ハイスクールD×D 天馬の神器を持つ者   作:gbliht

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もの凄くどうでもいいことで一話使いました。


第二十五話 男に必要なもの

私は朱乃達と別れた後、一人スーツ姿のまま廊下を歩いて、フェニックス卿の下へと向かっていた。

 

柄にもなく久々に泣いたな。何年ぶりだ、あそこまで泣いたのは……。

 

『かれこれ、四十年前ほどですかね。我が主が初めて戦争を体験し、子供が死んだ時以来ではないでしょうか?』

 

……そうか、それ程私は涙を流していなかったのか。意外と、涙は出ないものだな。

 

『我が主は生きている内はもう泣かないと決めておりましたから、仕方がないと思いますが?』

 

確かにそんな誓いを建てた気がするな。

 

『ええ……もっとも、我が主は一度死んだ身。もうその誓いは終わりましたな』

 

そうだな。俺は一度死んで悪魔になった身。もう泣かないという誓いは終わりだ。……だが、泣き過ぎるのも格好が悪い。これからは、あまり泣かないという誓いを立てよう。

 

『ふふ、格好悪くはないと思いますが?』

 

いや、これは俺のポリシーだ。それに、最近年を取りすぎたのか、涙腺が緩くてな。これくらいの誓いを立てておかないとすぐに泣いてしまいそうなんだ。

 

『銀華を見たときも、泣きそうなっておられましたしね』

 

ああ。本当、歳はとりたくないものだな。

 

『何をおっしゃいますか。我が主は悪魔になった身。後何万年も生きられるではないですか』

 

そうなんだが、もう心が若くはないんだ。あのヤンチャしていた頃の性欲もわかん。

 

『それは雄としては一大事でございますね。悪魔はただでさえ出生率が低いのですから、悪魔の男――――――それも私を宿して、三陣営にモテモテな我が主が性欲を失ったら本気で悪魔は滅びますぞ』

 

そうなんだが、どうしてだか湧かないんだ。……はぁ、どうしてだろうか。若い頃は性欲はバリバリあったのだがな。

 

『……我が主、それはもしかしたら、娘ができたからかもしれません』

 

娘……銀華か?

 

『はい。娘の前では雄の本性を表してはダメだと意識していたせいで、徐々に性欲が失われていったのではないでしょうか』

 

……一理あるな。確かに銀華を助けるまでは多少なりとも性欲は残っていた。だが、銀華を娘として迎え入れた途端、一気に性欲は消えたな。……マズイな。これでは、アイツと会った時、夜の営みをしようと言われても出来ないぞ。

 

『あの方に治してもらえばいいではないですか。あの方はそんな我が主でも性欲を滾らせることは出来るでしょう』

 

難しいな。死ぬ前は性欲がなくても別に構わなかったが、悪魔になってから性欲が必要になるとは。

 

『我が主、頑張りましょう。魔王の夜伽は激しいですぞ』

 

若い頃はもったが、今は本気で死ぬかもしれんな。

 

「……っと、ここか」

 

クリストフと話ながら歩くこと数分。私はフェニックス卿がいる部屋の前へと着いていた。

 

「フェニックス卿、天です」

 

「天さんか、入ってくれたまえ」

 

ドアを三回ノックして声を掛けると、中からフェニックス卿の声が聞こえてくる。

 

「失礼します」

 

フェニックス卿の許可を得たため、中に入るとそこにはソファーに座っているフェニックス卿とソファーの影に隠れている金色のツインドリルが……レイヴェル、何をしているんだ?

 

『多分、我が主が来たことで動揺し、咄嗟に隠れたのでしょう』

 

何故だ……と聞くのは野暮だな。レイヴェル的には、憧れの人物が現れたのだ。しかも、憧れである私にレーティングゲームの際、凄い楽しそうに語っていた。

 

つまり、レイヴェルが隠れている理由は、本人だと気づかずに話していた自分が恥ずかしいからだろう。

 

「どうしましたかな、天さん」

 

「いえ、フェニックス卿の御息女が私のファンという事で、この度は会いに来た次第です」

 

「おお! そうでしたか! それは良かった。家のレイヴェルは天さんに憧れを抱いていましてな! 一度でいいから会ってみたいと言っていたのですよ! ……あ、すみません。こんなに大声を出してしまって。どうぞ、座ってください」

 

ニコニコ顔のフェニックス卿は立ち上がるとソファーに手を向け、座るように促してくる。

 

「失礼します」

 

「そんな硬くならないでください。昔のようにタメ口で構いませんよ」

 

