ハイスクールD×D 天馬の神器を持つ者   作:gbliht

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第十九話 口車

「いやー、リアスの女王(クイーン)が入れてくれたお茶は美味しいな」

 

「恐れいりますわ」

 

現在、あの焼き鳥野郎がリアスの隣に座ってお茶を飲んでいる。リアス、凄い嫌な顔してる。余程その焼き鳥野郎が嫌いなんだね。

 

ま、そりゃあそうか。肩やら尻やらさりげなく触りまくってるもんね。どうせなら、私にしてくれればいいのに。それを口実にボッコボコにするから。

 

「ライザー、何度も言うけど私は貴方と結婚はしないわ!」

 

「それは何度も聞いている。だが、そうもいかないだろう? 君の御家事情は結構切羽詰まっているじゃないか」

 

「余計なお世話よ! 私が次期当主である以上、私の婿くらいは自分で決めるわ! そもそも、お父様もお兄様も急ぎすぎなのよ。大学でるまでは自由にさせてくれる約束なのに!」

 

「ああ、そうだ。君は基本的に自由だ。大学に行ってもいいし、遊んだっていい。だが、君のお父様やサーゼクス様は不安なのだよ。さきの戦争のせいで純潔悪魔の数は激減。御家断絶をする家は少しづつ出てきている。それに、今の状況もある。いつ堕天使や天使が攻めてくるかわからない。ならば、上級悪魔同士速くくっつき子を生すのは当然だと思うのだが。君も知っているだろう。如何に悪魔の新生児が貴重か」

 

そこで焼き鳥野郎は一旦お茶を飲むと、目つきを鋭くさせて私達の方を見てくる。

 

……はぁ、面倒くさい。そんなに御家が大事か。代々続いてきた名門だが知らんが上級悪魔ってのはそんなに必要なもんなんですかね? いらないんじゃない? だって、下級悪魔の存在を蔑ろにして、新たなものを求めない上級悪魔なんてただ邪魔だけじゃん。

 

でもま、今の魔王様達は昔の縛りに縛られてない面白くていい人達ばかりだからいいですけどね。

 

「さらに言えば、新鋭の悪魔――――――君の下僕みたいなのが幅を効かせているが、それじゃあ、昔から居る俺達上級悪魔の立場がない。ま、それは別にいい。これからの悪魔には新たな血を入れるのもいいとは思う。だが、それでも旧家の上級悪魔の血を途絶えさせるわけにはいかないだろう? 君と俺は上級悪魔の血を絶やさないために選ばれた者達なんだよ。俺の家には兄達がいるから大丈夫だが、君の兄妹は二人だけ。しかも、兄君は家を出られている。ならば、君しかグレモリー家を継ぐ者はいないのだぞ? 婿を取らなければ、御家は断絶。君は、家を断絶させたいのか? それに、もう『七十二柱』の殆どはいない。これは、悪魔の未来もかかっているのだよ」

 

黙って聞いているリアス。鋭い瞳は変わらず鋭いままだが、何か思うとこがあるのか、若干表情が暗い。

 

「私は家を潰す気はないし、婿養子だって取るわ!」

 

「おおっ! なら、早速俺と」

 

「でも、あなたとは結婚しないわ。私は自身が良いと思った人としか結婚はしない」

 

立ち上がりながら言うリアスに、ライザーも立ち上がりながらリアスを見下す。

 

「俺もな、リアス。フェニックス家の看板を背負ってんだよ。名に泥を塗る気はない。わざわざこんなボロくて狭い場所にも来たくなかったしな。それに、俺は人間界は嫌いなんだよ。炎は汚い風は汚い。炎と風を司る悪魔としては耐え難いんだよ!」

 

殺気と炎が部屋全体を包む。いいですねえ! いい雰囲気になってきた。

 

「俺は君の下僕を全て燃やし尽くしても冥界に連れて行くぞ」

 

ザワツク空気。イッセーはブルブルと震えているが、その他の皆は平然を装っている。……いや、約五名。異常者がいる。

 

ナリヤ、天さん、メルト、澪、そして、私。

 

ナリヤとメルトは下を向いたまま、ニヤリと口元を歪めている。天さんは壁に背を預けたままいつも通りの無表情なのだが、口元が僅かににやけている。澪は隠すこともなく笑っている。

 

そして、私は自身の神器(セイグリット・ギア)の昂ぶりを抑えながら拳を握る。

 

徐々にリアスとライザーは力を出していく。リアスは自分の紅い魔力を纏い始め、ライザーは炎の羽を作り出していく。

 

ああ、ダメか、ササン。戦ってはダメかササン!

