ハイスクールD×D 天馬の神器を持つ者   作:gbliht

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第二十二話 レーティングゲーム下

ササンの作戦通り、空を飛び回りながら敵の姿を探す。

 

本来ならば、ライザーの所に行って決着を着けてもいいのだが、今回は銀華と澪の試運転もあるため、決着はライザーの眷属が全滅してからにしてくれとササンからこっそり言われている。

 

試運転ならば、はぐれ悪魔と戦えばいいと思うが……そう簡単に見つかるものではないか。

 

「クリストフ。敵の配置を」

 

『少しお待ちを』

 

校庭の真上で滞空し、クリストフに声を掛ける。瞬間、私から球体の魔法陣がこの空間を覆うように飛び出す。

 

これは、クリストフが封じ込められる前に持っていた『感知』の能力。今は気配を探る程度にしか使えないが、全盛期の時は気配だけではなく、相手の動き、未来予知まで可能だったらしい。

 

『校庭に二人、体育館に三人、そして本陣に九名、そして……目の前に一名です』

 

クリストフに言われた通り正面を見ると、上からピンクのドレスを着た金髪で左右ロールの少女が降りてきた。

 

「こんにちは。ササン・カラビアの騎士(ナイト)様」

 

丁寧にスカートの端をつまんでお辞儀をしてくる少女。

 

……この子は確か、フェニックス卿の娘君だったか。名は確か……レイヴェル。レイヴェル・フェニックス。どうして彼女がこのような場所に?

 

「こんにちは、レイヴェル嬢」

 

礼儀正しくされたのならば、こちらも礼儀を持って接する。それが私だ。

 

胸に手を当て、丁寧に頭を下げる。

 

「あら、私の事を知ってらっしゃるのですか?」

 

「フェニックス卿とは懇意の仲ですので。娘様のお噂もかねがね」

 

「そうでしたの……どうです、今からお茶でしませんこと?」

 

今は戦いの最中なのだが、随分とこの子は余裕そうだ。それ程、ライザー……いや、フェニックスに絶対的な自信があるのか。

 

「どうなされましたか?」

 

いかん、考えに没頭しすぎたか。悪い癖だな。考えに没頭してると、黙り込んでしまう。

 

「いや、なんでもございません。お相手させて頂きます」

 

 

 

 

場所を移動し、レイヴェルと二人でお茶を始めて数分が経った。あれから何だが色々と騒がしいが、まあいいだろう。どうせ、他の者が戦っている最中なんだろ。

 

「では、貴方様は死にそうになってから悪魔になったのですか?」

 

「ええ、そうです」

 

話しながらゆっくりと紅茶を飲む。先ほどから色々と話しているが、どれも私がこれまで送ってきた人生の話しばかりだ。

 

何をしていたのか、悪魔になる前はどんな人間だったのか等色々。

 

「そうなのですか……似ていますわね」

 

「誰にですか?」

 

似ているか。いったい誰に似ているのだろうか。

 

「私の憧れの人。五月雨天馬様にですわ」

 

……ああ、そうか。今は五月雨天馬ではなく馬月雨天と名乗っているのだった。私の正体を知っているのは四大魔王とグレイフィア、そして各上級悪魔数名と天使と堕天使のトップのみだからな。

 

「貴方も悪魔になったばかりだとしても天馬様は知っていられるでしょう?」

 

「お噂は」

 

「素晴らしい御方ですよね。神器(セイクリッド・ギア)を持っているとはいえ、ただの人間があそこまで戦うなんて。悪魔の威厳とか無しに、純粋に素晴らしいと思います」

 

徐々にヒートアップしていき、レイヴェルは紅茶を飲むのも忘れて話し続ける。

 

「それに、あの神々しいお姿。文献などでしか見たことはありませんが、美しいですよね。一度でもいいですから本物を見てみたかったのですが……残念な事に、天馬様はもういない」

 

泣きそうになるレイヴェル。まさか、そこまで憧れられていたなんて……なら、今日は最高の日になるのだろうな。

 

