業魔を斬りまくってたらいつの間にか「指揮官」と呼ばれていたんだが。   作:Million01

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今回は短めになります。
大鳳はロクロウの傍にずっといたいが為に自身の身が業魔になっても構わないっていう覚悟してそう(
尚、綾波の胃がストレスでいつしか……(真顔


その男、業魔つき

- 着任二日目 -

 

早くも(・・・)大鳳が指揮官の部屋へと侵入する。ゆっくりと音を鳴らさず抜き足指し足で指揮官が眠っているベッドえと近づく。

 

「指揮官さま〜。朝ですよ。起きてくださ───」

 

大鳳が静かにそう声を掛けてベッドの布団を退けた。だが、そこにはいるはずの男がいなかった。

 

(指揮官様がいない!?一般常識的に考えて昨日寝た時間から考えてこの時間に起きる筈……!!)

 

汗を額に浮かべながら指揮官がどこへ行ったか考えを巡らせる。彼はここに来たばかりであまり遠くへは行けないはず。ならばこの母港にいるはず。

 

(まさか、綾波(あの子)のところへ……そう。指揮官様は私ではなくあの子を……)

 

「ン、大鳳か。俺の部屋にやってきてどうしたんだ?」

 

「っ!?」

 

直後、なんの気配もなく大鳳の背後から声をかけられる。ギクリ、と肩を震わせそっと後ろへ振り返った。

 

「指揮官様、一体どこに……っ!!?」

 

大鳳が言い終わるよりも先に大鳳が言葉を詰まらせた。大鳳の目の前に広がるのは男の肌。着物を上半身を捲っているロクロウの上半身裸の姿。

 

「どこにって……嗚呼。俺の日課さ。一日、素振り十万回するのが俺のな」

 

大鳳の耳にロクロウの声は聞こえていない。顔を手で覆い、指の隙間からロクロウの上半身を凝視している。

鍛え上げられた筋肉。そこには一切のたるみはない。引き締まっている筋肉に運動の後に出てくる汗でキラリ、と肌が輝いていた。

 

「どうした……?」

 

「な、なんでもありませんわっ!!」

 

大鳳が顔を赤くさせロクロウを避けてその先の扉へと向かった。バタン!と扉を勢いよく閉めて扉を背にその場にヘタリと倒れ込んだ。

 

(指揮官様の裸……汗……うふふ……最っ高でしたわ……)

 

ニヤリ、顔を綻ばせ酷く歪ませる。見たものを恐怖させるような顔。大鳳が思っていた不安が打ち消され彼女の心が満たされる。

 

 

 

 

 

指揮官室にてロクロウは招かれる。指揮官用の制服があると言われたがロクロウは断った。

 

「今回は綾波と私の二人の特徴を教えましょう。まずは綾波、この子は駆逐艦と呼ばれる種類に入ります」

 

そう言ってホワイトボードに何かを書き込んでいく。

 

「彼女は基本的に魚雷を用いた攻撃が高く、動きも早いです」

 

そう言って近接向きと書かれていく。

 

「そして彼女はブレードを用いた剣術も得意とします」

 

ほう、とそこでロクロウが興味深そうに呟いた。

 

「そして私は空母。空母は基本的に動きが鈍いです。ですが、その分装甲が高い。そして何より、戦闘機を使って攻撃を用いるのが主です」

 

「戦闘機?なんだそれは……?」

 

「そうですね、…わかりやすく言えば遠距離攻撃に優れた鉄の鳥といった感じですわ」

 

「聖隷術か何かか……?」

 

「う〜ん。口で説明するのは難しいので後で実際に見てもらったほうが早いでしょう」

 

さて、と大鳳が手を合わせて休憩を入れた。

 

「なぁ、大鳳」

 

「なんでしょう?」

 

ロクロウが何かを考えた後にニヤリと笑って口を開く。

 

「なぁ、綾波の奴と闘ってみたいんだがいいか?」

 

 

 

 

「大鳳さん、本当に指揮官と戦うの、です……?」

 

「指揮官様がそれをお望みなのよ。貴女と戦いたいとね」

 

