東方誘夢録   作:罪袋C

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前回のネタ:少佐の演説

ヘルシングの少佐の最高にキレててイカれてるイケメンな演説。
暗唱とか無理ゲー


第七話:最終戦争始めました

 私は今人間の街を見下ろしている。

 街灯常に煌々と輝き、闇を忘れた町。

 夜は本来月のみが照す私達妖怪の世界だ、人間達はそれを忘れている。

 

「幽輝、守備隊の数は?」

 

「えっとね…一万人くらい?多すぎてよくわかんないや」

 

 その数に妖怪達がざわめく。

 

「落ち着いて、今夜は満月、私達が最も力を発揮できる日だ」

 

 その声で一気に静まる。

 

「共に戦う妖怪戦友諸君……

 

 

 

             地獄を創るぞ」

 

 

 

「「「「雄おおおおおおおおおお!!!」」」」

 

 この掛け声を皮切りに妖怪達が一斉に地を蹴り駈ける。

 今ひとつにまとまった妖怪達は圧倒的な破壊をもたらす嵐となった。

 足並み揃え地を踏みしめて、地響きを轟かせ一挙街を目指す。

 

「雄叫びを上げろ!目についたものはぶっ壊せ!」

 

「「「「応!」」」」

 

 街が視界に入る、あと一分もせずに街は戦禍に包まれる。

 

「っ!霞!ビーム兵器来るよ!」

 

「よし、全員幽輝の合図で飛んで!遅れないように!」

 

 外壁には対妖怪用の砲門が設置されている、そいつはチャージが必要で、そのタイミングさえ読めれば回避ができる。

 これは永琳のお陰でわかったことだ、だから今まで幽輝にはあれのチャージ時のエネルギー波を何度も『視て』タイミングを覚えてもらった。

 

「三、二、一…今!」

 

 幽輝の声に会わせて全員が飛ぶ、それに遅れるように死そのもののような威力を持ったビームが幾本も私達の下を通り抜けていく。

 何人か巻き込まれるが振り向いてはいけない、私達は前へ進む。

 

「外壁を壊す!遠慮は要らない、全力でぶちかませ!」

 

 妖怪達は思い思いやりたいように弾幕を放つ。

 数で押す者、一撃の威力に重きを置く者、レーザー弾幕で薙ぎ払う者。

 ビーム兵器は第二射を放つことなく使用不可能となった。

 そして更に撃ち込まれた弾幕によって壁もすぐに無力化された。

 

「よし!俺が一番槍だ!……がぁ!?」

 

 真っ先にひとりの妖怪が瓦礫を乗り越え壁内へ飛び込む。

 しかしそのあとすぐに何かが破裂するような音と共に後ろに吹き飛ばされる、それを見て足を止めた後続たちも同じようにバタバタとなぎ倒されて行く。

 

「足を止めちゃダメだ!実弾兵器だから数で押し潰せ!」

 

 それを聞いて妖怪達は再び進撃を始める。

 私も空を飛び町の奥へ迫る。

 地上や屋上に設置された高射角砲が弾幕を放ってくる、一発一発が音速を越える弾丸が壁のように飛んでくる。

 回避させる弾幕ごっこと違って避けるどころかグレイズするスペースすらない。

 

「誘え」

 

 正面を薙ぐように手を払う、するとそこをなぞるように裂け目が現れ、弾丸はそれに吸い込まれていく。

 この能力便利なことにスキマのような使い方もできるのだ。

 ただしこっちはこっちでまた能力発動中動けない、また300年くらい操作の練習しないといけないのかな…

 

「霞!」

 

 私が前進できずかといって一歩も退かず(退けず)空中で停滞していると、後ろから声をかけられる、振り向けばもちろん紺と幽輝だった。

 

「紺!幽輝!どうしてきたの?」

 

「奥に潜入するんでしょ?だったら僕もいくよ!霞一人じゃ危なっかしいもん」

 

「霞が行くところに私の姿ありだよ~」

 

