戦姫絶唱シンフォギアTN   作:瑠和

7 / 14
第六話。どこまでもヒロインし始める安藤。果たしてメインヒロインなるか


投稿から1ヶ月も経たないうちに星1をふたりに付けられてもへいきへっちゃら


第六話 Flutter

フィーネの襲撃から数日。律叉はなんだかんだ創世の部屋で居候させてもらっていた。律叉の両親は研究熱心だったので家事は奏や妹と行っていた律叉は幸い料理や掃除洗濯はそこそこできたので、少しは役に立てていた。

 

ある日、律叉が目を覚ますと、創世の部屋に弓美、詩織が集まっていた。

 

「ん………お前ら、学校は?」

 

「今日はお休みですので…」

 

「うん、だからこれからみんなで出かけようかって話してたのよ」

 

「そうかい、楽しんでこいよ」

 

律叉はそう言ってベッドに潜り込もうとしたが、創世がそれを止めた。

 

「駄目だよ、今日は律叉さんも一緒に行くんだよ!」

 

「ああ?なんで俺が」

 

律叉はどちらかというと迷惑そうな表情をしながら起き上がる。

 

「ヒーローにも休息は必要でしょ?」

 

「いつも私たちの平和を守ってくださる律叉さんに、ほんの少しでもお礼をと…」

 

そういわれたとき、律叉は少し胸が痛くなった。自分はただ、守りたいものを守って倒しすべきものを倒しているだけだ。そんな自分より自身の安全を顧みずちゃんと人の為に戦っている二課の装者の方がよっぽどヒーローだと思ったのだ。

 

「………平和を守ってるってんなら、俺なんかよりあいつらが…」

 

「え?」

 

「いや、なんでもねぇよ。ともかく、俺はいい。お前らだけで楽しんで来い」

 

「そんなわけには行かないって。私も、テラジや弓美もこの間のお礼がしたらしいし」

 

「アニメじゃよくある日常回よね!」

 

弓美の意見ははともかく創世の言葉にやや動かされながらも律叉はベッドにもぐりこもうとする。

 

「………いいよ。疲れてんだ。寝かせてくれ」

 

「そう言わずにさぁ…」

 

律叉はなんだかんだ言って断ろうとしたが、結果的に言いくるめられて出かけることになった。律叉的には用もなく下手に外に出るわけにもいかないが、たまには良いだろうと外に出た。四人はばれないようにそっと寮をでた。

 

「道すがら、ここ最近のあなたの行動について教えていただけたら幸いですわ」

 

「どんなバトルしたのかとか~」

 

「……これといって英雄譚も、お前らが望むヒーロー像もねぇよ。最近よく出現するノイズを片っ端から始末してるだけだ」

 

「やっぱ現実のヒーローは地味で辛いもんなんだねぇ」

 

「ヒーローになった記憶はねぇよ」

 

「私たちにとってはヒーローだよ」

 

なんの躊躇もなく弓美に言われた律叉は少しうれしくなった。創世の部屋に世話になっている間は少なくとも、彼女たちにとってのヒーローであろう。そう思った律叉だった。

 

「…」

 

四人はカフェやゲーセン、クレープ屋等女子高生、高校生らしく遊んだ。律叉には学生らしい中学一年生の時までの記憶しかない。高校生らしい振るまい方もわからなかった。

 

わからないので楽しそうな表情もせず、いつもと変わらない表情で行動を続けた。

 

「あの…」

 

そして、色々回ってからの移動中、創世が話しかけてきた。

 

「ん?」

 

「ごめん、あんまり………楽しくなかった?」

 

「どうしてだ?」

 

「なんか、あんまり楽しそうじゃない感じがしてさ…」

 

律叉がどう振る舞えばわからず、無表情でいたことが災い今回のお出掛けが楽しくないのではと思わせてしまったらしい。

 

「…悪い、どうすりゃいいかよくわかんなくてさ。俺、5年前から3年間眠ってて起きた後の2年間もこいつを使いこなすために訓練してたから………こんな風に……楽しく…遊んだ…………あれ…」

 

