戦姫絶唱シンフォギアTN   作:瑠和

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七話。いっきに終盤です。ここまで書けばあと一、二話で終わるだろうと思っていました。シンフォギアの一話ごとの情報量甘く見てた。


第七話 Growl

風鳴翼のライブから数日。二課本部ではクリスの協力とカディンギルという証言によって敵の正体に近付きつつあった。そして、翼と響に通信しようとしたとき、外部から通信が入った。

 

「司令、使用中止にしたはずの了子さんの通信機から連絡が入っています」

 

「なに?」

 

律叉は最初二課で軟禁されていた時にフィーネから二課内の通行許可証でもある通信機を渡された。それは元々了子のものだった。二課は律叉の脱出に使われたその通信機の公共機関利用システム等を停止させていたのだ。

 

「どうしますか?司令…」

 

「恐らく、律叉君だろう。繋いでくれ」 

 

通信機と繋いでみると、soundonlyだが律叉の声が聞こえてきた。

 

[………特異災害対策機動部二課か?]

 

「ああ。律叉君だな」

 

[そうだ………一つだけ。あんたらに頼みたいことがある。それが終われば、俺はあんたらにいくらでも協力する。何なら自首しよう]

 

意外な提案だった。律叉は協力はしないと弦十郎にはっきり言いきっている。まさかここに協力を申し出てくるとは思わなかったのだ。

 

「……自首などしなくても良い。君も俺達も、ただ騙されていただけだ。それより、頼みとはなんだ?」

 

[………二課の資料室を開けてほしい。確かめたいことがある]

 

「資料室?」

 

[決して持ち出したりはしない。確認したいことがあるんだ]

 

 

 

-特異災害対策機動部二課-

 

 

 

二課は律叉の頼みを聞くことにした。案内に従ってエレベーターに乗った律叉は地下深くまで下りていく。エレベーターの扉が開くと、そこには弦十郎がいた。

 

律叉は反射的にナックルを構えてしまうが、すぐに構えを解いた。

 

「ようこそ、特異災害対策機動部二課本部へ」

 

弦十郎は笑顔で律叉を迎えた。

 

「…久しぶりだな。風鳴弦十郎」

 

「おう」

 

「早速案内してもらおうか」

 

「それは構わないが、その前にひとつ聞きたい。答えてもらえないだろうか?」

 

「………質問内容によるな。まだ資料を見せてもらっていないから協力する段階じゃない」

 

「こっちだって重要な資料を提示するんだ。それくらいいいだろう」

 

律叉は少しムッとしたが言ってることは正しい。

 

「なんだ?」

 

「翼や響君の報告で、君との戦闘中君に触れていると力が増し、君の胸が光っているのを見たと言っていた。そしてアンクスは通常、一回使っただけでも相当の苦しみ、リミットを迎えれば長期入院が必要になるほどの代物だ。なぜそんなにも平然としていられる?」

 

大体の見当はついていた。律叉は小さくため息をついて答えた。

 

「俺の身体には、アンクスを使いこなすための聖遺物が埋め込まれている。名前はヤントラ・サルヴァスパ。完全聖遺物から欠片をとってそれを俺に埋め込んだ。「それ」はあらゆる機械を操作することのできる聖遺物。それで俺はアンクスからのバックファイアを半ば無理やり制御してるのさ。それでもノーダメージとはいかないが」

 

少し話しにくい内容だったが律叉は話した。このあと

 

「やはりそうだったか…」

 

「わかったらさっさと連れていけ」

 

 

 

-資料室-

 

 

 

律叉は資料室に案内され、弦十郎がついてきたのもそこまでだった。

 

「とりあえず俺は仕事に戻る。好きに見てくれ」

 

「ああ。ありがとう」

 

弦十郎は律叉の顔を見てすこし微笑む。

 

「なんだか、吹っ切れた顔してるな…」

 

「そうか?」

 

「ああ」

 

律叉は資料室に入り、目的の資料を探す。探しているのは5年前の資料だった。自身の両親が死んだ、採掘現場での事故の資料だった。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 

律叉が資料を探索している間、地上では大変なことが起きていた超大型の飛行型ノイズが東京スカイタワー周辺に出現、装者三人が協力し、何とか討伐したものの今度はリディアンにノイズが大量に出現したのだ。

 

自衛隊が出動し、リディアン校舎内では民間協力者である未来が先導をきって避難の手伝いをしていた。

 

「落ち着いて!シェルターに避難してください!」

 

「ヒナ!」

 

避難を手伝っている未来のところに弓美たちが来た。

 

「みんな!」

 

「どうなっているわけ?学校が襲われるだなんてアニメじゃないんだかあらさぁ…」

 

弓美はこんな時までぶれなかった。

 

「小日向さんも避難を…」

 

「先に行ってて、私他に人がいないか見てくる!」

 

響に触発されているのか、未来は自らの危険も顧みず校舎内へ走っていった。

 

「ヒナ!…………律叉さん…なんでこんな時にどこに行ったんだろう…」

 

三人は律叉を探していた。今朝創世が起きた時には既に姿はなく、そうこうしているうちにリディアンが襲撃に会ったのだ。

 

「君たち!」

 

廊下の奥から声がした。自衛隊員だ。

 

「急いでシェルターに向かってください!校舎内にも、ノイズが来て…」

 

三人に避難を促していた時だった。空から天井を突き破り、飛行型ノイズが自衛隊員に突き刺さった。自衛隊員とノイズはともに炭化し消滅した。

 

目の前で人間が消滅する瞬間を見て弓美はパニックを起こした。当然の反応だ。

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

更に通常のノイズが続けざまに三人がいる廊下へと侵入してくる。

 