「そうですか……ならば、私からも願おう。フェニックス卿。昔通りタメ口で話してくれ」

 

「ええ……分かった」

 

一通りの茶器を用意したフェニックス卿は私とフェニックス卿の間にあるテーブルに置くと、ニコニコ顔で再び話し始めた。

 

「紅茶にコーヒーに日本茶。どれが好みかわからんから適当に飲んでくれ……」

 

「ああ、適当にいただくよ」

 

とりあえず日本茶を取り一口。ふむ、旨いな。さっき変な飲み物を飲んだから、丁度いい。

 

「いや~しかし懐かしいな! 天! どれほどぶりだ?」

 

「私が転生悪魔になって、こちらの業界で礼儀作法を覚えた辺りだから、半年くらい前か」

 

「そうかそうか。それしかまだ経っていないんだな。もう、何十年も会ってない気がしたぞ」

 

「時間の感覚が狂ってきているな。そろそろボケ始めたか?」

 

「何言ってんだよ。俺はまだボケはきてないぞ」

 

「そうか……所でレイヴェル嬢。いつまでそうしているんだ?」

 

ソファーの影に隠れていたレイヴェルはビクッ! と体を震わせ驚く。その姿をフェニックス卿は面白そうに見ている。

 

「すまんな、天。レイヴェルは本当にお前に憧れていたんだ。俺が一回話してやった天の姿や伝説を語ってやったら、そりゃあもう目をキラキラさせて食いついてくるんだ。そこからは、お前の伝説や姿が描かれている本を食い入るように読むようになった」

 

「お、お父様!」

 

ソファーの影から飛び出してきたレイヴェルはフェニックス卿に怒鳴ると、ハッとした表情で固まってしまった。

 

「ほら、レイヴェル。憧れの天だぞ。言ってたじゃないか。天に会いたいって」

 

「そ、それは……その……」

 

スカートの裾を持ち、モジモジ体を動かして頬を赤くさせるレイヴェル。年頃だ。こういう憧れの人に出会うのは恥ずかしいのだろう。例えるなら、憧れのスターが目の前にいるようなもんだからな。

 

「フェニックス。レイヴェル嬢もお年頃だ。憧れの人に会って、素直に憧れてました、なんて話しかけられる歳じゃない。もう少し、考えてやれ」

 

「そういうものか? 家では毎日のようにお前の伝説を聞かせてくるんだがな」

 

「お父様!」

 

「いでで! 髪を引っ張らないでくれ!」

 

……ああ、仲いいな。私と銀華はこういう親子のような行動はあまりしてこなかったからな。

 

『そうでもありませんよ。我が主は気づかぬ間に自然とやっておりましたよ』

 

……それならばいいのだが。

 

髪を引っ張られているフェニックス卿は急に何か思いついたような表情をすると、レイヴェルを自分の正面に連れてきた。

 

「なあ、天。急にで悪いんだが、もしよければレイヴェルをお前の嫁にしないか?」

 

「なッ!?」

 

「どうした、急に」

 

いきなり嫁にしないかだと? まだレイヴェルはそんな年齢でもないだろうに……急にどうしたんだ?

 

フェニックス卿はレイヴェルを自分の前に立たせながら頭を掻き始める。

 

「聞いてくれ。俺は多分、今回の婚約の話はなくなると思うんだ」

 

「リアスとライザーのか?」

 

「ああ。十中八九間違いなく破談する」

 

……ふむ、フェニックス卿が言うように、多分今回の婚約は破談となるだろう。サーゼクスもリアスの父もそう考えている。

 

あの二人も、表面上は上級悪魔の血を絶やさないと言ってはいるが、本心ではリアスの好きなようにさせたいと考えている。そんな二人が、無理矢理ライザーとリアスを結婚させるわけがない。

 

フェニックス卿は手を顎に当てると、ふぅと息を吐く。

 

「確かに、純潔の悪魔の血を絶やさないのは分かる。だが、正直な話し、俺はそんなのどうでもいいんだ。それに、今回の婚約の話が破談しようが、俺にはまだ二人いるからな」

 

「二人? レイヴェルはどうした?」

 

「そう、そこなんだよ!」

 

パン! と自分の両膝を掌で叩いたフェニックス卿はレイヴェルの両肩を掴む。

 

「家のレイヴェルはな、メッチャ可愛い! 目に入れても痛くないと断言できる!」

 

「あ、ああ」

 

フェニックス卿は机をバン! っと叩き立ち上がると、拳を握りながら熱弁し始める。私は、その迫力がありすぎる熱弁に思わず引いてしまう。

 

「可愛さでいえば、悪魔のトップテン入りすることは間違いなだろう! 今出来ないとしても、大人になったら必ずスリー以内に入るだろう!」

 

「そ、そうか……」

 

フェニックス卿の横で顔を真っ赤にしながら俯くレイヴェル。

 

レイヴェル、その気持ちは大に分かる。他人の私でも、この親バカっぷりは恥ずかしい。銀華という娘がいた私でもここまで親バカになってなかったぞ。

 

『我が主はコッソリと親バカしていましたがね』

 

なに?

