アーシアが攫われた次の日の夜。俺は旧校舎にある部室へと向かっていた。なんでも、リアス部長が俺に伝えたいことがあるらしい。
「失礼します」
部室の中へと入ると、リアス部長がソファーに座り、他の皆がリアス部長の周りに立っていた。まるで、悪魔になって最初に呼び出された時みたいだ。
「イッセー、そこに座りなさい」
「はい」
部長は対面にあるソファーに指差しながら言うので、大人しく指さされたソファーに座る。……まるで、怒られるような雰囲気なんだけど、俺って何かしたっけか?
「イッセー。昨日助けたアーシアなんだけど」
……アーシア。正式な名前はアーシア・アルジェント。協会を追い出され、この街に来たシスター。
その少女を昨日堕天使から助けた後、リアス部長とササン先輩が話し合った結果、リアス部長がアーシアを預かる事になり昨日は解散となった。
そのアーシアがどうしたのだろうか? ……もしかして、追い出すとか? いや、リアス部長に限ってそんなことはないはず。
「アーシアが……どうしたんですか?」
「昨日、私が考えた限り、アーシアを」
「アーシアを?」
「悪魔にしたわ」
「……へ?」
アーシアを悪魔に? 教会の人間を悪魔にするって、それは色々と大丈夫なのか? 無理矢理悪魔に……ってわけじゃないよね?
「入ってらっしゃい」
「イッセーさん!」
「アーシア!」
俺が入ってきた扉が勢いよく開くと、最初にあった時のようなシスター服を身に纏ったアーシアが入ってきた。
思わず立ち上がってアーシアの元に駆け寄ってしまう。
「アーシア、どうして悪魔なんかに……」
「えっと、それはリアスさんが……」
「部長が?」
リアス部長、一体アーシアに何を吹き込んだんだろろうか。いや、アーシアと一緒にいられるのは嬉しいけど。
アーシアに部長と言われて、ふと部長の方を見てみると、そこには不敵な笑みを浮かべているリアス部長が。
「悪魔になれば、イッセーと一緒に居られるわよって言ったの。そしたら悪魔になるの一点張りでね。それで、魔力の素質がありそうだからアーシアを僧侶
成程。アーシア、そんなに俺と居たいから悪魔になったのか。そうかそうか。
超嬉しいんですけど!! 何? 俺にも春到来!? ヤベー超ヤベー!
っと、俺、もっと冷静になるんだ。ここで、顔に出したら負けだ。何に負けるのか知らないが、負けだ。
ま、今は取り敢えず……
「これからよろしくな、アーシア!」
「はい、イッセーさん、よろしくお願いします!」
「……さて、これでアーシアは正式に私の眷属ね」
アーシアが一緒の眷属になれたことを嬉しがっていると、リアス部長がなんか悲しそうな表情を一瞬浮かべた。……今の表情は一体?
「部長、一つ聞きたいことがありますの」
「なに? 朱乃」
「あの教会にいた天とは……誰なのですか?」
そうだ。昨日初めて見た、老人と言っても差し支えないような人物天。唐突に現れたササン先輩の眷属の一人。彼の事をリアス部長は知っているようだったけど、一体彼は誰なんだろう?
