戦姫絶唱シンフォギアTN   作:瑠和

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第四話です。このころのキネクリ先輩は荒れてましたね。週一更新にする予定でしたが、定期的に更新します。


第四話 Destroyer

-風鳴翼 病室-

 

 

 

翼は特に意味もなく病院内を出歩いていた。身体を動かさずいるのも性に合わなかった。まだ杖を使わなければまともに動けない身で病院を一通り回っていた。なので自室に戻るころにはへとへとになっていた。そして自室のロックを開けようと暗証番号を入力使用しようとした瞬間、背中に固いものが押し付けられる。

 

「動くな」

 

「!!」

 

聞き覚えのある声。律叉だ。

 

「入院生活長引かせたくないならさっさと扉を開けろ」

 

「わかった…」

 

翼はロックを解除し、律叉と共に部屋に入った。律叉は病室に入るや否や驚愕の表情を見せる。

 

「なんだこりゃ…」

 

部屋はまるで強盗でも入ったかのような散らかり様。それは翼の片づけが出来ない性格故に生まれた部屋だった。

 

「し、しかたないでしょ?片づけるの…苦手なの………………それで、私はこんな状況だけど、決闘を望むのかしら?その気なら受けて…」

 

「…………話に来た」

 

「え?」

 

意外な発言だった。ずっと恨みを抱いて自分を襲い続けてきた人間が、突然話し合いを提案してきたのだ。誰だって驚くだろう。

 

「……俺自身…本当はどうしたらいいのかなんてわからなかったんだ…だから、風鳴翼って人間と…………天羽奏って装者の話を聞きに来た」

 

「……」

 

「色々あったけど、やっぱり何も知らないまま誰かの命を奪うのなんて嫌だ」

 

「それが、あなたが戦って私を殺そうとしていた理由?」

 

「二年間、目覚めてから俺にはもう憎しみしかなかった。だけど、だからって殺すのには気が引けた。だったら、正々堂々、互いの命を懸けた決闘なら………って思って…。でも俺がいた場所も、あんたが悪っていうのも、時間が経つにつれて、あんたの考え方や、俺の場所の考え方を知るにつれてだんだんわからなくなった。だから殺す相手のことを知る権利は、殺すかどうかを決める権利くらいはある」

 

敵への憎しみも、自身の正義もすべて揺らいだ律叉は藁にもすがる想いで翼のところに来ていたのだ。

 

「………わかった」

 

翼はベッドに座り、律叉に自分の隣に座るように促す。律叉は翼の隣に座った。

 

「さて………まずは何から話したものか…そう、あれは5年前だ」

 

 

 

-数時間後-

 

 

 

響は翼のマネージャーの緒川に頼まれ、翼のお見舞いに来ていた。翼と会うのは少し怖かったが、改めて覚悟を決めて扉を開ける。

 

「失礼します!」

 

部屋に入ると、そこには生活物で散らかった部屋と辛らつそうな顔でベッドに座る翼とその膝で眠る律叉だった。その状景を見て響は当然驚く。そして大声を上げそうになった響に対して「しーっ」と静寂を促した。

 

「…」

 

「見た目や態度が大人びていても………心は子供ね。思い出話をしているうちに、奏が恋しくなったのかしら…感情に動かされた涙ではない…自然に涙を流し始めて、慰めている間に寝てしまったわ」

 

「…そうだったんですか」

 

「あなたは………なぜここに?」

 

「あ、緒川さんにお見舞い頼まれて…ていうかこの部屋は………?」

 

「あ………見苦しいところを見せたわね…」

 

それから十数分、翼と響は話した。本当の戦うべき理由、考えなければならないこと。響は翼の部屋を片付け、ふらわーのおばちゃんの「お腹が空いたまま考えては良い考えはできない」の教えの通り、アームドギアの扱い方を考えるべくお好み焼きを買いに行った。

 

響が出て行ってすぐ、律叉は目を開けて身体を起こした。

 

「………いい奴だな、あいつ」

 

「起きてたの?」

 