「二人とも…そうか、ありがとう、一緒に来てくれて」

 

「とりあえずどこに向かってるの?」

 

「工場とかを片っ端から壊そうと思ったんだけどさ、ちょうど弾幕がきつくて進めなかったんだ」

 

「あの銃を壊せばいいの?」

 

「うん、とりあえず道路に置いてある動かせるやつを壊して貰えると嬉しいかな、屋上のは下に降りればどうにかなるし」

 

「あらあら、綺麗に並んじゃって、あれなら私に任せて~」

 

 幽輝は両手を前につき出す。

 

「最近開発した必殺技~」

 

 幽輝の両手に妖力が集まりその密度に歪んで見える。

 

「あ、名前考えるの忘れてたや~」

 

 こ、この状況でなんと締まらない…さすが幽輝。

 幽輝の両腕から極太のレーザーが放たれ、地面に並べられている自走高射角砲を文字通り塵へと還す。

 幽輝さんTUEEEEEEEEEEE!

 というかダブルマスタースパークを生身で出すってゆうかりんでも傘使わないとやらないぞ…

 

「あ~あ、今ので疲れちゃった、この技燃費悪いな~、ちょっと食事したらすぐに追い付くから先に行ってていいよ~」

 

「そ、そっか…じゃあ先いってるからね」

 

 幽輝の事だから本当に追い付いてくるだろうなぁ、フラグなんてなかった。

 私は紺を引き連れて更に奥へ進む。

 

 

 少女無双中…

 

 

 逃げる奴は人間だ、逃げない奴はよく訓練された人間だ、ホント戦争は地獄だぜフゥーハハハーハァー!……はぁ……

 私は私の前に現れる人間を千切っては投げ千切っては投げ、少しずーつ少しずーつ前に進んでいた。

 

「敵多すぎィ!」

 

 紺は姿を隠して戦ってるから自然と私に攻撃が集中する、おい、私の姿も欺けよ。

 突然吹っ飛ぶ敵がいるのを見るとどこかに潜んで闘ってるんだろうが…

 

「げぇ!増援!?」

 

 後ろから更に増援が駆けつけてくる。

 人間だけじゃなく機械の兵隊も混じってるから数が異常なくらい多い。

 

「霞!ここは僕が何とかするから先に行って!」

 

「紺!それフラグや!」

 

「僕にはまだ"とっておき"があるから安心して霞は進んでくれ!」

 

 どうして紺はこうもフラグを立てるのか…一級フラグ建築士でも目指してるのかな。

 

「絶対に…絶対に追い付くんだぞ!」

 

 とりあえずフラグを補強しておいてあげた、フラグは立てすぎると逆の効果があるらしいしね!

 私はまだ心配ではあるものの紺を残してここを立ち去った、なんだかんだで私に並ぶご長寿ですからね、強さは折り紙つきだ。

 そしてその心配がただの杞憂だったことはすぐに証明された。

 

「な、なんだこの化け物は!?」

 

「こんなのがいるなんて聞いてないぞ!」

 

 そんな人間達のあわてふためく声に振り向けばそこには巨大な狐の姿があった。

 万力のような顎が人間を噛み砕き、丸太のような四肢が敵を押し潰し、しなやかな尾がビルごと薙ぎ払う。

 え、なにその変身能力、羨ましい。

 

 

 少女破壊活動中……

 

 

「ふう…とりあえずこんだけ壊せばしばらくは安泰かな」

 

 私はこの町の工業区画を更地にする工事をしていた。

 これで復旧まで五十年くらいかな~とか思っているところへ紺に乗った幽輝が追い付いてきた。

 

「いや~、紺があんなに強いなんて知らなかったや~」

 

「でもあの状態だと能力使えないし、なにより疲れるんだ」

 

 声も低く、渋くなってイケボになってる…パルパルパル…

 ほぼ勝利が決まり、私達の間に和やかな空気が流れていた、その時だった。

 突然地面が激しく揺れ始めたのだ。

 