ポケットからハンカチを出して涙目のレイヴェルにそっと差し出す。

 

「ありがとうございます」

 

ハンカチを受け取ったレイヴェルは目元をハンカチで拭く。

 

『主よ。そろそろ時間でございます』

 

そうか、ならばそろそろ行くか。

 

「レイヴェル嬢」

 

「どうしましたか?」

 

「そろそろ時間ゆえ、私は行かせてもらいます」

 

「そうでございますか……貴方様との会話、楽しかったですよ」

 

紅茶を飲み干し立ち上がる。そして、悲しそうなレイヴェルの横を通り過ぎてライザーの元へ行こうとする。

 

「っと、言い忘れていました」

 

「どうしました?」

 

レイヴェルの横を通り過ぎてライザーの元へ行こうとするが、やることがまだ残っていた。

 

振り返り、レイヴェルの方を向く。レイヴェルもこちらを振り向いて私の方を見てくる。

 

「レイヴェル嬢。貴方の天馬に対する気持ちはよく分かりました」

 

「それが、どうしたのですか? ……ふえ!?」

 

不思議そうに首を傾げてくるレイヴェルの頭に手を乗せ優しく撫でてやる。

 

「レイヴェル嬢の会いたかった相手に会わせてあげますよ」

 

「っ!? どういう……」

 

質問には答えず、手を頭からどけてライザーのいる方を向く。

 

「天駆ける天馬の脚(ディエイト・ペガサス)起動」

 

呟くと同時に、黄金色の外側に刃が付いた金属のガントレット、足に黄金色で白い羽の付いた金属のレギンスが装着される。

 

「まさか……貴方様は!」

 

「我が名は五月雨天馬。天馬を宿しもの」

 

言うと同時に、軽くレイヴェルを見てからライザーの下へと跳んでいく。

 

「天馬……様」

 

 

 

『ライザー様の兵士(ポーン)二名リタイア』

 

ライザーの下へ向かっている途中、ライザーの駒撃破のアナウンスが聞こえてくる。

 

「クリストフ、ライザーの残りは誰と戦っている」

 

『現在、校庭にて銀華と澪がクイーンとルークと交戦中。ササン・カラビアが校舎にてポーン六名、ナイト二名、ビショップ一名と交戦中。そして、今ルークが一人やられました』

 

『ライザー様の戦車(ルーク)一名リタイア』

 

クリストフが言うと同時にルーク撃破のアナウンスが流れる。

 

なるほどな、終わる頃には到着するか。

 

『ライザー様の女王(クイーン)リタイア』

 

ライザーの本拠地である本校舎に着く。この屋上にライザーはいるのか。

 

『ライザー様の戦車(ルーク)一名リタイア』

 

これで、ライザーの眷属は残り九人。レイヴェルもいるが、彼女に闘う意思はないので、自分でリタイアでもするだろう。

 

『ライザー様の兵士(ポーン)六名、騎士(ナイト)二名、僧侶(ビショップ)一名リタイア』

 

これで、ライザーの眷属は全滅。

 

「さあ、どうするライザー。これで、貴様一人だぞ」

 

屋上への扉を開けてライザーに向かって話しかける。

 

「……」

 

ライザーは屋上の端に立ってポケットに両手を突っ込んだまま無言で空を見続ける。

 

これは、臆して話をしたくないとか、自分の眷属がやられて茫然自失して何も言えない感じではないな。いうなれば、この感じは……覚悟を決めた男の感じだ。

 

「正直この戦いは簡単に終わると思っていた」

 

私の方を向かずに淡々とライザーは語りだす。

 

「俺の眷属は基本的に弱い。俺とユーベルーナ以外は力だけなら中級悪魔程度だ。だが、レーティングゲームを何度も経験しているから、その経験のアドバンテージのお陰でそこいらの中級悪魔以上だとは思っている」

 

そこで一旦言葉を切り、ふぅとライザーはため息を吐くと、両手をポケットから出す。

 

「だが、実際はどうだ? 下級悪魔にコテンパンにやられてる。これには、流石の俺でも呆然としてしまった……だが」

 

