彼――――雨天が教師としてやって来てから、二日が経過した。
未だに彼だという確信が得られないままだったが、一応彼とは仲良くしながら、探りを入れつつ学校生活をしている。
直接聞けばいいのかもしれないが、それでは彼にはぐらかされてしまい、真実かどうかの確信が得られない。なので、じわりじわりとこっそり探っているというわけ。
そんなある日の土曜日、イッセーに動きがあった。正確にいえば、堕天使の方なのだが。
「ほほう、なんとまあ、ロマンチックだこと」
電柱の側面に垂直にくっつきながら、イッセーのいる公園の一角を見る。
そこには、ベンチに座り、夕日をバックにしてロマンチックな雰囲気を醸し出している、イッセーと堕天使の姿があった。
そんなベンチに座っている二人の内一人、堕天使の方が立ち上がり、夕日をバックにして立ち上がる。
その姿は、幻想的な印象をイッセーに与えてるんだろうな~私的には、ちょっと気味悪く感じるけど。
……おっと、これはこれは、イッセーの奴、キスされると思っているのか、頬を緩ませて、立ち上がったぞ。
「でも、これはちょっとマズイですね」
電柱の側面から降りて、地面に着地し、霊的な瞳
霊的な瞳
っと、やっばいなあ。堕天使の奴、とうとう本性晒して、翼なんか出し始めたよ。それだけならいいけど、光の槍まで出して、イッセーを殺そうとしてますよ。
「間に合うかな?」
本気で走ってはいるけども、なまじ距離がある為、間に合うかどうか分からない。
ちょっとした説明に入るが、霊的な瞳
で、そのオーラって言うのは、実は肉体強化も出来たりもする。これは、彼――――天さんと共に旅している時に気づいたものだが、その見えてるのを応用して、自分のオーラを自己の強化に回せないかなと思ってやってみたら出来たわけ。
それと、自分のオーラを操れば、電柱だってなんだって貼り付けるられるんですよ? 勿論、電柱だけではなく、なんにだって貼り付くことだってできます。……これ、ちょっとしたお金稼ぎができるかも……。
まあ、それはいいとして、今はそのオーラってやつで足を強化して、自動車並の速度を出しているわけだけど……まっにあうかな~。
「あ、駄目だわ。間に合わない」
後一分……いや、三十秒あれば着いたけど、もうイッセーに光の槍が放たれていた。
こりゃあ、間に合わない。もう、光の槍が刺さったな……と、思ったら、意外な人物がその場に現れた。
「あれは……雨天さん?」
雨天さんは、光の槍がイッセーに刺さる直前に、素手で横から握り止めた。
「何をしている?」
「誰よ貴方!」
「この子の学校の教師だ。悪いが、俺の生徒に出だしはさせんぞ」
私が公園に到着すると同時に、雨天さんは握っていた光の槍を握り潰すと、イッセーの前に立ち、堕天使を睨みつける。
「っ!?」
光の槍が握りつぶされた事と、睨まれた事によって、堕天使は息を飲む。
その気持ちはわかる。雨天さんの睨みつけてくる瞳が、なんというか、その、一言で言うなら怖い。でも、懐かしすらもある。
昔っからあの瞳を、私は見ている。それも、ごく最近、そう、一年前まで。
……やっぱり、貴方なのですか、天さん。
「堕天使レイナーレ。一度のみ忠告する。この場を去れ」
「なにを……」
「去らんか!」
「ヒッ!」
「ッ!?」
雨天さんが大声で堕天使に一喝すると、大気が震え、周りの砂は舞い、木々はまるで台風のように揺れる。
迫力のありすぎる一喝に、堕天使は小さな悲鳴を上げると、自分で飛ぶことも忘れて、涙目になりながら走って逃げ始めた。……あ、転んだ……。
「う、雨天、先、生……」
呆然としているイッセーは、なんとか喉から声を搾り出すと、雨天さんに向かって手を伸ばした。
「せ、先生は一体……」
「すまんな」
「ッ!?」
イッセーの言葉が終わる前に、雨天さんは振り返りながら歩き、イッセーの首の後ろを手刀で叩き、気絶させた。
……動きが見えなかった。私が言ったのはあくまで結果であって、その過程は想像に過ぎない。
もしかした、雨天さんは他に腹を殴ったり、首筋を押さえて気絶させたりしたのかもしれないが、その全ての動きが見えなかった。
この動き、やっぱり天さんなの……? いや、天さん意外にこんな動きが出来るはずがない。
時が遅くなったような、早くなったような、言いようのないこの感覚。あの人の神器
「銀華、後は頼む」
「え、あ……」
「じゃあな」
気絶したイッセーを放置し、隠れて雨天さんから見えていないはず私に、雨天さんは声を掛けてから、その場を去る。
何も言えずに、ただ見送る……はずだったのだが、いつの間にか雨天さんの姿が消えた。
見えていた……のにも関わらず、消えた。認識できなかった。そもそも、元からそこにいなかったような感覚さえ感じる。
「……雨天さん。貴方は一体、誰なのですか……」
小さな言葉を発すると同時に、イッセーの体から、リアス家特有の真っ赤な魔法陣が現れた。
「そろそろ、動き始めるわね」
自分の自室に篭もり、椅子に座って紅茶を飲みながら呟く。
