「映画、面白かったですね」
「ストーリーも良かったけど、なんと言ってもアクションが凄かったよ~」
あの場面が良かった、この場面は驚いた。興奮気味に話すマユミさんはいつもより少し子供っぽくて、それもまた可愛いなと思ってしまう。人気の俳優さんが出てる恋愛物か、こっちのアクション物かで迷ったけど、反応を見るに正解だったみたい。
そういえばマユミさんみたいな人たちは、映画やドラマでやってる男女の恋愛物って見てどう思うんだろう? 面白いと思うのか、それとも自分たちとは全然関係ないって感じなのかな。せっかくだし聞いてみたいかも。
「マユミさんは家にいる時とか恋愛物って見るんですか?」
「ん? 見るよ~。ケイコが結構好きでさ、シリーズ見終わった後とかに真似したがったりするの。洒落たレストランの予約取って、観覧車で夜景見ながらイチャイチャしたりするんだ。最初は恥ずかしさもあったんだけど、一生懸命考えてくれるのが嬉しくてさ、密かに次を期待してたりしちゃうんだよね~」
どうしよう、惚気られちゃった。マユミさんってケイコさんのこと本当に好きなんだ。どこか誇らしげに、けど照れ臭そうに頬を掻きながら語るマナミさんの口から飛び出す『ケイコ』という響きに、軽い嫉妬を感じちゃう。
でもそういうものなんだって驚きもあった。デートの参考にしたりとか色んな楽しみ方があるんだから、性別どうこうに囚われる必要なんて初めからなくて、純粋に楽しんじゃえばいいんだ、と。
二人くらい仲の良いカップルになると、頭で考えなくても自然とそんな考えになるのかもしれない。奥が深いなぁ、恋愛って。
柄にもなく小難しい事を考えているとすぐ傍でスマホの着信音が鳴り、マユミさんが慌てて画面を確認した。
「ごめんね、ケイコからだ。ちょっと電話するね」
「あっ、はい」
「うん、うん…。今映画見終わったとこ。分かってるって。それじゃあ」
ケイコさんとどんな会話するのか興味があって精一杯聞き耳を立ててたけど、特に面白い会話も聞けないまま電話は終了してしまった。仲良しの秘訣とか知りたかったからちょっと残念。
「繁華街だから気を付けてね、だってさ」
「たしかに午後になって人通りも随分増えてきましたね」
映画館に入る前よりもだいぶ賑わいを増したメインストリートは、行き交う人々で溢れ、油断してるとはぐれちゃいそうだ。カップルやら友達グループの間を、ワイシャツ姿の人が羨ましそうに眺めながらすり抜けていく。
「よそ見してるとはぐれちゃうよ、ユイちゃん」
「す、すみません」
「何か難しいこと考えてた?」
「えっ?」
「なんかそんな気がしたから。あっ、そうだ。腕組もうか? そしたらはぐれずに済むよ」
「いいんですか? じゃあ、ぜひ!」
3度目の腕組み。調子に乗って身体を寄り掛からせるとマユミさんの身体が少し左に逸れた。「危ないよ?」って窘めつつも、しちゃダメだとは決して言わない。私の体重を考慮し、上手くバランスを取って歩いてくれる。
マユミさん、手慣れてるなぁ。たぶんケイコさんも腕を組む時は寄り掛かってるんだろう。そうでなきゃマユミさんは天然のジゴロで、交際経験豊富ってことになるのかな。
大通りから道を1本横に入った、それでもそこらの道に比べれば充分に大きな道を二人で歩く。時折お店のガラスに映る自分たちの姿に、私はちょっとした恋人気分を感じていた。浮ついた気分に浸りながら、これならキスだって出来るかも、とそう思った時だ。
「あれ~? ユイじゃん。やっほ~」「あ、ホントだ」「ユイ~」
その声を聞いた瞬間、少しずつ息を吹いて膨らませた、幸せという名のシャボン玉がパチンと音を立てて弾けていくのが分かった。ついさっきまで青空を気持ちよさそうに飛んでいたそれらは、形を失い、飛散した水滴となってポタポタと地面に降り注いだ。
有名なロゴの付いたコーヒーチェーン店がある曲がり角。そこで偶然にもクラスメイトの女子たちに鉢合わせしてしまった。特別に仲が良いというわけではないが、普通に遊んだりはするグループだ。
(どうしよう、マユミさんと腕組んでるとこ見られた…)
頭の中が真っ白になる。出会いがしらだったせいで何の準備も出来ていなかった。せめて道の向こうからやって来てくれれば、向きを変えたり、道を変えたりして避けられたのに。
何か言わなきゃと必死で頭を回転させているのに、起死回生の言い訳が何も浮かばない。
「ユイ、どしたの?」「なんかいつもと雰囲気違くない? 化粧とかしてるし」「というか、隣の人…誰?」
「えっ!? あっ、これは…その」
しどろもどろになりながらパッとマユミさんから身体を離す。彼女たちの声に反射的に身体が動いていた。
(あれ? なんで私、慌てて離れたんだろう?)
