ハイスクールD×D 天馬の神器を持つ者   作:gbliht

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初めましての方は初めまして。そうでない方は、お久しぶりです。
今回、ちょっと息抜きということで、ハイスクールD×Dに手を出しました。
亀更新となるかもしれませんが、あしからず。

では、第一話をどうぞ。



第一話 プロローグ

私は一体どれくらい生きていたことだろうか。

 

周りの景色が全て早く見える時があった。しかし、遅く見える時もあった。

 

それでも、時間の流れは一定で、時間は正確に流れる。だが、どうしても私は世界があまりにも遅く、あまりにも早く感じた。

 

 

 

他人より何倍も生きていると感じたこともあるし、逆に何倍も生きていないと感じる。だが、それも幾分か時が流れることによって、自然と慣れてきた。

 

そんな世界に慣れてき始めたある時、誰にもいないのにどことなく声が聞こえ始める。それは、男とも女とも取れない声……一種のテレパシーのような物といえばいいか。

 

『……ようやく会話できるようになったか』

 

そのテレパシーのような物は、最初はあまり聞こえなかったのだけど、段々と声が認識できるようになっていった。

 

そんな声に、勿論俺は聞いたよ。

 

(お前は誰だ?)

 

『誰……とな。ハハハ、そうだな。確かに、幼き我が主は知らないよな』

 

すると、テレパシーのような物は、抑揚の無い声音? で少しだけ笑ったと思ったら、急に目の前が真っ暗になった。

 

部屋の中だからよかったものを、これが道路だったりしたどうするんだ。

 

なんて、心の中で愚痴っていると、真っ暗だった目の前が急に明かりを取り戻し始めた。

 

ゆっくりと目を開けると、煌々と照っている明るい太陽。先が見えないほどの広大な草原。心地いい微風。思いっきり外だったね。

 

外に急に放り出されれば、普通の人は辺りを見渡すわけで、私も例外なく辺りを見渡した。そして、ある一角だけ、蜃気楼のように歪んでいる場所があったんだ。

 

そこをよく見てみると、馬鹿みたいに大きな馬が座っていた。大体五~十メートル程かな? でも、馬といっても翼が生えてるし、馬ではないよな。なんで、その時の私は、馬だと思ったのだろう。

 

「お前が……呼んだのか?」

 

『……そうだ。ここに呼んだのは他でもない私だよ。幼き我が主』

 

馬は座っている姿勢から立ち上がると、ゆっくりとした足取りで、こちらに歩いてくる。座っている時も凄かったが、立ち上がるともっと凄い。全長十五メートルはあるんじゃないか?

 

「我が主とはなんだ?」

 

『我が主は我が主。この身……ペガサスであるこの身を扱うに値する主と言うだけだよ』

 

「ペガサス? 扱う? よく分からん。詳しく教えてくれ」

 

『ペガサスは文字通り幻獣であるペガサスと思ってくだされば良い。扱うと言うのは、少しばかり話しが長くなってしまいますが、良いですかな?』

 

「ああ、お願いする」

 

そこからペガサス? が発した言葉は意外なものだった。

 

神が死んだという事。このペガサスは、神が作ったとされている神器(セイクリッド・ギア)と呼ばれる物に封印されている事。そして、天使と悪魔と堕天使が戦争をし、三すくみの状態だということ。その他諸々。

 

最初は突拍子もない言葉で驚きを隠せないでいた。馬鹿馬鹿しすぎる。わけがわからん。

 

しかし、実際に目の前にこんな奴がいるのだから、私はすぐさまこの話は本当だと思ったよ。

 

夢でもいい。ただ、この時私は……争える力と存在が欲しかったんだ。

 

「……事情は解った。でも、どうしてお前……」

 

『クリストフとお呼びください』

 

「……クリストフは封印なんてされたんだ?」

 

『それは簡単。天使、堕天使、悪魔の三すくみが戦争を行っている時に、二天竜と呼ばれる存在が三すくみに喧嘩を売った』

 

「ふむふむ、それで?」

 

『そこに、私が飛び込んだ際、二天竜と共に三竦みに討伐され、神器(セイクリッド・ギア)の中へと封印されたということ』

 

「そうか」

 

別に、この時、どうして喧嘩を売ったのかどうかの理由はどうでも良かった。けども、どうしてもこの時、このクリストフにはある事を聞きたかった。

 

