戦姫絶唱シンフォギアTN   作:瑠和

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第三話です。明日投稿するかは未定です。昨日ここでもTwitterでも一件ずつ感想をいただいて本当に嬉しかったです。ありがとうございます。


第三話 Classmate

-商店街-

 

 

 

律叉は公園から商店街へ移動した。前回の作戦会議で話していた感じを見ると、クリスが一般人を巻き込むことはないのは分かっていた。人の多いところにいれば襲われることはないだろう。

 

「………腹減ったな…」

 

空腹となった律叉は食事をとろうと適当な店を探す。すると良い匂いが漂ってきた。匂いの元をたどるとお好み焼き屋だった。

 

「ふらわー…か。入ってみるか…」

 

「いらっしゃい」

 

暖簾をくぐり、店に入ると少し年配の女性が暖かく出迎えをしてくれた。そして店の中には5人ほどの女子高生がいた。

 

「どーも…」

 

「ん?」

 

一人馬鹿食いしていた少女がこちらをみた。その顔はどこかで見たことのある顔だった。間違いない、ガングニールを纏っていた少女、装者の立花響だった。

 

「…あなたは………」

 

「………テメェは」

 

明らかに知り合いに会った反応を見せる響をみて友人らが訪ねる。

 

「ビッキー…知り合い?」

 

響の姿を確認すると、律叉はすぐに出て行こうとした。しかし、響がその腕を掴んで静止させる。

 

「…待って!」

 

「…!」

 

「待って…ください………誰にも…言いませんから」

 

響は友人たちに見えないように二課の通信機を出して電源を切った。

 

律叉は響に対しては特に敵意はなかった。しかし、少し話たいとは思っていた。それは響も同じだったようで、響は未来たちにカウンター席から座敷席行ってもらうように頼んで二人だけにしてもらった。

 

カウンターで座る二人を見ながら安藤たちはヒソヒソ話をしていた。

 

「未来さん、あの方ご存知ですか?」

 

「知らない……」

 

「まさかビッキーの彼氏?」

 

「えー、アイツと付き合おうとする男いると思う?」

 

「響…」

 

未来は響を心配してみていた。

 

「……いいのかよ。友達とか…」

 

「あ、大丈夫です……みんなには…いつか…きっと話しますから」

 

「………」

 

いざ二人きりになってみると、何を話したもんかと二人は黙ってしまう。

 

「あの……この間襲撃があったんですが…それで翼さんが……」

 

「なに?」

 

律叉は響から先日自分も参加した襲撃中に翼が絶唱を使ってクリスを撃退したことを聞いた。しかしその代償として、しばらく一人で歩くこともできないほどのダメージを受け、意識不明の入院中であること。

 

「そうだったのか…………風鳴翼が…」

 

「……律叉さんは…奏さんの弟さん…なんですよね?」

 

「ああ」

 

律叉の髪は奏と同じ色だった。顔つきや髪形にも奏の面影がある。さすがは姉弟といった感じだ。

 

「目が覚めたら、家族全員が死んでた。唯一会えたかもしれない、かな姉は、あの日、風鳴翼が助けなかったせいで…………」

 

「違います!奏さんは私を守ろうとして…」

 

「それは何となく分かってた。別に風鳴翼が全部悪いわけじゃないこと…。でもそれしかやることがなかった。あいつのせいだって言われたから………殺す以外のことを考えてなかった。もっと、翼っていう人間が悪い人間だと思ってた」

 

律叉はお冷を口にしながら呟く。そのとき、前回の襲撃で言っていた翼の言葉を思い返していた。

 

(もし、正々堂々の決闘を望むなら今は、今だけは邪魔しないでほしい!私はこの国の剣、防人だ…。己の罪から逃げる気はないが、今失われようとしている命を見殺しにはできない!奏の命を目の前で救えなかった!だからこそ私は!目の前で救える命を二度と失いたくない!)

