業魔を斬りまくってたらいつの間にか「指揮官」と呼ばれていたんだが。   作:Million01

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可愛いって何だろうか……(

ていうかこの重巡洋艦、ライフィセット特攻なんだけど特攻したら特攻したで災禍の顕主くるのでNG(

ちなみにベルセリアの主要キャラをアズレンの陣営に当てはめたらベルベットは鉄血、ライフィセットは北方連合とか、アイゼンはユニオン、エレノアはロイヤル、マギルゥは無所属とかになりそう(




愛宕()なるもの。

- 着任五日目-

 

 

「九千九百九十九……一万!……良し、一万を十回目。これで終わりだな」

 

ふぅ、とロクロウが一息を吐く。木刀を肩に担いいであたりを見渡した。

着任して日はあさく。そのせいか、この母港の人員も少ない。未だにロクロウと大鳳、綾波の三人だ。

 

「もう少し人員が欲しいところだな……」

 

ロクロウが悩ましげにそう呟いた。そんな彼の頭上に広がる青空に響き渡るかのような声が彼の耳に届く。

 

「指揮官様〜!建造がもうすぐ終わりますわ〜!!」

 

大鳳の声だ。日課である素振りを始める前にこの間、海域で入手したメンタルキューブを消費して建造へと使ったのだ。

 

「応!今、そっちへ行く!」

 

ロクロウが短くそう答えて着物を着直した。そしてロクロウは建造ドックへと向かう。

最初は道に迷ったが五日もここにいれば少しは道を覚えてきて目的の場所までそれほど時間がかからなかった。

 

「さて、次はどんな奴が出てくるんだ?」

 

ロクロウが少し興味深そうに呟いた。建造されるKAN-SENは恐らくそれなりに力を持っている事と思われる。実際、綾波にもその実力はあるとロクロウは見抜いている。

そしてやってきた建造ドック。そこにいるのは大鳳と綾波、そして白い海軍服を来た長い黒髪の女性。

 

「あの方が指揮官?」

 

彼女がロクロウを見て首を傾げる。ロクロウは彼女の頭部に注目した。そこにあるのは黒い獣耳。それはまるで業魔になった人間に見えなくもない。

 

「ええ。ロクロウ・ランゲツ様ですわ」

 

「よろしくな」

 

「あら、可愛い指揮官ね。お姉さんの名前は愛宕(あたご)よ。気軽に呼んで頂戴」

 

「可愛い……?」

 

愛宕と名乗ったKAN-SENの言葉に綾波が何かを疑問に思ったか首を傾げる。そしてジッ、とロクロウを見つめて再び首を傾げた。

 

「さて、んじゃあお前達に海域に出てもらおうかな」

 

だが、愛宕の言葉を気にしていないかのように話を始めるロクロウ。ニッ、と笑いどこか期待するような笑みにも見えなくもない。

 

「指揮官様、その前に一つよろしいでしょうか?」

 

「吽。どうした、大鳳?」

 

「今朝、ユウ少佐からメールが届いておりましたわ。毒味はこの大鳳がしっかりとしておきましたので」

 

そう言って大鳳が胸の谷間から一通の手紙を取り出し、ロクロウへと手渡した。

 

「何々……『拝啓ロクロウ殿へ 最近、貴殿の母港付近の森で見たことない業魔の目撃情報が耳にします。可能であれば討伐を依頼します ユウ・タチカワより』」

 

ふむ、とロクロウが読み終える。

 

「裏面に追伸が書かれておりますわ」 

 

「『追伸 それなりの報酬はさせていただきます』…見たことのない業魔か……興味深いな」

 

「その依頼どうするのです……?」

 

綾波が首を傾げてロクロウに問いかけた。

 

「そうだな……。お前達が海域に出ている間に俺がこの依頼を解決しよう」

 

どうせ暇だしな、と呟いてニヤリと笑う。どんな業魔なのか楽しみだと言わんばかりの表情が彼の顔に出ていた。

 

「ではこうしましょう。私と綾波が海域に出て愛宕が指揮官の付き添いを」

 

「あら、私?」

 

その言葉に少し以外そうに愛宕が首を傾げた。

 

「ええ、残念だけど(・・・・・)これから行く海域は私しか場所を知らないので。綾波も貴方もつい最近、建造されたばかりで場所が判らないからなでしょう?」

 

黒い笑みを浮かべながら小さく首を傾けて愛宕へとその表情を見せる。

 

「そう。なら、私は先輩のお言葉に甘えて指揮官に付き添いしますわ」

 

ウフフ、と二人の間に火花が散る。その様子にロクロウは何も気にせず、綾波は冷や汗を浮かべる。

 

