ハイスクールD×D 天馬の神器を持つ者   作:gbliht

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第十一話 はぐれ悪魔討伐

現在廃工場。

 

リアスの眷属である皆……勿論イッセーも含めたグレモリー眷属と一緒に廃工場へ来ていた。

 

理由? そんなの、はぐれ悪魔討伐に決まってるじゃないですか。でも、いきなりこう言われても、困ると思うんで、少し時間を遡ってみましょうか。

 

 

 

パチン! っと急に部室の中に木霊するビンタの音。このビンタの音の音源は、イッセーの頬から来ている。原因は、リアスによるビンタ。

 

何故リアスがイッセーに手をあげたかというと、イッセーがこの町にある教会に行ってしまったからだ。

 

悪魔であるイッセー。その悪魔を滅しようとする天使の息がかかってる教会。これを聞けば察しのいい人ならわかるだろう。本来ならイッセーは死ぬよ。

 

でも今回はあの公園で会った金髪の女の子を教会に届けたことによって、天使からのお咎めはなかったらしい。それでも、かなり危険だけども。

 

「イッセー。今度から教会に近づいてはいけないわよ」

 

「……はい」

 

「……落ち込まないでね。貴方のために言ってるのよ」

 

確かにイッセーのためだね。もしイッセーが悪魔の状態で光の槍にでも貫かれたら――――――

 

「いい? イッセー。もし貴方が天使や堕天使の光の槍で貫かれたら、魂ごと消滅するのよ。わかる? 魂の消滅ってのは、死より酷い……完全なる無になるのよ。考えることも話すことも、ましてや貴方の好きなおっぱいを揉むこともできないの」

 

リアス、最後の一言は余計です。今までのシリアスが全部崩壊しましたよ。これじゃあ、忠告になりません。……あ、でもイッセーには案外効いてる。おっぱいを揉むことが、話したり考えることより優先することなのか。

 

「部長、大公からはぐれ悪魔討伐の依頼が来てますわ」

 

 

 

ってなわけで、私とグレモリー眷属はこの廃工場にやってきたのです。

 

不穏な空気が漂ってますね。それと、入口付近から臭ってきてましたが、血の匂いが半端じゃないですね。こりゃあ、二、三人殺られてるかもしれない。

 

イッセーなんか緊張しまくりで、顔と体がガチガチですよ。……仕方ないですね、この前まで唯の一般生徒だったんですからね。私みたいに昔から戦い慣れてる人だったら別ですけど。

 

「……血の臭い」

 

うん、小猫ちゃん。気づくのが遅いよ。もう少し鼻を効かせないと。

 

しかし、私も鼻が利き過ぎですね。小猫ちゃんが気づかない距離で血の匂いを嗅ぎ取れるなんて……ふぅ、来ますね。あちらさん、こっちに気づいて殺気向けてきました。

 

急な殺気を当てられ、イッセーの膝が震えだす。……仕方ない、少し安心させてあげますか。

 

「ほーらっ」

 

「痛え!」

 

「緊張しなさんな」

 

一番前にいるリアスの元へ行くついでに、イッセーの尻を一発叩いとく。そのお陰か、イッセーの足の震えは消え去った。

 

「イッセー、いい機会だから、悪魔の戦いを経験なさい」

 

「マ、マジっすか!? 自分、戦力にならないと思うんすけど……」

 

「そうね、戦力にならないわね。でも、悪魔の戦いを知ることは出来る。それと、今回は下僕悪魔の特性を教えてあげる」

 

ふむふむ、どうやらリアスは順調にイッセーに解説しているようですね。良かったです。

 

……しかし、リアスたちは気づいているでしょうか。今回のはぐれ悪魔は実は――――――

 

 

 

「な、成程」

 

俺は今、リアス部長と明乃さんと木場に現在の悪魔と天使と堕天使の事情を教えて貰っていた。

 

なんでも、昔悪魔と天使と堕天使は三つ巴の戦争をしたらしい。その戦争によって、大半の純潔悪魔が死んでしまった。だが、それだけの者が死んだ後でも、未だに三つ巴のにらみ合いは続き、少しでも隙を見せれば危うい状態らしい。

 

