ハイスクールD×D 天馬の神器を持つ者   作:gbliht

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第十五話 天

地下への階段を降りて行くと、段々神父やら堕天使やらの気配がハッキリと分かってくる。ああ、いっぱいいるなぁ。これだけいれば、多少は満たされるかな。

 

階段を降りること数分。ようやく、中へ入るための階段の扉が見えてきた。

「気を引き締めなさいよ、イッセー」

 

「分かってる」

 

扉を押し開け、中へ入っていく。こんな地下に隠れているのだから、ロクな場所を想像していなかったが、想像してた所より最悪だった。

 

周りの壁には松明の光。そして、大きな十字架に貼り付けられているアーシアちゃんと思しき人物と堕天使。他にもはぐれ神父みたいなのがうじゃうじゃといる。

 

「遅かったわね、イッセー君。儀式は終わったわよ」

 

「儀式が終わった……?」

 

「へ~成程。あんたの狙いは最初からそれだったわけね」

 

手に付けている緑色の宝石がついた指輪を見せながら言ってくる堕天使に、私は堕天使の狙いがわかった。

 

堕天使の狙い。それは、アーシアちゃん本人ではなく、アーシアちゃんの持っている『聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)』が狙いだったんだ。

 

しかし、今狙いがわかったところで、遅かったですか。もう儀式が終わったということは、アーシアちゃんはもう……。

 

「おい、銀華どういう事だよ!」

 

「多分堕天使の狙いはアーシアちゃんの持っている『聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)』……そうでしょう?」

 

「お見事。正解よ……なら、この子がどうなったかわかるでしょう?」

 

「アーシアが……アーシアがどうしたってんだよ!」

 

「木場君、説明よろしく」

 

本当はここで私がブチギレて全員皆殺しにしてもいいんだけど……ちょっと気になることがあるから木場君に説明は任せて、今はアーシアちゃんに集中する。

 

私は霊的な瞳(アウラー・オブ・ヴィジョンアイ)の効果を発揮しながら、アーシアちゃんを見る……? アレは、本当にアーシアちゃん? それにしては気配がちょっと……。

 

「木場、アーシアは……アーシアはどうなったんだよ!」

 

「イッセー君……神器(セイクリッド・ギア)を抜かれた者は、死ぬんだ」

 

「死ぬ……? 死ぬって……ッ! アーシア!」

 

いきなり飛び出していくイッセー。もう少し冷静に行動して欲しいものだけど、好きな人が目の前で死んでるなら激情に任せても仕方ないか。

 

ここは、私と木場君と小猫ちゃんでサポートに回るか。

 

「どけッ! どけよ! アーシアがアーシアが!」

 

周りから襲ってくる神父を薙ぎ倒してイッセーは進んでいくが、やはりまだ未熟だから押されかけている。

 

すぐさま木場君と小猫ちゃんに目配せして飛び出し、イッセーを襲う神父達を薙ぎ倒していく。

 

「木場! 銀華! 小猫ちゃん!」

 

「速く行け、イッセー」

 

少しだけ動きを止めるイッセーだが、私達を見て一度頷くとアーシアちゃんまで真っ直ぐに走っていく。

 

イッセーを襲う神父は私達が倒すからいいとして、問題は量だ。雑魚がいくら集まろうが殺られる心配はないが、時間が掛かる。すぐにイッセーを助けには行けないですね。

 

神父を一人殺し、イッセーの方を見てみれば、アーシアちゃんの場所まで無事に着いていた。横では堕天使がニヤニヤとイッセーを見ている。……圧倒的な立場からくる余裕か。

 

「アーシア……アシーア」

 

「寂しそうね、イッセー君。初デートの人には殺されかけ、次に恋した人には死なれる。まるで悪夢ね。」

 

「……本当、悪夢だ。夕麻ちゃんには殺されかけるわ、アーシアは死ぬわ。悪夢以外の何物でもない」

 

「なら、その悪夢を終わらせてあげるわ。アーシアと同じ死によってね」

 

「……ふざけるな。アーシアを殺した奴が生きていられると思うなよ」

 

「はぁ? 雑魚が何をほざいているの? 雑魚のイッセー君に何ができるのよ。精々死ぬのに努力するくらいじゃないの! それとも雑魚の貴方が私を殺すっての? アッハッハ、それだったらウケるわー!」

 

「レイナーレぇぇぇぇええええ!!」

 