はぁ、と大鳳が不安を溜め息と吐いた。大鳳にとっては指揮官が一番。傷付くことも嫌だが、指揮官の思いを無下にすることはできない。嫌々ではあるがその望みを聞いた。

 

「嗚呼。どんな手を使っても構わないぜ!」

 

「……指揮官と戦うのは嫌、です……」

 

「おいおい、セイレーンと戦うお前達がそんなんでいいのか?」

 

「……セイレーンと戦うときは戦うのです。でも指揮官と戦う理由がわからないです」

 

「……なるほどな、それがお前の考えか。鬼神と飛ばれるお前もさすがにただの業魔は勝てないか」

 

「業魔……?」

 

ピクリ、と大鳳が眉を潜めた。綾波も首を傾げてロクロウを見た。

 

「なんだ、気付かなかったのか?俺はお前達の指揮官以前に業魔なんだよ」

 

右目を隠している前髪が靡く。

 

「っ!」

 

顔の右半分が明らかに人間のものではない、黒と赤の禍々しい肌となっている。

 

「征くぞ!」

 

ロクロウの右目が赤く輝き、綾波へと急接近する。

 

「っ!」

 

ロクロウの右手から放たれる小太刀の突きが綾波の首へと迫る。ギィン、と綾波がギリギリでその刃の軌道を逸らす。

 

「さすがにこの位はやってもらわないとな!」

 

そして彼の剣舞が始まる。ギンギィン、と段々と綾波を押していく、

 

「どうした!そんなんじゃセイレーンおろかそこらへんの業魔も倒せないぞ!!」

 

くっ、とロクロウの言葉に綾波は苦虫を噛み締める。相手は指揮官、されど業魔。KAN-SENの主であり危険な相手。

 

無骨(ブコツ)!」

 

ドンッ!とロクロウが大きく足を踏み入れる。ロクロウの右目が一層輝き、彼の小太刀が血に濡れたいるかのように赤く煌めく。放たれる小太刀の突きが綾波の頭部へと目掛けて飛んでいく。

 

(殺られるのですっ!)

 

明らかに殺意を持った彼の攻撃に綾波の体が無意識に体が動いた。その場で体制を崩し、ギリギリのところでろくの突きを躱す。

その様子にロクロウニヤリと笑うが綾波の目にはそれが見えていなかった。崩れていく体を支えるように左手で地面に手を付けると彼女の艤装の砲塔がロクロウの腹へと照準が合わされられる。

 

「───吹き飛べ、です」

 

無意識に放たれた綾波の無慈悲な一言と共に、ゼロ距離からの砲弾が彼の体へと放たれた。ドッ、という鈍い音と共にロクロウの体が吹き飛ばされ遠くへと転がっていく。

 

「指揮官様っ!!」

 

地面へと倒れるロクロウを心配して大鳳が彼の元へと向かっていく。仰向けに大の字で倒れる彼の元までやってきた。

 

「っ!!」

 

彼を起き上がらせようと触ろうとするがそこで手を止めた。彼は業魔。例え、KAN-SENであれ業魔化する可能性はある。だから、触りたいのに触れない。

 

「アハハハハハッ!今のは良かったぞ、綾波!!」

 

そんな大鳳の心配を気にせずガバッ、と起き上がり叫ぶ。面白いものを見たと言わんばかりの良い悪い顔。

 

「指揮官、様……?」

 

大鳳が大きく目を見開いてヘタリと倒れ込む。あやのポカン、と口を空けて唖然としている。

 

「良し、ここまでにするか!」

 

そう言ってロクロウが小太刀を納刀する。業魔と言えどあの砲撃を喰らえば致命傷は免れない。

だが、彼はピンピンしている。それところが笑っているというのだ。

 

「指揮官、貴方は一体……」

 

綾波が彼の異様さに気付き息を呑む。

 

「ン、業魔だが……言ってなかったか?」

 

「さっき知ったのです」

 

そうかそうか、と言ってロクロウが頷く。

 

「まぁ、別に隠していたわけでもないんだかな。でっきり見たときからわかってるもんだと……」

 

