「ねえ、銀華、澪」
「どうしました、ササン?」
「何?」
澪こと、レイナーレが転校してきてから数日経ったある日。私と澪がオカルト研究部のしたにある部屋に来てのんびりとしていたら、先に部屋に入ってくつろいでいたササンに話しかけられた。
「貴方達って……焼き鳥は好き?」
「焼き鳥って……」
あの食べる焼き鳥? なんで急に?
「私は好きよ。お酒のツマミにちょうどいいの」
澪、貴方酒飲んでるんですか。学生なのだから、程々にしなさいよ。ま、そんなこと言ってる私も、昔チョロっと飲んだことがあるんですがね。あまり、美味しくはありませんでしたけど。
「まあ、私も好きですね。……味は塩で」
「そう、それは良かったわ」
私が答え終えると、ササンは嬉しそうに笑う。……なぜ?
ササンの行動の意図が読めず、私は澪の方を見る。澪の方も、ササンの意図が理解できてないのか私の方を見て、首を傾げる。澪もわからないのですか。
「ササン、なんでそんな事を聞いたの?」
「いえ、ちょっと焼き鳥を食べる予定があってね」
焼き鳥を食べる予定って……なんですか、その予定。
「そうなんですか。じゃあ、その時は誘ってくださいよ」
「いいわよ。そもそも、二人共連れていく予定だったし」
私達から視線を外し、天井を見上げるササン。天井……リアス? リアス達も一緒に焼き鳥を食べに行くんでしょうかね。
「アーシア、貴方漢字は書けるようになった?」
「いえ、それがまだでして……」
「そう、じゃあ、私が教えてあげるわよ」
「ありがとうございます。澪さん」
あれから数日後。澪がこの学校に来て、順調にクラスメイトと仲良くなっていき、アーシアちゃんやイッセーとも仲良くなり始めてきた。
元々猫をかぶるのだけは上手い澪だからこそ、これだけ早くクラスに馴染めたんでしょうね。
そんなある日の事。
「なあ、銀華」
「どうしました、イッセー。私に話しかけるなんて珍しいですね」
イッセーが、他にいるエロバカ二人と話さずに私に話しかけてくる。これは珍しい。いつもなら、クラスでも平気でエロ話ばっかりして鼻の下を伸ばしているイッセーなのに、今日は神妙な面持ちだ。
「いや、それがさ。最近部長の様子がおかしいんだ」
「リアスの?」
様子がおかしい……ですか。はて、何があったのでしょうか?
「どんな風におかしいのですか?」
「何かこう、いつもみたいな元気がなくて、一つの事に集中出来ずに急に窓の外を見てぼうっとしてたり、暗い表情のままため息ついたり、それと……ま、まあ! おかしいんだよ」
……ふむ。一つの事に集中できなくて、暗い表情のままため息ついたり、元気がないと。それってさ、恋じゃね? ほら、恋に落ちると人って元気なくなるじゃん。知らないけど。
「あ~イッセー。多分それ、恋愛絡みの何かだと思いますよ」
「れ、恋愛!?」
「落ち着きなさい」
「って!」
今にも私に掴みかからんとばかりに迫ってきたので、取り敢えずデコピンして黙らす。
「イッセー。多分貴方は知らないと思いますが、リアスには許嫁がいるんですよ」
「許嫁!?」
「ええ、許嫁。ま、親が勝手に決めた政略的許嫁ですけどね。……私が思うに、それ関係だと思いますよ。それ以外だとすれば……体重が増えたとかじゃないですかね?」
「許嫁……政略結婚……」
ああ、愛しの部長さんに許嫁がいるとわかった瞬間、イッセーが地面に崩れ落ちてしまった。しょうがない……ふざけるか。
「イッセー、落ち込むことはないのですよ!」
「銀華……」
崩れ落ちたイッセーの肩を掴み、目を見ながら言う。
「リアスには、確かに許嫁がいるでしょう。しかし! それは望まぬ結婚! そう、政略結婚ゆえ、リアスの意思などは関係ないのです。ならば! まだチャンスはあります。イッセーのやる行動は一つ! 許嫁を殴り飛ばし、俺がリアスと結婚するんだと豪語するべきなのです!」
「銀華……そうだな。もし、部長が許嫁で困ってるんだったら、俺、部長を助けるよ!」
「そのいきです。イッセー。頑張りなさい」
我ながら、臭いことをしましたね。でもま、イッセーもやる気満々の元気野郎になりましたし、良しとしましょう。
……しかし、リアスの元気が無い……ですか。これはなんだか、面白そうなことが起きる予感がしますね。
「はぁ」
