短編集   作:ミネラルいろはす

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駄文


マネージャーの比企谷八幡2

 

仕事、それは終わらせても終わらせても、次から次へと現れる永久不滅の存在。

そんな永久不滅の存在である仕事だが、最近は終わらせる間もなく、

次から次へとエンカウントしている。

 

仕事が増えたのは、ホロライブ自体の規模が大きくなったのもあるが、

根本的な理由は、単純にタレントが増えたせいである。

 

せいと言うと嫌味に聞こえるかもしれないが、

許してほしい。

 

ただでさえ、一人で担当するには、過剰な人数と個性的なメンバーなのに、

それに加えて更に担当が増えてしまったのだ。

 

しかも、それが他のメンバーと遜色ないほどの個性が強いとなれば猶更だ。

 

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プルプルプルプルツーお掛けになった電話番号は現在使われていないか、

電源が入っておりませ・・

 

 

「寝坊かな、最近忙しかったせいだよな」

 

通話を切り、ため息をつく。

新しく担当することになったホロライブ6期生、5人のメンバーからなる

holoxのメンバーの一人、沙花又クロエ。

可愛らしいビジュアルと生意気な性格が相まって、順調にファンを虜にしている。

また、可愛らしい見た目からは想像できないクールな歌声のギャップでも、

ファンを虜にしている。

 

そんな沙花又だが、最近ではメッキがはがれはじめ、

ギャンブル好きや風呂に入らないことがばれ、それをいじられている。

 

そんな感じで案件も配信もこなし、問題なく事が進んでいるように見えていた。

そのせいで、本人のキャパが、限界を迎えていることに気づくことができなかった。

最近では収録ギリギリに到着したり、配信に関しても開始時間が遅れることもしばしば増えてきた。

 

このままではだめだと考え、手帳を開きスケジュールの調整のために、

先方に電話を掛ける。

 

「お世話になっております。株式会社ホロライブの・・・」

 

 

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ピピピピピピ

 

「・・・うるさいなぁ、うーんっしょっと」

 

部屋に鳴り響く電子音で、目を覚ます。

周りのごみをかき分け、鳴り響くスマートフォンを止める。

 

「・・・やっば」

 

止めたスマートフォンを見て、顔面が青くなっていく。

スマートフォンの画面に表示されている時刻は13:00。

今日の打ち合わせは10:00開始、既に3時間も遅刻している。

また、その下に表示されている電話の履歴とメッセージ。

 

慌てて、スマートフォンをのロックを解除し、

マネちゃんに電話を掛ける。

 

ワンコール、ツーコール、出た!

 

「すみません!!寝坊しました!今から急いで向かいます!」

 

「お疲れ様です、事件や事故に巻き込まれたわけじゃなくて良かったです」

 

「あ、はい。すみません今から急いで向かいます。」

 

最低限の身支度をしつつ、家を出る準備をする。

 

「いえ、今日の打ち合わせは、延期しましたので今日は家でゆっくりしてください。あと、最近沙花又さんのスケジュールに無理がありましたので、後日調整させてください。」

 

「・・・え?だ、大丈夫です、沙花又やれます!今日は寝坊しちゃったけど、次からは・・」

 

「・・・沙花又さん、仕事に次はありません。だから・・・」

 

マネちゃんの言葉に言葉が出なかった。

失敗した仕事に次はない、それはそうだ。

だから、一つ一つの仕事を精一杯やる必要がある。

 

そんなことは、わかっている。

わかっているけど、案件や収録、その他もろもろで最近忙しくて、

充分に休めていなかった、だから一度の遅刻くらい・・・

 

けど、その言葉を言うことは出来なかった。

言わなくて良かったとも思う。

 

だって、私の私達のマネちゃんは私よりも忙しいのを知っていたから。

マネちゃんはホロライブの中でも、最古参のスタッフで一番担当を請け負っている。

それに加えて新しく入った私の担当も請け負ってくれている。

 

それでも私が不自由を感じたことはない。

私のやりたいこと、やってみたいことその全てをどうにかして、

実現させようとしてくれている。

 

だから、沙花又がその言葉を吐くことだけは、できなかった。

けど悔しさから涙が出てくる。

 

気づいたころには、マネちゃんとの通話は終わっていた。

 

「あやまらなきゃ、直接会ってマネちゃんに!」

 

泣いている場合じゃない。

直接会って謝りたい。

 

身支度を済ませ家を出る。

 

 

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会社までは、何事もなくたどり着けた。

マネちゃんがいるスタッフ室は五階だ。

 

「あれ、クロエじゃん、今日は休みなんじゃなかったの?」

 

エレベータが下りてくるのを待っていると、後ろから声を掛けられる。

声をかけてきたのは、星街すいせい先輩。

ホロライブの0期生の大先輩で、同じマネちゃんの担当でもある。

 

