戦姫絶唱シンフォギアTN   作:瑠和

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最終回です。G以降は一ヶ月後くらいでないと投稿しないかと思います。ネタ考えときますんでお楽しみに。


第十話 Joker

-地下シェルター-

 

 

 

地下シェルターで響たちの戦いを見ることしかできなかった。ただ目の前で少女たちが倒されていくのを見ているしかなかった。しかし、響がかつて助けた少女の提案でなんとか応援を届けようと未来、弓美、詩織、創世らは協力して学校の電力をもどした。

 

しかし、そこで問題が発生する。電力を戻してシェルターの設備と接続したは良いが、学校のどのスピーカーにもつながらなかったのだ。

 

「これでは………いや待て、律叉君につなげられるか?彼は今敵の眼を離れている。彼ならばもしくは…」

 

 

 

-カディンギル付近-

 

 

 

投げ飛ばされた律叉は力なく地面に伏していた。もう戦う力はほとんど残ってなかった。それでも、翼の想いを胸に律叉は地面を張ってフィーネに立ち向かおうとする。

 

「ぐ…ぅ……」

 

そのとき、律叉の持っていた通信機が鳴る。

 

「………?」

 

律叉は通信機を取って通信に出る。

 

[律也君!聞こえるか]

 

「あんたか…………」

 

律也は全身の痛みに耐えながら何とか通信にでた。

 

[その近くにまだ使えそうなスピーカーはないか?シェルターの生徒たちの声を、響君たちに届けたい]

 

「そんなことして………何になる?」

 

[歌はいつだって力となる。君もそうなんじゃないか?]

 

確かに、言われてみればそうだ。歌によって律叉は幾度となく覚醒してきた。

 

「さぁな………」

 

[律叉さん!]

 

通信機越しに創世の声が聞こえた。

 

「創世………?」

 

[お願い律叉さん!私たちの声をビッキーに届けさせて!]

 

[今こそ律叉さんのナイスな力を貸してください!]

 

「寺島詩織…」

 

[地球が駄目になるかどうかなのよ!やってみる価値はあるじゃない!!]

 

「板場弓美か………」

 

[私からもお願いします!律叉さん!響にもう一度力を与えられる可能性が、すこしでもあるのなら!]

 

「……小日向未来」

 

律叉は地面を叩いて無理矢理身体を起こす。自分の守った日常が、今自分に力をくれている。

 

「たくっ…そうだよな……俺は、ヒーローになる。そうかな姉に約束したんだ!」

 

そして、近くに突き刺さっていた学校の校庭用スピーカーを拾い上げる。棒が途中で折れ、コードも切れて使い物にならないが、律叉が持つのであれば話は別だ。

 

「俺がこのスピーカーと通信機をヤントラ・サルヴァスパの力で繋げる。そしたら、歌え…」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

そして、歌は力となり、少女たちを空へ舞い上がらせた。シンフォギアシステムの隠された機能、エクスドライブモードを発現させた。少女たちの歌が奇跡を起こし、翼、クリス、響のシンフォギアに翼を与えたのだ。

 

「みんなの歌声がくれたギアが、私に負けない力を与えてくれる……クリスちゃんや翼さん、律叉さんににもう一度立ち上がる力を与えてくれる。歌は戦う力だけじゃない………命なんだ!」

 

「高レベルのフォニックゲイン………こいつは二年前の意趣返し…」

 

新たな力を得て飛び立った響たちを見てフィーネは冷静に解析する。

 

(んなこたぁどうでもいんだよ!!)