「……クリストフ、一つだけ聞かせてくれ」

 

『何なりと』

 

「二天竜に喧嘩を売って……勝ったか?」

 

真面目な顔をして、この時はクリストフに聞いていたな。これからの人生、共にする為の存在としての値踏みだ。

 

『……成程、勝ったかどうか』

 

「ああ、答えてくれ」

 

クリストフは、ゆっくりと頭を垂れると、私の目の前に顔を持って微笑む。

 

『勝った……だが、その後の三すくみには負けてしまった』

 

「……ありがとう、それだけでありがたい」

 

頭を垂れたクリストフに対して、私は腰を九十度に曲げて頭を下げた。

 

「クリストフ。俺は五月雨天馬(さみだれてんま)。これからの人生、よろしく頼む」

 

『こちらこそ、我が主殿。これからの人生、出来れば争いと平和のある生活を楽しみにしていますよ』

 

「任せな。楽しませてやるよ」

 

そうして、クリストフとあった次の日から、私の生活は一変する。

 

次の日に高校を卒業すると同時に社会人になると、家を飛び出し、世界中を回り始めた。ある時は、弾丸飛び交う紛争地域を、この神器(セイクリッド・ギア)と己の力のみで暴れまわり。またある時は、堕天使や悪魔といった面々が、私を危険分子と見なして殺しに来たので、逆に返り討ちにしてやったり……。

 

そんな事を繰り返し続け、齢六十程になった。その間に、日本に戻ったりしたが、そこであったのは、神社を襲っている人間がいたので、神社の人全てを助けながら、人間たちを惨殺しすぐさま日本を出たり。

 

他には、日本にいる最中、白黒の子猫が腹を空かせていたので、助けつつ交番に渡して自分に家に戻り、すぐさま日本を飛び出したりした。

 

それと……なんか英雄とか自分でほざいている若造どもを軽くあしらったりもしたな。

 

後、なんか男なのか女なのか分からん引っ込み思案な吸血鬼にもあったりした。

 

そんな事をしていた私は、今は、聖剣計画と言う、人の命をゴミのように扱っているゴミどもの巣窟へと向かっている最中だ。

 

なんでも、聖剣を扱う子供を生み出す計画とやら。そこまではいいだろう。しかし、聖剣が使えなければ即処分。言い方を変えれば、殺すということ。

 

人として許せん。故に、そんな腐った計画をぶっ潰す為に、齢六十の体を引きずりながら、向かっていた。

 

「ここか?」

 

『多分そうでしょう。我が主』

 

「よし……行くぞ」

 

雪が燦々とふり、雪が降り積もっている地面を踏みしめ、ゴミどもの巣窟である教会の扉を蹴り破り中へと入りこむ。中には数十人にも及ぶ研究服の男達。そんな男たちは、私に気づくと、一斉に視線をこちらに向けてくる。

 

「な、何者だ!」

 

「黙れ。ここの計画はバレてる。さっさと計画をやめろ」

 

「何を言っている!! この計画は、我が教会にとって不可欠な実験なんだぞ!! それに、後少しなんだ!! 今更引き下がれるか!!」

 

一人の男が私の前に詰め寄ると、そんな事を言ってくる。

 

「そうか」

 

全く、反吐が出る。自分たちは何一つその身で実験をせず、罪もない子供たちを代えのきくモルモットのように殺していく。

 

何故こんなゴミどもが生きているんだ? 天使共は何をしているんだ……。

 

「ともかく、出て行け!! 今、大事な所なんだ!!」

 

「解った。お前らが実験を辞めるつもりも無いことがよくわかった」

 

「ああ!! ならばさっさと……」

 

「じゃあ、もういいや。殺す」

 

「は?」

 

どうやっても説得できなさそうなので、馬鹿みたいな顔をしている目の前の男の腕を、下から振り上げた手刀により切り落とす。いわゆる、暴力での会話だ。

 

「は……え、あ、あああああああああ!!!!!」

 

肩口までバッサリと切られた男は、絶叫を上げると、傷口を余っている方の手で押さえて、その場で蹲る。

 

「さて、これでもやめないか?」

 

「あ、あああああ、あああああああああああああ!!!!!」

 

半狂乱した男は、懐に傷口を抑えていた方の手を入れると、メスのような物を抜いて、突進してきた。

 