授業が終わり、休み時間になったので廊下をぶらつていると、窓の外を見ながらぼうっとしながら溜息をはいてるリアスがいた。
「どうしたの、リアス。テンション低いわね」
「ササン……」
隣に行き声を掛けてみる。やはり、表情が暗い。ま、そりゃあそうか。昨日が昨日だから。
「もしかして、結婚の事で悩んでる?」
「……ええ、そうなの」
昨日の夜。私の部屋に一人の客人がやってきた。その客人が、何故私の所に来たかというと、リアスの居場所を知ってるかとのこと。
リアスの家とは結構な繋がりもあるため、リアスの事については知ってるつもりだが、流石にリアスの居場所を常に知ってるというわけでもないので、とりあえずイッセー君の所にいるのではないかと言っておいた。
結局、その客人はすぐにイッセー君の所に向かった為、何故リアスを探してるかとか、細かい事情が聞けなかったが……目星は着いていた。
家同士が勝手に決めた、政略結婚が近々強制的に行われるのだ。リアス個人はこの結婚をあまり望んでいない。それに、リアスはせめて大学に入るまでは嫌だと言っているのだが、相手側……婿の方が早く結婚したいんだそうだ。
そのせいで、リアスの結婚ははやまり、近々執り行われるとのこと。でだ。もっと最悪な事があり、実は今日、そのリアスの婿がこの学園に訪れるのだそうだ。
「リアス、貴方どうするの? 多分、今日何かしら起こさないと、結婚直行になっちゃうわよ」
「そうなのよね……はぁ、お兄様もお父様も大学に入るまで待ってくれればいいのに。本当、どうしよう」
「リアス、貴方はどうしたいの?」
私が聞いてみると、リアスは一度窓の外を眺め、はぁと息を吐く。
「勿論、断りたいわ。……でも、断ってしまっては家に迷惑を掛けるんじゃないと思って」
ったく、この娘は。嫌なら嫌と言ってしまえばいいのに。……でもま、家と違って色々と家の事を考えなきゃいけないから、自分の気持ちを押し殺さないといけないのかしらね。
「……ま、私は何にもアドバイスはしないわ。貴方の好きなようにやりなさい。婿と会う時くらいは、一緒にいてあげるけど」
「ありがとう、ササン」
「いえいえ、それじゃあ――――――」
リアスに別れの言葉を告げて歩き出し、自分の教室に向かう。
「さて、焼き鳥でも食べに行きますかね」
放課後、私と木場君とイッセーとアーシアちゃんと澪は、五人で集まってオカルト研究部の部室へと向かっていた。
本当なら、ナリヤとメルトを連れて行きたかったのですが、生憎とふたりは先に行ってしまっていた。天さんでも誘おうかと思ったけど、生憎とまだ仕事中らしい。
「へ~リアスって、許嫁がいたんだ」
「そうなんだよ……って言っても、俺が知ったのも今日の朝、銀華に教えてもらったからなんだけどな」
「銀華が……? 貴方、なんでそんなこと知ってんのよ」
「知ってんのよ……って言いますけど、私、この一年間はリアスと共に暮らしていたんですよ。知ってて当然じゃないですか」
「銀華さんって、リアス部長の家に住んでたんですか」
「そうですよ、アーシアちゃん。私、一年前にリアスの家に預けら……へ~」
「……? どうしたの、銀華さん?」
歩きながら話していたせいか、少しだけ気づくのに遅れましたが、この気配は……。澪を見てみれば、私と同様この気配に気づいているのか、微妙に顔を険しくしている。
「いえ、木場君も歩いていれば気づきますよ」
「何を……!? なるほど、そういうことだね」
どうやら、木場君は気づいたようですね。ただ、イッセーとアーシアちゃんはまだ悪魔になったばかり……というか、戦い慣れていないため、この気配に気づいていないようですね。
「しかし、なんで急にあの人が?」
疑問に思いつつも歩き続け、オカルト研究部の前へと着く。扉の前だというのに、中の雰囲気をヒシヒシと感じますね。……リアス、相当不機嫌だ。
「失礼します」
中へと入ると、そこにはソファーに座って不機嫌そうにしているリアスと、リアスの後ろにいつも通りのニコニコ笑顔なのだがどことなく怖い朱乃さん。リアスの対面には不敵な笑みを浮かべているササン。
少しソファーから視線を外してみれば、そこにはいつも以上におとなしい小猫ちゃんと、ニタニタと笑っているナリヤとメルト。そして、いつもの仏頂面の天さん……天さん!?