 

『戦場を一人で行かせたのにこっそり後ろを付いていったり。銀華に告白しようとした男を陰でボッコボコにしたり。他にも口では言えないような親バカっぷりが多数ありましたよ』

 

ば、馬鹿な! あれくらい普通だ! 銀華を一人で行かせたのはまだ成長しきってんない状態であったためであり、男をボコしたのは銀華に相応しくない男だと判断したからであり――――――

 

『それが親バカだというのですよ』

 

馬鹿な!?

 

「そんな可愛すぎるレイヴェルがだ! もし、どこぞの馬の骨ともわからない奴に目をつけられたらどうする! いや、それ程までにレイヴェルは魅力的すぎるから仕方がない……だが! それでもだ! 私の可愛いレイヴェルをどこぞの馬の骨ともわからない奴に目をつけられるのだけは勘弁願いたい! ましてや結婚しようなんて言ってきたら俺は死ねる!」

 

フェニックス卿が熱弁しているが、私には少ししか入ってこない。クリストフに言われたのが衝撃的すぎる。私が、フェニックス卿と同じくらいの親バカだということが。

 

ショックを受けてると、急にガシッと両肩を掴まれた

 

「そこでだ! お前なら、レイヴェルをやってもいい! どこぞの馬の骨に渡すくらいなら、信頼できるお前に嫁がせる! レイヴェルもお前を好いてることだ! 丁度いい!」

 

ブンブンと前後に振られる。

 

なあ、クリストフ。ここまでの話を聞いていなかったから、簡単にまとめてくれ。

 

『どこぞのわけのわからん奴らにレイヴェルをやるくらいなら、娘が好いていて、尚且信頼できるお前にやる。だから、娘を大切にしろよこの野郎……ってことです』

 

成程、私が放心している間にそんなことになっていたのか。

 

「事情は分かった。だから離れろ」

 

「グッ!」

 

デコピンをかまし、フェニックス卿を弾き飛ばす。フェニックス卿はデコピンの勢いてソファーまで吹っ飛び、ソファーごと後ろにズッコケた。

 

「事情は分かった。……だが、私は嫁を取る気は毛頭ない」

 

「ッ!」

 

レイヴェルがギュッとスカートの裾を握るのがわかる。そんな反応をされても困る。こっちは六十年以上人間として生活してきたのだ。そんな私が、今更嫁を取る気なんて沸くわけがない。ましてや、銀華より年下の少女を相手に。

 

ソファーと一緒に倒れていたフェニックス卿は起き上がると、驚いた表情をして固まっていた。

 

「なん……だと! お前、まさかもう性欲が沸かなくなったのか!?」

 

「ああ、どうやらな。昔は幾分か残っていたが、人間の状態で六十年近く生きていたせいか、心の中から性欲が消えかかっていてな。だから、嫁を取りたいなんて気が起きない。後、アレをする気も起きん」

 

アレはアレだ。男女の営みだ。

 

「馬鹿な……かつてアレだけ女を惚れさせ、魔王レヴィアタン様ともヤったお前がか!?」

 

「クリストフが言うには、娘を得た事で性欲への欲求を閉ざしていたせいで、機能しなくなったんではないかと言う判断を得ている」

 

「嘘だ……何十人とは言わないまでも、三人くらいとは肉体関係を持っていたお前の性欲が消えるなんて……思い出せ! 思い出すんだ! 天! お前みたいな若者の――――――しかも最上級悪魔クラスの悪魔が性欲を失ったら、悪魔は途絶える!」

 

クリストフも同じような事を言っていたな。だが、私だけが性欲を失ったとしても、悪魔は滅びんだろう。私より性欲旺盛でこれからモテるであろうイッセーがいるのだから。

 

「そういう訳で、私はレイヴェルは貰えん。他にいい相手を見つけるんだな」

 

ストンと脱力しきってソファーに座り込んだフェニックス卿は頭を抱えると黙り込む。

 

さて、そろそろ帰るか。今回、本当はレイヴェルにサインの一枚でも置いていこうと思っただけなのに、なんでこうなった。

 

