崩壊前線   作:鯱(しゃちほこ)

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こいつ番外書いときながらいつまで下書きのまま放ったらかしてんだよ(他人事)
あと切りがいい場所で切ったので短いです


EP.1 第1戦役目覚め 前編

「もうあなたの命令には従いません。」

目の前の少女は、自分の指揮官に空間を断つように言い放った。

ただの少女ではない。銃を持ち、人間に代わって戦闘を行う自律人形、戦術人形と呼ばれる存在。

戦術人形は指揮官の命令には逆らえない。権限1つで発言を撤回させることができる。

この指揮官は、しかし何も言わずに振り返り一瞬だけ笑みをこぼした後、すぐにその場から立ち去った。

 

 

 

                *

 

 

 

「君の力を求む!民間軍事会社グリフィンとともに世界の輝きを更新せよ!」

 

モニターにも戦域を映し出すテーブルにも光の灯ってない真新しい戦術指令室に、新たな指揮官を迎える挨拶が通る。元気よく声を出したこのオレンジ色の髪を少女は横で結んだ少女は、自身をカリーナと名乗り、これからは後方幕寮に務めると言った。

 

「改めて、指揮官さまの名前をうかがってもよろしいですか?」

「レイス。レイス・オレストだ。なんて言ったらいいか分からないが、これからよろしく頼むよ。」

 

新しく着任したという指揮官は、若い見た目ではあるが一切の緊張を見せずにラフに、しかし堂々と答えた。

 

「元傭兵という話でしたよね?頼もしい限りです!お若く見えますけど、どれほどの死線を潜り抜けてきたのですか?本部の方で推薦を受けたという噂がありましたが。」

「死線ってほどじゃない。気が付いたらそうなっていたんだ。もうほとんどのことは忘れちまった。推薦なんだが…」

 

肩をすくめながら答え、言葉の最後で表情を強くしかめて一回首を傾けた。

カリーナが様子を尋ねるとすぐに言葉を続ける。

 

「確かに推薦を受けたんだが、受ける覚えがないんだよな、グリフィンにコネがあるわけでもなかったはずだし、傭兵仲間はみんな仕事を取られたと言ってここを恨めしがっていたんだよ。俺は抵抗がなかったからこっちに移ってきたんだけど、受付で言われてかなり警戒した。」

「大丈夫ですよ、グリフィンの選抜試験は厳しいことで有名なんですから。それをパスしたんですから、きっと信頼に足る才能があるんですよ。何が起きても大丈夫!」

 

笑顔で答える副官を見て、レイスは一息ついて表情を緩める。またそれを見たカリーナは大きく頷く。

 

「それでは、すぐにここに置いてあるものを実践形式で教えちゃいます!電源を点けますので、点いたらそのテーブルの前で通信に出てください。」

 

そういってカリーナはどこかへ行ってしまった。

レイスは言われた通りにモニターが大きく据えられたテーブルに手をかけた。

 

(触るのは初めてだけど数回だけ見たことがある。戦域をリアルタイムで映し出して操作できる優れもの。だけどまぁ、)

 

電源が点き、今回で部隊を降ろすエリアが表示される。曖昧な記憶を辿って軽く動かしていく。なるほどある程度は分かりやすくできている。できているが、

 

(現地にいて実際に指示を出したほうが安心する、というのはまだ慣れてないからか。)

 

初めて触るテクノロジーについていけない老人みたいだな、と思いつつそんな自分がおかしくて思わず笑ってしまう。今この部屋には自分しかいない。これからの事を考えたかったが、そうするには一つやはりどうしても引っかかり続けるものがあった。

 

(誰かからの推薦…受付で聞いてもわからず、カリーナもあくまで『噂』と言っていた。状は俺自身にではなくグリフィンに、それでもって預かってもらえる程の人物、となると………)

 

思考を巡らせるほどに分からない。心当たり一つなく、よく知る顔は傭兵連中でそんな上にあがれるほどの人間はいない。クライアントも一時の繋がりでそんな手を回すわけもない。

 

「そのうち考える暇もなくなるか…」

 

片手を額に当て天井を仰ぐ。無機質な部屋の中でただ蛍光灯が眩しいだけ。

そんな事をしているとカリーナだろう通信が入ってきた。

 

「よかった!ちゃんと繋がりました!聞こえますか?」

「ああ。聞こえる。どうすればいい?」

 

戦場は怖い。しかし()()()それから起こる事を想像してまた、レイスの顔に思わず笑みが浮かんだ

 

 

 

 

                 *

 

 

 

 

 

━━━作戦終了

 

なんてことはないチュートリアルだった。本当に操作を覚える為の工程なんだろう。人形達の移動先を指示するだけでそもそも鉄血のいない場所を選んでか交戦の様子もなかった。

 

でかいモニターでは部隊の状態と位置が全て一括で表示されている。

 

(人形達が接客業からの使い回しってのは聞いたことはあったが、なんで皆幼子なんだ?)

