戦姫絶唱シンフォギアTN   作:瑠和

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第五話です。0字投稿間に合わなかった……。
後々にメックヴァラヌスと絡ませようとして三人組と関わらせたけど創世がヒロインになってる件


第五話 Effort

クリスは真夜中の街をギアを纏って駆けまわっていた。フィーネから差し向けられたノイズから逃げていたのだ。シンフォギア装者である雪音クリスがノイズ相手に後れをとるわけはない。しかし、それが何時間も続けば疲労が溜まり、集中力も下がって来る。クリスは少しずつ追い詰められていった。

 

「はぁ、はぁ、くそっ…舐めやがって…」

 

その時、クリスの背後から光弾が発射され、ノイズを炭化させた。

 

「!?」

 

「随分手こずってるじゃねぇか、雪音クリス」

 

クリスが振り向くと、背後にいたのは律叉だった。

 

「お前…」

 

「一緒に戦わせてくれ」

 

律叉はクリスの真横まで来てベルトを捲いた。しかしクリスは共闘を嫌がり、足で律叉を退かそうとする。

 

「舐めんな!お前の力なんてなくてもあたしは…」

 

「じゃあ勝手にやらせてもらう」

 

『レ・デ・ィ』

 

「変身」

 

『フィ・ス・ト・オ・ン』

 

律叉はアンクスを身に纏った。

 

「………勝手にしろ。流れ弾に当たっても知らねぇからな」

 

「ああ。勝手にやらせてもらう。はぁぁぁぁぁ!!」

 

二人はノイズの大群相手に突貫した。

 

 

 

-数時間後-

 

 

 

数時間後の早朝。雨が降る商店街を未来は浮かない顔で歩いていた。先日のクリスの襲撃で未来は響がこれまでやってきたこと、シンフォギア装者として戦っていたことを知った。すなわち響が隠し事をしていることを知ってしまったのだ。そのことで響と仲たがいをしてしまったのだ。

 

しかしきっと、本当に怒っているのはそのことではない。多分、何の役にも立てない自分に苛立ち、すべてを抱え込もうとする響に苛立っていたのかもしれない。

 

「…」

 

そんなことを考えながら人気のない商店街を歩いていると、前方から誰かが歩いてくるのが見えた。結構な量の雨が降っているのにも関わらず傘も差していない。それを疑問に思ってよく見てみると、ボロボロの少年が身体にダメージを負い、衰弱している少女を背負って歩いていた。

 

未来がそれを見ていると、少年の方も未来に気づいて顔を上げる。少年の顔には見覚えがあった。先日、ふらわーで響と話していた赤い髪の少年だった。

 

「……君は…あの時の…」

 

「大丈夫ですか!?ひどい怪我…」

 

「見た目ほど酷くない。俺のことはいい、それより、こいつ行く場所がないんだ。お前の部屋とかで休ませてやったりできないか?」

 

「いったいなにが…」

 

「………多分ノイズに襲われて、運よく逃げ切ったが力尽きたみたいでな…」

 

「じゃ、じゃあ…」

 

未来は近くにあったふらわーのシャッターを叩いた。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

「う…」

 

連戦に次ぐ連戦で疲れ切ったクリスが目を覚ましたのは昼過ぎだった。悪夢にでもうなされてたのか、苦しそうな表情で眠っていたが飛び起きる。そして、辺りを確認して部屋の中にいることを確認した。

 

「ここは…」

 

「よかった、目が覚めたのね?服びしょぬれだったから着替えさせてもらったわ」

 

クリスは未来の体育着をいつの間にやら着させられていた。

 

「勝手な真似を!」

 

温情を掛けられるっていうのが癪に障ったのか、クリスは少しキレながら立ち上がった。しかしそれに対して未来は赤面した。その表情に疑問を持ったクリスが未来の視線の先、即ち自身の下半身を見た。上は体操着だが、下に何も穿かされていなかった。

 

「………な、なんでだ!?」

 

「さすがに下着の替えは持ってなかったから…」

 

クリスは布団の中にくるまり、身体を隠す。

 

「案外元気そうだな」

 

そこに律叉が現れた。

 

「お前…」

 

「この人があなたを助けてくれたの。自分もボロボロだったのに…自分はいいからあなただけでもって…」

 

律叉は全身のいたるところに包帯を巻いていたり、ガーゼを張っていた。

 

「…お前が?」

 