振り返り私の方を向き、鋭い眼光で私を睨みつけてくる。

 

「死んだとされていた五月雨天馬が眷属にいるならば、話は別だ。貴方がいる眷属だ。弱いはずがない。いや、弱いまま放置するはずがない。貴方以外の悪魔は力だけなら、もう既に上級悪魔でも必死にならないと勝てない程に育てたんではないか?」

 

よく私の事を理解している。

 

そう、私と銀華、そしてササン以外の三人は上級悪魔位の力は持っている。まだ、戦略やらは拙いものではあるが、それでも力だけなら上級悪魔に引けは取らない。

 

「ああ、確かに私が一年で育てこんだ」

 

「やっぱりな……それなら、俺の眷属がこんなアッサリと負けるのは納得がいく。そして、そんなアッサリ負けた眷属の主である俺の相手はあの天馬」

 

片手で額を抑え、空を見るライザー。

 

諦めて……いないな。この状況下でもライザーは諦めていない。

 

「勝てないかもしれないな……だけどな、俺は勝てない試合だとしても諦めるつもりはない」

 

再び俺を鋭い眼光で睨むライザー。

 

「俺は上級悪魔だとかフェニックス家三男の前に、一人の男であり、十四人の眷属の主だ。その俺が、闘う前から諦めはしない。それに……」

 

「それに?」

 

「俺の愛する眷属を簡単に倒してくれたんだ。これに怒りが湧かなくてどうする」

 

ライザーの体から炎が噴出し、翼へと変わる。

 

……立派な漢としての部分があるのだな。最初からこうだったんじゃないだろうな。私と関わってしまったせいか。

 

どうにも、私と関わる者は少し心境に変化が起こるみたいだな。

 

「そうか……では、戦おうかライザー」

 

「フェニックスの不死と業火、篤とお見せしよう!」

 

 

 

炎の翼を羽ばたかせ、ライザーは空高く飛び上がる。

 

「クリストフ、行くぞ」

 

『了解した、我が主よ』

 

こちらも悪魔の翼を出し、空へと飛び出していく。

 

次々と私に向かって炎の塊が飛んでくる。流石はフェニックス。並大抵の火力じゃないな。当たれば、少しは焦げるか。

 

ま、当たりはしないがな。

 

「流石は天馬、速いな」

 

飛んでくる炎の塊を避け続けてライザーに向かっていく。

 

『rapidly!!』

 

始まったか。

 

私の天駆ける天馬の脚(ディエイト・ペガサス)の能力。それは、十秒ごとに自身の速度を倍にする能力。他にも二、三個あるにはあるが、それはまた今度でいいだろう。

 

ライザーの炎の塊を避けて横に回り込み、右の拳を叩き込む。

 

「ぐッ!?」

 

「ふむ、熱いな」

 

ライザーの体を打ち抜くが、すぐにライザーの体は治ってしまう。

 

ガントレットを着けているというのに右手の拳が溶けてしまいそうなくらい熱い。……個人的にここでは使いたくはなかったのだが、このまま殴り続けたら手が溶けてしまうから仕方がないか。

 

右手を振り、熱を逃がしてから、体に力を入れる。それと同時に、私の体から金色のオーラが溢れ出る。

 

「なんだ?」

 

「これは闘気と呼ばれている生命力のような物だ。ある悪魔から教わった努力の賜物だ」

 

両手両足にその闘気纏い、破壊力と防御力を上げる。

 

この闘気は、リアスの従兄弟であるサイラオーグ・バアルと呼ばれる者から教えてもらったものだ。サイラオーグは滅びの魔力を身につけられず母親以外からは散々能なしなど言われてきたが、私から言わせてもらえばサイラオーグは天才だよ。努力のな。

 

『rapidly!!』

 

再び自身の速度を上げ、炎の塊を躱しながらライザーに近づいていく。

 

「くッ!? なんて速度だ!」

 

今度は闘気を纏った拳でライザーの顔面と腹をほぼ同時に殴りぬく。頭と腹が無くなったというのに、ライザーは自身の炎を更に噴出させて私を焼き殺そうとしてくる。

 