躱すのも面倒なので、顎を蹴り上げる形で膝蹴りをかまして、男の体を空中に持ち上げる。そして、すぐさま体を回転させ、空中に浮いている男の腹に目掛けて回し蹴りを放つ。

 

回し蹴りを喰らった男は何の抵抗もなく吹き飛び、私の正面にあった扉を盛大に壊しつつ、

その向こう側へと落ちる。

 

「う、うわああああああああ!!!」

 

「に、逃げろおおおおおお!!!!」

 

その光景を見ていた他の研究員たちは、混乱したように走り回り、我先に逃げようと、窓や他の出口から次々と飛び出していく。

 

「クリストフ」

 

『無論承知』

 

男が吹き飛んでいった扉へと歩きながら、軽くクリストフに声を掛ける。と、同時に、教会の外から悲鳴や絶叫が聞こえてくる。

 

あいつらにしたのは、転移魔法。行き先は、地上に住んでいる天使の居住区。罪状と共に送りつけてやった。

 

なんで、天使の居住区なんて知っているんだと思うかもしれないが、長年生きていると、色々とあるのだよ。

 

外の絶叫が止むと同時に、扉をくぐった私は、声を詰まらせてしまった。

 

「……間に合わなかったか」

 

目の前にあるのは、巨大なガラスで出来た箱のような空間の中に倒れている幼き子供達。皆一様に動かず、ただその場に倒れふしている。

 

すぐにガラスを拳で叩き割り、中へと入っていく。辺りに呼吸の息遣いが聞こない。

 

「もう少しだったんだが……ん?」

 

辺りを見渡していると、ピクリとだけ動いた少女がいた。すぐさま駆け寄ると、僅かに呼吸をしている。

 

「息はある……ならば」

 

少女を背中におぶり、入ってきた入口は逆の入口の扉を破壊し、外へと飛び出す。

 

「よし、後は……クリストフ」

 

『少しお待ちを』

 

少女を抱きかかえたまま、クリストフに声を掛けると、私の体から淡い赤色の光が少女に向かって流れ始める。

 

戦場で傷ついた時に、クリストフがよくやってくれていた回復の魔法だ。本来、クリストフの神器(セイグリッド・ギア)にはこのような機能はないのだが、私が願うと、クリストフが封印される前に持っていた回復の魔法を使えるようになった。

 

使えるといっても、私が使えるのではなく、クリストフの神器(セイクリッド・ギア)意思によって使えるだけなのだが。あぁ、それと他の魔法も使えるようになってたな。

 

「う、う」

 

「クリストフ、回復量は?」

 

『大体八割程度の回復でございます。命に別状はない程度には回復しました』

 

「そうか、ありがとう」

 

クリストフに礼を言い、少女を着ていた服で包みつつ私は歩き出した。行く先は、暖かい所。死んでしまっていた少年少女たちには申し訳ないが、黙祷を送り、後で来るであろう天使に任せた。

 

 

 

歩き始めて一日目。私は気候のいい街中まで歩いていた。暑苦しくはなく、かと言って涼しくもない。丁度いい場所だ。

 

「ここら辺か……」

 

「う、う~ん」

 

「起きたか」

 

気候のいい街中を歩きつつホテルを探していると、私が抱いていた少女が動き始めた。

 

「ここは……」

 

「起きたかい?」

 

「ヒッ!?」

 

起きた少女に、軽く声を掛けると、声を詰まらせて、ガタガタと震え始める。

 

やはり、殺されそうになった恐怖のせいか。

 

「大丈夫、私はアイツ等とは違う」

 

「あ、ああ……」

 

違うと言っても、少女は恐怖のあまりか震えが止まらない。更には、何かを必死に叫ぼうとしている。

 

どうすればいいのかと思案にくれる。そんな表情が顔に出ていたのか、少女は申し訳なさそうな表情をした。

 

「すまない、怖がらせてしまったね」

 

「……」

 

「これから、ホテルへと行くが、良いかな?」

 

少女はこくりと頷くと、私の服に包まり、顔を隠してしまった。

 

これからどうやって、この少女の心のケアをしていこうか……まぁ、それはいいか。これから考えればいい。まずは、休むためにさっさとホテルへと行こうか。

 

