悪を断ち切る為の刀   作:水流

1 / 2
人生において外せない日

 

「レキ」

 

寮の一室

俺、斎藤 雨月の部屋では今、正に悲劇が起きている

なんで、この女は毎日毎日俺の部屋に来るんだ

 

翡翠色の髪に金色の瞳

ヘッドホンを付けて武偵高の制服を着る女子

通称『ロボット・レキ』

彼女は俺の部屋に毎回毎回、やって来ると機械のように同じ動作を繰り返す

 

「お、お前はなんで俺の部屋に来てはエロ本とかを破っていくんだよ!?」

 

そう、何故かこの女は破っていく

AVとかは普通に割っていくからね、この女は

血も涙も無いとはこの事だ

 

「何度も申し上げたように貴方にそのような物は必要ありません」

 

「だからなんでだ?」

 

「これらの物が無くなった代償行為は私をお使い下さい」「ごめん、それは普通に嫌だ」

 

告白っぽいことをされてすぐに振る俺

この女は意外と男遊びに目がないのだろう

俺に毎回毎回、同じことを前から言ってくる

おそらくは誰かに依頼を受けており、そしてそれで俺を遊んでいるのだろう

だが、俺はそんなことに引っかかるような奴じゃない

 


 

武偵高校2年生になる予定

普通に俺は来年辺りに転校するが、それまでは武偵をenjoyする

 

背中に1本の日本刀を背負い、携帯を弄りながら話を聞く

 

「ごめんなさい、私はやっぱり諦めなくて・・・」

 

「何度も言うけど興味ないんだ。遊びで良ければ付き合ってあげるよ」

 

体育倉庫前に呼び出され、告白を断った

エロ本とかは買うけど実際には困ってはいない

俺は基本的に何故かモテるから

女に俺が興味がないだけで

いや、別に男に興味があるわけでは無いんだけど

 

「先輩・・・酷い!私がこんなに必死なのに!」

 

じゃあ、さっさと諦めて次の恋を探せ

そう言う前にさっさと走って行ってしまう

はぁ、本当になんでこんな女運がないのか自分でも不思議だ

 

乗ってきた自転車に跨がり、漕ぎ出した

その時に首の後ろにモソモソという何かが動いてる感覚

多少の擽ったさと柔らかさを感じた

 

「うーん、ビクトリー!!!」

 

小型の猫

愛らしい耳の片方が畳まれている灰色の猫

何故かこの生物に俺は好かれている

 

「おはよう、クロス。お前は相変わらずどこから出てくるんだ?」

 

後ろで背伸びするクロスにそう聞く

欠伸をしてから、すぐに頭の上に乗ってくるクロス

多少の重さを感じるがまぁ、良いとしよう

 

「元気一杯さ。僕は君が健康だと僕も健康。つまりは運命共同体だね♪」

 

若干、いやかなり話が噛み合っていない気がする

基本的に何故か、本当に何故か会話できるクロスの事を深く考えるのは辞めた

産まれた時からずっと一緒の為に余り違和感を感じない自分も無視している

 

『僕は君の事が大好きなんだ』『君が死んだら僕は死ぬ』『君は僕の全てさ』

 

この呪いのように俺に付き纏う言葉達

実際にクロスが離れない限り付き纏うのだが、余り好ましくない

特にこの『君が死んだら僕も死ぬ』

多分だけどクロスが死ぬ事は無い

ただ、なんか罪悪感を感じさせる言葉

 

「前々から聞くけど、クロスってなんなの?」

 

「ずっと言ってるけど僕は君の精霊で守護者。わかる?」

 

額を痛くない程度の力でトントンっと叩くクロス

肉球の程良い弾力を感じる

それに対して俺は自転車を止めて一旦降りた

横断歩道は歩かないと駄目だからな

自転車を押して歩きだす

 

「それは“自称”だろ?本当はそうだな・・・・厄病神とかじゃねぇの?」

 

自転車に再び乗り出し、漕ぎ出す

 

「酷いなぁ、僕はきちんと君を守ってるでしょ?」

 

「・・・・・」

 

うぐっ・・・・・!