「な、何事!?」

 

 紺が突然の事態に変身を解き着地、しようとしてバランスを崩す、それほどの振動だった。

 同時に遠くから大きな噴射音がする。

 

「嘘でしょ…計画より早すぎる!」

 

 音源の方を見ると、大量の煙を引っぱってロケットが宙を進んでいた。

 このロケットはもちろん人が月に移住するためのロケットだ、計画では打ち上げは来月だったはずなのだ。

 そしてもうひとつ、月移住と一緒に行われる予定だった作戦があった。

『妖怪一掃計画』

 することは簡単、自分達が安全なところまで逃げたら核兵器を落とすだけだ。

 ね?簡単でしょう?

 なんて説明してる間にロケットは大気圏脱出目前、そろそろ核を落とす高度だ。

 

「電!聞こえるか!」

 

『はいはい、聞こえてますよ~、ついでに生きてます~』

 

「今すぐ、生きている妖怪全てに早急に撤退、できるだけ遠くへ逃げろと『伝達』!」

 

『なんだかよくわからないけどそう『伝達』すればいいの?』

 

「ああ、任せた」

 

『了解~』

 

「ねぇ、霞」

 

「ん、何?あ、幽輝と紺も早く逃げて、私がしくじったらヤバイからさ」

 

「そういうだろうと思ったから私も連れてけ~って言おうとしたんだよ~」

 

「い、いや、でも幽輝ならあれがどれだけ威力秘めてるか知ってるでしょ」

 

「うん、知ってるよ?今から逃げたんじゃ間に合わないって」

 

「……そっか」

 

「うん、霞一人じゃ心配だし、霞だけ一人で死なせたくないもん」

 

「はぁ…仕方ない、行くか」

 

「「応!」」

 

 

 少女移動中……

 

 

 私は移動しながら両腕に集められるだけの妖力を集めていた。

 これから私がしようとしていることは分の悪い賭けだ。

 落ちてくる核を私の能力で誘う。

 正直言って無茶だ。

 でもやらねば私の代わりに雑魚を片付けてる二人が死んでしまう。

 空中で何かが切り離されて落ちてくるのが見える。

 両手を空へ掲げる。

 

(頼む……成功してくれ……!)

 

「A.T.フィールド…全開…ッ!」

 

 衝突まであと十秒もない。

 眼前に迫る鉄の塊を睨み付け、能力を発動させる。

 今までなかったくらいの壮絶な喪失感を覚えた、体から力と言う力が全て無くなったような感覚。

 私は作戦の成功を確認することできず、意識を手放した。

 

 

 少女気絶中……

 

 

 誰かに頭を撫でられるのを感じて私は目を醒ました。

 目を開くと幽輝の顔が正面にあった。

 

「霞、おはよう」

 

「あぁ、おはよう、ここは…どこだ?地獄って感じじゃないけど天国にしては障気が多い森だね」

 

「ここは私達の森だよ」

 

「それじゃあ…私達は…」

 

「うん、勝ったんだよ」

 

「そっか……良かった…」

 

 私は安堵した、仲間を守りきり、無事にまた平和な生活に戻れるのだと。

 しかし、その時気づいてしまった。

 

「ねぇ、幽輝……紺……は、どうしたの?さっきから気配を感じないんだけど……どっかに、隠れてるだけ、だ…よね?」

 

「……」

 

 私の質問に幽輝は一方を指差す事で答えた。

 私が恐る恐るその方向を、向くと。

 

「紺……どうして…」

 

 全身を血に染めて倒れている紺の姿があった、息はしているが、息を吹き掛ければ今にも死んでしまいそうなほど虫の息だった。

 

「霞がね、あの爆弾を消すところまでは良かったの、その代わり、撤退した妖怪達を追いかけなかった人間達が増援に来たの」

 

 そして紺は狐となってその一身にことごとくの攻撃をくらい、私達をここまで連れてきてくれたらしい。

 