「未来ちゃん、どう?お友達の具合は」

 

さらに洗濯籠を持ったおばちゃんがやった来た。

 

「今起きたところです。ありがとうおばちゃん。布団まで貸してもらって…」

 

「気にしなくていいんだよ。あ、お洋服、洗濯しておいたから」

 

おばちゃんは笑顔で洗濯籠の中のクリスの服の一部を見せた。クリスはおばちゃんのことを不思議そうに見ている。

 

「あ、私干すの手伝います!」

 

「あらありがとう」

 

当然のように優しくしてくれた二人をクリスは少し驚いた表情で見つめる。クリスは二人が洗濯物を干すために庭に出たことを確認すると、部屋の隅で背中を壁に預けている律叉に小声で訪ねる。

 

「…………なんであたしを助けた」

 

「助けたかったからだ。他に理由なんかねぇよ」

 

「なんだと?」

 

「俺は全部失っちまった。戦う意味も、生きる目標も。だから、守りたいものを護る……それだけだ」

 

「護るだと?は、大層なこと言ってくれる。制限時間内でしか戦えないまがい物がよ」

 

「だとしても、俺はお前を護る」

 

「…同情のつもりかよ……私が捨てられたと思って…」

 

クリスの言葉には明らかに怒りが見えたが、律叉は焦らず、そして自信をもってクリスに言った。

 

「違う。俺はもう目の前で何も失いたくないだけだ」

 

そこまで言い切ったところで未来が律叉の腕を引っ張った。

 

「身体拭いてあげるから、少し外に出てて?」

 

「ん、ああ」

 

律叉は言われた通り一旦外に出る。未来はクリスの体操着を一旦脱がせて身体を拭いてやる。寝ている間にずいぶん汗をかいていた。

 

クリスは少し背中を見せるのに抵抗があった。いや、身体を見せること自体に抵抗があった。彼女の身体には多くの傷があった。昔のものや最近のもの。なんであれ傷は傷だ。見せることは当然ためらう。

 

「なにも、聞かないんだな」

 

「うん、私は、そういうの苦手みたい………今までの関係を壊したくなくて……なのに、一番大切な物を壊してしまった」

 

響との一件を思い出しながら、未来は答えた。

 

「それって誰かと喧嘩したってことなのか?」

 

「うん…」

 

 

 

-リディアン-

 

 

 

リディアンの屋上では響が学校を無断欠席した未来のことを心配していた。

 

「未来………今まで無断欠席なんてしたことなかったのに」

 

そこに、たまさか翼がやってきた。

 

「翼さん…」

 

珍しく浮かない顔をしている響に対して翼は相談に乗ってやった。

 

「私、自分なりに覚悟を決めたつもりでした。守りたいものを守るため、シンフォギアの戦士になるんだって。でも駄目ですね。小さなことに気持ちを乱されて。何も手に付きません。私、もっと強くならなきゃいけないのに、変わりたいのに」

 

「そういった意味では、律叉君の方が戦士としては立派だな。色々迷ってはいるが、戦うことに関しては真をもって挑んでいる」

 

翼にそういわれ響はもっとどんよりしてしまった。その姿を見て少し翼は笑う。

 

「でもその小さなものが、立花の本当に守りたいものだとしたら…今のままでもいいんじゃないかな………立花は、きっと立花のまま強くなれる」

 

「翼さん…」

 

「…………奏のように人を元気づけるのは難しいな…」

 

いざ励ましてみてもなんだか自分の言う言葉がむずがゆく、翼は照れてしまった。

 

「いえ、そんなことありません。前にもここで、おなじような言葉で親友に励まされたんです。それでも私は、また落ち込んじゃいました。駄目ですよねぇ………」

 

響はちらりと翼の腕を見る。翼はまだ松葉杖を使っている。

 

「翼さん、まだ痛むんですか?」

 

「大事を取っているだけ。気にするほどではない」

 

「そっか………良かったです」

 

「絶唱による肉体への負荷は極大。まさに、他者も自分も、すべてを壊し尽くす滅びの歌。その代償と思えば、これくらい安いもの」

 

「絶唱、滅びの歌………でも、でもですね翼さん、2年前、私が辛いリハビリを乗り越えられたのは、翼さんの歌に励まされたからです!翼さんの歌が滅びの歌だけじゃないこと…聴く人に元気をくれる歌だってこと…私は知っています!」

 

「立花…」

 