『我が主は色々な方々から信頼を得た上でモテますからな。こんな事態になったのは必然というもの』

 

「……め……」

 

帰ろうとお茶を飲み干し机に置くと同時に、フェニックス卿はなにか呟いた。何を呟いたの聞こうとした瞬間、フェニックス卿はガバっと顔を上げ――――――

 

「駄目だ! 許さん! お前のような強大な悪魔が性欲を失ってはダメだ! 絶対にお前にレイヴェルを嫁がせる!」

 

「おいおい、理解できなかったか? 私は嫁を取らないと……」

 

「ああ、聞いた! だからお前に嫁としてレイヴェルを嫁がせると言うのだ! レイヴェル!」

 

「ひゃいッ!?」

 

フェニックス卿はレイヴェルの両肩を掴むと真っ直ぐと見つめた。

 

「レイヴェル、お前はどう思う。天の事が好きか? 嫌いか?」

 

「え、っと、それは、その……」

 

「ハッキリするんだ。もし、嫌なら無理に婚約などさせん。だが、もし好きならば婚約の話は通す」

 

しばらく視線を右往左往させたレイヴェルは意を決めたのか、顔を赤らめて俯き、小さく呟いた。

 

「好き……です。天さんのお嫁さんになりたいです!」

 

「よし、よく言った! それでこそ俺の娘!」

 

何かを決めたのか、フェニックス卿は片手でレイヴェルの肩を、片手で私の肩を掴むと、レイヴェルと私を互いに真っ直ぐと見合わせる。

 

「レイヴェル、よく聞け! お前は今から天に嫁ぐと心に決めるのだ! そして、天の性欲を沸き出させるように性的に襲え!」

 

「「……は?」」

 

異口同音。レイヴェルと私は互いに同じ言葉を放っていた。

 

性欲を沸き出させるよう、私を性的に襲えだと……? 何を考えている! 馬鹿かコイツは! 銀華より年下の女の子相手に出来るわけがなかろう!

 

「お、お父様! それはまさか、その……」

 

「そのまさかだ! 何年かかってもいい! 必ず天の性欲を目覚めさせるんだ! いや、お前一人でなくともいい。天を好きだと言う奴と共に頑張り、性欲を目覚めさせるのだ!」

 

「フェニックス。そんなのは無理だ。そもそも、私の性欲を復活させる宛はとうに出来ている」

 

先程の話で出てきた魔王レヴィアタン。彼女なら、私の性欲を復活させる事ができるかもしれん。

 

「ならば、俺の娘を貰うことができるな。だったら、今のうちから一緒に暮らしておけ」

 

その考えでいけば、そうなるのだが……私はもうオヤジだぞ。言うなれば、七十の爺だぞ。悪魔から見たら若いが、人間から見たら確実に年齢差は五十以上になるぞ。

 

「家には娘が二人いるのだが……」

 

「ちょうどいいじゃないか。その二人の娘に紹介しておけ」

 

「出来るわけないだろう。娘二人はレイヴェルより年上なのだぞ。それなのに、娘二人に娘より若い子を連れてきて、『この子が私の嫁だ』なんて言えるわけがない」

 

そんな事を言った日には、家の中で悪魔、天使、堕天使を巻き込んだ全面戦争が起こる。比喩ではなく本当に。

 

「いいや。それでも、俺の娘は貰ってもらうぞ!」

 

……これは、なんと言おうが絶対に諦めないな。どうすればいい……

 

『もらわれては如何でしょうか?』

 

出来るわけないだろう。娘より年下なのに。それに、私にはそういう趣味はない。どちらかというと、同年代の奴がいい。

 

『ならば、彼女が我が主の言う年齢になるまで待てばよろしい』

 

だが、私は特にレイヴェルを何とも思ってはいないのだぞ? それなのに、貰うというのは、男として最低な野郎になってしまうぞ。

 

『そんなものは時間がなんとかしれくましょう。ゆっくりと時間を掛けて、我が主は彼女を愛していけばよろしい』

 

……。

 

『それに、我が主はまだ心に決めた者がおりません。自然と生活している内に、彼女を愛し抱きたいと思い始めるかもしれませんぞ』

 

確かに私は未だ心に決めた者はいない。

 

『ですがまあ、愛せなかったら違う方面から愛せば良いのですよ』

 

違う方面?