 

「でも、本当に風鳴翼が悪い奴なのかわからなくなった。俺のしていることが正しいのかも…」

 

「…私のガングニール、奏さんのギアの破片が胸に刺さって、それが融合したものなんです」

 

「………らしいな…」

 

「だから、装者になったのは本当に最近で、私は翼さんみたいに訓練してないのでうまく戦えませんし、アームドギアも出せません」

 

「…」

 

「私一人でノイズを相手する自身はありません。守りたいものはたくさんあります。でも、今はまだ力不足なんです。翼さんなしじゃ、救える命も救えなくなってしまいます」

 

「どうして……」

 

「え?」

 

「お前も風鳴翼も、他人のことばっかり顔も名前も知らない誰かの為に戦えるんだ」

 

「…あの日生き残ったことは、この力が託されたことは、きっと何か意味があるんだと思います。それはきっと自分のためじゃない。そう思うんです。いえ、思いたい…んです。それにわたし、人助けが趣味なので……」

 

笑顔でそう言う響を見て律叉はため息をついた。

 

「……ご馳走様。おばちゃん、ありがとな」

 

「あの…!」

 

まだ話は中途半端なのに去ろうとする律叉を響は再び引き留めようとする。しかし律叉はその腕を振り払った。

 

「少し考える。その時間を俺にくれ……」

 

クリスの話を聞き、響の話を聞き、色々考える時間が欲しかったのだ。自分の行うべきこと、自分のいるべき場所についてを。

 

 

 

-天羽家-

 

 

 

その夜、律叉は自身の実家に帰ってきていた。話では親戚が家を引き取ったらしく、まだ家具やらなんやらはそのままだ。

 

自分の存在を悟られぬ様、ここには帰ってきてなかった。しかし自分の正義が揺らいだ今、再考の為に此処へ戻ってきた。

 

家の鍵は持っていた。扉を開け、家に入る。家の中は薄暗く、少し埃っぽい。

 

奏は二課に入ってからずっと寮暮らしだったらしくここには帰らなかった。だからここは、あの日、両親と共に出かけた朝のままだ。5年間、全く変わってない。

 

「…」

 

電気は止められているので付くことはない。懐中電灯をつけて家の中に入った。

 

あの時はまだ13歳だった。中学に上がったばかりだった。父と母の仕事場を見学して、家に帰って、母の作った夕飯をみんなで一緒に食べる筈だった。

 

「俺の日常…俺の…未来…家族…」

 

家の中を見て回った。何も変わらない。家族が死んだなんて信じられなかった。今は出かけてるだけのように思える。

 

最後に奏の部屋に立ち寄った。

 

「かな姉…」

 

部屋を照らすと机の上に何か置いてあるのが見える。

 

「………?」

 

そこには、少し不格好な形のマフラーが置いてあった。手に取ってみると間に何かが挟まっているのに気づく。

 

「これは…」

 

挟まっていたのは厚紙だ。手書きのメッセージカード。

 

「Happy……Birthday…………律叉…」

 

あの事件の日は律叉の誕生日が近かった。奏がバースデープレゼントとして用意してくれたいたものだろう。

 

「……そうか俺の誕生日のため…」

 

ふと、あの日のことを思い出す。

 

「そういや父さんなんか言ってたな……今しか見られない貴重な発掘品があるとか…」

 

律叉はマフラーを持って父の部屋に向かった。

 

 

 

-翌日-

 

 

 

翌日の夕方、響の友人の三人組板場弓美、寺島詩織、安藤創世は裏路地を走っていた。学校帰りに自然発生したノイズに襲われていたのだ。

 

「はぁ、はぁ、なんなのよ…こんな…」

 

「どうしましょう…」

 

「このままじゃ…」

 

なんとか走っていたがとうとう行き止まりに来てしまった。シェルターに走っていたつもりがいつの間にか道を間違えてしまっていたらしい。

 

三人を追い詰めたノイズの大群。その中の一体が三人に向かって飛んだ。

 

「!!」

 

覚悟を決めた三人。しかし、ノイズと三人の間にマンホールの蓋が投げ込まれ、ノイズはマンホールに衝突して止まった。

 

「え?」

 

「何やってんだお前ら!」

 

ビルの屋上から声がした。三人が屋上を見上げるとマフラーを付けた律叉が立っていた。

 

「ビッキーの彼氏!?」

 

「あの時の!」

 

「ああ?なんだそりゃ」

 

突然訳のわからない異名で呼ばれ、困惑しつつも律叉はナックルを取り出して拳に押し付ける。

 

『レ・ディ・ー』

 

「変身!」

 

『フィ・ス・ト・オ・ン』

 

律叉はアンクスを纏って三人の前に降り立った。

 