 

「念話までも……限定解除されたギアを纏って、すっかりその気か!墜ちろぉぉぉぉぉ!!!」

 

フィーネはソロモンの杖にエネルギーを充填し、空へ放った。放たれた光は街全体に広がり、街を覆いつくすほどのノイズを出現させた。

 

「街が………」

 

「おっしゃあ!どいつもこいつもまとめてぶちのめしてくれるぅ!」

 

クリスはいち早く戦場へ飛んだ。それを見て、翼も響もまずはノイズの殲滅に当たるだろうと考え、フィーネはどこかへ行こうとした。

 

「待てよ」

 

それを律叉が引き止めた。

 

「………んぅ?立ちはだかろうというのか?そんな身体で?」

 

「ああ」

 

「はははは!!冗談もそれくらいにしておけ!そんな身体とそんな装備で!この私を足止めすらできないことも理解できないか!!貴様一人で、一体何ができるという!」

 

フィーネが言う通りだった。律叉のアンクスは半壊し、とても使いものにはならない状態だ。律叉は持っていたスピーカーを投げ捨てた。

 

「いいや、一人じゃない」

 

律也はフォニッスルを取り出した。それは、戦闘中クリスが狙い撃ってふっ飛ばした黄色のフォニッスルだった。

 

「それは……」

 

「立花響!!!」

 

律也は響に向かって叫んだ。響はそれに気づき、律叉を見る。それが意味することは、響は何となく理解していた。

 

「頼むぜかな姉!一緒に戦ってくれ!!」

 

律也は黄色のフォニッスルをアンクスにセットし、読み込ませた。

 

『ガ・ン・グ・ニ・ー・ル』

 

律也の胸のヤントラ・サルヴァスパが輝き、アンクスから黄色い波動が発生した。

 

「律叉さん!!」

 

そして響は自らその波動の中に飛び込み、アーマーの一部をパージした。アーマーは律叉の周りに集まり、変形し、新たなアーマーを生み出しながら一気に数を増やした。そのアーマーはアンクスの破損した部分をカバーするように装備された。

 

両手の籠手、左足全体、胸部の一部、腰部に装備される。

 

「馬鹿な………そんな形状のアンクスはありえない!」

 

「はぁぁぁぁぁ!!!」

 

律也はフィーネに突貫した。走り出すと同時にアンクスから伴奏が流れ始め、律叉は歌った。

 

「♪ まぼろし?夢?優しい手に包まれ 眠りつくような 優しい日々も 今ははかなく消え」

 

「フォニックゲインを持たない男のお前が歌うだと!!認めんぞ!そんなことは!」

 

フィーネは鞭を律叉に向かって飛ばした。

 

「♪ まるで魔法が解かれ、すべての日常が 」

 

それに対して律叉は両手を胸の前に合わせ、籠手に付いていたアーマーを合体させて飛ばした。飛んでいったアーマーは変形し、ガングニールの本来のアームドギアである槍に変形した。ガングニールのアームドギアはフィーネの鞭を弾いた。

 

「アームドギアだと!?」

 

律也は弾かれたガングニールを手にし、フィーネに向かっていった。

 

「♪ 奇跡だと知った!」

 

再び飛ばされた鞭を律叉は躱し、フィーネを切り裂く。

 

「ぐぅ!」

 

フィーネは鞭を固定し、剣代わりにして律叉のガングニールに対抗する。しかし、槍術の心得があるはずもない律叉がフィーネを圧倒し、どんどん追い詰めていく。反射神経、反応速度、機動力が段違いに上がっているのだ。

 

「♪ 曇りなき青い空を 見上げ嘆くより」

 

フィーネの剣を弾き、開いた腹部に槍を突き立てるがそれはもう一本の鞭を固定化した剣で防がれる。

 

「♪ 風に逆らってぇぇ!」

 

しかし槍の穂先が高速回転を開始した。

 

「なに!?」

 

「♪輝いた未来へ帰ぇぇぇぇぇろぉぉぉうぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

剣を貫き、フィーネを回転によって発生した竜巻をぶつけて吹っ飛ばした。奏の必殺技の一つ、LAST∞METEORだ。竜巻に吹っ飛ばされたフィーネは瓦礫に突っ込んだ。

 

「バカな…アンクスの…シンフォギアの性能がネフシュタンの鎧の性能を上回ることなど!ありえない!!」

 

フィーネは鞭を飛ばし、アンクスのベルトにセットされていた黄色のフォニッスルを奪い取った。

 