「あんだけ近くでさわがれりゃ誰でも起きる…。立花響って言ったか?人助けが趣味だとか言ってたが…」

 

「…お人好しなだけよ」

 

「かもな」

 

まるで他人事のような言い方をする律叉に、翼はクスリと笑った。

 

「あなたもそうじゃないの?」

 

「なに?」

 

「報告書で読んだわ。ここ最近、ノイズ出現の度にアンクスの反応が一緒に出て、ノイズから人を護ってるって」

 

あの日の襲撃から、律叉は度々ノイズの出現場所に向かっては響が駆け付けるまでノイズを掃討していた。響が到着しそうになると現場から去り、残りは響が倒していた。

 

「考えてたんだ。仮にお前を殺したとして、俺にあんたの代わりが務まるかって……。別にあいつみたいにノイズから誰かを護りたいだなんて大層な信条はもってない。責任感………だ」

 

「………まぁあなたがそういうなら、そういうことにしておくわ。それであなたは私をどうするの?話を聞いた上で、私を殺す?」

 

「……わからない。でも、俺は俺のいた場所には戻らない。だが、お前らのいる場所にもいかない。その上で、守りたいものは守る。倒したい奴は倒す」

 

「その中途半端な立場は、己の身を滅ぼすわよ………さっきも話したけど、私は奏にあなたを任されている。アンクスを使うこともだけど、立場を危うくして死にに行こうとするあなたを見過ごせない」

 

翼は奏に出会ってから奏の最期までを話した。奏の最期の頼み、「律叉を頼む」。それだけは守ろうと翼は思っていた。

 

「……もう少し考える時間が欲しい…面倒はかけない。そうだ、風鳴翼」

 

「?」

 

「神獣鏡って知ってるか?」

 

「神獣鏡………?いや、聞き覚えは…」

 

「そうか、悪いな」

 

そういって律叉は出て行った。翼は俯く。自分が殺される心配と少なくとも律叉と対峙する可能性は低くなったが、彼自身がどうしようもなく地獄に向かい始めているのは確実だった。

 

 

 

-病院屋上-

 

 

 

何をどうするのが一番正しいのか。律叉は屋上で黄昏ながら考えていた。

 

(奏は最初、憎しみで戦っていた。家族を苦しめ、殺したノイズへの憎しみだけでシンフォギアの力も手に入れた。そういうところは貴方と似ているわね…………でもそれから何人か人を助けるうちに奏は変わっていった。ノイズを倒すのは憎しみではなく人を護るため、シンフォギアを動かすためだけに歌っていた歌を楽しむようになっていった。私も最初は奏が怖かったけど、一緒に戦っていく中で、だんだんと彼女に憧れていった……)

 

「俺も……………そんな風に…」

 

それを考えていると、遠くに見える森林に狼煙が見えた。

 

「…っ!」

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

律叉がみた狼煙の下では雪音クリスと響が戦っていた。

 

「おぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

クリスは響に向かって怒りのままにネフシュタンの鎧の鞭を振るった。鞭が響に命中する直前、光弾が鞭を弾き飛ばした。

 

「!?」

 

「………なんだ…てめぇらか…」

 

響の後方には息を切らしながらアンクスナックルを構えている律叉がいた。

 

「テメェ…………裏切るのか!」

 

「裏切る?最初からテメェらの悪事の片棒担いだ気はねぇよ!いつだって俺のやることは変わらねぇ!俺がやるべきことをやるだけだ!なにが正しいのかなんて俺にはわからねぇが、俺は護りたいものを護る!今俺は、立花響を護りてぇんだ!」

 

護ると決めたものの為に律叉はナックルを掌に押し付ける。

 

『レ・デ・ィ』

 

「変身」

 

『フィ・ス・オ・ン』

 

「律叉さん…」

 

「お前はかな姉が残した忘れ形見みたいなもんだ。お前がやられちゃ、かな姉の死が無駄になる」

 

律叉はそう言い残し、クリスに向かって走り出す。

 

「律叉さん!」

 

「舐めんな!シンフォギアですらない紛い物がこのネフシュタンの鎧に勝てるかよ!!」

 