「すいせい先輩、いえ、あの・・・」

 

「八幡が、クロエは今日は体調不良で休みだって言ってたけど、違いそうだね。」

 

「えと、あの・・」

 

「ここじゃ話にくそうだし、こっちで話そっか」

 

「あ、はい」

 

大先輩からの申し出を断ることができず、大人しくすいせい先輩に付いていく。

しばらくついていくと、空き部屋に入った。

椅子がいくつかと、長机が一つしかない小さな部屋に、すいせい先輩と対面になる形で座る。

 

「さてと、ここならだれも来ないでしょ。それで何があったか聞いてもいい?」

 

「はい、えと今日打合せが会ったんですけど、寝坊してしまって・・・」

 

すいせい先輩にありのままを話し、マネちゃんに謝りに来た事を伝える。

話している間、すいせい先輩は何も話さず、ただただこちらをずっと見ていた。

 

「なるほどねぇ、八幡はなんて言ってた?」

 

「えと、スケジュールの調整と仕事に次はないって・・・」

 

「それだけ?」

 

「えと、その後の話は、なんて言ってたか覚えてなくて・・」

 

「うーん、そっか。じゃあ私が見た話を教えてあげるよ。たまたまその場にいたからね。」

 

 

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「申し訳ございません!」

 

収録が終わり、八幡でもからかってやろうと、スタッフ室へ向かっていると、

スタッフ室から聞きなれた声が聞こえたので、耳を澄ませてみた。

 

「大変申し訳ございません。弊社の沙花又クロエですが、体調不良のため本日の打ち合わせを延期とさせていただきたく・・・」

 

スタッフ室から聞こえてきたのは、会いに行こうとしていた八幡本人の声だった。

どうやらクロエの件で先方に謝っているらしい。

クロエについては、新しく入ってきたホロライブ6期生の後輩で、

マネージャーが同じ八幡だ。

 

最近は案件やら収録やらで大忙しとは、八幡本人から聞いていたので、

何となく順調なんだなぐらいしか知らなかった。

 

「はい、はい、沙花又の体調不良については、全て私の監督不行き届きになります。

スケジュールの調整が甘く、タレントに無茶をさせてしまい、今回のような事態を引き起こしてしまいました。」

 

それから数十分八幡は謝り続け、話終わったタイミングを見計らって八幡に声を掛けた。

 

「で、どしたの?」

 

「なんだ星街か、収録終わったのか、お疲れさん。」

 

「クロエどうかしたの?」

 

「いやちょっとな、俺のスケジュール調整が、悪かったみたいだ。体調崩したっぽいな」

 

「それで、案件先に謝ってたんだ。」

 

「まあな、タレントの健康管理もマネージャーの仕事だからな。それを怠った俺のミスだ。」

 

「で、大丈夫だったの案件の方は?」

 

「なんとか長年関係を続けてくれている会社だったからな。打合せについては延期して貰った」

 

「そっか、よかったね。」

 

「俺のせいで沙花又さんの仕事を減らすわけにはいかないからな。」

 

「そうだね。でもすいちゃんは八幡の仕事は減らした方がいいと思うけど。」

 

「そうだよな。星街の担当他の人に変わって・・・怖い、怖いって、嘘、嘘だからそのボールペン降ろせ」

 

すかさず、八幡の喉元にボールペンを近づける。

 

「すいちゃん嘘は嫌いって言ったよね。」

 

「すみませんでした」

 

「はぁいいよ、クロエの方は、大丈夫なの?」

 

「ああ、ちょっと無茶させすぎた、スケジュール再調整する。だからさっさと帰れ」

 

「はいはい、わかりましたよ。八幡が倒れたら私が看病しに行くから待っててね。」

 

「いえ、間に合ってます。」

 

「・・・」

 

「ワーウレシイナー」

 

「そうだよねーじゃあまたね」

 

八幡の喉からボールペンを離し、スタッフ室を後にする。

後ろからは、今後の案件先へと電話をする声が聞こえてきていた。

 

 

「・・・って感じかな」

 

 

「すみません、失礼します。」

 

すいせい先輩の話を聞いて、居ても立ってもいられず、

席を立ち、マネちゃんに会うために部屋を後にする。

 

「あーあ、またライバル増やしちゃったかな。まあでも八幡が誤解されるよりはいいか。」

 

階段を駆け上がる。

二階、三階、駆け上がるたびに、息切れが激しくなる。

普段の出不正と運動不足のせいか。

身体が思うように進まない。

それでも一刻も早くマネちゃんに会いたくて、

また一つ階段を駆け上る。

 

そして、とうとう五階に辿り着いた。

 

「マネちゃん!!」

 