「!」

 

フィーネは奪ったフォニッスルを奏で、黄色の波動を放った。それを浴びた律叉は光で身体を拘束され、さらにガングニールのアームドギアはフィーネに奪われる。

 

「フンッ!」

 

フィーネはガングニールを振り上げた。

 

「♪ きっと……どこまでも行ける…」

 

律叉の状況に気づいた翼がクリスに叫ぶ。

 

「まずい!律叉がピンチだ!雪音!」

 

「ああ!」

 

「律叉に力を!アメノハバキリ!」

 

「イチイバル!」

 

二人はアーマーの一部を律叉に向かって飛ばした。アーマーはフィーネに数回攻撃をし、律叉への攻撃を阻止した。

 

「なに!?」

 

そして律叉はアーマーをギアに取り込み、ヤントラ・サルヴァスパの力で自らの力へと変換した。二つのギアの力が混じったことにより、ガングニールのみを封じる光の波動を弾き飛ばす。その際、赤と青、黄色の三色の翼の幻影が一瞬展開された。

 

「♪ 見えない 翼に気づけば!……………返せ!それは俺たちの武器だ!」

 

「ぐぅぅ!」

 

アーマー攻撃でフィーネは一瞬怯んだものの、再度律叉にガングニールで攻撃を仕掛ける。

 

「♪ 悲しみには!」

 

律叉はその攻撃を片手で受け止めつつ、ガングニールを脇に抱えてフィーネをガングニールがカバーしている左足の脚部アーマーからパワージャッキを起動させ、蹴り飛ばした。その威力でフィーネはガングニールを離してしまう。

 

「♪ 留まらずに!」

 

律叉はガングニールを持ち直す。そしてフィーネに向かって走り、とっさに放ったフィーネの鞭を躱して懐に入り込み、カウンターで切り裂く。

 

「♪ 高く舞い上がれぇ!」

 

さらにアンクスナックルをベルトから外し、それでフィーネを殴り飛ばした。

 

「ぐぁぁぁぁ!!……………くっ!許さん!許さんぞ!紛い物ごときが、この私に楯突くなど!」

 

フィーネはウェイクアップフォニッスルを取り出して奏でる。律叉もナックルフォニッスルをベルトにセットして読み込ませる。

 

「♪ We are one 乗り遅れないで」

 

『ア・ン・ク・ス・ナ・ッ・ク・ル・ラ・イ・ズ・ア・ッ・プ』

 

「ウェイクアップ!」

 

アンクスナックルを取り外すと同時に、律叉はガングニールを真上に投げた。ガングニールは持ち手が収納され、穂先だけになる。その状態のガングニールに律叉はアンクスナックルを持ち手が収納された部分に合体させる。

 

「♪時は、止まってくれない」

 

アンクスナックルからガングニールの穂先にエネルギーが送られる。そのガングニールを律叉はフィーネに向かって投げた。

 

フィーネもエネルギーを充填した鞭を律叉に飛ばす。二つは二人から等距離の場所でぶつかる。しかし律叉はぶつかりあっているガングニールに向かって走る。

 

「♪ 今を生き抜くために」

 

そして律叉はガングニールの穂先に右足で飛び蹴りを当てた。それと同時に腰部についたバーニアが噴射された。その姿は、翼の天ノ逆鱗、奏のSPEAR∞ORBITを彷彿とさせるものだった。

 

しかし、律叉の力だけではフィーネの攻撃は抑えきれないように見えた。

 

「はっ!その程度の出力で、この私のウェイクアップを超えられるものか!」

 

「♪ 私たちは、出会ったのかもしぃぃぃれないぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!」

 

律叉の身体から青、赤、黄色のオーラが出現し、三色の翼が再び出現した。それにより推進力が増加し、少しずつフィーネを押す。

 

「♪ 君ト云ウ 音奏デ 尽キルマデ 止まらずにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!」

 

「なんだと!?」

 