(綾波、この母港でやっていくとなると……不安なのです)

 

「じゃあ、そういうことだな。任せるぞ、大鳳」

 

「はい。この大鳳、任されましたわ」

 

ペコリと頭を下げてロクロウへとお辞儀をすると二手に別れた。ロクロウと愛宕、大鳳と綾波と。

 

 

 

「さて、俺達も行くか」

 

母港に二人だけとなったロクロウが一通りの用意をすますと母港の外へと足を足を踏み入れる。

 

「行くって指揮官。その業魔の場所、わかるの?」

 

「いいや、わからん。とりあえず、近くの街で聞き込みだ」

 

そう言って街道を愛宕と二人で歩く。

 

「業魔の目撃情報か。意外だな」

 

「どうしたの?」

 

不意に不思議に思ったロクロウの呟きが愛宕の耳に聞こえた。

 

「いや、業魔を見たって言う奴がいるのが珍しくてな。十年前まではみんな見えていたがある日を堺にほとんどの奴が業魔が見えなくなったはずなんだが……重桜には霊応力が高い人間が多いのか?」

 

「そのことね。恐らく霊応力が高い人間はほとんどいないわ」

 

「なら、なんで業魔が見えるんだ?普通なら業魔の本来の姿が見えるわけでもないはずだが」

 

「重桜に張ってる結界にそういう術式が書き込まれてあるのよ」

 

「結界……?」

 

「ええ、普通の人間は業魔もセイレーンも見えない。でもそうなれば重桜に指揮官が着任した時、敵が見えないのは不便でしょ?」

 

「まぁ、なんとなくわかるが……」

 

「そいうのも兼ねて上層部の人達がそういう結界を重桜に結界を張ったのよ。それに対魔士のようなことも重桜はKAN-SENを用いているわ」

 

「対魔士のようなことも?」

 

「ええ、対魔士はウェイストランドだけの存在でしたので私達、重桜はKAN-SENの持つ力で業魔を退治してきたのよ」

 

「へぇ。ここ数年、重桜にいたが始めて聞いたな」

 

「まぁ、そこら辺は一般人にはあまり知られていないのよ」

 

「そうだったのか。それにしても建造されたばかりなのに詳しいんだな」

 

「私達、KAN-SENはある程度の知識を与えられ建造されるのよ。それに私はお姉さんだから」

 

「そうかそうか。それも覚えておこう……ム!」

 

ロクロウが足を止め懐から小太刀二刀を取り出し構えた。それに続いて愛宕も腰に掛けていた黒い日本刀の鯉口を切る。

 

「愛宕、自分の身は自分で守れよ!」

 

「指揮官、それってどういう───」

 

「来るぞっ!」

 

愛宕が聞き終える前に林の中から複数の魔物が飛び出してくる。

 

「破ッ!」

 

「ッ!」

 

しかも現れた魔物は三体、姿もバラバラであった。

 

妖狐(ようこ)山姥(やまんば)小鬼(こおに)か……まぁ、ここらへんの業魔は普通ぐらいか」

 

小鬼と妖狐がロクロウへと飛びつく、そして残った山姥が愛宕へと出刃包丁を振り下ろす。

 

妖狐の鋭い爪がロクロウの頭部めがけて振り下ろされる。ギィンッ、とそれを小太刀一刀で軽々と弾きかえし、そのままもう片方の小太刀で切り伏せた。

そこに小鬼がロクロウへと小鬼を振り下ろす。

 

「甘い!」

 

ロクロウが一歩後ろへ飛び退きながら小鬼へと斬撃を見舞わせる。だが、彼の攻撃はそこで終わらない。小太刀で印を描き、術を使用する。

 

「壱の型!」

 

香焔(かむら)。小鬼を覆うほどの火の霊力が圧縮し爆発した。小鬼の業魔の身体は霧散して消滅する。

 

鎧通し(よろいどおし)!!」

 

そして今度は喰らいつこうと飛び出してきた妖狐に右手の小太刀を勢いよく腹部に押し付ける。この技はそれだけで終わりではない。もう片方の小太刀を押し当てている小太刀へと叩きつけることでその威力を発揮する。

叩きつけた際に生じる衝撃波が妖狐の体へと伝わり、体内を破壊する。思い切り吹き飛ばされた妖狐は力尽きて地面に転がると消滅した。

 

「手応えがなさすぎるな……。愛宕の奴は……」

 

ロクロウが業魔の余りの弱さに嘆くが連れの存在を思い出しそちらの方を振り向いた。

小さいお婆さんが出刃包丁を愛宕へと振り下ろす。

 

「うふふ、甘いわぁ……」

 