「嘘…」

 

「アニメじゃないんだし…」

 

突如謎の鎧を纏い、助けに来てくれた律叉に三人は驚くばかりだった。

 

(…多いな……一発で決められるか…)

 

以前使った笛の様なアイテムを取り出し、ベルトに差し込む。

 

『ア・ン・ク・ス・ナ・ッ・ク・ル・ラ・イ・ズ・ア・ッ・プ』

 

ナックルをベルトから外し、大きく振りかぶる。

 

「おぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

アンクスナックルからエネルギーを集中したブロウクン・ファングが放たれるが5~6体しか消滅させられなかった。

 

「くそっ…威力が足りない…」

 

「ちょ…大丈夫なの!?」

 

「…」

 

(もし、正々堂々の決闘を望むなら今は、今だけは邪魔しないでほしい!私はこの国の剣、防人だ…。己の罪から逃げる気はないが、今失われようとしている命を見殺しにはできない!奏の命を目の前で救えなかった!だからこそ私は!目の前で救える命を二度と失いたくない!)

 

(私一人でノイズを相手する自身はありません。守りたいものはたくさんあります。でも、今はまだ力不足なんです。翼さんなしじゃ、救える命も救えなくなってしまいます)

 

二人の言葉を思い出していた。仮に翼を殺したとして、ノイズから人を守ってくれる人間はいなくなったのと同じだ。だったら自分一人で守れるかを考えていた。

 

実際、自分はたった三人の命すら守れずにいる。

 

「俺じゃ…誰の代わりにもなれないってのかよ!」

 

律叉はもう一度笛型のアイテムを読み込ませる。

 

『ア・ン・ク・ス・ナ・ッ・ク・ル・ラ・イ・ズ・ア・ッ・プ』

 

(せめて今だけは!こいつらを護れる力くらい出せよ!俺!!!)

 

心の中で叫んだ。その想いに呼応するように律叉の胸が輝き、ナックルに集中しているエネルギーの光がさっきよりもずっと大きくなった。

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

 

見た目のインパクトも周りに発生する衝撃波もずっと大きくなったブロウクン・ファングがノイズの大群を一気に蹴散らした。

 

その威力には律叉自身も驚いていた。

 

「なんて威力…」

 

「すご…」

 

「…………無事か?」

 

「あ、はい…」

 

「…そりゃ…良かっ…」

 

その時、アンクスのベルトが警告音を鳴らし、鎧の隙間から蒸気が噴射したと同時に律叉は気絶してそのまま倒れた。バックファイアで体力の限界が来たのだ。

 

「え!?」

 

「大丈夫ですか!?」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

「う…」

 

律叉が目を開けると、まるで海底の様な光景だった。不思議と呼吸できる水の中を沈んでいる。そんな状態だった。

 

これは夢だ。

 

感覚的にそう分かった。

 

(明晰夢って言ったっけ…自分でこれが夢だって気づく夢…)

 

しばらく何も考えずに沈んでいると自身の身体を誰かが支えてくれた。自身を支えてくれたのは、姉である奏だった。

 

「…」

 

「かな姉…」

 

奏は律叉の身体を水上に向けて上げた。するとさっきまで沈む一方だった身体がどんどん浮き上がり、奏から離れていく。

 

「待ってくれ!かな姉!かな姉!!かな姉ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

「あ…」

 

律叉は目を覚ました。目の前に広がるのは夕暮れの空と2人の少女だった。安藤創世と寺島詩織だった。

 

「大丈夫ですか?」

 

「…」

 

「ここは…」

 

「さっき戦った場所の近くの公園ですわ。あの後、黒服の方々が来て…」

 

黒服の男、きっと二課の人間がノイズの反応とアンクスの反応を検知してきたのだろう。

 

「あたしたちはそこでじっとしてようって言ったんだけど……弓美が…」

 

(この人はきっと影に紛れて戦うヒーローなのよ!アニメみたいにね!それにあの黒服の人達、きっとこの人を捕まえに来たのよ!アニメとかじゃ大体そんな展開だし!)