自分でも理解出来なかった。腕を組みたくて仕方なかったはずなのに、それをあっさりとやめてしまうなんて。
(もしかして私、マユミさんといるのが恥ずかしいって思った? だから?)
後になって振り返るとその考えは正解だったんだろうけど、とにかくこの時の私は軽いパニック状態で何がなんだか分からなくなっていた。どうすればこの状況を乗り切れるのか見当もつかず、ただオロオロとするばかり。友人たちの浮かべる怪訝な顔が、まずます私から思考能力を奪っていく。
本当は自分でも分かっていた。女の人を好きになるなんてどうかしてるって。いくらマユミさんが素敵だからって
初めて知り合いの目に晒されて、私はようやくその事を本当の意味で理解した。
遭遇した瞬間に、明るく「私の好きな人なんだ」って言えたらもう少し何かが違っていたのかもしれない。他にもやりようはいくらでもあったはずだ。けれど全てが手遅れで、私にはどうすることも出来なかった。
友人たちの声がやけに遠くから聞こえる。実際にはすぐ近くなのになんでか遠く、数十メートルくらい離れてるんじゃないかってくらい。でもこれは以前からそうだったわけじゃなくて、今日この瞬間に、私のせいで引き起こされた地割れによるものだ。
地面に盛大に口を開けたそれが友人たちとの距離を、声を、遠いものにしていた。
そんな現実と空想の狭間の世界にいた私は、ある声によって現実へと引き戻された。
「みんなはユイちゃんのお友達?」
マユミさんの声だ。私の態度が変で不穏な空気になりかけていたのをものともせず、明るい声でクラスメイトに話しかけていた。突然話しかけられた彼女たちは「ええ、そうですけど…」と、返事しつつも少し疑うような目を向ける。それでもマユミさんは調子を変えずに話し続けた。
「ごめんね、びっくりさせちゃったかな? 私はマユミっていうの。ユイちゃんとは親戚同士なんだ」
(えっ!? マユミさん、何言ってるの?)