『rapidly!!』

 

炎が迫り来る中ライザーの胸を蹴り、距離を取る。

 

『rapidly!!』

 

数秒炎がグルグルとライザーの周りで回り出すと、徐々に頭をと腹と胸を再生させていく。

 

「ここまで破壊力があるとは……!」

 

『rapidly!!』

 

「待て、何故そんなに天駆ける天馬の脚(ディエイト・ペガサス)カウントが早い!? 天駆ける天馬の脚(ディエイト・ペガサス)の能力は十秒ごとに自身の能力を倍に……まさか!?」

 

「気づいたか」

 

『rapidly!! rapidly!! rapidly!! rapidly!! rapidly!!』

 

私のカウントが何故こんなにも早いのか。簡単な話だ。私自身の速度が上がっているのだから、私と一体になっている天駆ける天馬の脚(ディエイト・ペガサス)のカウントも早くなるのは道理だろう。

 

今までの使い手はこのような事が出来なかったらしいが、何故か私とは相性が良かったのか出来るらしい。

 

ライザーは私のカウントの秘密に気づき警戒するが、既に遅い。

 

もし、不死の存在であるフェニクスを相手にするとき、どうやったら勝てるか? 方法は二つある。一つは神が放つ攻撃並の破壊力を持つ攻撃でフェニックスを殺る。二つ目は、フェニックスの精神を折り、精神を殺す。この二つのどちらからだ。

 

生憎と私は精神を殺すなんていう芸当は出来ない。それはササンの得意分野だ。

 

だから、私はこうするのみ。

 

「一つ教えてやろう。私の天駆ける天馬の脚(ディエイト・ペガサス)は最終的に光を超える」

 

『rapidly!!rapidly!!rapidly!!rapidly!!rapidly!!rapidly!!rapidly!!rapidly!!rapidly!!rapidly!!』

 

天駆ける天馬の脚(ディエイト・ペガサス)から、カウントが一秒も経たずに鳴り始める。それと同時に、私は空中でクラッチングスタートの姿勢を取り、ライザーの方を向く。

 

「ま、聞こえていはいなだろうがな」

 

言うと同時に飛び出す。

 

一歩で音速を超え、二歩で空気の層を突破し、三歩で光を超える。

 

「光灯す光翼馬の波動(ウェーブライトペガシス)

 

光の速度に達した私は、ライザーへと一直線に突っ込んでいく。言うなれば、光速の突進。しかし、これで当たればライザーは死ぬ。

 

ライザーへと当たる瞬間、私は空中で急ブレーキを掛ける。

 

慣性の法則で私の内蔵などはグチャグチャになるものだが、今まとっている闘気を内蔵にまで覆っているからその心配はない。

 

私の体はライザーに当たらなかったが、私の移動スピードが速すぎて、急ブレーキした時に出来た空気の層にライザーの体が当たって粉微塵に消えてしまった。

 

「……終わったか。クリストフ」

 

『分かりました』

 

クリストフの応答と共に、私の体から天駆ける天馬の脚(ディエイト・ペガサス)の装備が消え去っていく。

 

……ふう、終わった。この天駆ける天馬の脚(ディエイト・ペガサス)を使うと、体がだるくて仕方がない。

 

実は自身の体を速くするとしても、何故か私の身体的時間は通常通りに流れていたりする。ここら辺の仕組みはよくわからないが、クリストフに聞いてみたところ、クリストフが私の体力を代償に、身体的時間を通常通りに流してくれているらしい。

 

『ライザー様の僧侶(ビショップ)リタイア。そして、ライザー様リタイア。この勝負、ササン・カラビアの勝利で終了となります』

 

「不死のフェニックス。そこまででもなかったな」

 

私達は案外楽に勝てた。だが、ライザーはこの戦いを糧として次のリアス達との戦いは油断せずに来るだろう。

 

「死に物狂いにならないと、やられるぞリアス」

 




意外とね。ライザーはゲス野郎ではない気がする。

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