そこで、悪魔がしたことは、少数精鋭を作り出すこと。その役割を果たすのが悪魔の駒、イーヴィル・ピース。しかし、これは爵位を持った悪魔しかダメらしい。

 

そのイーヴィル・ピースは人間界のチェスをモチーフにしたらしく、主である悪魔が『王(キング)』その下に『女王(クイーン)』『騎士(ナイト)』『戦車(ルーク)』『僧侶(ビショップ)』『兵士(ポーン)』となる。

 

でだ、このチェスのような少数精鋭制度が爵位を持った悪魔達の間で人気になり、自分の下僕を自慢したり、大会を開いたりしているみたい。……でも、リアス部長はまだ成熟した悪魔ではないため、公式の大会に出たことがないらしい。

 

ってのが、ここまで聞いた話しを俺なりにまとめたものだ。

 

……うーん、正直簡単に纏めたつもりだけど、意外と分からないとかが結構あるな。

 

けど、わからないところよりも、最も気になることがある。そう、俺の駒の役割だ。

 

「部長、俺の駒は、役割や特性って何ですか?」

 

「そうね―――――イッセーは」

 

そこまでいって、部長の足が止まる。

 

俺にも部長が止まった理由が分かる。鳥肌が立つほどの気持ち悪い気配。吐き気がするような殺気。それが、より一層濃くなったのだ。

 

何かが……近づいて来てる! 以前まで一般人だった俺でも分かる!

 

「美味そうな匂いがするぞ? でもまずそうな匂いもするぞ? 甘いのかな? 苦いのかな?」

 

地獄の底から響くような気色悪い声。その声を聞いただけで、さっき銀華のお陰で収まってた膝の震えがまた起きそうだ。

 

「はぐれ悪魔バイザー。貴方を消滅させにきたわ」

 

ケタケタケタケタケタケタ……。

 

人間では決して発せなさそうな異様な笑い声が聞こえてくる。あーハッキリ分かったよ。これは、俺の知ってる悪魔の笑いでもない。

 

向こうの暗闇から来る者に警戒心を強めていると、暗闇からぬっと女性の顔が出てきた。

 

上半身は裸の女性のものだが、腕の数が四本。その四本全てに槍らしき得物が握られている。

 

下半身は完全に化物だ。四足であり、そのどれもが図太い。爪も鋭く、尾は大蛇のようだ。うわ、尾が一人で独立して動いてやがる!

 

大きさは全て合わせて五メートル以上。……これが、これも悪魔なのか? だよな、『はぐれ悪魔』だもんな。

 

うわあ、改めて実感。悪魔怖い!

 

「主の元を離れて自分の欲求を満たすために悪略非道の限りを尽くすのは万死に値するわ。グレモリー公爵の名に置いて、滅してあげるわ」

 

腕を腰に当てながら堂々と叫ぶ部長。

 

「こざかしぃぃぃいいいいいい!! 小娘がぁぁぁあああ!! その紅の髪のように、お前の体を鮮血で染めてやる!!」

 

「雑魚程洒落の効いたセリフを吐くものですね。……では、リアス。くれぐれも気をつけて」

 

そういえば、何で銀華はこの状況で平然といられるんだ? 俺はブルって動けないっていうのに……。

 

そもそも、銀華にはおかしい部分が多々あった。悪魔の事情も詳しかったし、この神器(セイクリッド・ギア)にも詳しかったし、部長とも平然とタメ口で話しているし……一体何者なんだ、銀華。

 

「ええ。分かっているわ。祐斗!」

 

「はい!」

 

俺が思考を巡らしている間、木場がはぐれ悪魔に向かって飛び出した。

 

速い! 姿が見えなかったぞ! どんだけのスピード出してるんだよ!

 

「イッセー、さっきの続きをレクチャーするわ」

 

さっきのって言うと、悪魔の駒(イーヴィル・ピース)の特性のことか。

 

「祐斗の役割は『騎士(ナイト)』、特性はスピード。『騎士』となった者は、速度が増すの」

 

部長の言う通り、木場の速度は徐々に上がっていく! 化物も武器を振るって木場に当てようとするが、当たる気配がまるでない!