「親戚の…人?」
「うんっ。ユイちゃんのお祖母ちゃんと私のおじいちゃんが兄妹でね。田舎に住んでたんだけど、こっちで働くことになったからユイちゃんに案内してもらってたんだ」
嘘だというのにマユミさんの喋りはとても流暢で、一切の澱みもなくスラスラと発せられる。まるで最初から用意されていた台本のような安定感にみんなの警戒がみるみる解けていくのが分かった。
「仲もすっごく良いんだよ。ほらっ?」
そう言うとマユミさんは私と腕を組んでみせた。
「な~んだびっくりした」「ねー」「そうならそうだって早く言ってよ」「腕組んでるからマジびびったし。ユイってそっち系の人なのかと思ったじゃん」
「う、うん。ごめん…」
みんなマユミさんの説明に納得したのかすっかり空気が変わっていた。もう私とマユミさんが腕を組んでいてもおかしな目で見たりはしない。それどころか「綺麗な人だね」とか「仕事できそう」とか好き勝手に話し合っていた。
親戚だから。たったそれだけの情報で、こんなに態度が変わるんだ。そして親戚でもない女の人と腕を組んでいたらそれは怪しい、警戒すべき対象になってしまうのか。
私は知らなかった。マユミさんやケイコさんみたいな人に向けられる視線が、これほどあからさまに疑念が込められていることを。
「それじゃまた学校でね~」「マユミさん案内してあげなよ~」
クラスメイトたちは何事もなかったかのように手を振り、にこやかに大通りの方へと向かって去っていった。安心する立場にあるはずの私が違和感を覚えるほどに、それは不思議な出来事と言えた。
もしマユミさんの機転がなかったら、どうなっていただろう? 私が女の人と仲良さそうに腕を組んで歩いていたと彼女たちはみんなに言うのだろうか? 初めのうちは遠慮して、ひそひそ話から始まり、次第にそれは尾ひれがついて、私はあっという間に『レズ』だと囃し立てられいじめの対象にでもなっていたのかもしれない。
嫌だ。そんなの…怖いよ。
学校で仲間外れにされることはとても恐ろしいことだ。一度そうなってしまうとなかなか元には戻れない。どんなに頑張ってイメージを変えようとしても、ふとした拍子に再びその事でイジられる可能性だってある。変態の烙印を押されようものなら私はきっと立ち直れない。
でも、でも…。
悔しかった。マユミさんを好きと言えない自分が。身体を離してしまったことが。そしてなにより恥ずかしいと思ってしまったことが。みんなに会った瞬間に、慌てることなく堂々と「好きな人なんだ」と言える理想の自分はどこにもいなくて、ただ臆病に震えて、何も言えずに俯くだけのダメダメな女の子。それが私だった。「違う、そんなことない」と虚勢を張ろうとしても、どうしたってその事実が邪魔をして私を苦しめる。
私の気持ちってこんな程度だったのかな。私の『好き』は憧れの勘違いだったのかな?
「ユイちゃん、ユ~イちゃん。大丈夫?」
「マユミさん」
「余計なこと…しちゃったかな?」
ブンブンと首を振り、そんなことないと伝える。
「ならよかったよ。ユイちゃんどう答えようか迷ってたでしょ。万が一にも私のせいで誤解されたりしたら大変だし」
やっぱり気付いてたんだ。マユミさんには私の心の中が全部見えているのかも。
ニコリと笑ってくれる優しさが、今の私にはむしろ心に突き刺さる痛みを伴って感じられた。
「さっきみたいな言い訳。よく…使うんですか?」
「うん、まぁ…ね。最近は使ってなかったから久々だったけど、ケイコと付き合い始めた頃はよく使ってた。一から説明するより楽で早いからね」
「そう…ですか」
「どうしようか? 今日はもう帰━━━ってユイちゃん? 大丈夫!?」
気付けば景色がぐにゃりと歪んでいて、泣いてるってことさえもマユミさんの声でようやく分かった。
「うっ、ぐす…。ごめん…なさい。ごめんなさいマユミさん」
自分が情けなくて、情けなくて。人もそれなりに多い道の端で、わんわんと子供にように泣き出した。
ハンカチで拭ってもらっても、涙は後から後から溢れてきて、割れたシャボン玉のように、下に落ちて地面を濡らす。ぐずってただ「ごめんなさい」を繰り返す私を、マユミさんは何も言わずに介抱してくれた。