ネフシュタンの鎧の鞭を律叉に向けて放つ。律叉はそれを躱し、クリスに飛びついた。

 

「どうしたおらぁ!」

 

「んの野郎ぉ!」

 

クリスは立ち上がり、鞭を律叉に向けて振る。律叉は上手く躱し、カウンターパンチを食らわせたが大したダメージは入らなかった。だから律叉は連発してパンチを当て、最後に蹴りでふっ飛ばした。

 

「ぐぁ!このぉ!」

 

クリスは吹っ飛びながら鞭の先端にエネルギーを溜め、それを律叉に撃った。律叉は飛んで攻撃を避け、響の横に戻ってきた。

 

「なにボケっとしてんだテメェ!」

 

「うん…」

 

「戦いたくねぇって気持ちも分かるがな、やらなきゃいけねぇときにやらなきゃてめぇが死ぬだけだろ!」

 

「……」

 

「ボケっとしてんな半人前共ぉ!!」

 

響が悩んでいる間に鞭が二人の前に飛んできた。律叉は響の腕を掴んで飛ぶ。鞭は律叉たちのいた場所を大きく抉った。

 

二人は少し離れたところに着地する。

 

「…ん?」

 

響は自身の身体に力が宿っていることに気づく。腕のアーマーに光が灯り、それと同時に律叉の胸にも明かりが灯っているのが見えた。

 

「これは…」

 

翼の時と同じだ。律叉から力が流れてくるのを感じた。響は翼から律叉に触れていた時に力が宿ったという話は聞いていた。

 

「あの、少し私に触れててもらっていいですか?」

 

「あ?………こうか?」

 

何を言ってるのかよくわからなったが、律叉はとりあえず響の背中に手を置いてみる。

 

「しばらくそのままでお願いします!」

 

響は自身の胸の前に腕を構えてエネルギーを集束する。自身のギアと律叉から流れてくるエネルギーをうまく扱ってアームドギアを展開しようとした。だが、失敗して爆発した。

 

当然律叉も爆発に巻き込まれて吹っ飛んだ。

 

「うおぉ!何やってんだお前!」

 

「いった~……失敗しちゃいました…」

 

(エネルギーはあるんだ……アームドギアが出せないなら…)

 

響は再度エネルギーを集束する。

 

(その分のエネルギーをぶつければいいだけ!)

 

集めたエネルギーを握りこみ、腕のアーマーに装填した。それを見た律叉は響の肩を叩き、耳打ちをした。

 

「俺が陽動になる。一気に決めろ………おぉぉぉ!」

 

律叉は響の前に出てクリスに飛び蹴りを放ったが避けられる。しかし、避けた先に響が飛んできていた。

 

「!」

 

「かっ飛ばせ!立花響!」

 

(最短で、最速で、まっすぐに!一直線に!胸の響を、この思いを伝えるためにぃぃぃぃぃぃ!!!)

 

クリスの腹部をエネルギーを集束した拳で打ち抜いた。

 

「おぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

クリスは地面を抉り、そしてアスファルトさえも砕く勢いで吹っ飛んで十数メートル先でようやく止まった。

 

「がはっ……」

 

(なんてエネルギー…この力、あの女の絶唱に匹敵しかねない…)

 

「…えらい力の使い方をする……さっさとアームドギアを使えるようにしろ」

 

「えへへ…これくらいしか思いつかなくて…」

 

「…そうかよ」

 

「テメェら…舐めてんのか…!私を!雪音クリスを!」

 

戦闘態勢を解く二人に対してクリスが声を震わせながら言う。それに対して響は笑って答えた。

 

「そっか、クリスちゃんっていうんだ…。ねぇクリスちゃんこんな戦い、もうやめよう?ノイズと違って、私たちは言葉を交わすことが出来るちゃんと話をすれば、きっと分かり合えるはず!だって私たち!同じ人間だよ!?」

 

響の想いは本気だった。しかし、クリスの重く、淀んだ心の中には届かなかった。

 

「おまえくっせぇんだよ…嘘くせぇ…青くせぇ!!!」

 

