「さて、どうしましょうか……?」
はぐれ悪魔を滅した後、私は携帯を手に持ちながら明日のことについて考えていた。
明日……そう、明日! 折角、雨天さんの予定が空いていたので、ショッピングに付き合ってもらおうと思ってたのに、まさか集合場所を伝え忘れるなんて……。
今から電話しても間に合うでしょうか……。寝てはいないと思うんですけども、何ていうかその……気まずいです。
さっき、話の途中で電話を離してしまいましたから、絶対心配してると思うんですよね。……は~、なんて説明しよう。
率直に、はぐれ悪魔と戦ってましたって言えば大丈夫? ……ああ、もういいや。面倒臭いから、それで行こう。
「出ますかなっと」
「その必要はないぞ、銀華」
「うわおっ!?」
電話を耳元に当て、ササンが出るのを待っていると、急に後ろから声をかけられた。
突然の事で驚いた私は、飛び上がりながらも後ろを振り返る。すると、そこには先程まで影も形も無かったはずのスーツ姿の雨天さんが平然と立っていた。
一瞬敵かとも思った私は、雨天さんだということに気づいて、そっと胸を撫で下ろす。
ああ、驚いた。いきなり声を掛けるなんて、雨天さんも人が悪いですねえ。
「いつから居たんですか、雨天さん」
「はぐれ悪魔を楽しくいたぶっている時だ」
それって、後半の殆どじゃないですか? そこまで見ていたのなら、手伝ってくれてもいいような気がするんですけど。……まあ、必要ないですけど。
「その時から見てるなら、助けてくださいよ」
肩を落としながら言うと、雨天さんは私の手から携帯を抜き取り、ササンに掛けていた電話を切る。
「銀華、お前には必要ないだろう。さて、本題だが、明日の集合場所はどうする?」
「どこでもいいのですが、雨天さんはどこか行きたい所はないですか? そこによって、集まる場所を決めたいのですが」
いきなり話が変わったことに若干戸惑いつつも、平静を装って返す。
そもそも、雨天さんは、この街を知っているのだろうか? 正直、彼の個人情報ってほとんど知らないんですよね。
出身も、どうして悪魔になったのかも、どんな能力を持っているのか、そのどれ一つも知らないんですよね。
「ふむ、行きたい所か……」
私が聞くと、雨天さんは顎を押さえて、考え込んでしまった。
……う~ん、やっぱり似てる。誰って? 天さんにですよ。
「いや、無いな。そもそも、明日は銀華のショッピングだろ? 俺は何処でもいいから、銀華の行きたい所でいいぞ」
「さいですか……」
正直、どこに行こうかとか考えてないんですよね。ショッピングと言っても、目的は雨天さんの正体の確認ですし……。
「……そうですね、じゃあ、公園に集合にしましょう。そこから、お店に出向くという形でいいですか」
「分かった。それじゃあ、時間は十時位でいいか? 少し、学校の方の仕事を終わらせなければいけないのでな」
「分かりました。では、公園に十時集合でお願いします」
よし、これで明日の時間は決められましたし、他に決める予定はないかな? ……無いですね。
ショッピングの内容は、明日考えればいいし、今日は早く帰って服とか洗って明日の準備をしましょうか。
電柱の近くに投げた鞄を取り、雨天さんに右手を差し出す。
「携帯、返してくれると嬉しいんですが」
「……少し待ってくれ」
雨天さんはそれだけ言うと、私の携帯をいじり始めた。
女の子の携帯を無断で弄るのはマナー違反だと思うんですが。……まあ、そんな貴重な情報やちょっとアレな情報なんかは見てないし、入っていないのでいいですが。
入っているとしたら、リアスとの悪魔に関してのメールくらい? でも、一般人に見られれば問題ですが、悪魔の雨天さんに見られても、然程問題ないんですよね。
「よし、これでいいはずだ」
少しの間、私の携帯を弄った雨天さんは、私の右手に携帯を置いてくる。
その渡された携帯の画面を見てみると、誰かの番号が登録されていた。これは、もしや……。
「雨天さん、この番号は?」
「俺の電話番号だ。これから用がある時は、その番号に電話してくれ」
ほほう、やはり雨天さんの電話番号でしたか。これは、いい物を手に入れました。
これで、雨天さんといつでも連絡が取れる。それに、こっそり二人っきりになることも出来るじゃないですか。
「ありがとうございます。じゃあ、これから連絡をとる時は、この電話番号に連絡しますね」
登録された電話番号に、雨天とだけ名前を入れ、登録をし直してから鞄の中へとしまう。
「それでは、雨天さん。明日の予定も決めたことですし、今日は帰りますね」
明日の事も決め、雨天さんの電話番号も手に入れた私は、雨天さんに向かって軽く頭を下げる。
「ああ、また明日……だが」
頭を下げた状態のまま、雨天さんの言葉を聞いていると、何かが私の体に被せられる。
何かと思い頭を上げると、私の体に、先ほど雨天さんが着ていたスーツがかけられていた。
「これは……」
「そんな血濡れのままこの夜道を歩いていたら、一般人に見られた時驚かれるぞ」
そう言いながら、雨天さんはズボンのポケットからハンカチを取り出している。そして、小声で何かを呟くと、雨天さんの周りに小さな水の塊が複数作り出された。
……おかしい。雨天さんが呟いた瞬間、もう一つの気が生まれた。いや、違う。正確には、隠されていたもう一つの気が現れた。
霊的な瞳
神器
しかし、この気、なんかどこかで見たことあるような。
前までは、雨天さんは天さんの気に似ていたのですが、今は何故か違うんですよね。気を変えるなんて普通は無理ですから、まあ、そこら辺は明日また詳しく見るとして……ならこの見たことある気は一体どこで見たのでしょうか? 天さんでもないとすると……。
……あ! 思い出した、この気は天さんの中にいた、あの……。
「そんな、雨天さん。折角のスーツが血まみれになってしまいますよ」
一つの考え思い浮かべた私は、スーツを脱ごうと手をかけるが、雨天さんはそれを右手で止めてくる。
「いいんだ」
雨天さんは周りに浮かべていた水の塊を持っていたハンカチに落とすと、私の顔を拭いてくる。
……やばい、恥ずいです。普段そんなに赤面しないはずの私が、顔真っ赤になってます。
なんで分かるのかって? 顔が暑いからですよ!