 

「指揮官、お疲れ様でした。端末の使い方はバッチリみたいですね!」

 

カリーナが元気よく帰ってきた。先ほどの作戦に参加していた1人の人形を連れて。しろい温かそうな北国の帽子を被ったその人形は、新しい指揮官がどんなものか品定めするように興味まじりに見てくる。

 

「気になることがあるんだが、なんでさっき作戦にいた子達はこう…小さい子だけだったんだ?俺も詳しくはないんだが、人形はもっといるんじゃないのか?」

 

その言葉を聞いてカリーナは一瞬だけ何を言ってるのか分からないといった表情を浮かべた後、ハッとした様子をみせて笑った。

 

「ハンドガンの子達は少ない資源で効率的に動いてくれるんですよ。それに……」

「子ども扱いとは心外じゃのう、指揮官。あまり見た目や言葉だけで中身まで決めつけない方がいいぞ?このグリフィンには色々な人形がおる。今のうちに慣れておくといい。」

 

(おっと…)

 

カリーナの言葉を遮って出てきた言葉には、声こそ判断つかないが、確かな老練さを感じさせる口調が含まれていた。なるほど勉強になる。

 

「それは失礼しました。認識を改めます。」

「敬語も必要ないぞ。わしらは人形で、おぬしは指揮官だ。好きなようにするといい。」

 

どうやら本当に手強いらしい。

 

「それでは、後のことはナガンさんに任せてあるので、いろいろ聞いてください。私はまだやる事があるので。」

 

そういってカリーナは早足に何処かに行ってしまった。

知り合いを介して出会った人と2人きりにされる独特の気まずさが2人の間を流れる。

 

「じゃあ、自己紹介でもしようかの。」

 

助かる。

 

「わしの名はM1895ナガンリボルバー。数日だけ副官を務めることになる。これから宜しく頼むぞ。」

「レイスだ。よろしく。で、副官?カリーナはどうするんだ?」

「あやつは作戦の記録や人形の世話、基地の購買なども担当しておっての、直接補佐を務めるのはワシらというわけじゃ。数日というのは、これから施設内を回るついでに気に入った子を探すといい。その子を副官に任命すれば、2人きりになれる時間が増えるぞ。」

「そういうつもりはないんだが・・・」

 

ナガンが笑いながら肘でつついてくる。

そういうノリでくると逆に恥ずかしくなって頭を掻いた。

 

とりあいず今後のためにもグリフィンの中を回ってどんな人形達がいるのかも知っておいて損はないだろう。

 

 

 

とは

 

 

 

 

 

意気込んだものの……

 

 

 

 

「あ、ヤッホー!新しい指揮官さん?お近づきの印にどーぞ!」

「サンキュー。コーラか。俺も好きだよ。」

「ちなみにあやつ、わしよりも年長者じゃぞ。」

「え?」

 

 

「あなたが新しい指揮官かしら?これをどーぞ!食べてみて!」

「お菓子?手作りなのか?」

「食べたね?……あ、あれ?なんともないの?」

「顔は真っ赤になっておるのう。」

「キミがどういう子なのかはわかった」

「ひ、ご、ごめんなさ〜〜い!!」

「追いかけないのかの?」

「あんまり体力を使いたくないかな。手元に飲み物があって助かった。」

 

 

(お腹痛い……)

「あら、あなたが噂の指揮官?冴えない顔をしているわね。センスを試す価値も無いかしら?」

「許してやっとくれ、P7に変なものを食わされたんじゃよ。」

「あ、指揮官さんだ!チョコ食べます?」

「そんなにジッと警戒しなくてもいい。そやつはただのお菓子好きじゃよ。倉庫からつまみ食いされんようにするぐらいじゃな。」

 

 

 

 

(♪゛〜〜〜)

(空気を揺らして流れるヘヴィメタルと静かに佇む少女)

(意味不明な光景に反応が遅れて耳に大ダメージを受ける指揮官)

 

 

 

「「…………」」

 

「わ、分かったわ、あなたが新しい指揮官ね。先に言っておくけど、私の足を引っ張ったら承知しないからね!」

(プリンだ…。)(プリンじゃのう。)

「ちょっと!聞いてるの!?」

 

 

 

 

 

(((酒盛りの最中)))

 

 

 

 

 

「癖のある子しかいない…」

 

あらかた見終わった後、最後にナガンに案内されたカフェでついにうなだれた。

ここで働いてるというスプリングフィールドがコーヒーを入れてくれる。

 

「今は後方任務に出かけている奴もおるでな、彼女らは優秀じゃから話を聞いてみるといい。」

 

ナガンもまあまあとなだめてくるが、選ぶだけならすぐにやりたい。でも見て回る前に言われた通り、長い付き合いになる。任せきりにするつもりもないが特に最初のうちはしっかりとした人を付けておきたい。

少しばかり考えて思いついた。

 

「……お前じゃダメなのか?」

 

ナガンは一瞬誰に言ったのかわからないと言った様子で名簿を持ったまま目を開けてポカンとして、すぐに理解した様子で呆れてみせた。

 

「おぬし……」

「あれ?ダメだった?もしかして別の部署担当とか?他に仕事があるとか?」

 

何か言いたげなナガンにレイスは焦ってしまう。

 

「いやそういう訳でもないんじゃが。」

 

何が悪かったのか分からないレイスについにため息までつかれてしまった。ついでにスプリングフィールドにも笑われた。

 

「もう少しムードとかあってほしいものじゃのう。」

「あはは…それなら。」

 

レイスは立ち上がってナガンに姿勢を正して向き直った。

 

 

「ナガンリボルバー。あなたを副官に任命します。お願いできますか?」

 

 

「こんな年寄りをお好みとは、おぬしは相当な変わり者じゃな。」

 

 

 

 

 

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