 

「そして、祐斗の最大の武器は剣」

 

いつの間にか動きを止めていた木場を見ると、木場は西洋剣らしき物を握っていた。

 

その西洋剣らしき物を鞘から抜き放つと、銀光を放つ剣が現わになる。

 

木場の姿が一瞬で消える! それと同時に、化物から悲鳴がこだまする。

 

「ぎゃあああああああああああああ!」

 

見れば、化物の腕は槍ごと綺麗さっぱり胴体から離れていた。

 

「これが祐斗の力。圧倒的な速力と達人級の剣捌き。この二つが合わさることによって、祐斗は最速の『騎士(ナイト)』なれるの」

 

「この小虫がぁぁぁぁあああああ!!」

 

木場と入れ替わるように、今度は小さな影が化物へと飛び出していく……って、あれは小猫ちゃんじゃないか!

 

小猫ちゃんは、足を振り上げた化物に踏み潰される。小猫ちゃん!

 

「次は小猫。小猫の駒は『戦車(ルーク)』。戦車の特性は至ってシンプル――――――」

 

一瞬、踏み潰された小猫ちゃんに駆け寄ろうとしたが、部長が余裕そうな態度でいるので、助けるために駆け寄ろうとするのをやめ、部長の話に耳を傾ける。

 

……アレ? 化物の足、なんか浮かんでないか?

 

徐々に化物の足が持ち上げられていく。その化物の足の下には、さっき踏み潰された小猫ちゃんが!

 

「バカげた破壊力と、屈強な防御力。無駄ね。あの程度では、小猫を潰しきれないわ」

 

「……吹っ飛べ」

 

化物の足が持ち上げられ、一瞬の隙に足元から逃げ出した小猫ちゃんは、飛び上がり化物のドテッ腹に向かって拳を叩き込む。

 

ズドン! と細身の小猫ちゃんからは想像できないような音がなると同時に、化物はその体格に似合わない距離をブッ飛ぶ。

 

そういえば、俺の依頼者の人が言ってたな。

 

――――――小猫ちゃんは、怪力が自慢だったよ。僕、お姫様抱っこされたもん。

 

うん、確かに怪力自慢だわ。化物吹っ飛んでんじゃん!

 

これから、小猫様には逆らわないでおこう。命がいくつあっても足りん!

 

「最後に朱乃ね」

 

「はい、部長。ああん、どうしましょうか」

 

未だに小猫ちゃんの拳によって立てなくなっている化物に、朱乃さんは微笑みながら近づいていく。

 

「朱乃の駒は『女王(クイーン)』。私の次に最強の者よ。全ての駒の能力を持っている、まさに無敵の副部長よ」

 

「ぐゥゥゥゥぁぁぁぁ」

 

「あらあら、まだまだ元気ですわね。なら、これはどうでしょうか」

 

朱乃さんの微笑みが、不敵な笑みへと変わった刹那。天から化物に向かって雷が落ちる。

 

「ガガガガッガッガッガガガ!!」

 

じゅうっと丸焦げになる化物。あの苦しみは、想像を絶する苦しみだろう。だが――――――

 

「ギャアぁぁアアアア!!」

 

痛みを感じてる暇もなく、第二の雷。もう、断末魔の声が上がる化物に対して、更にもう一発雷が!

 

「グガアアアアアアアアアア!!」

 

チラッと見えたけど、朱乃さん、大変恍惚の笑みを浮かべてます! ドS! この人はまごうことなきドSだ!

 

「朱乃は魔法が得意なの。雷や凍といったね。それと、朱乃は究極のSでもあるわ」

 

いやいや部長。ドが抜けてます、ドが! もう一度言う! あの人はSじゃない、ドSだ!

 

「……うう、朱乃さんが怖いです」

 

「大丈夫よイッセー。一旦戦闘になれば、相手が負けを認めても痛ぶり続けるけど、味方なら優しいから。それに、貴方のことも気に入ってるらしいわよ? 今度甘えてあげなさい」

 

「うふふふふふふ! さあ、まだまだ聞かせて! あなたの悲痛の叫び声を! あぁ、でも死んではダメよ? あなたのトドメは我が主がするのだから。オホホホホッ!」

 

……目の前の人が怖いです。部長。

 

一番常識人だと思ったら、一番常軌を逸してる人だったんて……。

 

それから数分間。朱乃さんによる、化物拷問は続き、朱乃さんが一息ついたところで、戦意皆無の化物の元へ、部長が近づいていく。

 