あ、あれ? お仕事は? まだ残ってるんじゃなかったの? ……ま、まあいいや。それは後から聞くとして、今一番注目しなきゃいけないのは……
「お久しぶりです、グレイフィアさん」
「お久しぶりです、銀華さん。半年ぶり……位でしょうか?」
「そうですね。それくらいになりますね」
メイド服を着た、魔王ルシファーの女王
私達が中に入り、リアスと朱乃さん以外全員ササンの座ってるソファーの後ろに立つ。すると、私達を一通り見渡したリアスはゆっくりと口を開いた。
「みんな揃ったわね。……部活を始めたい所ではあるけど、ちょっと話があるの」
話ですか。なんでしょうね。面白い話ならいいのですが。
「お嬢様、私から話しましょうか?」
「いえ、私から話すわ。実はね――――――」
リアスが肝心な話を始めようとした途端、部室にある一角が急に光りだす。あれは、転移魔法陣?
「……フェニックス」
フェニックス、フェニックス……ああ、成程。リアスが不機嫌だったのは、そういうことね。今日は、リアスの許嫁が来る日なのね。……小猫ちゃんに言われるまで、フェニックス家の魔法陣だってこと忘れてた。
より一層魔法陣が光りだすと、急に魔法陣から炎が吹き出し火の粉が舞う。相変わらず、炎だけは立派ですね。
「ふぅ、人間界は久しぶ……」
真っ赤なスーツを着込んだ長身の金髪野郎が魔法陣から出て、スーツのシワを直しながら部室の中を一瞥する。だが、ある一点を見た瞬間、金髪野郎はスーツのシワを直してる状態のまま固まった。
誰を見て……ああ、ササンか。なぜに?
「久しぶりね、ライザー」
「翠髪の毒薬姫
「翠髪の毒薬姫
イッセー、知らないのですか。……翠髪の毒薬姫
翠髪……確か、緑色に近い黒……カワセミの羽のような色だったはずです。しかし、ササンの髪の色はエメラルドグリーンのような明るい緑。なのに、翠髪ですか。
「なあ、銀華。あのいきなり出てきた野郎が言った翠髪の毒薬姫
「さあ? リアスの二つ名みたいなものと同じじゃないですかね」
リアスにも、紅髪の滅殺姫
小声で聞いてきたイッセーに小声で答えると、何やらササンの方では話が進み始めた。
「あら、別に私がここにいてもいいでしょう? グレモリー家とデカラビア家の仲は家族当然。なら、リアスの管轄であるこの町、この場所にいたとしても問題は無いはずだわ。……それとも、私がいては問題かしら?」
「い、いや、問題はないが……」
目つきを鋭くさせ、金髪野郎にササンが言うと、金髪野郎は若干バツが悪そうに答える。……ふむ。どうやら、金髪野郎は、ササンの事が苦手なようですね。
「なら、存分に話し合えばいいじゃない。リアスのお婿さん」
イッセーの方を見ながら、含み笑いを浮かべながら言うササン。何を企んでいるの、ササン?
「……ん? お婿さん?」
驚きのあまりなのか、ただ単純に反応が遅かったのか知らないが、イッセーはワンテンポ遅れてから婿の所に反応した。
「兵藤一誠様」
「は、はい」
「この方はライザー・フェニックス様。純潔の上級悪魔であり、古い家柄を持つ、フェニックス家のご三男であらせられます」
へ~フェニックス家の三男坊ですか。どうりで見たことないはずです。基本、私が見て来たフェニックス家は長男の人でしたからね。
「そして、グレモリー家次期当主であるリアス嬢さまの婿殿でございます」
「へ~……むこおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッ!?」
おう、ナイスリアクション。
感想、アドバイス、誤字、お待ちしております。