話しているうちに、律叉は涙を流し始めていた。身の上話をすることも、こんな何にもない日常に触れることも久しぶりだった。こうした日常のなかにいられることが嬉しくて、楽しくて。自分の守った日常が、暖かくて。

 

「律叉さん…」

 

「俺は……」

 

少しの間、律叉は三人に支えられながらに静かに涙を流した。三人は律叉が泣き止むまで何も言わずに側にいた。慰めの言葉も、何も言わず、ただ側にいてやった。

 

それからもう少し、四人は遊んで最後にショッピングをするためにショッピングモールに来た。そんな時だった。

 

「それでさー」

 

「もー響ったら…ん?」

 

「?」

 

律叉たちのグループの前方から、響、未来、翼の三人がやってきた。

 

「!!」

 

「あ、ビッキー!それにヒナも!」

 

「あ、安藤さん!板場さんに寺島さんも!それから…」

 

未来は律叉を見て驚いた。

 

「律叉さん!!」

 

未来は慌てて律叉の元へ駆け寄った。

 

「君は…」

 

「この間はシェルターにいなかったみたいだけど大丈夫だったんだね、よかった…。あ、それからクリスのこと、知らない?」

 

あの後、連絡がつかなかったクリスと律叉のことを未来は心配していた。律叉は少し悩んでから申し訳なさそうな表情をする。

 

「すまない………あの後別れてから会ってないんだ……」

 

「そっか………」

 

「それより」

 

律叉は翼と響を睨む。

 

「………」

 

共に戦った仲ではあるが、自分のことを本部に言われる可能性を見て律叉は敵視してきているのであろうと翼は考え、一芝居打つことにした。

 

「そちらの人は、皆さんのうち誰かしらのボーイフレンドなのかな?」

 

「え…?」

 

「あー」

 

本来何ら関わりない人間がリディアンの学生と一緒に外を出歩いているというのはおかしな光景だった。そこで機転を利かせた創世が手を上げた。

 

「私、私の従兄でさ!」

 

「そうだったか………では……」

 

翼は首から下げていたシンフォギアのペンダントを律叉に掛けた。

 

「これは…」

 

「あげるわ。うん、とってもよく似合ってると思う」

 

その時一緒に律叉のカバンに創世たちには見えないように二課の通信機を響のもまとめて入れた。そしてそっと律叉に耳打ちをした。

 

「戦う気も、報告する気もない。分かってほしい」

 

律叉は軽くため息をついて、笑顔を浮かべた。

 

「あ、もしかして歌手の風鳴翼さんですか!?ペンダント、ありがとうございます!!サインください!」

 

そう言って近寄った時に律叉は翼の鞄にアンクスナックルをそっと入れ、耳打ちをする。

 

「テメェもそのつもりなら俺もそうする。リディアンの学生用病棟の屋上で今日の夜これを返す。いいな」

 

「わかった………………ごめんなさい、サインはちょっと…」

 

「そうかですか……残念です…」

 

一芝居を終え、そのまま別れようとしたとき未来が提案する。

 

「あ、これから私たちカラオケに行くんだけど一緒にどう?あ、でも翼さん…」

 

軽いノリで律叉たちのグループを誘おうとしたが、今日は翼がいることに気づく。一緒に言ってもよいのだが、装者等の秘密を考えなくていいグループから考えなければならないグループになってしまっては翼が辛いのではないかと思って翼の方を向く。

 

「私は別に構わないわ」

 

翼はにっこりと笑った。

 

 

 

-カラオケ-

 

 

 

未来たちはカラオケに入った。現役大人気アイドルと一緒にカラオケに入ったことに大興奮な響や弓美とは対照的に律叉はあまり乗り気ではなかった。

 

「律叉さん一緒に歌おう!この曲知ってる?」

 

弓美が一緒にヒーローソングを薦めてきた。

 

「ああ、なんか聞いたことあるな…」

 

「じゃあ一緒に歌おう!」

 

「…」

 

二人は全員の前にでてデュエットのヒーローソングを歌った。最初はそんなに乗り気でなかったが、歌っているうちに熱が入り、だんだんと全力で熱唱していった。

 