「何か言うことは?」

 

「殺せ」

 

化物は、声とは言えないような掠れた声で言う。

 

「そう、なら滅びなさい」

 

冷徹な一言。部長の一言で、全身が震えた。

 

ドン! と音が鳴ると、部長の手から化物を覆い隠すような大きさの魔力が打ち出される。

 

魔力に当たった化物は、その姿を一片たりとも残さず、この世界から消え去った。

 

「終わりね。皆、ご苦労さま」

 

化物が消滅したのを確認すると、部長は部員向かって言った。これで……終わりなのか。

 

はぐれ悪魔。何を思い、何を考えて主の元を離れたのかわからない。だけど、主を裏切った末路は、こうなるのか……。

 

これが、悪魔の戦い。これからは俺も、この戦いに参加するんだよな。……やべ、緊張してきた。

 

「はぁ……やはり」

 

「銀華?」

 

隣に立っていた銀華は急に前屈みになると、クラチングスタートのような形になる。

 

一体、何をやっているんだ銀華? 短距離走でもするのか?

 

「イッセー、リアスを受け止めなさいよ」

 

「え……?」

 

次の瞬間。隣にいたはずの銀華の姿が消える! え!? どこいった? 

 

「リアス、八十点ね」

 

「キャッ!?」

 

先ほど銀華に言われたセリフを思い出し、部長の方を見ると、そこには部長をこちらに蹴り飛ばしている銀華がいた。

 

銀華! 何やってんだよ! なんで部長を蹴ってんだよ! 部長が何した!

 

訳の分からない行動を取る銀華に対して色々と文句は言いたいが、それより先に、俺は飛んで来る部長を受け止める。

 

「部長! 大丈夫ですか!?」

 

「え、ええ、大丈夫」

 

良かった。別に痛みで苦しいとかはないみたいだ。なら……銀華!!

 

部長の安否を確認し、訳の分からない行動を取った銀華の方を睨みつけるように見る。……だが、俺は浅はかだった。

 

部長から視線を外し、銀華を見てみれば、そこにはさっきの化物以上の大きさと相対している銀華の姿が。

 

い、いつの間にあんなのいたんだよ! 全然誰ひとり気づいていなかったぞ!

 

上半身は先程と同じように女性。だが、腕は全てがカマキリのようになっている。

 

下半身はライオンのようなしっかりとした四肢。尾に関しては蛇なのだが、もはやその大きさは大木だ。そして爪。その爪が異常すぎる。一本一本の爪が、まるでダイヤモンドのように輝いてる。

 

明らかな化物。先ほどの化物が可愛く見える……。

 

そんなことよりもだ! 速く銀華を助けないと! いくら神器(セイクリッド・ギア)があるとは言え、銀華はごく普通の人間なんだから!

 

「クケケケケケ、せっかっくよぉ。気配消して油断するまで待ち伏せしてたのに。な~んで気づいちまうかな」

 

「はん! お前みたいな気持ち悪いの、すぐに見つけられるわ」

 

「部長、速く銀華を助けないと!」

 

一触即発の空気に焦りを感じつつ、受け止めた部長に言うと、部長は至って平然としていた。……いや、部長だけじゃない。周りにいる朱乃さんや小猫ちゃんや木場。誰しもが平然としている。

 

「部長!」

 

「イッセー、あなたに一つ教え忘れてたわ」

 

こんな時に何を言ってるんだ。速く銀華を……

 

部長は俺の腕から降りると、服についた汚れを手で払う。その間俺は、焦りしか感じてない。

 

「貴方は銀華を助けるために焦ってる。でもね、それは必要ない」

 

「どうしてですか!」

 

「彼女はね、私……いえ、私達全員を合わせても勝てないわ」

 

……は? 勝てない? 人間である銀華に、悪魔でありさっきの化物を難なく倒した皆の力を合わせても……勝てない?

 

「訳がわからないって顔をしてるわね。……見てなさい、イッセー。あれが、銀華よ」

 

「まずは、お前からだよ邪魔者。シネエエエエエええええ!」

 

部長が目線を向ける方に視線を向けると、そこには先ほどの小猫ちゃん同様、踏み潰されそうになっている銀華!