なんも言えない

守られてるのは事実だけど今、頭の上でドヤ顔してるクロスに会いたくない

尻尾を俺の前でチラつかせてくるし

 

「ねぇ、雨月。今すぐさっきの倉庫に戻って」

 

「は?なんでだよ。戻ったら学校に遅刻するだろ?」

 

「そうだけど、今日は雨月の人生において外せないイベントが発生したんだよ」 

 

俺の人生において外せないイベント

さり気なく尻尾で目の辺りを擦られるので、戻るか

Uターンを開始した後にすぐ、黒煙があがった

 

「俺の人生において外せないイベントって俺が死ぬとかじゃないよな?」

 

「さぁ?僕はわからないけどもしそうなら運命を変えるのは君だよ」

 

無責任な猫はハンドルに付いたベルの近くに降りてきた

というか、こいつは浮けるんだからずっと浮いとけば良いのに

 


 

第3者目線

 

自転車を漕ぎ、体育倉庫前に着くと自転車から降りて自転車を止める

 

切れ長の長い目の割には大きな瞳

雪のような白銀の髪に混じる赤い髪

夕陽のように赤い瞳には“何も期待しない”そう言わんばかりの冷めた感情が見える

 

ベレッタM84FS

 

滑らかなラインを描くトリガーガードから緩やかに先へ細くなるダストカバーの曲線美

弾道はやや不安定さはあるものの、ホップはしっかりとかかり飛んでいく

 

銃を懐から取り出し、体育倉庫に走って向かう

体育倉庫の中を見ると跳び箱が開いており、誰かが乱闘でもしたのかと思う程

 

「この痴漢!恩知らず!アンタなんて助けなければ良かった!」

 

痴漢

そう大きなアニメ声が叫びだす

跳び箱の中で女の方が上になり下に男がいる状況

 

「ま、待て誤解だ!!」

 

不自然に床のコンクリートに触れる

男女の争いはどんどんヒートアップしていく

 

跳び箱を覗き込むと目を丸くする雨月

 

その視線の先には隣の部屋に住んでいる遠山 キンジがいた

 

「あれ、キンジ。お前、ついに犯罪を「違う!」

 

雨月は突如、体育倉庫の左奥へと跳んで逃げた

 

その様子に跳び箱の中の2人も異変を感じたがその異変の正体はすぐにわかる

 

────ガガガガガガンッ!

 

突然、銃声が鳴り響いた体育倉庫

 

跳び箱や床にも何発か銃弾が当たっている

 

車輪が2つ並行に並んだ乗り物セグウェイ

その銃座から体育倉庫の中を見つめる銃口の数は15台

秒間10発の9ミリパラペラム弾を撃つ短機関銃(サブマシンガン)

 

「アンタ達も武偵でしょ!?私だけじゃ火力負けする!」

 

そう言って銃を持ち出した少女は跳び箱の中で必死に応戦している

 

徐に立ち上がり、背中に背負っていた刀を取り出した雨月

 

「ちょっ、アンタ退きなさい!一瞬で蜂の巣になるわよ!」

 

刀の柄と鞘を持ち、胸の前で横に左右別方向に引いていく

ゆっくりと歩きながら、それでいて妙な殺気を纏いながら敵に近づいていく

 

関孫六

4種類の異なる鉄を組み合わせた、折れにくく頑丈な刀

 

妖しく太陽の光によって青光りする刀は正に妖刀ともいえるだろう

 

「ごめんだけど・・・・それは聞けない」

 

そう言うと一気に駆け出した

 

銃口は一気に、雨月を狙い撃ちをするがその内の何体かは後ろへと戻って行く

 

左足を大きく後ろに引き、自身に飛んできた弾丸を全て刀で受け流す

 

次に、左足を大きく前に踏み出して流れるように銃口を落としていった

 

「全部で8台だけか・・・」

 

刀に付いた油を払うように振り払い鞘に収めた

後でちゃんと整備しよう

 

「バトンタッチだ、雨月」

 

キンジとハイタッチを交わし体育倉庫に入って行く

 

「了解。精々、お手柔らかにしてやれよ」

 

すれ違いざまにそう告げて跳び箱の中に居る少女を眺める

威嚇してくるので反応に困っているとどうやらキンジも始末を終えたようだった

 

「な、なんなのよアンタ達・・・!」

 

「第十六代目・新選組・斎藤 一の子孫だ」

 

 




オリ主設定

名前:斎藤 雨月
新選組で“無敵の剣”と評された斎藤 一の子孫
武偵ランクは強襲科(アサルト)でのSランク武偵
現在は車輌科(ロジ)で免許を取得しており、探偵科(インケスタ)へと入った
成績は全国模試で5位という好成績だが理由を聞くと・・・


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。