曲が終わるころには律叉は弓美よりも全力で熱唱していた。その姿はあまりに全力過ぎて周りが少し引くレベルだった。歌い終わった律叉は汗を流しながら席に戻る。

 

「……」

 

「どうだ、全力で歌うと、案外気持ちいいだろう?」

 

「どうだかな…」

 

翼が話しかけてきた。律叉は全力を出しすぎたことに少し後悔しつつも満足げに答えた。

 

「では次は私が行こう」

 

翼が立ち上がり、マイクを持った。すると、演歌の伴奏が流れ始める。

 

「演歌………意外なセレクトだな」

 

少し照れくさそうな表情をしつつ翼は歌った。美しい歌声でその場にいた仲間を魅了する。しかし、一人だけ、その歌声に微妙な表情をするものがいた。律叉だ。

 

(なんだこの歌声………記憶が……呼び起こされるような…)

 

律叉はそっと席を外した。翼の歌声を聴いていると、頭痛が起きるのだ。その理由はなんだかわからなかったが、時間が来るまで律叉は翼の番が回ってくるたびに席を外し続けた。

 

 

 

-公園-

 

 

 

カラオケを終えた律叉たちは最後に丘の上にある公園に向かった。律叉と弓美たちは一緒に住んでいることがバレぬように途中で別れることになり、一旦響たちとも別れたがペンダントや通信機を返し、ナックルを返してもらうために再度合流していた。あとに合流を考えていたがそれは弓美たちがいたからだ。翼にとっても律叉にとっても早い方が良かった。

 

「翼さん律叉さん遅いですよ~」

 

「ざけんな……お前らが元気すぎるんだよ…」

 

律叉と翼は二人で仲良く階段の途中で息を上げていた。

 

「今日は慣れないことばかりだったから…」

 

「防人であるこの身は、常に戦場にあったからな…………本当に今日は、知らない世界ばかり見てきたようだ…」

 

「同感だ…」

 

階段を上り切った二人は珍しく意気投合する。

 

「そんなことありません!」

 

二人の言葉を聞いた響が律叉と翼の手を引っ張り、街全体が見える場所まで引っ張っていった。

 

「あそこが待ち合わせした公園です!みんなで一緒に遊んだところも、遊んでないところもぜーんぶ、翼さんたちが知ってる世界です!昨日に翼さんが、律叉さんが戦ってくれたから、今日にみんなが暮らせる世界です。だから、知らないなんて言わないでください」

 

「……立花響…」

 

「昔、奏が言っていた。戦いの裏側やその向こう側には、また違ったものがあるんじゃないかって………そうか、これが奏の見てきた世界なんだな…」

 

「…かな姉」

 

闘いの裏側にあるもの。それは守った者たちが紡いでいく日常。今日に触れてよくわかった暖かい世界。律叉は何となく守るということに身近な人の日常を護る以外に意味を持った気がした。

 

「………ほらよ、返す」

 

律叉はペンダントと通信機を渡した。

 

「……律叉君。君が敵側にも味方側にも立たない理由はよく分かる。だが、共に肩を並べて戦うことはできないのだろうか…?いや、今からでも遅くない!君だけでも日常に…」

 

翼はナックルを渡しながら言った。しかし、律叉は間髪入れずに答える。

 

「今さら戻れる訳ねぇだろ。帰る日常なんて、5年前になくしてんだ」

 

それから少し間を開けてから律叉はナックルを奪うように受け取り、答えた。

 

「…………今日のこと、色々感謝しておく」

 

それだけ言って律叉は去ろうとした。それを響が引き止めた。

 

「あ、待ってください!」

 

「?」

 

「あの……板場さんたちとは…なんで」

 

律叉はうっかり自分の居場所を吐きかけたが、少し考えてはぐらかした。

 

「ああ………ちょっとなまぁ別にあいつら利用して悪事を働いてるわけでも、お前らの情報をもらってるわけでもねぇよ。証拠はないがな。信じろとしか言えない」

 

「そうですか……」

 

追及してこないことに少しほっとした律叉は今度こそ帰ろうとしたが、今度は翼に止められた。

 

「待って。これ、受け取って」

 

翼はチケットを渡した。差し出されたものが意外で律叉は少し驚く。

 

「……これは?」

 