すぐに思考を切り替え、ホテルへと向かう。大した金は持ってはいないが、一日止まる程度なら問題ない。

 

 

 

「よいしょっと」

 

ホテルへと着いた私は、すぐさまホテルへチェックインし、少女をベットへと優しく下ろす。

 

「……」

 

無言で私の服から出てきた少女は、ベットのシーツを体に巻きつけて、無言で睨んでくる。その瞳はまるで、復讐する相手を見ているかのような。

 

シーツからに包まった事と、今の部屋が茶色の部屋だということで解ったが、少女は銀色の髪に、金色の双眸だった。

 

「……」

 

「……」

 

無言で互いの瞳を見合う。決して目をそらすよう真似はしない。そんな事をすれば、即座に少女の信頼を失う。そんな気がしたからだ。

 

「……」

 

「……貴方は」

 

しばらくの間、少女と見合っていると、唐突に少女が口を開いた。その声音はまだ弱々しいものだが、はっきりと意志が乗っている声だ。

 

「なんだい?」

 

「貴方は何故あんなところにいたんですか?」

 

「そのことか」

 

一つため息を吐いてから、今までの経緯を少女に教えた。聖剣計画、その末路。私が行った時に起きていた現状、全て。

 

黙って聞いていた少女は、私の話を全て聞くと、目尻に涙を貯めて、シーツをギュッと握った。

 

「そう……だったんですか」

 

「あぁ、それでだが、これからどうする?」

 

「どういうことですか……?」

 

「君のこの後の処遇」

 

「ッ!?」

 

処遇と言った瞬間、少女は息を詰まらせて、後ずさってしまった。しまった、言葉を選ぶべきだったな。

 

「処遇と言っても、別に殺すわけじゃない。そんなことしてしまったら、私が君を助けた意味がない」

 

「では……」

 

「選ぶとしたら、私が提案できるのは二つ。一つは、地上の天使勢に君が行き、保護してもらうこと。二つ目は、自分で行きたいところがあるのなら、そこまで送るよ。さあ、どっちを選ぶ?」

 

決して、自分と一緒に行くという選択肢は出さない。別に一緒についてきてもいのだが、如何せん私の旅は危険が伴いすぎる。もし少女が一緒に行きたいと言えば、連れては行くが……それ以外は、なるだけ連れて行きたくない。

 

少女は、私の言葉を聞くと、考え込むように手を顎に当てる。

 

「……二つ目で、お願いします」

 

「分かった、どこがいい?」

 

少女に問うと、少女は私の事を指差してきた。

 

「貴方の元でお願いします」

 

「……何故だい?」

 

「私には身元も戸籍も何もかもありません。それに、行きたい所などもありませんし、何より私は自分の力だけでこの世界を生きていけません。あんな計画を見過ごしていた天使だって、あまり信用できませんし」

 

「……成程、わかった。しかし、何も私のところにいる必要はあるまい。私は寝床などない旅人の身である存在だ。それに、もしかしたら、君に嘘を付いて連れ出したって言う可能性だってあるのだぞ?」

 

「それについては問題ありません。私は、実際に殺され掛けましたし、貴方が嘘をついていないと言うのもわかります。寝床なども不要です。元々、そんな物はいりませんでしたしね」

 

「一つ聞かせてくれ。なんで私が嘘をついていないとわかるんだね?」

 

すると、少女の金色に輝く瞳が一瞬光ったと思ったら、目を伏せて短く息を吐いた。

 

「私のこの瞳。霊的な瞳(アウラー・オブ・ヴィジョンアイ)は、相手が嘘を言っているかいないかの判別が出来る位の力は持っています。まだまだ、これに活用法があると思いますが、それは置いといて……だから、貴方は嘘を言ってないと思うんですよ」

 

私は、少女の言葉に成程と頷いていた。この少女も神器(セイクリッド・ギア)を持っているのかと。それならば、一人にするよりも、私と一緒に行動しといたほうがいい。下手に一人で放置なんてしたら、少女はその力によってまともに生活などできないだろう。この世界は結構嘘だらけだからな。

 

「そうか。……その、霊的な瞳(アウラー・オブ・ヴィジョンアイ)の説明をしてもらっていいかな?」

 