「同感だな」

 

「あ?」

 

クリスの言葉に律叉は同意した。

 

「こいつはただのバカだ。同じ人間なら言葉が通じるなんて甘っちょろい考えをしてやがる」

 

「ええ!?」

 

普通に自分を悪く言われることに響は驚く。

 

「さして付き合いのない俺ですらこいつはお人好しのバカってことはわかるくらいに考え方は青臭いし言ってることも嘘くさく感じるだろう。だがな、お前の考えもどっこいどっこいだぞ」

 

「ああ!?」

 

「力を持つ人間を全部無くせば争いはなくなるなんて短絡的にもほどがあるって言ってんだよ」

 

「うるせぇ!もうそうすることでしか正せないんだよ!この世界はァァァァァァ!!!!」

 

クリスは逆上し律叉に飛び蹴りをかます。律叉は両手でガードしたがあくまでも完全聖遺物の力、耐えきれずにふっ飛ばされた。

 

「おぁ!」

 

「おぉ!!」

 

さらに響も殴り飛ばして追撃にかかる。

 

「オラオラオラァ!!」

 

律叉は急いで起き上がり、響に猛攻を加えるクリスに背後から飛び掛かろうとした。

 

「舐めんなぁ!!」

 

クリスは律叉の動きを察知し、鞭を飛び掛かって来る律叉の腕に巻きつけて近くの岩に投げ飛ばした。

 

「ぐぁぁ!!」

 

「律叉さん!」

 

「ぐっ……」

 

そこでクリスの動きが止まった。破損したネフシュタンの鎧の再生の際に傷口から侵入してきたネフシュタンの組織が、クリスの身体もろとも取り込んで再生しようとしていることに気づいたのだ。そのことにクリスは恐れを抱いた。

 

「くそっ!ぶっ飛べよ!アーマーパージだ!!」

 

クリスはネフシュタンの鎧をパージし、それの破片を武器代わりに辺りに飛ばした。律叉と響はそれによるダメージはなかったがそれ以上に驚くことが起こる。

 

「Killter Ichaival tron」

 

「この歌は…」

 

「聖詠…」

 

「見せてやる、イチイバルの力だ」

 

 

 

-二課本部-

 

 

 

本部では感知された第二のシンフォギア、イチイバルのエネルギーを見て弦十郎が困惑していた。

 

「イチイバル………だとぉ!?」

 

「アウフヴァッヘン波形!感知!」

 

「過去のデータとも照合完了!コードイチイバルです!」

 

 

 

-状況-

 

 

 

アーマーパージしたクリスが次に纏ったのは、第二号聖遺物イチイバルを基として作られたシンフォギア、イチイバルだった。

 

「クリスちゃん、私たちと同じ…」

 

「謳わせたな…私に歌を…」

 

「え?」

 

「教えてやる…私は歌が大っ嫌いなんだ!」

 

そういい捨ててクリスはボウガン型のアームドギアを展開、矢のような光弾を飛ばした。響は光弾を何とか避けきるが、避けた先に現れたクリスの蹴りを食らいかける。

 

しかしその間に律叉が入り込み、蹴りを防いだ。

 

「!」

 

「もうやめろ!お前は…」

 

「邪魔するなぁぁぁ!」

 

クリスは聞く耳は持たないようだ。律叉に向けてさらに光弾を放ったが、律叉はあえてクリスの懐に突貫する。

 

「おぉぉぉぉぉぉぉ!」

 

クリスの片手を脇で押さえて絡みつき、膝蹴りを数発、右拳のパンチを一発食らわせるのと同時に腕を離してふっ飛ばした。

 

「ぐぅ…!」

 

「悪いがこっちもそう長く付き合ってられねぇんだ」

 

アンクスの稼働可能制限時間が迫っていた。律叉はともかく今は黙らせるのが先決だと考え、笛型のアイテムをベルトに差し込み、読み込ませた。

 

『ア・ン・ク・ス・ナ・ッ・ク・ル・ラ・イ・ズ・ア・ッ・プ』

 

