさか⋅⋅⋅⋅⋅⋅!」

 

司はヤマトの考えていることに─或いは思惑に─気付いたのか、静かに声をあらげた。

 

「そうさ。そのまさかさ司!!私は“あえて”君たちに情報を渡していたんだよ!!

いやぁ、実に愉快だったよ。君たちが必死こいて集めた証拠も、既に私が知っていたものだ。いつでも揉み消すことができるし、私にはなんのダメージも無いと言うのに。クハハハハ!

──────さて、ここで疑問が生じるね?勝人君、忍君」

親が子供を諭すように、二人へ声をかける。

 

「そう。なぜその証拠を消そうとしなかったか。だ。まあ、答えは単純明快。

────────私の親友の、絶望した顔が見たかった。ただそれだけだ」

“私の親友”。この言葉から察するに、センの親である穐茂であろうことが推測できる。ヤマトの交友関係は忍が全て調べあげている。

 

「なぜ、そんなことを?と思っただろう?なに、愉悦のためさ。穐茂君が絶望する、それを想像するだけで私は満足なのだ。なんなら、命だって捨てるさ。

──────ッフフ。ざまを!ざまをみろ!穐茂君!!君の強がりなその姿勢!その態度!その顔!漸く汚せると思うと満足だよ!!でも、だとしたらセン君が一番苦しむねえ!!だが、私はそれでいい。

─────ああでも、最期に心残りなのは、その顔を見れないことと、セン君の様子も分からない事かな?

 

しかしまぁ。実に!実によくやってくれたよ!凡百の民衆達よ!!私は今宵、君たちに初めて感謝する!!私は、君たち国民を愛している!!

私を総理大臣にしてくれてありがとう!!!!!」

 

三人は憤ったまま法廷を後にしようとした。

裁判長は、ヤマトの演説のごとき解説に「静粛に」とは言わなかった。それはなぜか。

それは、ヤマトが死ぬまで、ヤマトを自分の心の底から恐れ続けるから。

死刑を宣告したとはいえ、ヤマトほどの黒い者であれば簡単に覆すことができる。ヤマトが死ぬところをこの目ではっきりと見ることで初めて、ヤマトの束縛から解放されるのだ。

三人が立ち去ろうとしているのを見つけたヤマトは、口を三日月に歪ませ─或いは、愉悦に満ちた顔で─三人に告げる。

 

「ああ、そうだ。まだ、私の穐茂君に対する愉悦の心は燃え続けているよ。そう。彼に関する全てを燃やし尽くさんと言った感じにね。ホラ、これでわかっただろう?君らは、まだ子供なんだよ。まだ⋅⋅⋅ね」

「まさか!!あなたはそこまでして愉悦が!!────ッ!急いで車を出せ!!行くぞ!勝人(ショーニン)!忍!!」

「はぁ!?」

「どうしたの!?みっくん?!」

 

二人が驚愕の声をあげるが、そんなものが耳に入っていない司は法廷を走り抜け、車が停まっていた道路へ駆けた。

 

「すぐに安護邸へ!!今すぐにだ!!」

「は、ハイ!」

 

法廷の前で待機していた車に三人は乗り込み、黒服は猛スピードで安護邸へ向かう。今、思い描いている最悪の事態起こっていないように願うが司にとって、法廷速度は、今は頭に入っていなかった。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どけェェェェッッ!!邪魔だァ!!!!!」

 

黒いスーツを着ていて、艶のある髪をオールバックにし、前髪を少し下ろしている背の高い青年が、三名の消防士に掴まれ炎が燃え盛る場所へ飛び込もうとしているのを阻止されている。だが、それももう限界に近い。青年が腕を振り、前から押されても突き進んでいる。進行の妨害は、もはや意味をなしていなかった。

 

ドゴォン!!!!

 

火事現場から爆発音が轟く。何に引火したのか、それすら分からせないほど炎を天高く昇らせる。

死を直接的に連想させる黒い煙をくゆらせ、放水をものともせず燃え続ける屋敷に恐怖し、驚いてしまい

振り向いた。本来ならば生物に備わっている素晴らしい生存本能なのだが、それがいけなかった。

一瞬だけ青年を拘束している力が弱まってしまう。

それを見逃さなかった青年は道路のコンクリートが砕けるほど踏み込み、未だに煉獄を思わせるほど燃える屋敷へ飛び込んだ。

彼を制止する声が発せられた時にはもう、青年は屋敷にいた。

 

 

燃える屋敷へ入った青年は燃えながら崩壊していく家具を砕き、降りかかる火の粉を腕や脚を振った颯天でかき消して行く。

すると漸く愛する父の元へとたどり着いた。他は燃えながらも未だ火の手が届いていない場所に父はいた。

「父上。なぜ、知らせてくれなかったのですか?

今日は俺の気分は今朝から優れなかった。変な感じでした。違和感があったんです。このままでは取り返しのつかないことが起こる⋅⋅⋅⋅そんな予感がしてたんです。

───なぜです!!?俺も、死ぬなら一緒に死にたかっ「黙れ!!」ッ⋅⋅⋅⋅」

 

(セン)の吐いた弱音を遮った穐茂の渇は大気を震わせ響き轟いた。

 

「お前は、私のように堕ちるな。お前は真白(きよ)い。真黒(けがれ)るな。思うように生き、思うようにその無二の力を振るえ。お前は、誰にも負けないのだから」

「ちちっ⋅⋅⋅」

 

父上。そう叫ぼうとした。しかし、センと穐茂の周りが爆発すると、センは呆気なく屋敷の外へ弾き出されてしまった。

 

「アアッ!?アアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」

 

センが突き飛ばされるその刹那、センは見てしまった。爆発に紛れ、父が己を吹き飛ばすのを。その顔は、とても慈愛に満ちており、炎の中にいるとは思えぬ顔だった。直後、穐茂を炎と黒煙が包む。それも見たセンの心は絶望に染まり、光は失った。もう、どうせ、この炎だ。たとえ最強の父といえど、炎相手には勝てる訳がない。ならば、その後は⋅⋅⋅何をすればよいのだろうか。

今しがた起きたことを忘れて生きる?

─────なにをどうすればそんなことができる?

では、

俺の家族を奪った者に復讐する?

────────ああそうだ。それがいい。父上が殺されたのだ。そいつにも当然、報いを受けてもらおう。

 

殺されたのだ。明かだ。油があった。ポリタンクだ。後は、マッチ。我が家では誰も吸うはずのないタバコの吸い殻。これらすべて、家で見つけた。

端から見ても杜撰だ。ゴミだ。ゴミめ。ゴミめ。殺す。必ず殺す。

 

父上も言っていた。思うように力を振るえと。だったら、俺の思うように、力を振るおう。壊すために、この力を振るおう。

父上は真黒(けがれ)ていないことを証明するために

 

 

 

──────殺す。





戦くん闇落ち。
ここから戦くんのブレーキが壊れます(愉悦)
ですが一応戦くん(転生前)は心優しい人間なので本質は変わりません。本質はね。

ちなみに愉悦大好きマンヤマトのモデルは小説版BLEACHの時灘だったり。
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