 

リアスとライザーの対面に座っているササンに視線を向ける。

 

そして、ライザーの羽が完成する寸前、ササンはソファーから指だけを出して、小さく前に倒す。瞬間――――――

 

「な!?」

 

「え!?」

 

私達五人は一斉に動き出し、私はリアスとライザー、二人の真ん中で両者を止める。

 

澪は私と共に二人の間に入り互いに光の槍を向ける。私は二人に向かって掌を向け、いつでも倒せる準備を終わらせる。

 

ナリヤは例の鎖でリアスを縛り上げ、メルトはライザーの後ろに回り首元に自分の手を添えている。そして、天さんは既に行動を起こしたのか、壁に背中を預けてこちらを見てる。

 

「これは、どういうことかしら、ササン」

 

「どういうことも何も、私はただ貴方達を止めただけよ」

 

「止めただけにしては少し強引ではないか、翠髪の毒薬姫(ポイズンプリンセス)

 

「いえいえ、これでも手加減した方ですわ。焼き鳥」

 

「誰が焼き……!?」

 

「動かないほうがいいっすよ。スパッといきますよ、スパッと」

 

ライザーの首に力を込めたメルトは笑いながらライザーに言う。ライザーはメルトが本気だと思ったのか、大人しく目だけをササンの方に向けて睨む。

 

「ササン様、少々やりすぎです」

 

「あら、ごめんなさいグレイフィア。離してあげなさい」

 

ササンの指示通り、私達は同時に離し、元の位置に戻る。いや~久しぶりに楽しかったですね。

 

「お嬢様、ライザー様。こうなることはこちらも重々承知でした。それ故、旦那様とサーゼクス様から最終手段が出されました」

 

「最終手段?」

 

「お嬢様。ご自身の意思を押し通したければ、ライザー様と『レーティングゲーム』にて決着をつけよとのことです」

 

レーティングゲーム。下僕達を戦わせて競い合うやつか……なるほど、簡単な話になった。勝てば約束は無し、負ければ結婚。手っ取り早くていいじゃない。

 

「本来ならば、成人した悪魔しかレーティングゲームは行なえません。ですが、非公式とあらば、お嬢様でも参加できます」

 

「そう、お父様達は私が拒否した時の事も考えて、ゲームで決着をつけさせようとしていたわけね。……どこまで私の生き方をいじれば気が済むのよ」

 

「では、降りると?」

 

「いえ、まさか、こんな好機が訪れているのに降りるはずなんてないわ」

 

ほう、リアスの奴やる気満々だね。いいねえ。これぞ悪魔。

 

「へー、受けるのか。いいぜ。俺は構わない。だがいいのか? 俺は成人していて公式試合にも何度か出ている。勝ち星も負け星より多い。それでもやるのかい?」

 

「ええ、消し飛ばしたげるわ!」

 

「分かりました。両者共に戦う意思があるとグレイフィアは確認しました。ご両家のゲームの指揮は私が取らさせてもらいますが、よろしいでしょか?」

 

「ああ」

 

「ええ」

 

「では、ご両家には私の方から報告させてもらいます」

 

礼儀正しく頭を下げるグレイフィアさん。

 

……さて、ササン。ここからどうやって焼き鳥と戦うように仕向けるのかな。楽しみにしてるよ。

 

「ねえ、ライザー。貴方の下僕はどこにいるのかしら?」

 

「なんだ、翠髪の毒薬姫(ポイズンプリンセス)。気になるのか?」

 

「ええ、とっても気になるわ」

 

急にライザーに声を掛けるササン。下僕か……焼き鳥野郎の事だから、どうせ可愛い子だけ集めたに決まっている。いや、確信はないけど。

 

「なら、見せてやろう。俺の可愛い下僕たちを」

 

焼き鳥野郎が指をパチンと鳴らすと、部屋の中に十個くらいの転移魔法陣が出てくる。

 

ゆっくりと魔法陣が消え、出てきたのは悪魔の駒(イーヴィルピース)十五個全てを使ったフルメンバー。

 

まさか……私の予想していた通りだとは。

 

全員女の子! 騎士や魔道士やチャイナ。それに獣耳を生やした女の子二人に、双子! ロリっ子にナイスバディ女二人! 着物の大和撫子にドレスを着た西欧のお姫様! 半分仮面着けた女性に、剣を背負っているワイルド女性に、踊り子!