「こいつで…」

 

「舐めてんじゃねぇぞ三下ぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

クリスは即座にボウガンを二重ガトリングに変形させ、律叉に向かって弾丸をばら撒いた。思ったよりもクリスの反撃が速かったことに不意を突かれ、律叉は全身にガトリングの弾を受ける。

 

「ぐぁぁぁぁぁ!」

 

律叉はその場に跪く。

 

「こいつで終いだぁぁぁぁ!!」

 

さらにクリスはミサイルを腰部に展開し、律叉に向けて一斉に放った。

 

「律叉さん!!」

 

響は律叉の前に立ち、ミサイルからかばおうとした。

 

「馬鹿!」

 

律叉は響を掴んで自身の後ろに倒して今度は自らが盾になろうとする。ミサイルが着弾し、爆炎が上がって何も見えなくなった。

 

「はぁ、はぁ、はぁ………」

 

爆炎が晴れた向こう側には、一つの壁があった。それがクリスのミサイルを防いだのだ。

 

「盾…?」

 

「剣だ!」

 

ミサイルを防いだのは翼の天羽々斬のアームドギアだった。

 

「翼さん!」

 

「風鳴翼!」

 

入院中の翼が助けに来たのだ。まだ松葉杖を使わなければ立てない身体だったが前回取り逃がした因縁もある。逃がすわけにもいかなかった。

 

「無事か。立花、律叉君。私も十全ではない。手を貸してくれるか?」

 

「はいっ!」

 

響は元気よく返事をしたが、律叉は響の胸に顔をうずめる。

 

「ええ!?な、なに!?どうしたの!?」

 

「悪い。俺はここでタイムアウトみたいだ」

 

ここ最近の連続戦闘でただでさえ身体が疲弊しきっているのにさらにこんな強敵との闘いだ。リミットが来てなくても限界だった。律叉はベルトを外して変身解除する。

 

「すまない……守るなんてでかい口叩いておいて…」

 

「大丈夫です。律叉さんがいてくれて助かりました。あとは任せてください」

 

「そうか…?なら…良かった」

 

響に木の下に運ばれ、律叉は退場した。その直後クリスはガトリングを乱射し、翼に攻撃を仕掛けた。翼は大剣から飛び降り、病み上がり、何ならまだ入院中の身とは思えない剣捌きでクリスを一気に追い詰めた。

 

(この女、以前とは動きがまるで…)

 

「翼さん!その子は…」

 

響は翼に敵ではない、分かり合える相手だと伝えようとした。

 

「ああ、分かっている」

 

(刃を交える敵じゃないと信じたい。それに、十年前に失われた第二号聖遺物のことも正さなければ…)

 

「でりゃあぁぁぁぁぁ!!」

 

クリスが再度ガトリングを放とうとしたとき、上空から飛行型ノイズが突貫してクリスのガトリング二つを破壊した。

 

「なに!?」

 

さらに三体目がクリス目がけて突貫してきた。律叉は手元のナックルを見た。今電磁光弾を放てばクリスを助けられる可能性がある。

 

(助け…間に合わ…いや)

 

瞬間の戸惑いの内に響がタックルでノイズを砕いた。

 

「…」

 

「お前何やってんだよ!」

 

ノイズを消滅させた響を受け止めたクリスがキレた。そして、あからさまな敵襲に翼は辺りを警戒する。

 

「ごめん、クリスちゃんに当たりそうだったから…つい…」

 

「馬鹿にして!余計なお節介だ!」

 

そんな時、何処からか妙に圧のある声がした。

 

「命じたこともできないなんて、あなたはどこまで私を失望させるのかしら?」

 

飛行型ノイズが飛び回る場所の真下に、黒い衣装で身を包むサングラスの女性が、ソロモンの杖を片手にたたずんでいた。

 

「フィーネ!」

 

(フィーネ?終わりの名を持つもの?)