「これは、簡単に言えば、人のオーラ……つまり、全ての生物が持っている『気』が見えるんです。それは、人の悪意から、善意の見分けまで。本気になれば世界の悪意さえ見えてしまいます。他にも色々と出来る方法はありますが、今はこの程度で。一応、制御は出来ていますが、いつその制御ができなくなるかはわかりません」

 

「わかった」

 

ふむ、制御できないのだったら、やはり私と一緒にいたほうがいいな。

 

「……君、名前は?」

 

「名前等ありません。お好きに呼んでください」

 

「じゃあ、適当に呼ぶぞ」

 

何にするか……私は生まれてこの方、名付けなどしたことがないからな……ネーミングセンスには自信がないのだが。

 

「……じゃあ、五月雨銀華って呼ぶぞ?」

 

適当に銀髪だから。それ以外に理由は……ないな。

 

「はい。多少言いづらいですが、銀華と名乗ります。貴方のお名前は?」

 

「五月雨天馬。この歳で天馬と名乗るのは意外と恥ずかしいんだ。だから、天とだけ呼んでくれ」

 

「分かりました。天さん、これからよろしく願いします」

 

「ああ、お願いするよ。銀華」

 

そんなわけで、少女こと銀華とあっさりと打ち解け、私は銀華と握手を交わし、そのまま一緒に旅をすることとなった。

 

旅は特に何もなく、いつも通り、悪魔や堕天使を退け、銀華に一通りの戦闘法を叩き込みながら、世界を巡りに巡っている。そう言えば、教会に顔を出したこともあったな。その時は、銀華の事で一悶着あったりしたが、至って平和に終わった。

 

それ以外には、その教会で神器を持っている少女と話したりもしたな。本人は気づいていなかったようだが。

 

そんなこんながあり、早十年ちょっと時が過ぎた。齢七十の身となった私は、とうとう体が言う事を効かなくなり、まともに動くことすら叶わなくなる。それでも、意地で紛争地域に飛び込んだりしたが、怪我の割合が増えるだけだったので、もうやめにした。

 

そうして、私は十七程になった銀華と共に、生まれ故郷である日本へと帰ってきていた。

 

「ここが、天さんの生まれ故郷ですか……」

 

「ああ、懐かしいな。昔と結構変わってしまったが、やはり変わらないものと言うのはあるのだな」

 

街の中へと入ると、明るい人々の声。飢餓に苦しんでいる子供たちの声はなく、楽しく平和な街。ああ、本当に素晴らしい国だ。

 

「それで、会わせたい人と言うのは?」

 

「多分、もう少しで来るはずだ」

 

街の公園でベンチに座りながら、のんびりと陽の光を体に浴びる。心地よい風と暖かい太陽。もう、これだけで幸せを感じるとは、私も歳を取ったものだ。

 

しばらくそうやっていると、一つの悪魔の気配を感じた。

 

「こんにちは、天」

 

「遅かったな、リアス」

 

私のベンチの隣に立ちながら、女性……リアス・グレモリーは呆れたようにため息を吐く。

 

彼女の名前はリアス・グレモリー。魔王を兄貴に持つ上級悪魔だ。なんで、そんな人物と仲良くなっているのかと聞かれれば、それは、昔襲ってきた連中と戦ってる時に、リアスの兄貴が私の元を訪ねてきたのだ。

 

その時に、軽く談話してみたら、馬があってな。それで、その後も縁を持つようになって、今に至ると。

 

「しょうがないじゃない。急な事だったんだから。貴方も、連絡くらいは事前に入れて欲しいものだわ」

 

「すまないな。しかし、今回は時間がなかったんだ」

 

ゆっくりと痛む腰に手を当てながら、私はベンチから立ち上がり、リアスの前に銀華を出す。

 

「銀華、分かっているよな?」

 

「……えぇ、近いうち、いつかこうなるとは思ってましたが、案外早かったですね」

 

「……? どういうこと、天?」

 

首を傾げているリアスに、私は頭を下げた。そんな突然の行動に、リアスは慌てるが、私は頭を下げたまま、リアスに話しかける。

 

「すまないな、リアス。実は、私はこの先短い。故に、銀華をグレモリー家で引き取って欲しい」

 

「ちょ、ちょっと待って! よく意味がわからないわ」

 

「もう、私は寿命なのだよ。そして、私が死ねば、銀華には居場所はない。だからこそ、グレモリー家で引き取って欲しい。出来れば、人間のまま、幸せに生きれるようにして欲しいが」