 

この、変態野郎が!

 

そして、イッセー! 隣で涙を流すな! 悔しいのはわかるが、本気で涙を流して鼻水まで流すな!

 

「それで、全員?」

 

「ああ、そうだが?」

 

「そう……グレイフィア!」

 

「何でしょうか」

 

「これから私はお願いを出します。それを、貴方の判断で大丈夫か決めてもらいたいのです」

 

「お願いとは?」

 

丁寧に言ったササンは立ち上がると、焼き鳥野郎に指を向ける。

 

「ライザー、貴方にレーティングゲームを挑むわ」

 

「なっ!?」

 

「……どういうことでしょうか、ササン様?」

 

「順を追って説明させてもらうわ。ライザー、貴方先ほどリアスの下僕全てを焼き尽くしてでも冥界に連れて行くと言ったわよね?」

 

「言ったが?」

 

「その時、貴方一旦本気を出そうとしてこの建物を全て焼こうとしたわよね。リアスの下僕はともかく、無関係である私とグレイフィアすらも」

 

「な、そ、それは……」

 

「何も言えないわよね。グレイフィアが強いから大丈夫だと思ったなんて言い訳は通用しないわよ。それに、もし、私の下僕が貴方を止めなければ私達は焼き殺されていたかもしれない。……どうしましょうね。つい口が滑って、フェニックス家の三男は無関係の上級悪魔を自分の私欲で殺そうとしたなんて流してしまうかもしれませんわ」

 

「ぐ……何をすればいい」

 

「簡単よ。さっきも言ったけど、私達とレーティングゲームをしなさい。……それに、グレイフィア。リアスとライザーではまだ実力が空きすぎている。特に、まだろくにも戦えやしない赤龍帝君がね。なら、僅かでも修行をつけさせるために準備期間が必要ではなくて?」

 

「……そうですね。確かに、お嬢様にも準備期間は必要です」

 

「でしょ? なら、そうね……約十日後。リアス達はレーティングゲームをすればいいわ。その間に、体が鈍らないよう、私達がライザーの相手をしてあげる」

 

「……少し、話してきていいでしょうか?」

 

「ええ、構わないわ」

 

さっすが、ササン。上手い交渉を仕掛けましたね。これでは、ライザーは嫌でも戦わなければならない。何故なら、上級悪魔としての体裁があるから。

 

噂というのは不思議なもので、あっという間に世間に広がる。もし、ササンの言う通りの噂が流れたとしよう。そしたら、どうなるか? 簡単。ライザーは上級悪魔を殺そうとしたせいで今回の話はお流れ。最悪、御家の存続すら危うい。

 

しばらく魔法陣と何かを話していたグレイフィアさんが戻ってきた。

 

「決まりました……ササン・カラビアとライザー・フェニックスのレーティングゲームは旦那様とサーゼクス様、そしてフェニックス家現当主様から許可が下りました」

 

「そう、なら話は速い。ライザー、そういうことで、やりましょうか。貴方が勝てば、私の持っている噂話は一生話さない」

 

「貴様が勝った場合はどうするんだ」

 

「何、別に私は求めてないわ。……強いて言うなら、貴方が負ければ、貴方の名声は少し減るでしょうね」

 

地味にプレッシャーを掛けますね、ササン。勝ったら何もなし……別にいいですけどね。久しぶりに体動かせるんだったらなんでも。

 

他の四人も同意見なのか、全員口元だけをニヤけさせてササンを見る。

 

「それと、お嬢様。これは旦那様とサーゼクス様の命令です」

 

「命令?」

 

「ササン・カラビアとライザー・フェニックスの試合は下僕共に絶対に見ること。そして、お嬢様とライザーの戦いは十一日後」

 

「……分かったわ」

 

強制的に私達の戦いを見ろと。何を考えているのでしょうね、リアスの父と兄は。

 

「では、ササン様。試合の日程は」

 

「決まってるじゃない。試合は――――――」

 

そこで一旦振り返り、私達を見たササンは挑発するような笑みを見せたあと……

 

「明日よ」

 

堂々と言い放った。

 




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