「雑魚が私の名前を気安く呼ぶんじゃないわよ!」

 

ブチギレて、今にも堕天使に殴りかかろうとするイッセー。マズイ。アーシアちゃんを守りながら戦うなんて、戦い慣れてないイッセーじゃ無理だ。

 

「イッセー君! この場所でアーシアさんを守りながら戦うのは不利だ!」

 

「だから、アーシアちゃんを連れて逃げろ!」

 

向かってくる神父を叩き潰し、イッセーへの逃げ道を作っていく。だが、やはり神父の数が多すぎて、道を作るのが難しい。

 

ああ、クソ! これじゃあイッセーの元へも行けないから、イッセーのサポートが出来ない。一瞬でもサポートに行ければこの場から逃がせるのに!

 

イッセーの方を見てみれば、アーシアちゃんをお姫様だっこして逃げようとする姿が見える。

 

……ッ! まず! 堕天使の奴、無防備な姿のイッセーに向かって、光の槍を投げようとしてる! 木場君も小猫ちゃんも私も、イッセーの逃げ道を作っているのでイッセーの防御に回れない。

 

神父を掴んでぶん投げ、イッセーの盾にするか? いや、それじゃあ、間に合わない。なら神父共を弾き飛ばして強引にイッセーの元に向かうか? だが、神父は十や二十じゃ間に合わない数だ。突破できるか怪しい。

 

仕方ない、光の槍で堕天使の槍を弾く……!?

 

襲ってくる神父を倒し、少し離れた所から光の槍を放とうとした時、私の横を暴風が通り過ぎた。

 

室内だというのに、この風はおかしい。一体何が通って……!

 

暴風は余っていた神父を一瞬で殺し尽くすと、イッセーのいる場所まで行き堕天使の放った光の槍を弾く。どう弾いたのかは分からない。ただ、弾かれたのだけが見えた。

 

『rapidly!!』

 

ッ!? この声は……まさか!

 

思わず私は動きを止めてしまう。私だけじゃない。何故か小猫ちゃんも動きを止める。

 

「行け、イッセー」

 

「貴様は!」

 

 

渋い声が暴風から聞こえてくる。まさか、まさかまさかまさか! あるはずがない! いるはずがない! だって、彼はもうこの世界にいないはずなのだから!

 

イッセーが私達が開けた逃げ道をイッセーが通ると同時に、暴風が真の姿を現す。

 

「久しいな、堕天使レイナーレ」

 

ああ、ああああ!! そんな、まさか。生きていたなんて!

 

暴風から現れたのは、黄金色の外側に刃が付いた金属のガントレットを両手に身に付け、足に黄金色で白い羽の付いた金属のレギンスを身に付けている老齢の男が現れる。

 

「我が名は五月雨天馬! 天駆ける天馬の脚(ディエイト・ペガサス)を持ちし者!」

 

「天駆ける天馬の脚(ディエイト・ペガサス)!? 神滅具(ロンギヌス)」の一つじゃないの!?」

 

「天さん!!」

 

天さん! 天さんだ! 死んだと思っていたのに……まさか、こうしてまた会えるなんて!!

 

天さんの懐かしき姿に思わず叫ぶ。堕天使と睨みあっている天さんはこちらを見ると口もとを少しだけ動かして微笑んだ。

 

「冗談じゃないわ! 折角、念願の『聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)』を手に入れたっていうのに! こんな所で死んでたまるもんですか!」

 

黒い羽のを出し、イッセーが出て行った階段から逃げようとするが、遅い。天さん相手にその速度じゃあ、例え何百年経とうが逃げれやしない。

 

予想通り、天さんはいつの間にか、逃げていく堕天使の背後に現れると堕天使の蹴り飛ばす。

 

……ん? 天さんにしてはかなり手加減してる? 本来なら、あの堕天使が跡形もなく吹き飛んでいるはずなんだけど……?

