「……っと、そんな訳です」
「そう……ありがとう、銀華。この後も、引き続き監視をお願いしてもいいしら?」
「いいですよ。では、これからも続行します」
イッセーの監視をした次の日。私は朝一でリアスの元へと行き、昨日の報告をしていた。別段、特に変わった事はなかったが、それでも一応の報告は必要だろうと思ったから。
それで、再び監視の手伝いをすることになった。まぁ、私も別に一日だろうが二日だろうが変わらないので了承した。……流石に十日とか一ヶ月とか言われたら断りますが。
「それと銀華のクラスの担任。新しい先生になったから」
部屋を出る途中、リアスがそんな事を言ってきた。
「その事なら知ってますよ。ササンが言ってました」
「あらそう。ちなみに、その先生は、ササンの眷属らしいから、仲良くして頂戴ね」
ってことは、新しい先生は悪魔だということですか……ま、私は悪魔じゃないので関係ないですが。
それにしても、昨日の男の人は悪魔だったんですね。あの時はそんな気配は感じなかったですけど……。
「えぇ、分かりました。それでは、失礼します」
それだけを言い、私は部室を出た。
「……銀華先輩。おはようございます」
「おはよう、小猫ちゃん」
旧校舎を出て、新校舎へと向かっている途中、向かい側から来た後輩に挨拶をされた。
彼女の名前は塔城小猫ちゃん。我が校のマスコット的存在である。その姿は、白髪のショートカット? に小さな体。一部のロリコン共から好評で、なんかファンクラブがあるとかないとか……。
猫っぽい見た目みたいで無口な子だが、この子はリアスの眷属である。『戦車
「……何か失礼なこと考えてませんでしたか?」
「別に考えてないよ。それにしても、どうしてここに居るの? もう、授業始まっちゃうよ?」
「……いえ、少し風に当たりたかった気分だったので」
「ふ~ん」
明後日の方向を見ながら、小猫ちゃんは言ってくる。
その気持ちはなんとなくわかる気がする。私も今、無性に彼の事を思い出しているから……。
彼との戦場。彼との生活。そして、彼との旅。何故か無性に今、思い出しているのだ。なんででしょうね? 今彼の事を思い出すなんて……何かの前触れか何か?
ま、小猫ちゃんの場合は、私とは違う思いがあるんだろうけど。
「っとと、早く行かないとね。一緒に行こうか、小猫ちゃん」
ぼーっとしていたせいか、時計を見れば、もう朝のホームルームが始まる時間になりかけていた。
「……はい」
「おはよう」
「「おはようございます!! 銀華様!!」」
小猫ちゃんと教室の前で別れて、教室に入ると、敬礼をした状態で挨拶をしてくる松田と元浜が現れた。
ぶっちゃけうざい。ってか、周りの視線を気にしないでやってる辺り、こいつら狙ってるのですかね。
……ん? そう言えば、イッセーがこの二人と一緒にいないのは不思議ですね。さて、どこにいるのやら……。
なんて、教室を見渡してみると、俺勝ち組っすから! みたいな表情で、ドヤ顔しながら机に座っているイッセーがいた。
正直言うと、可哀想。折角彼女が出来たというのに、その彼女は堕天使なのだから……自分が殺されるかもしれないのに。……本人はそんなこと知らないでしょうが。
「まあ、おはよう。ゴミ二人」
「「ありがたきお言葉!!」」
取り敢えずゴミ二人を放置して、予鈴がなると同時に席に着いた。
予鈴がなってしばらくすると、一人の男性が威風堂々と教室のドアを潜ってくる。その姿に、教室にいる皆は、一様に息を詰まらせ、いつもなら先生が入ってきても話をしている男子たちも黙ってしまう。
髪は黒色のオールバック。顔はイケメンで、私達とたいした年齢差が無いように見えるほどの外見。普通なら、女子の黄色い声が上がったとしても不思議ではないが、彼の纏っている雰囲気のせいで、そんな事を女子達はできないでいる。
「今日から、このクラスの担任になる、馬月雨天
そんなクラスを見渡した彼は、自分の名前を黒板に書くと、ニッコリと笑った。