 

あれはダメだ! よけないと銀華が潰れ――――――

 

「霊的な瞳(アウラー・オブ・ヴィジョンアイ)発動」

 

銀華が呟いた刹那、俺の体がとてつもない悪寒に襲われる。何だよこれ。

 

空気が違う。いつも空気を吸うという行為を自然に行っているのに、今は意識しないと出来ない……。

 

「気をしっかり持ちなさい」

 

銀華が片腕を化物に向かってあげる。その行為は、本来であるなら、化物の重さによって腕が折れるなんて生易しい結果になるはずがない。そもそも、あの重さに潰されたら、ミンチだ。

 

だが、銀華は違う。銀華は――――――

 

「この程度? 期待はずれにも程がある」

 

「な……に……?」

 

受け止めた。腕一本で。しかも、小猫ちゃんのように潰れていない。本当に立ったまま片腕で受け止めた。

 

「もう少しましだと思ったんだけどね、はぁ、つまらない。準備運動にもならない」

 

銀華は受け止めている足を押す。それによって、化物はバランスを崩す。そして、俺は一瞬しか化物を見ていない。なのに、視線を銀華戻してみれば、そこには銀華がいない。

 

「ギャアアアア!!」

 

いきなり聞こえる悲鳴。

 

悲鳴の発生地点である化物を見てみると、そこには化物の腹に足が垂直にめり込んでいる銀華がいる!

 

いつの間に、あんなとこに移動したんだ? もしかして、木場より速い?

 

「どうしたのですか、化物。私を殺すんじゃなかったの?」

 

「グァアア……」

 

悲痛な声を出す化物の顔面を容赦なく踏みつけ、蔑むように言う銀華。

 

そんな銀華の瞳のが金色に変わり輝いているのだ。

 

率直に言わせてもらう……怖い。単純に怖い。

 

朱乃さんみたいに、いつもと違う姿を見て怖いのではない。生物の本能のようなものが、銀華の事を恐れ、畏怖している。

 

絶対に逆らえないと、絶対に逆らうなと、俺の生物としての本能が訴えている。

 

「つまらい、本当、つまらない。もういいよ、消えて……食べる気にもならないし」

 

銀華は何か言うと、踏みつけていた足に力を込める。

 

化物もなにか抵抗しようと必死に暴れるが、銀華は少しも動かない。そして――――――

 

「バイバイ」

 

化物の頭が踏み砕かれた。

 

ピクリとも動かなくなる化物。馬鹿げた大きさの化物が、たった一人の細い女の子によって完膚なきまでに圧倒され、殺された。

 

「……はぁ、今回もつまらなかったですね」

 

「そうね……ありがとう銀華。油断してわ」

 

「気を付けでくださいよ。リアスだけではなく、皆も」

 

化物の元を去って、こっちに戻ってきた銀華の瞳は、いつもの瞳へと戻っていた。それと同時に、先程まであった怖い気持ちが消え去った。

 

「気を付けるよ」

 

「気をつけますわ」

 

「……気をつけます」

 

皆一様に畏まって銀華に言う。……一体、銀華は何者なんだ?

 

「ええ……では、帰りましょうか」

 

そう締めくくり、銀華は俺の隣を過ぎ去って廃工場を出ていこうとする。だが、その途中で俺の肩に手を置いてくる。

 

「まあ、イッセー。これから頑張りなさい」

 

肩から手を離し、再び歩いていく銀華。

 

……何故だろう。銀華がとてつもなく大きな存在に感じた。人間である銀華にだ。

 

振り返り、廃工場の入口の方を見てみると、銀華が長い銀色の髪をなびかせて、悠々と廃工場から出て行った。

 

「イッセー、どうだった?」

 

「凄かったです。人間であるにもかかわらず、悪魔の俺よりも強い。正直、これからの戦いに関する自身が無くなりそうです」

 

「そう……でも大丈夫よ、イッセー。貴方は貴方。これから努力していけば、きっと銀華よりも強くなれるわ」

 

「……はい、俺頑張ります!」

 

ああ、そうだ、頑張ろう! これからだ! これから頑張ればいい! 口先だけじゃなくてちゃんとな!

 

こうして、深夜の廃工場のはぐれ悪魔の討伐は終了した。

 




章管理したほうがいいですかね?

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