「……そう、貴方達がまだ生まれる前に活躍した人だから、知らないのよね」
一度大きく息を吸って吐き出したリアス部長は、目を瞑りながら淡々と語り始めた。
「五月雨天馬……今は馬月雨天。通称天。彼は十七から十八の時、三つ巴の大戦があった時に暴れていた二天龍を同時に相手して倒した天馬
二天竜を同時に相手して倒したって……本物のバケモンじゃないか! そんなバケモノを封印した神器
「彼は、自身の神器
悪魔や天使や堕天使を同時に何十も倒した……? なんていう怪物だよ! だって、その時はまだ人間だろ!? それなのに何十も同時に倒すなんて……
「そして、色々あって魔王に会い、天使長に会い、堕天使の長と会い、彼は全てのボスと関係を持っていったわ。まあ、そんな事を知らない悪魔や天使や堕天使は彼を襲い続けたけどね」
もう、何も言えね。人間なのに、凄すぎるだろう、天さん。マジのバケモンじゃん。
そこで目を開けたリアス部長は、周りにいた皆を順番に見ていく。
「彼はね。小猫、貴方と貴方の姉をこの世界で拾い助け、私達のいる冥界で幸せに過ごせるように送ってくれたの。そして、朱乃、貴方と貴方の母親を人間の襲撃から救ってくれた張本人。最後に祐斗。彼は貴方がいた聖剣計画の実験場を跡形もなく破壊してくれた人よ……本人は祐斗が聖剣計画の生き残りだとは知らないようだけども。嘆いていたわ。一人しか救えなかったって。アーシアは、もう彼の事は知ってるわね」
リアス部長の言葉が終わると同時に、皆の顔色が変わった。木場は怖いくらい冷徹な表情になり、目つきが鋭くなってる。朱乃先輩はやっぱりといったような表情を浮かべ、小猫ちゃんは普段の無表情とは違い、どことなく悲しんでるような表情をしている。そして、隣にいるアーシアは知ってると言われた瞬間、微笑んだ。
……なんだろう。もしかして、俺だけが天さんと何ら関わりがないとか? そもそも、皆何で助けられたんだ?
「彼は、聖剣計画の施設を破壊した時に助けた銀華と旅をし、齢七十になる頃この街に来て銀華を私に託したあと、行方不明になったわ」
「……そうでしたか。ありがとうござますわ、部長」
リアス部長は話を終わると、ふぅと息を吐いてまた目を瞑ってしまった。
ってか、銀華。何者だと思ってはいたけども、まさかそんなバケモンみたいな人と生活していたのか。そりゃあ、あんなはぐれ悪魔見たって動じたりしないわな。
……ん? なら、天さんはいつの間にササン先輩と出会ったんだろ? 謎だ。
「これで、貴方達は私の眷属になったわ」
私は今、ある場所……まあ、旧校舎の一階、つまりリアスがいつも使ってる部室の下に来ている。
悪魔の駒
「さて、レイナーレ。貴方にはやってもらうことがあるわ」
「なに?」
やってもらうことですか。一体なんなんでしょうね? 私にはないので、余計気になります。
「貴方は一週間後にこの学園に来てもらうわ。それと、もう一つ……メルト、ナリヤ」
「分かってっるっす」
「はいはーい!」
「え? なに、なに!?」
ササンに呼ばれたメルトとナリヤは、急にレイナーレの両脇を持ち上げる。何をするんでしょうね?
「貴方には、一週間後の入学までこの二人にガッツリ鍛えてもらうわ。安心して、多分死なないから。それじゃあ、頑張って」
「はーい、じゃあ行くよー!」
「行くっすよ。いや~楽しみにっすね!」
「ちょ、ちょっと、助け……」
そのまま二人に連れてかれるレイナーレ。頑張れ!
「で、銀華、貴方は特にすることもないから、今までどおりの生活をして頂戴。私は基本リアスの所にいるから。呼び出す時は、ちゃんと呼び出すからね。あ、でも、夜はここに来てね」
「分かりました」
「それじゃあ、あとは自由にして頂戴」
さて、自由にしていいと言われましたので天さんと話したいのですが……どこに行ったのでしょうか?