「クソっ…バカ野郎が……私なんか置いて逃げれば良かったのに……ッ!」

 

「霞…は、なんかじゃ、ないよ」

 

 紺が上体を起こしながら私の言葉に答えた。

 

「紺!……ゴメン……私のせいで…」

 

「あれ…は、僕、が勝手に…やったこと…だから…それり、霞…お願いがあるんだ」

 

「何?何でも言って?私にできないことでも何でも、絶対に何とかするから」

 

 

 

「僕を……喰って欲しいんだ」

 

 

 

「な…にを言ってるの?」

 

「僕は、きっともう助からない…だ…から、霞に喰べて欲しいんだ」

 

「どうして…そんなことを…」

 

「そう…すれば、僕の肉体が滅びても、僕を喰べた霞の中に、僕の妖力を、能力を遺せる、だから…お願いだよ、霞」

 

「そんな…こんなのって…あんまりだよ…」

 

「霞、喰べてあげて、私も紺の立場だったら、きっと同じことをお願いすると思うの」

 

 私のなかで、たくさんの考えが巡った、食べるべきなのか…それとも喰わないべきなのか…

 紺が死んでしまうことは、もうきっとかわせない……

 

 

 

「あ、あぁ…あああああああっ!!!」

 

 

 

 私は、紺を喰べることにした。

 

 久々に食べる生肉の味はやっぱり不味くて、しょっぱくて、なんだかとても懐かしい感じがした。

 

 

「紺…ごめんね…本当に…ごめんね…」

 

 

 その日、私は初めて涙を流した。

 

 

 どれくらいの時間そこでそうしていただろう、紺の血で濡れた地面をボーッと見たまま魂が抜けたように動けずにいた。

 そして突然、近くに幽輝がいないことと、森の入り口の方が騒がしいことに気づいた。

 

「ま、さか…」

 

 

 少女移動中……

 

 

 森の入り口は焦土となっていた。

 爆発のクレーターや、レーザーの跡のように地面が抉れている、そしてそこら中に人間の死体が落ちている、まだ立っている人間はその半分にも満たない、死体ごと消滅してるのも考えると相当人数を削ったのだろう。

 しかし、森の入り口に立っている妖怪は幽輝一人だった。

 

「ここから先へは進ませない、霞を傷付けるのは絶対に許さない!」

 

 幽輝は目に見えて疲れている、いや、消えかかっている、私にもはっきりわかるほど妖力が枯渇している。

 いったいどれだけの時間…私を守ってくれていたの…?

 

「紺を……紺をよくもー!」

 

 幽輝は…いや、幽輝も泣いていた。

 そして幽輝は、最期の力を振り絞り、敵最後の集団にむけてマスタースパークを放った。

 

「幽輝!」

 

 私はすぐさま幽輝に駆け寄った。

 

「あ、霞……」

 

 幽輝はそのまま私の方へ倒れ込んできた。

 抱き止めた幽輝の体は異常なほど軽くて、存在がなかった。

 

「えへへ…ちょっと頑張りすぎちゃった…」

 

「あぁ、頑張りすぎだ、馬鹿…」

 

「あー、霞ってば、ひどいんだ~」

 

 幽輝は億劫そうに手を伸ばして私の頬に触れた。

 

「ね、霞」

 

「あぁ、わかってる、わかってるよ、幽輝」

 

「そっか……じゃあ、最後にわがままひとつ言わせて」

 

「いっつもわがまま言ってたじゃないか……今度はなんだ?」

 

「最期に、霞の笑顔が視たいな」

 

「バカ……そんなの、わがままに入るもんか」

 

 私は、きっと今まで、そしてこれからのなかで一番の笑顔をしたと思う。




こいつが難産過ぎてこんなに時間がかかってしまった…
書き直すこと4回くらい?
次から頑張ろう……
最後の展開だけは古代編書き始めたときからこうしようって思ってたので書けて満足。
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