キン、と左翼の艤装でその攻撃を弾いた。そして隙だらけの懐に狙いを定めていた右翼の砲塔が砲弾を射出。思い切り吹き飛ばされ地面へと転がり込む業魔。

起き上がろうとする山姥に愛宕はそんな暇を与えることはしなかった。大きく跳躍し、刀の鞘の(こじり)を業魔の頭部へと叩きつけた。

 

「さようなら」

 

刀の鞘が頭部を貫き地面へと突き刺さる。愛宕がそう呟くと山姥の業魔が消滅した。

 

「やるな……」 

 

その様子を見ていたロクロウが感心するように呟いた。初の戦闘でここまでやるのは流石とも言える。

ロクロウは改めてKAN-SENの戦闘能力を認識する。どれも業魔に匹敵するほどの強さを持つ少女であり、聖隷や業魔ではない。かと言って対魔士というわけでもない。かつて対魔士という存在がいたが殆どの人間はその存在を忘れかけてはいるが。

 

「建造されたばかりであそこまでの力……まるで聖隷だな」

 

ジッ、と愛宕の後ろ姿を見て呟いた。聖隷、自然の力を扱う種族。かつては対魔士に使役される存在であったが本当は太古から人間と共にこの世界に生きている種族。使役されていたのは十年も前の話だ。

そもそも本当の名前は天族(てんぞく)。天界に住まうものの種族だったが大昔にこの地上に降りてきたのだ。

 

「まぁ、今はそんなことはどうでもいいか」

 

「何か言った、指揮官?」

 

「ン、いや、なんでもない。それにしてもお前、強いんだな」

 

その言葉に愛宕が頬を少し膨らませてロクロウをジッと睨みつけた。

 

「指揮官、それはどういう意味かしら?」

 

「別に深い意味はないが建造されたばかりなのにやけに戦いなれしてるような動きだったからな」

 

「お姉さんはこれでもKAN-SENよ?セイレーンと戦う為の存在。戦えるのは当たり前よ」

 

「そういうものなのか、KAN-SENというのは……」

 

そう言ってロクロウが街の方へと歩き始めた。その後を愛宕が着いていく。

 

「それを言うなら指揮官は何者なの?業魔と戦えるということは人間とは思えないわ。聖隷?それとも対魔士?」

 

「残念だがどちらも外れだ」

 

「え、じゃあ……」

 

「俺は業魔さ」

 

「!?」

 

ロクロウから出た言葉に愛宕が言葉を詰まらせた。なんていいか分からない。なぜ?と聞けばいいのかそれとも大丈夫?心配すればいいのか……。

彼女にはなんと言ったらいいのか分からなかった。

 

「さて、街に着いたし酒場とかで聴き込むか」

 

歩いて数十分、街へと到着しロクロウが街を回る。宿屋の店主や酒場の店主などと言った情報が集まりやすそうな人の元へと尋ねる。

 

「珍しい業魔?んー、確かにそんな話は聞くが俺は見たことがないからなぁ。ん、そういえばこの間、この街に来た傭兵がその業魔と戦ったって聞いたな…」

 

宿屋の店主が思い出したかのようにそう答えた。ロクロウがその傭兵の場所を聞き出す。

 

「ああ、あの業魔の事か……それなら街を出て東の方の使われてない神社にいるよ。かなり、凶暴な業魔だったな」

 

「街を出て東、だな…。感謝する」

 

「それにしてもアンタもあの業魔と一目見たいなんて変わってるな」

 

アンタも(・・・・)?」

 

「ああ。ついさっきもアンタ達と同じようにその業魔を一目見たいらしくて場所を訪ねてきた女がいたぜ」

 

「女?」

 

「ああ、赤い着物を着た長い黒髪の女だよ。すぐに早足でここを出てったぜ」

 

傭兵の言葉を聞いてロクロウと愛宕がお互いに目を合わせて首を傾げた。

 

「業魔を一目見たい女か。まぁ、何にせよ向かったほうがいいな」

 

「そうね。行ってその女性が業魔にやられてましたなんてことになったら最悪の事態よ」

 

その言葉にロクロウがだな、と答えるとすぐさま傭兵が言っていた神社へと向かう。

立ちはだかる業魔や襲ってくる業魔を退けては斬り、ようやく目的の場所へとたどり着く。

 

「ここが目的の神社だな」

 

「誰もいないわね」

 

「嗚呼、人はな」

 

ロクロウが静かに呟いて小太刀を構えると奥の本殿へと見据えていた。その様子を見た愛宕も静かに刀の鞘に手をかけていた。

 

「■■■■■■■■■■!!」

 

人ならざる獣の声が空気を張り巡らせ、木々を揺らめかせ、大地を震わし、鳥達を怯えさせた。

本殿の部屋から青く輝く獣の双眸がロクロウの姿を捉えた。

 

「っ!?」

 

ロクロウが目を見開いた。まるで銃弾の様に飛んでくる白い体がロクロウと衝突した。

 

(速いっ!)