その表情は、まるで年季に入ったお爺ちゃんのよう。普通ならそんな感想を抱くべきではないのだろうが、何故かこの人の笑顔はそう受け止められる。
笑顔を浮かべた彼によって、彼の纏っていた雰囲気が霧散する。そのお陰で、クラスの皆も、いつもの調子を取り戻した。
「さて簡単な自己紹介はこれで終わりにするから。次の授業の準備して待ってろよ」
彼……雨天さんはそれだけを言うと、そのままクラスを出て行ってしまった。もう少し、自己紹介のなんかはないのかと思うが、別にいいか。後で、リアス達の所で自己紹介すればいいよね。
そうして、次の時間の準備をして、私は席に座って授業を待つのであった。
「どう? 初めての教師は?」
「慣れないものだ」
クラスのホームルームを終わらせた私の『騎士
「その内なれるわよ……で? どうだった?」
「……成長していたよ。たかが一年会ってないだけで、かなり大人びてたよ。クラスの友達とも仲良くやってるようだし」
彼はその顔に微笑みを浮かべつつ、まるで我が子を自慢するかのように言ってくる。……いや、実際我が子なのかな? 育ての親なんだから。
「それは良かったわ」
「あぁ。それに、面白い子もいたな」
「二天竜の子?」
「そう。見た瞬間、私の神器
それは大変だった事。彼の神器
「じゃあ、そういうことで。ササンも、早く教室に戻るんだぞ?」
「私は心配しなくていいわ。単位なら、三年間授業にでなくても有り余るくらいもらっているから」
「それは、ありえないだろ」
呆れた表情のまま、彼はため息を吐くと、ゆっくりと歩き出して、私の肩に手をおいた。やっぱり、動きが見えない。これで、刺されでもしたら、大変なことでしょうね。
「まぁ、それでも、青春の一ページとして授業に出ることをお勧めするよ」
「肝に銘じとくわ」
耳元で呟いた彼は、そのまま私の肩から手を離すと、歩いて行ってしまった。
振り返り、彼の姿を確認しようとすると、そこには彼の姿はない。相変わらず、ありえないスピードを出すわね、彼。
「ま、そんな所がいいから眷属にしたんだけれどね」
再び振り返り、正面を向いた私は、自らの教室に、鼻歌を歌いながら向かうのだった。
「うーん。ようやくこれで、全部の授業が終了しましたね」
全ての時間の授業が終了し、雨天さんによる帰りのホームルームがようやく終わった。
さて、さっさと部室に向かいましょうかね。雨天の事も自己紹介して欲しいですしね。……あ、イッセーの監視、どうしましょうか。……ま、後ででもいっか。
「銀華さん」
「おや、木場君」
部室に向かおうと、カバンを持って教室を出ると、隣のクラスから、ある意味幼馴染の木場君が現れた。
木場祐斗。イケメン。金髪。以上。
後、私と同じ、聖剣計画の生き残りの一人でもある。その為、彼とは面識はあるのだが、私は天馬さんのお陰で、あまり過去を引きずってはいないが、彼はかなり昔の事を引きずっている。……それは、まぁ、今度ということで。
「銀華さん。一緒に部室に行かない?」
「別にいいですよ」
二人で横に並び、廊下を歩いていく。
なんか、女子たちから、「キャ――――!!! 美男、美女カップルよ―――!!」とか、「クソ、木場の野郎め、あの銀華さんに手を出すなんて!!!!」とか、「大丈夫よ!! 木場君はホモだから!!」とか。なんか、よくわからないことが囁かれている。
「木場君。ご愁傷様」
「ハ、ハハ……」
苦笑いを浮かべるイケメン。困っているイケメンというのは、なんかとても情けなく感じた。
「こんに……ち、は?」
「リアス、こんにち……は?」
部室の扉を開けて中に入ると、そこには、頭を抱えて、ササンとチェスをしているリアスの姿があった。
チェスはリアスの劣勢。どこをどう足掻いても、この戦況はひっくり返らない。
「は~あーい 銀華ちゃん、木場君。こんにちは~」
余裕で腕組みしつつ、リアスを見下しながら、ササンはこちらに挨拶をしてきた。そして、そんなササンの隣に、ソファーに座った小猫ちゃんにケーキを出している雨天さんの姿ある。