誰もいない室内……のはずなのだけど、室内の一室に、薄らとした気配を感じる。
「あら、帰ってきてたの?」
「やだな~姉さん、気づいていたくせに」
室内の気配がドンドン大きくなり、紅茶を飲んでいる私の向かいに、紫色のポニーテールのスタイル抜群女性が椅子に座った。
「気づいてはいたけど、いつにもまして、気配が薄かったわよ」
「おお、褒められるとは、嬉しいですねぇ。あ、紅茶貰っていいすか?」
「はい」
「ども」
ティーポットとカップを渡し、自分で注ぐように渡す。
全く、主に注がせようとするなんて、とんだ眷属よね。まぁ、それが彼女の良いところなんだけどね。
彼女はカップに紅茶を注ぎ、角砂糖を五個も入れて、一気に飲み干す。
うわぁ、ちょっと流石にそれは引くわ~多すぎるでしょう、五個なんて。
「んぐ。ごちで~す」
「はいはい……それで?」
「と言いますと?」
とぼけたように彼女はそっぽを向くと、ニヤニヤとした笑いを口元に浮かべる。
「とぼけないでいいわよ。アレの状況よ、アレ」
「いやあ、なんにもないっすよ? まだ、堕天使の陣営にいるようですし。……ああ、でも、なんかあの組織と繋がってるとかないとか」
「ふ~ん、な~るほ~どね~。まだ動きはないか。つまんないわねえ。でも、いっか。今は、この街に面白いものがいっぱいあるしね」
笑を浮かべながら、目の前の彼女に向かいながら言う。彼女も私と同じように笑を浮かべる。
ふふふ、早く覚醒してくれないかしらねえ、赤龍帝君。家の『騎士
「ああ、早く覚醒して欲しいわね。赤龍帝君に白龍皇君」
「ええ、楽しみっすねえ。……それじゃあ、私はこの辺で、またなんかあったら報告しますわ」
「よろしく、『僧侶
イッセーが気絶させれた次の日の放課後、私はリアスに部室へと呼び出されていた。
「失礼します」
「入って頂戴」
部室の扉を叩き、中に入ると、そこにはリアス一人だけがソファーに座って紅茶を飲んでいた。
一体、何の御用でしょうねぇ。相手の気持ちも無視して、勝手にイッセーを眷属にしたリアスさんは。
昨日、あの後、イッセーの元へと現れたリアスは、死んでいると思ったイッセーに、急いで眷属の駒、つまり、悪魔の駒の『兵士
けども、実はイッセーが死んでいなかったと気づいたリアスは、やばいって表情を浮かべて、あたふたしてたなぁ。
あの時の表情ったら……プッ。
「なに、笑っているのよ」
「いえいえ、なんでも」
必死に笑いを堪えながら、なんとかリアスの顔を見る。
「は~まぁいいわ」
リアスはため息を吐くと、私にソファーに座れと指で促してくる。その指に従い、リアスとは反対側のソファーに座ると、リアスは足を組んで息を吐いた。
「それで、なんで今日は呼んだの?」
「実は、イッセーをしばらく放置しておこうと思ってね」
……何を言ってるのだろうか、この馬鹿は。
いやいや、ダメでしょう。悪魔だって本人は知らないのに、それを放置しておくなんて。そんなことしたら、たちまち堕天使とか天使とか悪魔とかにはぐれ悪魔扱いされて、殺されてしまうよ。
はぐれ悪魔ってのは、簡単に説明すると、自分の主を殺したり、もしくは悪さをし続ける奴らの事を言う。そいつらは、どの陣営も問わずに殺していいことになっている。
「放置してたら、あの子死ぬよ?」
「そうかもしれないけど、でもね、自分で悪魔だって気づいて欲しいのよ」
「な~に言ってるん? あんさん馬鹿でっか?」
んなもん、一般人が気づくわけないがな。せいぜい、ちょっと身体能力が高くなったなあとか位しか思わないよ。
なんか、私の言葉でキョトンとしているリアスに、私はソファーにふんぞり返りながら話す。
「ん、んん……えっと、わからなかった? なら、もう一度言うけど、貴方は馬鹿ですか?」
「いやいやいやいや、二度も言わなくていいわよ! ちゃんと聞こえてわよ! それで、なんで私が馬鹿なのよ!」
「分からないのなら言ってやろう。まず一つ目、普通、そんな悪魔になったとかは、一般人は分からん。二つ目、そもそも、主も分からないのに放置していたら、はぐれ悪魔と間違われて殺されかねない。そして、三つ目、仮にもイッセーは一般人なので、どこの陣営に見つかっても、逃げきれずに即死です。以上、三つのことにより、お前は馬鹿かと言いたい」
ぐうの音も出ずに、リアスは黙ってしまった。
「ぐう……」
訂正、ぐうの音は出ました。
「で、でも……」
「そもそも、放置しておくメリットがゼロじゃない。なのに、それでなんで放置しておくの?」
「そ、それは……!」
「ほら、いわんこっちゃない」
リアスの何かを言いかけた時、私とリアスはちょっとした異変を感じた。それは、イッセーが現在、堕天使によって殺されかけているということ。
「い、行くわよ、銀華!」
「全く、世話の焼ける姉さんだ」
リアスが魔法陣を展開し、私とリアスはその魔法陣を介して、イッセーの元へと飛ぶのだった。
題名が思いつかない。
涙目レイナーレっていいと思いません?
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