「復帰ライブをやるんだ見に来てほしい」

 

「……………正気か?俺はお前を殺そうとした人間だぞ」

 

「だとしても、私は君に来てほしい。さっき歌を全然聴いてもらえなかったみたいだしね」

 

律叉は(気づかれてたか)と思い、舌打ちをした。

 

「それに、君を助けたい。わたしはそう思っている。」

 

一体どういう意味なのか、よくわからなかったが律叉は黙ってチケットを受け取った。そしてそれ以上何も言わずにその場を去った。

 

 

 

-数日後-

 

 

 

それから少し時間が経ってライブの当日になった。開始まで2時間となったが律叉はまだ創世の部屋にいた。ベッドで寝っ転がりながらチケットを眺めていた。

 

「………」

 

「ウリさん何してんの?」

 

「創世…」

 

授業を終えた創世がベッドのカーテンを開き、中に入ってきた。創世は入ってくるやいなや律叉のチケットに食いついた。

 

「ん?これってライブのチケット?」

 

「ああ」

 

「これ、今日の翼さんの復帰ライブのチケットじゃん!いいなぁ私もテラジも弓美も抽選漏れちゃってさぁ。でも意外だな~。律叉さんがこういうの興味あるなんて…」

 

律叉は少しため息をついて布団の中にもぐりこんだ。

 

「拾っただけだ。お前にやるよ」

 

「ええ!?」

 

だがその時、創世はチケットに小さく書いてある「特別優待チケット天羽律叉様」の文字を目にした。これはすなわち翼、あるいは関係者の誰かが律叉の為に立場を使ってチケットを刷ったということだ。

 

「…これ」

 

創世がそのことを伝えようとしたとき、律叉の通信端末から声が聞こえた。

 

[ノイズの出現パターンを検知した!]

 

律叉が最初に二課を脱出した時、フィーネから持たされた二課の通信端末は二課の通信をジャックできるように改造していた。ノイズ討伐にいつでも行けるようにだ。

 

律叉はノイズが現れた連絡を聞くと通信機を切ってアンクスをもって部屋を飛び出そうとした。

 

「待ってウリさん!」

 

「ん?」

 

創世は律叉を抱き締めた。意外な行動に出た創世に驚いている隙に、気づかれないよう律叉のポケットにチケットをいれた。

 

「いってらっしゃいのハグ………なんてね?」

 

「…?。おう」

 

律叉は疑問符を浮かべながらも部屋を出て現場に向かった。足がないので必死に現場に向かって走っていると、後方から響が飛んできた。

 

「律叉さん!」

 

「立花響……………ノイズの発生場所に行くんだろ。俺も…」

 

「駄目です律叉さん!律叉さんはライブに行ってください!」

 

「なんで…」

 

「あの会場は、奏さんが、最期に詠った場所なんです………きっと、誰よりも翼さんは律叉さんに今日のライブを聞いてほしいはずです!」

 

「………かな姉…」

 

「ノイズは私が倒します!」

 

「でも…もうチケットは…」

 

「?。上着のポケットに入ってるじゃないですか」

 

「なに?」

 

上着のポケットを漁ると確かにそこからライブのチケットが出てきた。律叉は出る前にいきなりハグをして来た創世を思い出した。

 

「あいつ………」

 

「さぁ、もう始まっちゃいますよ!行ってください!」

 

「………多分現場には雪音クリスがいる。助けてやってくれ」

 

「うん!もちろんです!ライブ、楽しんできてください!」

 

二人はそれぞれノイズの発生現場、ライブの会場へと走った。

 

 

 

ーライブ会場ー

 

 

 

開演ギリギリで律叉はライブ会場に間に合った。指定席に向かい、始まるのを待った。

 

(二年前のライブ中に出現したノイズと戦い、ここでかな姉は死んだ…………かな姉)

 

会場を見渡しながら律叉は奏に思いを馳せる。そんなこんなでライブが始まり、翼がステージに立った。

 

「………風鳴翼…」

 

この間のカラオケを思い出す。翼の歌声を聴くと頭痛を起こすが、律叉は今だけは我慢しようと考え、覚悟を決める。

 

