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ある日、翼は奏に連れられとある病院に来ていた。
「奏……ここは?」
「ああ、お前にまだ紹介してなかったからな。紹介してやろうかと思って」
奏はそう言って気さくに笑う。翼は頭に「?」を浮かべながらも奏について行った。そして、とある病室にたどり着く。翼が部屋のネームプレートを確認すると、そこには「天羽 律叉」と書いてあった。
「天羽……?」
「入るよ」
奏が扉を開けると、そこにはベッドで眠っている一人の少年がいた。奏は少年に近づき、頭を撫で、枯れてしまった花瓶の花を取り替えた。花を取り替えながら翼に話しかける。
「こいつは私の唯一残された肉親で、弟の天羽律叉(あもうりつや)。私達がノイズに襲われた時、炭化されはしなかったけど逃げてる途中に穴に落ちてね。今も意識不明のまま。いつかは目覚めると思うけど……もしかしたら、一生このままかもしれないって医者に言われた」
「奏……」
「挨拶してやってくれない?」
翼にとってそれは全然良かったのだが、一つ引っかかるところがあったので訪ねてみる。
「それはいいんだけど、どうして奏は私を連れてきたの?」
奏はその質問を聞くと、律叉のベッド脇の机の引き出しから音楽プレイヤーを出した。
「律叉は歌が好きだったんだ。だからいつも来るたび音楽聴かせてやってた。でもある日、翼の歌を聞かせてたら、今まで動きもしなかった律叉が一瞬、私の手を握り返してきたんだ。ビックリしたよ。偶然か、それとも翼の歌にはなにかあるのかわかんないけど、聞かせてる時ほんのわずかに反応を見せてくれる。どうやら翼の歌が好きみたいでな」
「……そう………」
翼は少し照れながらも律叉の手を取る。そして、優しく語りかけた。
「初めまして。風鳴翼です。私の歌を聴いてくれてありがとう。今私に出来ることは何もないけれど、もし目を覚ましたら……私の……私たちのライブにきてくれると嬉しいな………」
「………………」
律叉に特に反応はなかったが、少し表情が動いたように見えた。奏は笑顔を浮かべて翼に礼を言った。
「ありがとうな、翼。律叉が目覚めたら絶対ライブに連れていくからな」
「ああ」
二人はそのまま病院を後にした。
◆◆◆◆◆◆◆
ー某日 ツヴァイウィングLIVE会場ー
この日、ツヴァイウィングはライブ中にノイズの襲撃を受け、大勢が死亡した。ライブ会場にいた立花響はガングニールの破片をくらい、死にかける。そして、奏は最期の絶唱を使い、死亡した。
「奏!!!奏!!!」
「悪いなぁ………もう………一緒に歌えないみたいだ」
「どうして…どうしてそんなこと言うの?奏は意地悪だ………」
「だったら翼は………泣き虫で弱虫だ」
「それでも構わない!ずっと一緒に歌って欲しい!」
「翼………律叉の………こと………頼む…………」
「何言って………ライブに……連れて来ようって……言ったじゃない…」
「ごめんな……」
ー同日 病院ー
天羽奏の絶唱を聞いた人間は殆どいない。だが、まるでその絶唱に起こされるようにして、天羽律叉が目を覚ました。
「聞こえる……かな姉の歌…?」
律叉が目覚め、窓の外を見た。夕焼けの空には黒い墨の欠片が浮いていた。
続く
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