「だから早く元気になってください。私、翼さんの歌が大好きです!」

 

(律叉は歌が好きだったんだ。だからいつも来るたび音楽聴かせてやってた。でもある日、翼の歌を聞かせてたら、今まで動きもしなかった律叉が一瞬、私の手を握り返してきたんだ。ビックリしたよ。偶然か、それとも翼の歌にはなにかあるのかわかんないけど、翼の歌が好きみたいでな)

 

数年前、奏に言われた言葉を思い出す。アイドルをやっていたのは奏と共にフォニックゲインを上げる訓練、そして二年前に行われたネフシュタンの鎧の起動実験を行うため。奏がいなくなってからは惰性的に続けていたと言っても過言ではない。

 

だからアイドルとして歌を歌ってきて嬉しかったことなんてほとんどない。アイドルでいれたこと、つまり多くの人に自分の歌声を届けられたメリットを感じたことはほとんどない。だが唯一嬉しかったと、確かに実感した瞬間があった。それはあの日の病室で自分の歌をきっと好きである仲間に出会えたことだ。

 

(もしも………私の歌が滅びの歌だけでなく、誰かに元気をあげられるなら…律叉君、君のことを救ってあげられるだろうか)

 

 

 

-ふらわー-

 

 

 

クリスが未来に、自分の身の上話をしていると、街の警報が鳴り響いた。ノイズが出現した警報だ。しかも今回は相当な数の出現だった。

 

「なんの騒ぎだこれは…」

 

「何ってノイズが現れたんだよ!警戒警報知らないの?」

 

ノイズが現れた。それはきっとフィーネが差し向けたものに違いなかった。通常のノイズの出現率、及び遭遇率は東京都民が一生涯に通り魔事件に巻き込まれる確率を下回る。しかし、ここまで大規模なものはそうそうない。間違いなくフィーネが差し向けたものだとクリスは悟った。恐らく、昨晩のイチイバルの反応がロストした周辺に大量展開したのだろう。

 

「…っ!」

 

クリスは人々が避難する方向とは逆に走り出した。

 

「クリス!」

 

「はぁ……。あいつもなんだかんだお人好しだよな…おばちゃん、充電頼んどいたアレ、あるか?」

 

「え?ああ、あれね…」

 

おばちゃんは店のカウンターの下からアンクスのベルトとナックルを出した。律叉は笑ってアンクスを受け取ると、それを肩に担ぐ。

 

「サンキュ。おばちゃんもお前も早く逃げな」

 

そう言い残し、律叉もクリスと同じ方向に走り出した。

 

「律叉さん!」

 

商店街を抜けた先に来たクリスは周りに人がいないことを確認し、いったん止まった。

 

「あたしのせいで…関係のない奴らまで…………あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

クリスはくやしさと後悔の涙を流しながらその場に崩れた。

 

「私がしたかったのはこんなことじゃない………だけどいつだって私のやることは…いつもいつもいつもぉ!!!ううっ!うっくぅ…」

 

一人泣き崩れたクリスに手がさし伸ばされる。涙を流しながらその手の主を見る。律叉だった。

 

「泣いたって、悔やんだって、起きちまったことはどうにもならねぇさ」

 

「そんなの………言われなくたって分かってる!」

 

「………さっきお前言ってたよな。大人なんてどいつもこいつもクズばっかだ、唯一信用してたやつも道具の様に使われたって」

 

「ああ…」

 

「俺も同じだ。フィーネは俺によくやったなんて言ってたが、多分あいつが欲しかったのはアンクスの稼働データだけだ。俺も使い捨てられたのさ。だから俺とお前は、同類なんだよ。俺はあいつを、フィーネをぶっ飛ばす。俺と手を組まないか?」

 

「あんた、何がしたいんだ?正義の味方にでもなるつもりかよ」

 

「そんなご大層なもんになれるかよ。俺は守りたいものは守る、狩らなきゃいけない奴は狩る。それだけだ。少なくとも、俺らを物のように扱って捨てたフィーネはぶっ飛ばす。特殊部隊(消耗品)になった記憶はない………それに、聞きたいこともあるしな」

 

「………私は」

 

「……強制はしない」

 

悩んでいるクリスを置いて律叉は立ち上がり、クリスの背後に向かった。二人の周りはいつの間にかノイズに囲まれている。律叉はベルトを腰に巻き付け、ナックルを掌に押し付けた。

 