 

寸での所で小太刀を交差させ直撃は避ける。だが、それでも勢いは殺す事かできず後ろへと吹っ飛んだ。

 

「指揮官!」

 

クルリ、と空中で体を回して体制を整えると見事に着地するロクロウ。

 

「コイツは中々楽しめそうだな!」

 

再びロクロウが構えを取ってニヤリ、と笑ってみせた。

ロクロウ達の目の前にいるのは白い妖狐の業魔。それもただの妖狐ではないのが一目でわかった。

人間大の大きさを持つ白い毛の狐。そして何より特徴的なのは尻尾が九本もあるということだ。

 

「愛宕、援護を頼むぞ!」

 

その言葉と共にロクロウが白い妖狐、"白面九尾"へと接近する。それに対して白面九尾が青い狐火を複数射出した。

ロクロウをそれを素早く躱しては、小太刀で弾き、最後の残りの三発は跳躍して避けた。

 

枝垂星(しだれぼし)!」

 

ロクロウが上空から流星の如く斬りつける。だが、白面九尾はそれを複数の尾で自身の体を守る。

 

「愛宕!」

 

「ええ!」

 

このタイミングで彼女の名を叫ぶ。ロクロウの背後から響く轟音と共に砲弾が業魔の防御を弾いた。

 

翠波活殺(すいはかっさつ)!」

 

ロクロウがガラ空きとなった胴体に斬撃を一閃。さらに遅れて鋭い真空波が業魔を襲う。

 

「まだだ!重ね陽炎(かさねかげろう)!!」

 

さらに続けて鋭い突きを見舞わす。だが、それだけではない。いつの間にか先程と同じ位置へと戻っていたロクロウが二度、突きを放つ。

業魔に嘆く暇さえ与えないほどの手数とスピードで敵を斬り裂いていく。

 

「───瞬撃必倒!」

 

そして彼の右目が赤く輝き、小太刀が軌跡を描いた。斬り裂いていた右手の小太刀が業魔の腹部に当てられ……。

 

「取ったぁっ!真───」

 

そして左手の小太刀をクルクルと回して右手の小太刀へと叩きつけようとしたその時だった。

 

「なにっ!!?」

 

炎の鳥がロクロウの体を吹き飛ばす。それは白面九尾の業魔のものではない。かと言って愛宕のものでもなかった。

そこから考えられる可能性は一つ。第三者の乱入だ。

 

「チッ、新手か!」

 

「いけないわぁ。その子に手を出そうとするなんて。その子は私の大事な大事な妹なの」

 

ロクロウが乱入者を一睨みする。赤い着物を着た長い黒髪の女性。その姿はまさに傭兵が言っていた女性の容姿とそっくりだったのだ。

 

「まさか……赤城(あかぎ)……?」

 

愛宕が女性の姿を見てゴクリと息を呑む。一航戦の赤城。

 

「知り合いか?」

 

「知り合いというわけでもないけど私達と同じ重桜のKAN-SENよ」

 

「あら、一緒にしないでもらえる?私達は正規空母、貴女は重巡洋艦。その時点で違うわ」

 

赤城が愛宕の言葉を否定して更にはキツく睨む。

 

「同じとか違うとかどうでもいいが、なぜ邪魔をした?」

 

「あら、理由なんているかしら。この子は私の妹なのよ?」

 

そう言って彼女は白面九尾の近くまでやってくるとちらりとその業魔を見た。

 

「なに……?」

 

「妹……まさか!?」

 

「───そう、正規空母の加賀(かが)よ」

 

 

 

 




《姉と弟》

愛宕「指揮官は私の弟みたいなものよ」

ロクロウ「愛宕は俺の姉だったのか?」

愛宕「そうよ?まぁ、比喩なのだけどね」

ロクロウ「なんだ。実の姉ではないのか」

愛宕「ぐっ……それもそうなのだけどね……」

ロクロウ「まァ、本当に愛宕が実の姉だったら斬りあってたかも知れないけどな!」

愛宕「斬り合う!?」

ロクロウ「応。愛宕がランゲツ家の人間だったらの話だけどな」

愛宕「指揮官の家系ってそんなに危険な家なの……?」

ロクロウ「まァな。なにせ兄貴五人共死んでるしな」

愛宕「指揮官の家って恐ろしいわね……」
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