「リアス、諦めなさいよ」
「むぐぐ、ま……まだ、よ」
「もう。そう言ってから、二分は経つわよ」
取り敢えず、チェスをしているリアスとササンを放置して、私と木場君は、小猫ちゃんの座っているソファーの向かい側に座る。
「雨天さん。私にもケーキをくれると嬉しいのですけど」
「どうぞ」
言葉はぶっきらぼうだが、雨天さんは一瞬で私の前にケーキとファーク、そして紅茶を入れて置いてくれる。
そのスピードは異常までに早く、私の目ですら追いきれなかった。それに―――
「美味しい」
「……それ、雨天さんの手作りだそうですよ」
「へ~」
ケーキの美味しさがやばい。こう、言葉では現れない程に美味しい。更に、紅茶を一口飲むが、ケーキとの相性は抜群で、とても美味しい。
「美味しいです、雨天さん」
「それは良かった」
無愛想にそれだけを言うと、雨天さんはササンの傍らに立ち、リアスに二、三助言を加え始める。
「ここと、ここ。で、ここをこうすれば……」
「あ、ああ!! そういうこと」
「さっすが、私の『騎士
雨天さんの助言に、チェスの情勢は一気に逆転し始めている。この位置からは見えない為、その後どうなったのかは分からないが、結局最後にはリアスが負けてしまった。
「あ~あ、負けてしまったわ」
「まだまだね、リアス。その程度じゃあ、私を倒せないわよ」
「む――! いいもん。今度、絶対勝ってやるんだから」
お姉様風を吹かせているリアスだが、実は子供っぽいところもある。事実、今負けがこんだリアスは、子供っぽく頬を膨らませたし。
「それは置いといて、ササン。貴方の眷属の自己紹介をお願いできるかしら?」
「リアス。その前に一ついい?」
ササンが喋りだす前に、私はリアスに手を挙げた。
「なに? 銀華?」
「朱乃がいないんだけど、どうしたの?」
「朱乃には今、イッセーの監視を任せているわ」
な~るほどね。どうりでいないわけだ。実質その仕事は私がするべきなんだろうけど、今は朱乃に任せましょう。私にだって、休みが必要だからね。
「で、ササン?」
「わかったわ」
リアスの言葉に、ササンは一度頷いて、胸の前で両手を組んで右手の人差指をピンっと立てた。
「ササン・カラビア……は分かっているわよね。それじゃあ、私の説明は省いて。こちらが今回新しく入った、『騎士
「馬月雨天。元人間の転生悪魔だ。これでも一様皆よりは最年長者だ。よろしく」
簡潔に自己紹介を終えた雨天さんは、その場で頭を下げる。
「それじゃあ、雨天。こっちの眷属の自己紹介を……」
「いや、結構」
リアスが私たちの事を紹介しようとするが、雨天は手を前に出すことによって、拒否する。
「こちらは、そっちの素性を全て知っているので、大丈夫だ」
……? 一体何故私たちを知っているのだろうか? ……ササンにでも教わったのだろうか。
そういう疑問を持っているのか、周りの皆も私同様、同じ表情をしている。
「雨天には、私から貴方達の事を教えたわ」
「そう。そういう事は先に言ってよね」
やはりそうだったのか。でも、どうしてだろうか? 感覚的に、ササンから雨天が教わったって感じがしない。なんて言うか、最初っから知っているたような気が……。
……そうか、私の霊的な瞳
「発動」
ボソッと小声でいい、私は霊的な瞳
うん、嘘は言ってない。………って、え!? このオーラって、まさか……でも、だってあの人はいないはずじゃあ……それに、悪魔の駒
「それじゃあ、今日は私達は帰るわね」
「あ……」
霊的な瞳を使う事に集中している間に、雨天とササンは部室を出て行ってしまった。
あれは、あれは一体誰だと言うの……。やはり、あの人なのだろうか……。
「天さん……貴方、なのですか……」
如何だったでしょうか?
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