人の少ない路地に移動し、そこでようやく泣き止んだ私は、マユミさんに抱きついて思いの丈を伝えた。
「好きです。マユミさんのことが好き。なのに私はさっき何も出来なかった。友達に紹介することも、何も。ううん、それだけじゃない。腕を組んでるの、恥ずかしいって思っちゃったんです。それが悔しくて、惨めで」
また泣き出しそうになるのを堪えながらのせいか、声はひっくり返り、キンキンと辺りに響き渡る。
「ケイコさんが一番で私は二番でもいい。だから私のこと嫌いにならないで。お願い…お願いします。マユミさんこと、好きでいさせてください」
結局涙を我慢出来なくて、マユミさんの胸に顔を押しつけてまた泣いた。
「うん、うん。ありがとうユイちゃん。私もユイちゃんのこと好きだよ」
私を落ち着かせようと、ポンと頭に乗せられた手があったかくて…。撫でられる度に嫌な気持ちがスゥーッと取り払われていく感覚が心地良い。大人っぽく振舞うつもりだったのに、やっぱり私はまだまだ子供で、マユミさんにお世話になりっぱなしだった。
「大きい通りだとさっきみたいに知り合いの子に会っちゃうかもしれないから裏の方通ろうか」
歩き出したマユミさんの後を追っていく。飲食店やアパレルが立ち並ぶ道を抜けると居酒屋の多い裏通りになり、さらに進むと少しいかがわしい感じのお店の入る雑居ビルばかりのエリアとなった。一人だったり友達とだったらまず間違いなく通らない道だ。
まだ日は高いはずなのに薄暗い路地。店の前にはところどころ怖そうな従業員らしき人が立っていて、私を威嚇しているような気がしてしまう。自然とマユミさんに身体をくっ付けるように歩いていると、「大丈夫だよ」と声を掛けてくれた。
「本当は通りたくないんだけどね。今回は特別ってことで。怖い思いさせてごめんね」
「い、いえ。マユミさんが一緒ですから」
とはいえ怖いものは怖くて、なるべく目が合わないように心掛けつつそのまま歩いていくと、駅の割と近く、といってもまだいかにも裏通りといった風情ではあるけれど、少し明るい場所に出た。だけど、そこは━━━。
(この辺って電車から見えたりするけど…)
無機質な建物が林立し、入り口のところには『休憩』とか『フリータイム』と書かれた看板が控えめに鎮座している。なかにはゴテゴテとした装飾で彩られたものもあったが、全体的に人目を忍ぶようなデザインが多く、ひっそりとしていた。
(ラブホテルだ…)
これまで遠目にしか見たことがない、自分には縁のなかった場所である。クラスでそういう話をしてる子たちもいたけど、まさか私がそんな会話に入れるはずもなく…。耳だけは気になってピクピクと反応させながら、どんなところなんだろう?と空想していた。
(あの人たち…入るのかな? あっ………)
今まさに、ぽっかりと口を開けたエントランスへとカップルらしき人影が足早に吸い込まれていくのを見て、私は溜め込んでいた息を吐き出した。なぜか見ている側の私の方が緊張していたらしい。
事情に詳しくないからよく分からないが、ピークの時間にはまだ少し早いんだろうか? 入っていった2人がいなくなると、辺りに人影はなくなりシィンと静まり返っていた。どちらにせよこんな場所に女2人でいたら好奇の目でジロジロ見られるだろうし、人がいなくなったのは幸いかも。
(私たちだけ…? 私とマユミさんしか…いない)
もう一度キョロキョロと見回しても相変わらず人影はない。ガランと寂しげな通りに私たちだけだ。それを理解した瞬間、ドキンと心臓が跳ねた。
(これってチャンスなんじゃ)
もし誰か一人でもいたら、私はその人の視線が気になって、きっと先程のように何も出来なかったに違いない。だけど今は二人きり。私が何を言おうと誰の耳にも入らないし、誰にも知られることはない。そのことが私に勇気を与えてくれた。
これは神様がくれた最初で最後のチャンス。私はそう思うことにした。
言え、言え、言え! 頑張れ私。マユミさんを好きだって、証明してみせるんだ。
「マユミさん」
思ってたよりもずっと小さな声しか出なかった。
「マユミさん」
