短編集   作:ミネラルいろはす

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マネージャーの比企谷八幡

カタカタとキーボードを叩く音が、暗い室内に響く。

時刻は既に12時を回っており、物音は俺が叩くキーボードの音とPC画面から流れてくるライブ音声ぐらいのものだ。

フロアには俺外のスタッフはいないようで、普段俺と同じぐらいまで残業している先輩のAちゃん先輩も仲の良いときのによって強制的に帰宅させられたため、今日は自分しかいない。

 

Aちゃん先輩を連れていくときのは、流石はホロライブのラスボスと裏で言われているのも納得の表情だった。

ときのに引きずられて強制帰宅させられるAちゃん先輩は、流石に可哀想ではあったが・・・声を掛けようものなら、俺も巻き込まれかねないため黙って見送るしかなかった。

 

「そりゃここ数日家に帰ってないみたいだったしな」

 

ちらっとAちゃん先輩のデスクを見てみれば、「睡眠打破!!」と書かれたビンが山積みになっている。

それ以外にもあらゆるカフェイン飲料が積まれていて、量的に考えれば4、5日ぐらいはオールで仕事をしていたのかもしれない。

Aちゃん先輩のデスクから目を離して、俺のデスクに目を戻せば、負けず劣らずの飲料が積まれている。

俺のデスクには、エナジードリンクの空き缶とマッ缶が山のように積まれている。

 

そういえば、ここ2、3日はほぼ終電で帰っていたため、眠くならないようにエナジードリンクやマッ缶で眠気を紛らわしていたのだ。

 

「どうしてこんな事をしているのかね・・・昔の俺が今の俺を見たらなんて言うんだろうな」

 

いや決まっているか「こんな社畜になんて絶対にならん。専業主婦になるんだ」だろうな。

 

 

 

 

 

 

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誰かの喋る声が聞こえる。

 

 

「・・ろ!」

 

 

うるさい。

 

「・・・・い!」

 

もう少し寝かせてくれ。

夢の中でくらい静かに寝させてくれ。

起きたら、また仕事なんだ。

 

「起きろ!!」

 

「・・いったぁ、なんだよ」

 

 

バシンッと何かで頭を叩かれ、目を覚ます。

眠気眼で目を開けて見れば、目の前には青い髪の少女がハリセンを持って立っていた。

 

「・・星街なんで、お前が俺の家にいる?」

 

星街すいせい、株式会社カバーのホロライブ0期生の少女。

その圧倒的な歌唱力とキャラクターから、ファンを増やしている我が社の看板アイドルの一人。

 

「まだ寝ぼけてるの?ここは八幡の家じゃなくて、会社なんだけど」

 

「はぁ?」

 

星街に言われ、周りを見て見れば確かに自分の家ではなく、会社の仮眠室だった。

そういえば、昨日終電を逃したので、会社の仮眠室で眠る事にしたのを忘れていた。

 

「やっば今何時だ!」

 

「まだ、朝の7時だよ。」

 

「なんだ7時か。て、なんでこんな早く会社にいんのお前。今日は休みのはずだろ」

 

「そうだよ、すいちゃんは今日は休み、そんなの八幡が一番わかってるでしょ」

 

「ああ、だからなんで会社いんのお前?そんなに会社好きなの?」

 

「すいちゃん仕事は好きだけど、休みの日に来るほどでもないかな~」

 

「じゃあ何でいんのお前」

 

よっこらせと起き上がり、仮眠室に備えられているコーヒーメーカーでコーヒーを作り始める。

そんな俺の一連の動作を見て、やれやれと両手で呆れてますよとポーズをしたかと思ったら、ビシッと俺の方を指さした。

 

「お前のせいだろ!!」

 

「・・・俺?星街に何か連絡したか?」

 

「してないよ!してないから心配になって探しに来たの」

 

「どうゆうことだ?昨日も仕事のやりとりはしただろ」

 

「・・・小町から連絡来た。お兄ちゃんの部屋に来てみたら、生活感なくてお兄ちゃんも帰って来なくて何かしりませんかって、昨日の夜泣きながら電話かかって来た。」

 

「・・・忘れてたわ、昨日小町の奴家来るって言ってたけか。」

 

そういえば少し前に小町が家に遊びに来たいと言って許可を出したのを思い出した。

小町には合鍵を渡していたので、別にいつでも来ていいぞと返信したのだった。

部屋についてもここ最近は家に帰っても風呂入って寝るだけだったので、傍から見れば生活感のない部屋だったのかもしれない。

冷蔵庫にも飲み物以外入っていなかった気がする。

 

「ふ・ざ・け・ん・な!!」

 

星街が手に持っているハリセンで何度も人を叩いてくる。

抵抗しようかとも思ったが、星街の目が若干潤んでおり、されるがままにするしかなかった。

 

「心配かけて悪かった。小町にも後で連絡入れておく。」

 

「・・小町だけじゃない心配したのわ。また、何かあったんじゃないかって」

 

「・・・すまん。」

 

いつのまにかハリセンの手は止まり、腰に抱き着かれていた。

本来なら引き剝がすべきなのだろうが、心配掛けてしまった罪悪感からか、

なかなか引き剥がせないでいた。

 

「・・・もういいか」

 

抱き着かれてから、30分程度が経過しても星街が離れる気配はなく、されるがままになっていた。

 

「・・・やだ」

 

「だが、このまま仕事はできんだろ」

 

「仕事、仕事って仕事とすいちゃんどっちが大事なの!」

 

「・・いや、それはお前・・仕事だろ」

 

「ひどい、私との関係は遊びだったのねシクシク」

 

「私との関係って、いやお前俺の仕事わかってやってるでしょ」

 

ひどい猿芝居に付き合わされたものだと、ため息がでる。

仕事か星街どちらが大切か。

そんなもの分かりきっている、もちろん仕事だ。

だって俺は・・・

 

「俺、星街のマネージャーなんだけど」

 

「うん、知ってる♪」

 

「さいですか、わがままなお姫様なこって」

 

「違うよ、すいちゃんは王子様なの」

 

あなただけのお姫様になるのも悪くないけどね。

 

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