 

フィーネを姿を見てクリスは自身の手の中で横たわる響を見る。元々目的は響だ。このまま渡せばよいのだが、そこにクリスのプライドや不安が邪魔をする。

 

「こんな奴いなくたって!戦争の火種くらい私が決して見せる!」

 

そういって響を投げた。力なく放られた響を翼が受け止めた。

 

「そうすれば、あんたの言う通り、人は呪いから解放されて、バラバラになった世界は元通りになるんだろ!?」

 

何か、そちら側にしかわからない話を始めた。

 

「はぁ…もうあなたに用はないわ」

 

その言葉にクリスは怒りと悲しみがまじりあったような顔を見せる。

 

「な、なんだよそれ!」

 

「それはそいつが使えないからか?だったらここに裏切り者もいるぜ」

 

痛む身体に鞭を打って、律叉が近くに来ていた。

 

「律叉……お前に力を与えたのは彼女か!?」

 

「ああ。そうだよ。前の襲撃の時もそこのクリスと組んでた」

 

衝撃の真実をさらっと話した。それに対し、フィーネはクスリと笑う。

 

「あなたには感謝しているわ。そもそも、もうあなたの役目は終わっているの。いまさら貴方ごときが動いたところで、なにも変わらないしね。好きになさい」

 

「は、そうかい!」

 

律叉はフィーネに向けて電磁光弾を飛ばしたが簡単に避けられる。そしてフィーネはクリスがパージしたネフシュタンの鎧を回収してどこかへ飛んでいった。

 

「待てよ!フィーネェェェ!!!」

 

クリスはフィーネを追いかけて飛んでいった。

 

「…」

 

「律叉君…」

 

現場に残された三人、翼は心配そうな表情で律叉を見る。律叉は響を見て少し笑う。

 

「しっかり鍛えてやれよ……」

 

「待って!一緒に…」

 

「一緒には戦えない!それは俺なりのケジメなんだ…じゃあな」

 

引き留めようとした翼に、律叉は食い気味に返答した。律叉は「悪かった」と言い残してその場を去った。

 

 

 

-安藤の寮室-

 

 

 

「お、おかえりー。ご飯できてるよ」

 

部屋に戻ると安藤が出迎えてくれた。律叉はなんだかんだ安藤の作ってくれる食事にご相伴になっていた。

 

「おう…ありがとうな」

 

「今日も正義の味方?」

 

「まぁ、そんなところだ………」

 

「お疲れ…………聞いてよ、今日弓美がさぁ~ウリさん探しに行こうなんて言ってさぁ、学校抜け出そうとしてたんだよ?」

 

学校であった笑い話をしている安藤を見て律叉は少し考える。彼女の笑顔も、日常も、自分が守ったからここにあるということ。

 

「…お前らにとって、俺はヒーローなのか?」

 

「え?」

 

律叉は尋ねた。彼女たちの、自分が助けた人間の目に映る自分の姿を。律叉の質問に安藤は少し顔を赤くして一歩下がる。

 

「あ、あのさ……女の子はさ、誰でも一回は、白馬の王子様を夢に見ると思うんだけど…」

 

「そうなのか?」

 

「そうなの!………あの時、私たちは本当に絶望していた。死ぬのってこんなに怖いことだったんだって実感したよ。だけど、ウリさん助けに来てくれた時、本当に、心の底から安心したんだ。その時、白馬の王子様っていうのは本当に要るんだなって思ったんだ。あの時から、ずっとウリさんは私の、私たちのヒーローだよ」

 

「…」

 

 

 

-深夜3時-

 

 

 

律叉は二重ベッドの上で寝ている安藤の布団をかけなおしてやる。

 

「ありがとうな。安藤……創世…だったっけ?なんか、吹っ切れたわ」

 

律叉は外着に着替え、アンクスを持つ。

 

(あの時、あの瞬間、俺は一瞬でもあいつを…クリスを助けることを戸惑った…)

 

フィーネが仕向けたノイズからの攻撃の時、律叉がクリスを助けやることはできた。しかし、それを行うかどうか、ほんの一瞬ためらったのだ。

 

「だから、救ってやらなきゃな。今度は」

 

律叉は奏のマフラーを捲いて寮を出た。

 

 

 

続く

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