 

「銀華!」

 

「は、ハイッ! なんでしょうか!」

 

昔の癖か、天さんに戦闘中呼ばれると思わず敬語になんてしまう。戦闘中の天さん、メッチャ怖いんですよ。昔、少しよそ見しただけでグーで殴られたりしましたからね? 本当、怖すぎですよ。……まあ、優しい所もいっぱいあるんですけどね。

 

「禁手化(バランスブレイク)を許可する。速く腹を満たせ」

 

「了解しました!」

 

天さんの言うバランスブレイクとは、神器(セイクリッド・ギア)のスケールアップ。要は強化版だ。で、バランスブレイクとは、本来ならスケールアップで済むのだが、たまに別の物に化ける時がある。

 

私の霊的な瞳(アウラー・オブ・ヴィジョンアイ)の禁手化(バランスブレイク)は本来なら、静寂なる霊の眼差し(サイレンス・パルシイ)見た者の気の流れを操り、動きを止める神器(セイクリッド・ギア)なのだが、何が起こったのか、私のは違う物になってしまった。

 

「死者を統べし孤高の獅子|《デスペラードソルジャー・トリスタン・ライヒ》」

 

霊的な瞳(アウラー・オブ・ヴィジョンアイ)で変化するのは瞳だけなのだが、この死者を統べし孤高の獅子|《デスペラードソルジャー・トリスタン・ライヒ》は瞳だけではなく、髪の毛までもが黄金色に輝く。

 

「では、いただきます」

 

死者を統べし孤高の獅子|《デスペラードソルジャー・トリスタン・ライヒ》の能力。それは、殺した、或いは死んだものの魂を喰らい、自分の能力とすることができる。他にも、発動している間は、今まで吸収した魂をこの世界に呼び出す事もできる。

 

勿論、それなりのリスクはちゃんとある。死者を統べし孤高の獅子|《デスペラードソルジャー・トリスタン・ライヒ》を発動出来るのは最大で五分まで。五分以上過ぎると、この体は徐々に壊れていく。一度呼び出した魂は、数年以上呼び出すことはできない。そして、最後に、この状態でいると起こる症状がある。それは……破壊衝動。

 

常に何かを破壊し続けていないと、満足できない。周りの物全てを破壊したくてしょうがない感情が、私の心を支配してくる。

 

必死に堪えているが、二分程過ぎると、歯止めが効かなくなり暴れだしてしまう。敵味方の区別くらいはつくけどね。

 

「ごちそうさまでした」

 

急いで元の状態に戻り、暴走状態にならないようにする。……ふぅ、良かった。なんとか間に合った。

 

「……何度見ても、衝撃的だよね」

 

「……」

 

衝撃的だなんてそんな。私はただ、ふよふよと浮いている透明な塊を口から食べてるだけだよ。こう、お餅を食べるみたいにむにょーんと。

 

……って、そんな事はどうでもいいよ。今は、私の食事よりも天さんのことが気になる。

 

急いで天さんのいた方を見ると、そこには先ほどと同じ姿で立っている天さんがいた。

 

「……天さん、天さんなんですよね」

 

「……ああ、私だ、銀華。クリストフ、パージ」

 

『了解しました』

 

ああ、懐かしいこの声。天さんの神器(セイクリッド・ギア)に宿っているクリストフさんの声。

 

天さんの神器(セイクリッド・ギア)が光の粒子になって消えると、そこには昔の姿まんまの天さんが立っている。

 

あの頃と何一つ変わってない。見た目は年老いた老人のはずなのに、筋肉が目に見える程の足腰。幾千もの戦場をくぐり抜けてきたのがすぐに分かる鋭い眼光。ああ、間違いなく、彼は天さんだ。

 

「天さん、今までどこに行っていたのですか……? こんな歳ですが私は、たった一人の家族である天さんが、消えてしまってかなり寂しかったんですよ。それに、それに……」

 

今まで溜め込んでいた思いを伝えたいのに、言葉が続かない。本当はもっと色々と言いたいのに、天さんに再び会えた感動のせいで言葉が出ない。ああきっと、私はみっともなく泣いているんだろうな。

 

でも、構わない。なんてったって、死んだと思っていた天さんに生きていている状態で会えたんだから。

 

なんで生きてたのか、死んだんじゃないのかとか、今はどうでもいい。今はただ、天さんと会えたことが嬉しくて、嬉しくて……

 

「すまんな、銀華。もっと早く会いたかったんだが、少し用事があってな」

 

そう言いながら抱きしめてくれる天さん。ゴツゴツの筋肉の中にある少しの柔らかさ。懐かしい。

 

「本当にすまない、銀華」

 

「天さ、ん……天さああああああああああああん!!」

 

久々に天さんに抱きしめられて安心したのか、私は天さんにしがみついて泣き叫んでしまった。

 




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