刹那、律叉の隣に奏の幻影が見えた。その幻影が律叉と重なると同時に推力は最大となり、フィーネの鞭を弾き、フィーネの身体に突貫した。

 

「♪ Sing out with uぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁs!!!!!!!!!!!」

 

律也はガングニールと共にフィーネの身体を貫通し、半ば地面に突っ込む形で着地した。

 

「はぁ、はぁ、はぁ…………」

 

「馬鹿な…」

 

律也の一撃で、フィーネのベルトについていたキバットは破損し、ネフシュタンの鎧の維持が難しくなる。

 

「おのれ……………おのれおのれおのれおのれ!!!どこまでも小賢しい!」

 

やけになったフィーネはソロモンの杖を天高く持ち上げ、自身の腹部に突き刺した。するとフィーネの肌がソロモンの杖に引っ張られるように張り付く。

 

杖と自身の身体を融合させ始めたのだ。街に放たれ、響たちに殲滅されかけたノイズの残党が飛び、フィーネの身体に合体していく。

 

「危険だ!離れろ律叉!」

 

「!」

 

近くにいた律叉は翼を展開して三人の近くまで飛んだ。

 

「来たれ!デュランダル!」

 

カディンギルの地下に設置してあったデュランダルをノイズの濁流を使って回収し、ノイズを取り込んだフィーネは巨大な竜のような姿の怪物を生み出し、そのコアとなった。

 

「なんだこの化け物…」

 

「逆さ鱗に触れたのだ………相応の覚悟はできているだろうな」

 

竜の頭から光線が発射される。その光線は、エクスドライブモードを発現した三人が掠っただけでもふっ飛ばされる威力があった。

 

「このやろぉぉぉぉぉ!」

 

クリスが一斉掃射で攻撃するが大したダメージはなく、逆に竜からの一斉掃射に打ち落とされた。

 

「ぐぁぁぁ!」

 

「雪音クリス!のやろぉ!」

 

律也はガングニールを投げてそれを大量複製し、一斉に竜に当てた。しかし、命中した箇所に大きなダメージはない上に即再生した。続いて翼、響が攻撃を仕掛けたが大きな効果は見られない。

 

「くそっ!」

 

「シンフォギアとはいえ所詮聖遺物の欠片。完全聖遺物に勝てると思ったか!」

 

「……ん?」

 

その言葉がヒントとなった。三人は念話のチャンネルをオフにし、作戦を立てた。

 

「……できるかどうかわかりませんが、やってみます!」

 

作戦を聞いた響は少し不安になりながらもうなずいた。

 

「私たちで露を払う!行くぞ二人とも!」

 

「ああ!」

 

「まかせな!」

 

翼、律叉、クリスの三人は竜に突貫した。竜から放たれた対空砲を躱しながら近づき、まず翼が仕掛けた。蒼ノ一閃滅破を命中させ、破損した箇所から律叉とクリスが入り込む。そこにはデュランダルをもったフィーネがいた。

 

「おぉぉぉぉ!」

 

内部でクリスは一点集中の砲撃をフィーネに向かって放った。

 

「このぉ!」

 

フィーネはシールドを展開し、攻撃を防いだ。しかし砲撃の威力は高く、シールドは破壊される。

 

「くっ…」

 

そしてシールドと砲撃がぶつかって生まれた爆炎の先から律叉が突貫してきた。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

ガングニールでフィーネが持っているデュランダルを弾き飛ばした。

 

「なに!?」

 

そして弾き飛ばしたデュランダルに向かって飛び、ガングニールを振りかぶる。

 

「今だ!翼!」

 

外部から再び翼が蒼ノ一閃滅破を放ち、壁を破壊する。その隙間にむけて律叉がデュランダルを打ち飛ばした。しかし、その直後に内部のフィーネに攻撃を受けてクリスと律叉は撃墜された。

 

「それが切り札だ!立花!」

 

爆炎の中からデュランダルが響に向かって飛んでいった。

 

「勝機を零すな!掴みとれ!」

 

「ちょっせぇ!」

 