 

「……」

 

考え込むようにリアスは黙ると、少し経った後に、ため息を吐きながら、頷いた。

 

「わかったわ。銀華は私達が、家族として迎えれるわ」

 

「感謝する」

 

「けど、天。貴方、悪魔の駒(イーヴィル・ピース)によって、悪魔に転生するって手段があるけど?」

 

リアスの言った悪魔の駒(イーヴィル・ピース)とは、先の三すくみの戦争によって減っていった、出生率の低い悪魔たちを増やすという事で作られた、人間を悪魔に変える駒。しかも、人間のチェスをモチーフにもしている。

 

確かに、その方法も私は考えていたのだが、実は、それができないわけがある。

 

「すまないな、リアス。私には、悪魔の駒(イーヴィル・ピース)は使っても意味はないのだよ」

 

「どういうこと?」

 

首を横に振りつつ言うと、リアスは眉を寄せて聞いてきた。

 

「実は、前にやってもらったことがあったんだが、どれも不可能だった」

 

「そんな……『女王(クイーン)』の駒でも?」

 

「ああ、それどころか、『兵士(ポーン)』八つでも無理だったよ」

 

「そんな……」

 

驚きと悲しみを合わせたような表情で、リアスは俯く。

 

「銀華、幸せに暮らせよ」

 

「はい。天さん、今までありがとうございました」

 

銀華の最後になるであろう会話を交わし、私は公園の出口へと向かって歩き始める。老兵は死なず、ただ去るのみってな。

 

しかし、出口へと向かう途中、私の腕をリアスが引っ張り止めた。

 

「どこに行くの?」

 

「自分の死に場所を探しにな」

 

「ここにいればいいじゃない」

 

「それは駄目だ。ここで死ねば、君たちに未練が残るだろう。それに、私は死ぬと言うのは言葉の綾だ。俺はただ、消え去るのみだ」

 

優しくリアスの腕を優しく外し、再び出口へと歩き出す。

 

「それじゃあな、リアス。恋人でも見つけて、幸せにな」

 

リアスに後ろを向きながら手を振り、自らの神器(セイクリッド・ギア)の力によって、一瞬で日本から離れる。場所は決めてない。ただ、適当に歩いただけ。

 

 

 

そうして、幾年……或いは数時間が経ったある時、私は見知らぬ土地で仰向けにブッ倒れていた。

 

若い頃の姿などとうに影もなく、今は真っ白の白髪によぼよぼ肌。乱雑に無精髭が生えていた。昔はそこそこのイケメンだったんだがな……背は百八十五以上はあったし、髪だって真っ黒なオールバックの髪だったのに……やはり、歳だな。

 

「あぁ、これで終わりか。……すまないな、クリストフ」

 

仰向けに倒れたまま、自分の相棒に声を掛ける。

 

『いえ、我が主。短い時間でしたが、私は楽しめましたよ』

 

「短い……か。だな、もっと暴れたかったな」

 

『えぇ、ですが、これも宿命。暴れたかったのは同じですが、それ以上に私は楽しかった。貴方と共にあった日々。貴方と共に駆けた戦場。そして、貴方と共に戦えた死闘』

 

「あぁ、楽しかったな。でも……これで終わりか」

 

徐々に力が抜けていく感覚が私を襲う。それに抗う術はないし、抗ったところで、もう無理だ。

 

「なあ、クリストフ」

 

『どうしましたか?』

 

徐々に抜けていく力と共に、目を瞑りながら、長年の相棒に最期の言葉を贈る。

 

「私は、最高のパートナーだったか?」

 

『……えぇ、貴方は最高のパートナーであり。私の最高の親友でしたよ』

 

「ハハ、そうか……」

 

クリストフの言葉に軽く笑い、私は体の力を完全に無くした。

 

「来世でも……パートナーでいたいもの……だ……よ」

 

『私もですよ。我が主……いえ、五月雨天馬』

 

もう、全ての感覚も無くなり、私はとうとう意識を手放した。これから死ぬというのに、気持ちは至って平静だ。

 

楽しかった。ああ、楽しかったよ。……でも、もう少し戦いたかったな……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なら、その命、私が拾ってあげるわ。五月雨天馬。丁度よく、変異の駒(ミューテーション・ピース)が二個もあるのだからね」

 




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