そ、それに、雨天さんの顔が、ち、近い……。は、離れてぇぇぇ! そうしないと、私が恥ずかしさのあまりに死んでしまう。
「よし、これでいいだろう」
「あ、ありがとうございます」
血を拭き終えたのか、雨天さんは私から離れると、踵を返した。
「それじゃあ、銀華。また明日。今日は早く寝ろよ」
「あ、はい……」
返事を返すと、雨天さんは僅かに私の方を向いて頷くと、少しだけ笑顔を浮かべて、民家の屋根の上を跳んでどこかへ行ってしまった。
今の笑み……天さんにそっくり。どうしてでしょうかねえ。そろそろいい加減に、正体を知りたいものです。
さて、雨天さんも帰ったことですし、私も帰りますかね。洗濯や明日の準備もしたいですしね。
「う~ん、しかしまあ、明日はいいとして、はぐれ悪魔の事、どうしましょうね」
「久々だな、銀華と出かけるのは……なあ、クリストフ」
『そうで御座いますね、我が主よ。かれこれ一年ぶり……いえ、あの最後の一年は戦いばかりでしたから、三年以上昔のことでしょうか』
「それぐらいになるのか……」
『ええ……我が主、そろそろいいのではないでしょうか?』
「そうだな。なら、此度の事件で、正体をばらすとするか」
『それが良いかと』
「さて、どう言い訳をしようか」
雨天さんと別れた次の日。私は一人、十時になる五分前に、公園にいる子供達の声を聞きながら、時計の下で一人立っていた。
服装は白いワンピースに白いハイヒール。それと、白のトートバックを肩から下げている。今回は、白一色で染めてみました。
本当なら、春先なのでもう少し暖かい格好がいいのですが、今日は少し暖かいので問題ありません。
「それにしても、昨日は疲れました」
結局昨日は、血に濡れた服を全て洗剤で漬け置きしてから洗濯機にかけて洗ったり、リアスに昨日のはぐれ悪魔の報告をしたり等など、まあ、色々と大変だったんですよ。
リアスには一人で戦った事と、イッセーの駒の説明相手に丁度よかったのにと文句を言われもしたんですよ。全く、もう文句言われるのは嫌ですわ。
「ま、ストレス溜まりまくりですが、今日のショッピングでストレス解消しましょう」
そんなこんなで待つこと五分。十時丁度になるという時、公園の入口の方が何やら騒がしい。
こう、ざわざわっと……有名人でも来ているのでしょうか?
まだ雨天さんも来ないので、何気なく公園の入口の方へ歩いて行ってみると、そこには黒スーツを来て、サングラスを掛けた上に髪型がオールバックという、傍から見たらやーさんの格好の雨天さんがいた。
……まあ、好きですよ。ああいう格好。
皆になにやらざわつかれている雨天さんは、こちらに気づくと、私の方に歩いてきた。
「すまん、待たせたか?」
「いえ、待ってはいませんけども……」
うん、待ってはいないので、どうかその格好をやめてはただけませんかね。……なんて、言えない。
言いたいけどね。でも、言ったら、流石に失礼でしょう。なので、これからのショッピングデートで、雨天さんのファッションを変えましょう。
「そうか……では、どこに行く?」
「そうですね。なら、最初は電車で二、三本先にいった所にあるデパートにでも行きましょうか」
「分かった」
黒サングラスを掛けたまま頷く雨天さん。本当、怖いです。
白一色の私と対照的な、黒一色の雨天さんが話しているというせいなのか、はたまたやーさんみたいな雨天さんと、この純情乙女で清廉かつ清楚な私が話しているのが不自然なのか、公園にいる人達が小声で何やら話し合っている。
……そりゃあ、話し合いにもなりますか、目立ちすぎですもんね~主に、雨天さん。あ、携帯取り出した人がいる……こりゃあ、早めにショッピングに行った方がいですね。
「では、雨天さん、行きましょうか」
「ああ……では、銀華、手を」
右手をスッと出してくる雨天さん。一体なんなんでしょうか?
私がどうすればいいのか迷っていると、雨天さんは余っている左手で、私の右手を取ってくる。
「普通なら男がこういうのをエスコートするものだが、生憎と今日のプランは銀華に任せているのでな……故に、このようなことしか出来ん」
そのまま、私の右手を右手で握り返してくると、雨天さんは振り返って、公園の入口の方を見た。
「歩幅は合わせる。駅までは、エスコートさせてくれ」
ああ、これってアレですか。こう、デート特有の男の人がエスコートしてくれるってのは……やばい、雨天さんメッチャ格好良い。
いや、渋い? まあ、とにかく、私の好みのタイプドストライク。
「じゃあ、行くか」
こちらに首だけを向かせて、あのいつも無表情とは思えない程、柔らかい笑みを浮かべてくる。
その笑顔にちょっとドキッとした私は――――――
「……はい」
少しだけ顔を赤くしながら俯いて、歩き始めた雨天さんに手を握られながら、雨天さんの隣を歩き始めたのだった。
如何だったでしょうか?
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