クリスがありえないほど精密な射撃でデュランダルを弾き、響の前まで飛ばしていった。響はデュランダルに手を伸ばす。

 

「させるかぁ!」

 

響たちの目論みに気づいたフィーネは竜の砲撃で響を吹っ飛ばした。

 

「あぁぁぁぁぁ!!」

 

「立花!」

 

地面に向かって落ちるデュランダルに向かって翼が飛んだ。しかし、翼よりも先に律叉がデュランダルを掴んだ。

 

「律叉!?よせ!」

 

「!?」

 

完全聖遺物であるデュランダルに触れた瞬間、デュランダルから発生した黒い影、破壊衝動が律叉の腕の先から飲み込もうとする。

 

「う……?おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」

 

律叉は僅かな抵抗を見せたがすぐに飲み込まれていく。

 

「律叉さん!?」

 

「馬鹿!お前が取ってどうするんだよ!?」

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!Gaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!!」

 

律也の全身は完全に黒く染まり、暴走状態に陥った。しかしその直後に黒い影が剥がれ始め、剥がれた影は律叉の胸に吸収されていく。

 

「な、なにが起きている?」

 

その現象はフィーネにも理解不可能だった。暴走を律叉が制御したわけではない。破壊衝動が自然と消滅しているというべきだった。

 

「はぁ、はぁ、はぁ…………こ…いつは」

 

「律叉さん、大丈夫ですか!?」

 

翼たちが律叉のところに飛んできた。

 

「ああ………問題ないみたいだ…いや、それより、立花響!」

 

律叉はガングニールのアームドギアを渡した。

 

「決めるぞ。この戦いを、終わらせる」

 

響は四人は飛び上り、フィーネに対峙する。

 

「チィィ!どこまで邪魔をすれば気が済む!」

 

「どこまでだって邪魔するさ!お前はいくつも許せないことをした!俺を、クリスを、響を利用し、二課の人間を騙し続け、かな姉を殺した!絶対許さねぇ!!!」

 

フィーネは竜から可能な限りの砲撃を四人に向けて放った。

 

「はぁぁ!」

 

律叉は手に持ったデュランダルを一振りした。デュランダルから放たれた斬撃は分裂し、砲撃を全て打ち落とす。

 

「馬鹿な!?」

 

「行くぞ翼!立花響!雪音クリス!」

 

四人はそれぞれの武器にエネルギーを充填し、一斉に放った。律叉のデュランダルの一閃に翼の斬撃、クリスの砲撃、最後に響が律叉のガングニールのアームドギアで放った一撃が加わり、一つとなった攻撃「Synchrogazer」がフィーネを、ノイズの塊が形を成した竜を貫き、消滅させた。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

フィーネがノイズと一体化して生み出した竜は崩壊し、炭化した物体の山が残るだけとなった。響はその炭の山からフィーネを助け出した。どこまでも響は、人を助けること、手を繋ぐことを貫き通したのだ。

 

「もう終わりにしましょう。了子さん」

 

「私はフィーネだ…」

 

「でも、了子さんは了子さんですから………きっと私たち、分かり合えます」

 

「分かり合う?かな姉を殺したそいつと?」

 

響とフィーネの会話に律叉が割り込んできた。持っていた完全聖遺物デュランダルの切っ先をフィーネに向ける。元々の作戦通り、響が使っていれば恐らく完全聖遺物同士の衝突によりネフシュタンの鎧と対消滅を起こしていた筈だった。しかし、律叉が使ったとこで理由は分からないがデュランダルは制御下いおかれ、力を失ったのはネフシュタンの鎧のみとなった。

 

「律叉さん…」

 

「律叉…」

 

「立花響、お前はそれでいいのか?こんな奴とすら手を繋ぐってのか?」

 

律叉の問いに響は笑顔で答える。

 

「……はい。私は、了子さんと手を繋ぎたいです」

 

「翼、お前はどうなんだ?」

 

急に聞かれ、翼は一瞬戸惑うがすぐに答えた

 