ほとんど人間と変わらない見た目をしてひと目でわかるものなんてせいぜい霊応力の高い人間や聖隷だけだ。

 

「私達では見分けられないのです。確かに私達KAN-SENは業魔や聖隷も見えるのです。ですが、私達は兵器。霊応力を持ち合わせていないです」

 

「そういう存在ですので……霊応力がないため"穢れ"を感知することができません。ですので私達は見た目で判断するしかありません。指揮官様は人間に近い姿の業魔ですのでひと目ではわかりかねません」

 

「なるほど、穢れは見えなくても業魔や聖隷の姿は見えるのか、変わった種族だな」

 

ロクロウの言葉に大鳳が種族ではなく兵器だと訂正する。

だが、その大鳳の言葉を否定してロクロウはこう言い放った。

 

「兵器は心を持たないぞ」

 

そう言った。その言葉に少なくとも二人は心を揺るがせた。そんなことを真正面からいう者はいなかった。

 

 

「さて、お前達には海域に向かってもらおうかな!」

 

そしてロクロウは重苦しい空気を壊すかのように明るくそう告げた。

 

 

 

 

 

 

「なんだ、もう終わったのか?」

 

「はい。この近くの海域はセイレーンの小型艦ですので」

 

「それなら、俺から指示を出す必要はなかったんじゃないか?」

 

「そうですが、知識は有るに越したことはないですから」

 

少し苦笑いをする大鳳にロクロウはそれもそうかと納得する。そんな様子に何かを言いたげな綾波にロクロウが気付いた。

 

「どうした、綾波?何か言いたいことがあれば言った方がいいぞ?」

 

「指揮官、先程の戦い……綾波を殺す気だった、のです?」

 

静かに恐る恐る口を開く。綾波の勘違いかもしれないと自分で思いながら真実を確かめるために彼に聞いた。

 

「応。そうでもしないとお前達KAN-SENの実力が判らないからな」

 

ロクロウが否定することもなくキッパリと言い放った。その言葉に綾波は恐怖を感じ、大鳳は喜びを感じる。

自身のKAN-SENに遠慮なく殺す気で攻撃する指揮官に対しての不安と恐れ、自身の指揮官がこれほどまでに強靭な精神と力を持っていることに対する期待と喜び。

お互いの心の中にそれぞれの感情が渦巻いている

 

綾波の頭の中では危険だと告げられ、大鳳の心の中には素晴らしいという言葉が埋め尽くされていた。

 

だが、当の綾波にとってはどうしようもない。あの戦闘で自身の砲撃を受けてもピンピンしているロクロウをどうにかする術はない。

それに背の大太刀を二振りとも抜かないということはあれでまだ本気ではないということになる。

 

あの大太刀二刀、まさか小太刀二刀流のように一本ずつ片手で振り回すのではないだろうか……。そんな、まさかと綾波はブンブンと首を横に振った。

それならば大太刀一刀の方が効率が良い。力も分散されずちゃんと刀も固定できる一刀の方が。

 

 

 

それがまさか本当に大太刀二刀流を使う指揮官だと綾波が知るのはまだ先の話……。

 

 

 





《業魔"夜叉"》

綾波「指揮官……」

ロクロウ「ン、どうした?」

綾波「指揮官はどうして業魔になったのです?」

ロクロウ「嗚呼、それか。それはだな……斬りたい奴がいたからさ」

綾波「斬りたい人……?それって業魔なのです?」

ロクロウ「いや、人間さ。それもとびきり強い、な……俺は人間の頃、ソイツと戦って負けた」

綾波「…………」

ロクロウ「命の太刀とも言える刀も折られ、心も折られた。悔しかった……そしてソイツを斬りたいという業が俺をこの姿に変えたんだ……"夜叉"に」

綾波「夜叉……?」

ロクロウ「嗚呼。なんでも強いやつと戦う為なら手段を選ばないらしいのが夜叉の業魔らしい。まァ、間違ってはいないんだけどな!」

綾波「笑うところじゃないのです……」
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