今度はさっきよりも大きい声でしっかりと。前を歩くマユミさんの手を引っ張り止まるように促しながら。
「どうしたのユイちゃん?」
「私と、ここに入ってもらえませんか?」
どこのラブホが良いとか悪いかなんて私には分からない。調べてる時間もない。だからパッと見で一番綺麗そうな建物を指差しそう言った。
「ユ、ユイちゃんっ!? それ、本気で言ってるの?」
「私は…本気です」
「ダメに決まってるよ。もしかしてさっきの友達とのやり取りの事気にしてるの? そうならなおさらダメだよ。ユイちゃんは高校生なんだから、自分を大事にしなきゃ」
「私って魅力…ないですか? マユミさんは女の人好きなんですよね? 私じゃダメですか?」
「とにかく少し落ち着いて」
「嫌です。この瞬間を逃したら私は二度とマユミさんを誘えない。分かるんです。自分のことだから。お願いしますマユ━━━」
「ユイちゃん!!」
ひと際大きな声に思わずビクンと身体が硬直した。顔を上げるとなぜだろう? 泣く必要なんか何もないはずのマユミさんがポロポロと涙を零していた。
「ねぇユイちゃん…気付いてないの? 足、震えてるよ?」
「えっ…?」
ほんとだった。長距離走を走った後でもないのに、私の足はガクガクと震えて今にも崩れ落ちそうになっている。よく見たら足だけじゃなくて手も…。
「あれ? なんで…私」
「ダメだよ、無理しちゃ。ユイちゃんは心の奥では怖がってるんだよ。だから身体がそれを教えてくれてるの」
「ちがっ…。私は本当にマユミさんのこと…好き、好きなんです。だから…これは…きっとそのせいで」
「もう行こう。こんなとこにいるから変な気を起こしちゃったんだよ。やっぱり大通りを歩けばよかったね」
マユミさんの背中が遠ざかっていく。会話はもう終わりだと告げるように、早足で。
やだ。嫌だ! 私を置いていかないで。私もそっちへ連れて行ってよ。
「マユミさんッ!!」
その背中に抱き着き懇願した。それはもうみっともないくらいに必死に。
「お願いします。お願いします。一度だけでもいいんです。せめて思い出をください。お願い…」
「いい加減にしないと…私だって怒るよ」
腕を組んで寄り掛かった時とは違ってマユミさんは本気だった。それは私のことを大事にしてくれてるからこそ、と分かるのが余計に辛い。だけど私だって本気だ。本気でマユミさんのこと…。
言葉だけじゃ足りない。なにか行動で示さなくちゃ━━━。
それだったら、こうしてやる!
思い切って前に回り込むと、私は両手を広げてその進路を塞いだ。驚いた表情を浮かべたマユミさんは最初こそ右へ左へ動いて躱そうとしたものの、やがて私をどかそうと真正面から向かってきてもみ合いになった。
ラブホテルがあるような場所で女二人で取っ組み合い。知らない人が見たら、男を巡る三角関係の成れの果てだと想像するんだろうか?
滑稽な話だけど、私はこうやって自分の身体が動くのが少し嬉しかった。動けたことがマユミさんへの愛を本物だと証明しているような気がして…。
身長差の分だけ力はマユミさんの方が強かった。でもそんなのどうでもいい。私の気持ちは単なる憧れじゃなかったのだから。
組み合っていた力を突然ふっと緩めると、つんのめるようにしてマユミさんはバランスを崩した。きっとマユミさんには景色がスローモーションに見えていたのかもしれない。もしそうだとしたら、私は一体どんな風にその瞳に映っていたのだろう?
「今の…初めてです」
「ユイちゃん…」
「私のファーストキスの相手、マユミさんですよ」
それは唇を触れさせただけの事故みたいなキス。教室で転んだ拍子にしちゃって、今のはノーカウントだなんて言われちゃいそうな代物。けれども私とマユミさんの間ではくっきりと刻まれていて、マユミさんは拳を握りしめ一度空を見上げてからそっと呟いた。
「本当に一回だけって約束できる?」
「………。約束…します」
「分かった。一回。一回だけだよ。それでおしまいだから」
次回で完結となります。もしよかったら最後までお付き合い頂けたら幸いです。
皆さんの期待を良い意味で裏切れたらな、と思ってますが上手くいくかどうか…。
何はともあれ一生懸命頑張ります。それでは~♪