「………私の気持ちも、立花と変わらない……のかもな」

 

「二課の連中も、雪音クリスも、同じ考えなのか」

 

全員が頷く。それを見た律叉は小さくため息をついて剣を下した。

 

「………なに?」

 

「俺は、戦うことに特化した行き止まりだ。物事の良し悪しなんぞわからねぇ。だから俺は、かな姉が信じたお前たちを信じる………」

 

律叉はそういって下がった。それを見てフィーネは驚いていた。初めて律叉が翼の前に現れてから数か月。この短期間の間に律叉も変わったのだ。

 

「ノイズを作り出したのは、先史文明期の人間統一言語を失った我々は、手を繋ぐことよりも相手を殺すことを選んだ。そんな人間が分かり合えるものか…」

 

「人が…ノイズを…」

 

「だから私は、この道しか選べなかったのだ!」

 

「人が言葉よりも強く繋がれること、わからない私たちじゃありません」

 

「………」

 

次の瞬間、フィーネは鞭を響に向けて放った。響はそれを躱してフィーネの目の前にまで飛び、寸止めで拳を寸止めした。

 

「私の勝ちだ!」

 

だがフィーネの目的は響への攻撃ではなかった。鞭を一気に伸ばし、それを月まで伸ばしたのだ。月の破片に到達した鞭をそのまま全身を使って引っ張る。地面が割れ、何とか形を保つ最後の力を残していたネフシュタンの鎧も砕けた。

 

「月の欠片を落とす!私の悲願を邪魔する下等は!ここで纏めて叩いて砕く!この身はここで果てようと!魂までは耐えやしないのだからなぁ!聖遺物の発するアウフヴァッヘン波形がある限り私は何度だって世界に蘇る!どこかの場所!いつかの時代!今度こそ世界を束ねるためにぃ……私は永遠の刹那に存在し続ける巫女!フィーネなのだぁ!」

 

そのフィーネの叫びに対し、響は寸止めした拳をコツンと僅かに当てた。

 

「うん、そうですよね。どこかの場所。いつかの時代、蘇るたびに何度でも、私の代わりに伝えてください。世界を一つにするのに、力なんて必要ないってことを、言葉を超えて、私たちは一つになれるってことを。私たちは、未来にきっと手を繋げられるってことを。私には伝えられないから、了子さんにしか、できないから」

 

「お前…まさか…」

 

「了子さんに未来を託すためにも私が今を、守って見せますね」

 

その言葉は、自身の死を覚悟したものだった。その言葉の意味をフィーネも理解した。響の鉄のごとき人を助けるという意思にフィーネはただただ驚くばかりだった。

 

「…………………………本当にもう、放っておけない子なんだから」

 

フィーネは優しく響の胸を触った。

 

「胸の歌を、信じなさい」

 

その言葉を最期に、フィーネは灰とも砂ともわからぬものに変わり、空気に乗って消滅した。

 

「軌道計算、でました。直撃は避けられません…」

 

「あんなものがここに落ちたら…」

 

「私たち…もう…っ!」

 

ただ上を向くばかりの一同の中から響が前に出た。

 

「響…」

 

「何とかする!ちょーっと行ってくるから。生きるのを諦めないで」

 

「その言葉はそっくりそのままテメェに返すぜ」

 

その瞬間、三色の波動が響たちを襲った。

 

「!?」

 

三人のエクスドライブモードが解除され、そのエネルギーが律叉の持っているデュランダルに吸収されていった。近くから拾い集めたフィーネのフォニッスルを三ついっぺんに使って三人の力を吸収したのだ。

 

「律叉さん…」

 

「律叉……?」

 

「お前…」

 

「俺は、戦うことに特化した行き止まりだ。だからこそ、まだそれ以外に可能性のあるやつらに。託してぇんだよ」

 

律叉はそう行って笑った。

 

「生きるのを、諦めないで」

 

律叉は翼を展開して空に飛んだ。

 

「律叉さぁん!!!」

 