 

『ええ。銀華を愛するように、自分の娘のように愛せば良いのですよ』

 

それでは、子をなしたいとは思わなくなるぞ。

 

『そこは魔王様に頑張っていただき、性欲を復活させましょう。そうすれば、義理の娘を一人の女として見れましょう』

 

それは、男として一番最低ではないか? 性欲が沸いたから義理の娘とヤルなんて。

 

『最低か最低ではないかを決めるのは相手です。我が主の心がそうしたいのならば、相手と確認をとってすればよいだけ。それに、今の論点はフェニックス家の御息女を嫁にするかどうかでございます。子をなすかどうかは別問題でございますよ』

 

……はぁ、まさかこの年になって嫁問題が出てくるとはな。両親が生きているうちはこんな事はなかったのだが。

 

「……分かった。フェニックス、レイヴェルを貰おう」

 

「おお!」

 

「だが、二つ条件を付けさせてもらう」

 

指をピンと2本立てる。

 

「まず一つ。私はまだレイヴェルとは結婚はしない。結婚するのは、最低でも二十年後。大人になってからだ」

 

「それでも構わない。……娘がそれを認めるならば」

 

チラッとレイヴェルを見ると、そこには右手を大きく上げて目をキラキラさせているレイヴェルが。

 

「はい! 私はいつまでも天さんを愛します!」

 

「そうか……それで、二つ目は?」

 

「ああ、二つ目が肝心だ。……正直な話をすると、私はまだ誰と結婚するか決めてはいない」

 

「誰と……?」

 

「もしかしたら、レヴィアタンと結婚するかもしれない。他の奴かもしれない」

 

「それは、つまり……私を捨てるという事でしょうか?」

 

涙目になりながら言ってくるレイヴェルに、首を左右に振る。

 

「いや、捨てはしない。正確に言えば、私はハーレムをつくるかもしれないという事だ」

 

「ハーレム……?」

 

「今のところ、五人。いや、もしかしたらそれ以上になるかもしれないし、それ以下になるかもしれない。私としては、全員を愛すと誓えるが、女性の方達はそれを納得しないかもしれない。納得はさせる予定だが。……まあ、私の性欲次第でハーレムになるかどうか変わるのだが」

 

そこで一度言葉を区切って天井を見てから、再びレイヴェルを見る。

 

「それでも、いいという事を条件に出したい。もし、私がハーレムを作ったとしても、他の者達と仲良く出来るか?」

 

「少し……考えさせてください」

 

この年齢の少女には酷かもしれないが、これだけは先に言っておかねばならない。この条件が呑めなければ、最初の約束を破ってしまうかもしれないからな。

 

ならば、この婚約を無くせよと思うかもしれないが、フェニックス卿は今回の婚約の件は絶対に諦めない。もし、強引に私が断れば、フェニックス卿とレイヴェルの心に深い傷を負わせてしまう。

 

しばらく考えこんだレイヴェルは私の瞳を真っ直ぐと見てくる。

 

「私は……もしかしたら、他の方に嫉妬してしまうかもしれません。恨めしく思うかもしれません」

 

「そうか」

 

やはり、ダメか。

 

「ですが――――――」

 

レイヴェルは息を大きく吸うと、はぁと息を吐く。

 

「私は天さんが絶対に私も愛してくれると信じています。他の方とは多少なりともいざこざはあるでしょうが、それでも良いのならば、私をお嫁に貰ってください!」

 

勢いよく頭を下げてくるレイヴェル。

 

そこまで私は信頼されているのか。……ならば、信頼には答えなければならないな。

 

私はソファーから立ち上がりレイヴェルの下まで歩き、レイヴェルの手を取りながら膝を着く。

 

「こちらこそ、よろしく頼む。二十年という長い時間を掛けさせてしまうが、必ず君を迎えに行こう」

 

「ッ! 必ず……お願いします!」

 

涙をポロポロと大きな瞳から流し出すレイヴェル。

 

『我が主は女泣かせでございますね』

 

うるさい。私が女性を泣かしたのは、これで二度目だ。

 

『……ふふ、そうでございますね。ですが、これからは気をつけてくださいまし。これからは、我が主の身が危険に晒されるとこのように泣く者が増えていきますゆえ。』

 

分かっている。出来るだけ、気をつけるさ。……だが、今は革命時だ。各陣営で平和へと向かう革命が起きつつある。今はまだ悪魔だけだが、そのうち三陣営と言わず、世界中で平和に向かう革命が起こる。

 

『ええ。ですが、この世の中には平和を願わない者達が出てくる。それは誰かは分からない。けれども、確実に出てくる。命を掛けた戦いが確実に起こる。だから――――――』

 

ああ、だから――――――

 

『「私達は平和を目指す者達のために修羅道に落ちよう」』

 




フェニックス卿のテンションがおかしいのは気にしない方向で。
次回、ようやく合宿。

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