 

「とかなんとか言ってさ…」

 

「とりあえずここまで運んできたのですけれど…大丈夫でしたか?」

 

「…ああ」

 

言っている意味はよくわからないがどうやらそのよくわからない理論のおかげで二課に拘束されることを逃れたらしい。

 

「詳しいことは…話せないが………ありがとう。大体その通りだ」

 

「あ!起きた?」

 

そこに、飲み物を持った板場弓美がやってきた。

 

「よかった~。中々起きないから救急車呼ぼうと思ってたんだよね~。でも病院とかに運ぶとバレちゃうことってアニメとかじゃ…」

 

なにやら長い語りが始まりそうだったので律叉は口を挟む。

 

「ああ。君の機転で助かった…それで、。こんなことを言うのはアレなんだが………助けてやったんだし、俺のお願い聞いてくれないか?」

 

「お願い?」

 

 

 

-リディアン 学生寮-

 

 

 

学生寮の入り口で安藤たちは近くの様子をうかがっていた。

 

「どう?」

 

「誰もいないけど、念のため気を付けて…」

 

安藤、寺島、板場、そしてもう一人リディアンの女子高生の服を着させられた人物がいる。律叉だった。

 

「おい、なんだこれは…」

 

「まぁまぁ、万が一見られるといけないし…」

 

「見られてもその姿ならさっさと通り抜ければバレませんわ!」

 

律叉は少し顔が童顔で、女装するとわりと女子に見えた。なので半ば無理やり着させられ、寮への侵入が決行された。

 

律叉の頼み事は住処の提供だった。二課本部がリディアンの地下にあるのを律叉は知っている。灯台下暗しという言葉の通り、最も目の付きにくい場所を拠点にすることに決めたのだ。もとの住処に戻っても裏切り者としてクリスかフィーネに殺されるか、いずれ二課に見つかるのが関の山だった。

 

幸い安藤の寮友は病気を基に退学してしまい、寮室のベッドがひとつ空いている。律叉はそこをしばらく住処にすることとした。あくまでも命の恩人だ。住処の提供を頼まれたときは安藤たちも困惑したが、無下に断ることもできなかった。

 

律叉もこの学校に用事もあったし、ちょうどよかったのだ。

 

「さぁ!急いで!」

 

「おう…!」

 

 

 

-リディアン寮 安藤室-

 

 

 

人通りの少ない道を通って律叉は何とか安藤の部屋までたどり着き、一息つく。

 

「はぁ…はぁ……二度と着ねぇ」

 

そういってスカートを外す。

 

「えー?似合ってるのにー。とりあえずシャワー浴びてきたら?ご飯作っておくからさ」

 

安藤は笑顔で提案した。律叉は少し驚いて提案を断る。

 

「あ?そんなんいいよ。飯くらい自分で確保する」

 

「命の恩人なんだし。遠慮しないでよ。いつも作ってるし」

 

「…ありがとな」

 

「…ちなみにさ、律叉…さん?」

 

「俺の方が歳は上だが、天羽でも律叉でもいいよ」

 

「じゃあ………天羽律叉……リッツー…つやりん……………ウリさんでどう!?」

 

安藤の特技とも呼べる、謎のあだ名命名が律叉に対しても行われた。その微妙なセンスに眉をひそめながらも律叉は流した。

 

「………まぁなんでもいいけどよ」

 

「ウリさんは、ビッキーとどういう関係なの?元カレとか?」

 

「…………………姉貴の知り合いってだけだよ。こないだは久しぶりに会ったから近況を話してただけだ」

 

(……みんなには…いつか…きっと話しますから)

 

この間の感じからみて響が友人たちに装者であることを隠していたのは明白だった。なので律叉は黙ってやったのだ。

 

「そっか…」

 

その日、律叉は安藤の部屋で泥のように眠った。アンクスのバックファイアのダメージで疲労がたまっていたのだ。

 

翌日、目覚めた時には昼過ぎだった。起きるとテーブルの上にはラップを掛けられた朝食が置いてあった。起きない律叉のために作って、安藤は学校に行ったのだろう。

 

「別にいいってのに」

 

そういいながらも律叉はありがたく朝食兼昼食をいただいた。

 

そして食事を済ませると、律叉は準備をして部屋を注意しつつ出た。ここを拠点にしたもうひとつの理由のために。

 

律叉は寮を抜けると学校敷地内にある病院に潜入した。病院を探索し、ひとつの病室の前までやってきた。そこは風鳴翼の病室だった。

 

 

続く

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