創世が叫んだ。その叫びは律叉に届くことはなく、空に消えた。

 

「Gatrandis babel ziggurat edenal Emustolronzen fine el baral zizzl Gatrandis babel ziggurat edenal Emustolronzen fine el zizz」

 

律叉は歌った。最後の歌を。元々シンフォギア装者でもなく、装備しているものもシンフォギアでもない。それが無理やり絶唱を引き起こす。確実に死ぬであろう行為だった。

 

その声が、姿が、翼の中でかつての奏と再び重なった。

 

「律叉!だめだ!!!歌ってはならない!」

 

(いいんだ)

 

「え…?」

 

声が、その場にいた全員の頭に響く。律叉からの念話だった。

 

(いま、かな姉と同じ立場に立って初めてかな姉の気持ちがわかったんだ。あの日、限界突破して絶唱を歌った時の気持ち、きっとこんな風に………)

 

そこで念話の限界距離が来て律叉の声は途切れた。そして、宇宙空間まで飛んだ律叉は月の欠片の近くまで来た。

 

(きっとこんな風に、誇らしくて…)

 

律叉はデュランダルを振り上げた。三人分のエネルギーをいっぺんに開放し、巨大な光剣を形成した。

 

「これが俺の、絶唱だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」

 

(満たされたような気持だったんだろうな)

 

律叉の一撃による月の欠片の消滅は、地上からでも確認できた。

 

そして、消滅の光から少しして天に一瞬、光が煌めいた。

 

「今の光…律叉さん!?」

 

「あれは…まずいみんな!この場から離れるんだ!」

 

弦十郎の警告で全員その場を離れる。地面に向かって落ちてくるそれは、藤尭のノートPCを貫いて地面に突き刺さった。

 

「あれ…は」

 

地面に突き刺さったのは、デュランダルだけだった。

 

「………律叉さんは?ねぇ律叉さんは!?私まだ、マフラー借りたままだよ!?律叉さん!」

 

弓美の涙ながらの訴えに応えられるものはいなかった。

 

 

 

-三週間後-

 

 

 

それから三週間律叉の捜索はされたが、彼は見つかることはなかった。有人ロケットによる必死の捜索も意味もなさず、見つかった物は何もなかった。我々が使った限定解除、エクスドライブモード等に対する米国からの追求はなかった。唯一記録を残していた藤尭さんのPCはデュランダルに貫かれたため、記録は残らず、その他厄介な事実はすべて律叉とフィーネが起こした事象として責任はすべて二人に押し付けられた。

 

死人に口なしとはまさにこのこと。彼がいなくならなければ、二課は消えていた。最悪の場合私たち装者は存在が抹消されていたかもしれない。律叉とフィーネがすべての罪を背負って消えたおかげで、これからも我々は防人として生きていくことが出来る。

 

これでよかったのだ。

 

これで。

 

「…これでよかったな等と…………断じて認めてなるものか!!!」

 

認めて等なるものか。彼がいなかった方がよかったなどという事実、私は認めてなるものか。彼は確かにここにいた。誰よりも優しく、誰よりも勇敢な彼は。確かにいたのだ。

 

「翼さん、時間です」

 

「…………はい」

 

律叉は私に「夢に向かって飛べ」と言った。だから私は夢に向かって飛ぶ。それがせめて彼がいたことの証明になると信じて。

 

私は歌う。

 

世界のステージで。彼に声が届くくらいに。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

ここは、米国のとあるプライベートビーチ。そこにいるのはピンクの美しい髪を風になびかせる少女だった。少女は、歌う。妹との思い出の曲を。

 

「♪ りんごは浮かんだお空に りんごは落っこちた地べたに 星が生まれて 歌が生まれて ルルアメルは笑った 常しえと………」

 

そのビーチに他の人影はない。少女一人だけだった。しかし、海の波の音と共に少女の歌を聴いてる人物がいた。

 

(…………………………聞こえる…………誰の歌?)

 

 

 

 

To Be Continued…?

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