『レ・デ・ィ』

 

そしてマフラーをまき直し、ベルトにナックルを装填した。

 

「変身」

 

『フ・ィ・ス・ト・オ・ン』

 

「…」

 

律叉はあえてそれ以上クリスには何も言わずノイズに立ち向かう。クリスも一旦この先どうするのかという考えはやめた。そしてノイズに対峙する。

 

「……私はここだ。だから、関係のない奴らのところになんて行くんじゃねぇ!」

 

ノイズがクリスに向かって特攻を始める。

 

「Killter Ichaival tr……げほっ!ごほっ!」

 

連戦を行っていた為、クリスの喉は疲れ切っていた。聖詠の途中で咳込んでしまい、ギアの展開に失敗した。それはすなわちノイズの攻撃を防ぐ手段を失い、死ぬと言うことだ。

 

「雪音クリス!!」

 

それに気づいた律叉が慌てて引き返そうとしたがそれよりも早くクリスの前に飛び込んできた人間がいた。

 

「はぁ!!」

 

二課指令の風鳴弦十郎だった。弦十郎はアスファルトを捲り上げ、ノイズの特攻を防いだ。

 

「げぇ!あいつは…!」

 

律叉的には弦十郎は記念すべき初陣を阻害されたどころか一撃KOを食らった苦い思い出のある相手だった。弦十郎はクリスを抱え、律叉の目の前まで走ってきた。

 

「ななな!」

 

律叉は向かってくる弦十郎に驚き、慌てて電磁光弾を放ったが弦十郎はそれを回避し、律叉も抱えてビルの上に飛び乗った。

 

「大丈夫か」

 

クリスは少し驚いて人間離れした技を連発する弦十郎を見て律叉はため息をつく。

 

「あんた、本物の化け物だな…」

 

「そうか?」

 

一息つく間もなくビルの下から飛行型ノイズが三人を追いかけてきた。

 

「…」

 

律叉とクリスは立ち上がり、弦十郎の前に立つ。

 

「Killter Ichaival tron」

 

イチイバルを装備し、飛んできたノイズを一気に打ち落とす。

 

「御覧の通りだ。あたしのことはいいから、他の奴らの救助に向かってやりな!」

 

そう吐き捨て、ビルから飛び降りながら弾丸の雨をノイズに降らした。その姿を弦十郎は心配そうに眺めていた。

 

「俺は…またあの子を救えないのか…」

 

「……おっさん。雪音クリスのこと知ってんのか?」

 

「…ああ。俺はかつて、彼女の保護を依頼され、結局達成できなかった」

 

「だったら、今度こそ助けてやれよ。助けてやって、争いごとのない優しい世界に連れていってやりな」

 

「………俺が助けたいのは君も一緒だ。それに、君の身体に関していくつか聞きたいことが…」

 

律叉は弦十郎に向けて電磁光弾を放った。弦十郎は一瞬驚いたが、その光弾は弦十郎の背後に迫っていたノイズに命中した。

 

「協力はしない……」

 

「……そうか」

 

「じゃあな」

 

律叉はビルから飛び降りていった。一人残された弦十郎は二人の戦闘を見ていた。

 

(翼と響君からの報告で彼と共に戦っていた時、ギアの出力が上がったとの報告があった。まさかとは思うが…)

 

クリス、律叉、響の活躍で街中に大量発生したノイズは全て討伐された。その戦いの中で響は未来と仲直りすることができた。律叉もそこそこの活躍を見せていた。

 

 

 

-リディアン 学生寮-

 

 

 

創世は部屋でぼうっとしていた。朝起きたら律叉が部屋からいなくなっていたのだ。別に構わない筈だった。追われている人間の居候なんて迷惑なだけだが、なぜか再び一人で暮らす寮部屋にはなにか物足りなさを感じていた。

 

そんな時、部屋の窓が叩かれた。

 

「…?」

 

窓の外には律叉がいた。創世は驚いて窓を開ける。律叉は明らかに疲れた様子で創世の部屋に転がり込んだ

 

「ウリさん!大丈夫!?」

 

「悪い……何とか住処を見付けようと思ったんだが…。腹も減って…疲れ…て」

 

また迷惑が転がり込んできたはずなのに、創世は不思議と嬉しかった。

 

「……大丈夫だよ。あたしらはそんな迷惑感じてないからさ…」

 

それはたぶん、創世の心からの言葉だった。

 

 

続く

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