スタッフ室のドアを、思いっきり空けマネちゃんを呼ぶ。

スタッフ室の中にいる人が、一斉にこちらを見るが関係ない。

そしてその一人に目的の人物がいた。

 

「うぐっ」

 

「マネちゃん!ごめんなさい!!」

 

勢いあまって、マネちゃんに飛びつきながら謝ってしまった。

 

「いてて、沙花又さん。今日はお休みでいいって伝えたはずですけど。何かありましたか。」

 

「ごめんなさい、ごめんなさい、沙花又のせいで・・・」

 

「いえ、お電話でもお伝えしたと思いますが、私の管理不足が起こしたことです。沙花又さんのせいではないです。」

 

「あっ」

 

電話の内容の続きを思い出した。

マネちゃんから言われた言葉に放心状態で、聞こえていなかったけど。

 

『・・・沙花又さん、仕事に次はありません。だからタレントの体調管理を怠った私の管理不足です。スケジュールの方は私の方で調整しますので、沙花又さんはゆっくり休んでください。』

 

涙が止まらなかった。

マネちゃんがこんなに沙花又の事を考えてくれていたなんて

 

「えと、大丈夫ですか。とりあえずこれ使ってください。」

 

「ありがと。沙花又頑張るから、ごめんね迷惑かけて」

 

「迷惑かけられるのもマネージャーの仕事です。沙花又さんの迷惑なんてどこぞの歌姫に比べれば安いものですよ」

 

「・・・そっか、なら沙花又ももっと迷惑かけちゃおうかな。沙花又のことずっと見ててね」

 

「・・・ええ、沙花又さんの夢が叶うその時まで、隣で支えますよ」

 

「えへえへ、ありがとう!」

 

「ふーん、いい感じのところ悪いけど、八幡誰に比べれば安い迷惑だって?」

 

「「あっ」」

 

その後暴れたすいせい先輩とマネちゃんはAちゃんに別室に連れていかれた。

 

 

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番外編1

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休憩室で、仮眠をしていると目元を誰かに抑えられた。

 

「だーれだ」

 

この声は・・・

 

「風呂に入らないシャチ」

 

「ちーがーう!!それにお風呂入って来たし!!」

 

頭をポカポカ叩かれるが、目を開けて見るとそこには担当の沙花又の姿があった。

 

「あってんじゃねぇか。それじゃ俺は寝るからお休み」

 

「ねぇぇぇ!!無視しないでよ」

 

「なんだよ、付き合ってやっただろうが、寝かしてくれ」

 

「やだやだやだ構って構って」

 

「そこらへんにいる博衣にでも構ってもらえ」

 

「やだ!どうしてもダメ?」

 

「駄目」

 

「そっか、しょうがないな。よいしょっと」

 

「おい、何してる」

 

「沙花又も一緒に寝ようと思って」

 

「どこで?」

 

「ここで」

 

「駄目だ家に帰って寝なさい」

 

「どうしてもダメ?」

 

「駄目だ」

 

「どうしても?」

 

「どうしてもだ」

 

「・・・」

 

「・・・布団は分けてやらないからな」

 

「やった!ありがと」

 

「・・・泣き顔はずるいだろ」

 

番外編2

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鍵を開けて部屋に入る。

 

「ただいまっと、つっても家には誰もいないんだけどな」

 

「あっおかえり~今日もお仕事おつかれさま。」

 

「・・・なんでいんの沙花又?」

 

「Aちゃんから、マネちゃんがちゃんとしたもの食べてないからって、見にいくようにって言われて沙花又が来たんだよ。」

 

「Aちゃんが?」

 

「そうだよ、それに言ってた通り冷蔵庫の中になんもなかったからね。沙花又が買い物行って料理したんだから、感謝してよね」

 

「それはありがたいが、部屋の鍵はどこで手に入れた?」

 

「ぽえぽえぽえ~沙花又何のことかわかんないな~」

 

「あざとい」

 

「あざとくないよ!!」

 

「まあいいや鍵は後で返せよ。それよりご飯食べさせてもらってもいいか。」

 

「いいけどその前にこれは何?」

 

沙花又の手に握られていたのは、女物の下着

 

「沙花又以外に女連れ込んでたんだ。ふーん沙花又の事隣で支え続けるって言ってたくせに沙花又に内緒で女の子連れ込んでたんだ。浮気だよねこれ?沙花又浮気する人は許せないんだよね。でも沙花又が八幡を自由にさせすぎたから、悪い虫がつくんだよねこうなったら八幡を・・・」

 

「勘違いしているところ悪いが、それは妹の下着だ。」

 

「え、そうなの?なんだー義妹ちゃんのだったかー。もっと早く言ってよ沙花又勘違いしちゃったじゃん。」

 

「いや、その前になんでお前タンス漁ってんだ」

 

「ぽえぽえぽえ~沙花又わかんない」

 


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