登場と共に音楽が流れ始め、翼は歌った。ペンライトも何も持たない律叉はただ静かに翼の歌を聞いた。

 

『♪Deja-vuみたいなカンカク、制裁みたいなプラトニック 重ね合うメモリー 届いてWishing…』

 

また、頭痛が始まった。しかし、しばらく聴いていると、頭痛が収まると同時に声が頭に響く。

 

「………ん?」

 

この曲は今回初めて発表する曲だ。聞いたことのない筈なのに律叉はこの曲にまるで聞き覚えがあるような感覚に陥った。

 

『♪重力みたいに惹かれて 1ミリのズレもなく ハートのど真ん中を 射貫いたSong…』

 

「これ…は…」

 

聞き覚えがあるのはこの曲ではなく、翼の歌声だと律叉は気づく。遠くにあるようでどこか身近な歌声。

 

(……律叉は歌が好きだったんだ)

 

「…」

 

頭の中で記憶が掘り起こされ、自分ではない声が再生される。

 

(だからいつも来るたび音楽聴かせてやってた。でもある日…)

 

ずっと昔から、生まれた時から聞き覚えのある、優しくて、何処か頼れる強さを感じる声。

 

(翼の歌を聞かせてたら、今まで動きもしなかった律叉が一瞬、私の手を握り返してきたんだ)

 

それは摩訶不思議な出来事だった。意識を失い、眠っていた筈の律叉が記憶している筈のない翼と奏の会話を、翼の歌をトリガーに思い出したのだ。

 

(ああ………そうか。俺は、翼の歌が好きだったんだ…………)

 

律叉は自身の気持ちに気づいた正々堂々戦って翼を倒すことにこだわっていたのは、一方的に人を殺すことに抵抗があったのも事実だ。だがそれ以上に翼の歌が好きだった記憶が深層心理にあったから殺すこと、敵対することに自然と抵抗が生まれたのだろう。

 

目を覚ましてから2年間はずっと復讐のためだけにアンクスを使いこなしてきた。そしていざ戦場で風鳴翼の歌を聞いた時、心のどこかで抵抗が生まれ、それが迷いになり、今日ここで改めて彼女の戦場以外での風鳴翼の歌を聞いてすべてを思い出したのだ。

 

『♪さぁAmazing 奇跡起こそう 震えくらいでいい 多分それだけの物語なんだ信じてMy road…』

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

「ありがとうみんな!今日は思いきり歌を歌って、気持ちよかった!」

 

翼が歌い終わったのを確認すると、律叉は席を離れて出口へ向かって歩き始めた。

 

「…………こんな思いは久しぶり。忘れていた。でも思い出した!私は、こんなにも歌が好きだったんだ。聴いてくれるみんなのまえで歌うのが、大好きなんだ」

 

(かな姉、俺忘れてたよ。かな姉が聞かせてくれてた歌。俺が大好きな歌…)

 

「もう知ってるかもしれないけど、海の向こうで歌ってみないかって、オファーが来ている。自分が何のために歌うのか、ずっと迷ってたけど、今の私は、もっとたくさんの人に歌を聴いてほしいと思っている」

 

(自分が何のために戦うのかずっと迷っていたけど、今俺は、かな姉や俺自身のためだけじゃなくて、大勢の人間のために戦おうとしている)

 

「言葉は通じなくても歌で伝えられることがあるならば、世界中の人たちに、私の歌を聴いてもらいたい!私の歌が、誰かの助けになると信じて、みんなに向けて歌い続けてきた。だけどこれからは、みんなの中に、自分も加えて歌っていきたい!だって私は、こんなにも歌が好きなのだから!たった一つのわがままだから、聞いてほしい、許してほしい」

 

(それでいいかな。俺みたいなやつがヒーローになること、翼に迷惑沢山かけたこと、許してもらっていいかな……)

 

 

 

       許すさ、当たり前だろ?

 

 

 

「!」

 

「!」

 

聴こえる筈がない。奏の声。二人に向けられたその言葉は二人を驚かせた。出口付近にまできた律叉も振り返った。

 

「………かな姉」

 

「奏…」

 

「「ありがとう」」

 

 

 

続く

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。