「久しぶりだな。天」
「久しぶりだな」
「どうだい、悪魔の生活は?」
「充実している。人間だった時と変わらずな」
「そうか」
「今回の事件の結果だが、堕天使の四人のうち一人は貰い、他の三人は神の子を見張る者
「成程。これで、リアス・グレモリーは回復役を手に入れた……か。で、赤龍帝はどれくらい成長した?」
「まだまだ、白龍皇とはまともに戦えない。精々、下級悪魔一人倒せる程度だ」
「でも、堕天使は一人で倒したんだろう?」
「ああ、倒せはしたが……それは怒りに身を任せたから。本来の力は全然だ」
「そうか……なあ、天。お前の目から見て、今代の赤龍帝はどうだ?」
「……面白い奴だ。素直で愚直。自分の想いに正直。私の見立では……強くなるぞ」
「こりゃあ、今代の決戦は凄いことになりそうだ」
「いや、凄くなりどうではなく、凄くなる。私がいるからな」
「被害は余り出すなよ」
「それは保証できんな」
「……まったく、今代の白龍皇と天馬は血の気が多くて困るね」
「転入生を紹介する。入ってこい」
私が悪魔になった次の日……アーシアちゃんが私のクラスへと転入して一週間が経った。転入してきたアーシアちゃんは、その優しさからかクラスの全員と打ち解け、何人かの友達も出来た。ちなみに、友達の中に、私も入っている。
そんな日の事、天さんが教室に入ってくるなり、なんの前触れもなく転入生が来たとの連絡が。
アーシアちゃんという転入生が来てからまだ一週間しか経っていないというのに、一体どんな方が転入して来たのだろうか?
「失礼します」
「んな!?」
「あらら」
凛とした声色で答えながら教室の扉を開けて入ってくる美少女。黒髪のロングストレートで、キリッとした目つき。醸し出す雰囲気は、例えるなら委員長。ええ、答えましょう。我が校の制服を身に纏ったレイナーレです。
「この度、駒王学園に転入してきた五月雨澪
「え!?」
驚きのあまり、声を出してしまいました。だって、レイナーレがいきなり五月雨と名乗ったのですよ? 私と同じ名字……天さんと同じ苗字である五月雨を! これを驚かなくてどうするんですか!?
しかも、レイナーレなのに、名前が澪って。もうちょっと捻っても良かったんでは?
「五月雨って……銀華ちゃんと何か関係があるんですか?」
クラスメイトよ、私を見ながら聞かないでくれ。私だって、レイナーレが五月雨の苗字を名乗るのなんて、自己紹介が始まるまで知らなかったんだから。
イッセーもアーシアちゃんもこちらを見て驚かないでくれ。私も分からないんだよ。
「銀華姉とは姉妹の関係です。姉が銀華姉で、私が妹です」
「そうなんですか……でも髪と目の色が違うんですが」
そこに突っ込むなクラスメイト。いや、それよりも。私が姉で、妹がレイナーレ……もとい、澪が妹って、おかしいでしょ。どちらかというと、身長も胸もない私が妹……って、認めんぞ! 胸がないなんて認めんぞ!
なんだ、考えすぎて訳わからない事を考えていると、急に澪が目尻に涙を浮かべ始めた。
「じ、実は私達、互いに捨て子だったんです。その時、私達は今の父に拾われ、今まで生活してきたのです。髪や瞳の色など気にせず、お互い本当の姉妹のように……ですから、ですから」
両手で顔を覆って、泣き崩れてしまう澪。……嘘なのに、よくそこまで演技ができるね。
「あ、えっと、そうだったんですか。すみません、嫌なこと聞いてしまって」
「いえ、いいんです」
涙を拭い、立ち上がる澪。おい、そこの二人。イッセーとアーシアちゃん。お前らふたりは嘘だと分かっているだろう。なのに、なんで感極まった泣きそうになってんだ。
「さて、自己紹介は終わりだ。澪、お前は姉である銀華の横に座れ」
「はい、先生」
涙目のまま歩いてくる澪。そして、私の隣の席に座り、机に顔を向けた瞬間。
「ふっ。簡単ね」
「うわぁ」
あくどい笑みを浮かべ、さっきまでの涙目が瞬時に消えてしまった。流石堕天使。人を欺ことに長けてること。
「それと銀華、澪」
「はい?」
澪のあくどい笑みに呆れていると、急に天さんから声を掛けられた。
「放課後、部室に顔を出すように」
「部室?」
部室とは一体……? リアスがやっているオカルト研究部でいいのでしょうか?
「それでは、ホームルームは終わりだ。皆、次の授業の準備をするように」
部室……ですか。一体何をするのでしょう。昨日の夜、ふと感じた巨大な気配が関係しているのでしょうかね。
……ま、何にしろ。
「面白い事であればいいんですがね」
旧校舎のディアボロス・完
次回から、戦闘校舎のフェニックスが始まります。
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