「あ…ああ…」

 

前も後ろも塞がれ、絶体絶命となった。しかしそこに聞きなれた声が響いた。

 

「伏せろ!」

 

『ア・ン・ク・ス・ナ・ッ・ク・ル・ラ・イ・ズ・ア・ッ・プ』

 

巨大な光弾に飲まれ、前方にいたノイズが一斉に消滅した。そしてその先にはアンクスを纏った律叉がいた。資料の閲覧を終えて地上に戻ってきたのだ。

 

「律叉さん!」

 

「何してる早く逃げろ!!!!」

 

律叉は三人の壁になるようにノイズに立ちはだかる。

 

「早く!シェルターに!」

 

「まって、弓美が……」

 

弓美は完全にパニくって座り込んでいた。目の前で人が炭化して死んだのだ当然の反応だ。逆にしっかりしている二人のメンタルが強すぎるともいえる。

 

「もうだめ……だめ…死んじゃう…」

 

「…!」

 

律叉は三人を無理やり抱え、ノイズからいったん離れた。ノイズは当然追いかけてくるが、曲がり角や空き部屋を利用して何とか撒いた。

 

ひと段落すると律叉はアンクスを解除し、弓美の肩を掴む。

 

「こっちを見ろ、板場弓美」

 

「見ろ!」

 

「!!」

 

弓美に自分の眼を見させる。

 

「お前は死なない。寺島詩織も死なないし、創世も死なない。俺が絶対に守る」

 

「守る………?」

 

「ああ。守るために、俺は戦っている」

 

弓美の瞳に僅かに光が戻ったことを確認すると、律叉はマフラーを外した。

 

「これさ、貸してやるよ。戦いが終わるまで。お守りだ」

 

律叉は奏の形見のマフラーを弓美に巻いてやる。

 

「律叉さん…」

 

「かな姉……俺の姉貴が守ってくれるよ」

 

「………ありがとう…ごめんなさい」

 

律叉は笑ってその三人と部屋を出た。アンクスを再度装備して向かってくるノイズを殴り、蹴り、投げ飛ばしながら、三人がシェルターに向かう援護をしてやる。

 

「くそっ!いつのまにこんなに………シンフォギアはなにしてやがるんだ!」

 

律叉は自衛隊だけでは手が回りきらない部分の対応に回った。いくら未完成のアンクスでもノイズに触れられるだけでずっと違った。

 

 

 

ー特異災害対策機動部二課-

 

 

 

再び二課本部のエレベーターフロアでは新たな事件が勃発していた。逃げ遅れた人の捜索をしていた未来はノイズに襲われたが緒川が助け、二課へと避難した。

 

しかし、敵のボスであるフィーネが現れ、緒川はその力の前に倒れる。さらに応援に駆けつけた弦十郎もフィーネ相手に善戦するも、フィーネが見せた了子の表情に一瞬迷いが生じ、その隙を突かれて敗北した。

 

「殺しはしない。貴様らにそのような救済など与えるものか」

 

緒川に通信機を破壊されたフィーネは、倒れた弦十郎から通信機を奪ってデュランダルが保管されている部屋に向かおうとした。

 

その時、どこからともなく飛んできた光弾がフィーネの腕に当たり、通信機を吹っ飛ばした。

 

「……この光弾…」

 

緒川と未来が光弾が飛んできた方向をみる。そこにはアンクスナックルを持った律叉が立っていた。

 

「律叉さん!」

 

「………やはりお前か。今さら何のようだ?」

 

「小日向未来だっけ?さっさと逃げろ………フィーネ。ひとつだけ聞きたいことがある」

 

「聞きたいこと?フ、いいだろう。お前には感謝しているからな。答えてやろう」

 

なぜ感謝しているか、それはアンクスのデータを取る良い実験台となっていたからだ。律叉は小さく舌打ちしつつも質問した。

 

「………この間、俺は実家に帰った。そこで俺は父さんの発掘資料を見た。そこには5年前の事故の日の数日前、神獣鏡という聖遺物が発掘されたと書いてあった」

 

「……」

 

「そして、あの事故の日は神獣鏡を日本政府下の保管場所に運ぶ前日だった。そう、あの日までは神獣鏡は発掘現場にて保管されていた。だが、さっき二課で確認した資料には、事故の日に回収された発掘物に神獣鏡はなかった。見つからなかったという記述もない。存在そのものが抹消されているんだ」

 

「つまり?」

 

「あの日のノイズは、あんたがそのソロモンの杖で仕掛けたもんじゃないのか…っ!」

 

ノイズを操れるアイテム、ソロモンの杖。その存在をクリスから聞いたときからずっと引っ掛かっていたことだった。

 

「………ククッ!ハハハハハ!そうかそうか、ただの子供かと思っていたが案外聡いではないか」

 

「…なら……」

 

もうその言葉でほとんど答えが出たようなものだ。律叉の手が震え出す。

 

「確かに。あの日、発掘現場にノイズを仕掛け、神獣鏡を奪還したのは……………この私だよ」

 

律叉の脳内に、まるで走馬灯のように過去の記憶が蘇った。生まれてからあの日までの記憶。父と母と姉と妹と楽しく過ごした日々。そのまま続くはずだった幸せな日々。

 

それを奪った人間が目の前にいる。ずっと目の前にいた。それなのに復讐することもせず、それどころかいいように利用されていた。

 

律叉は震えた。怒りが込み上げるなんてものじゃない。耐えがたいほどの屈辱を受けた気分だった。

 

「そうかよ………お前かよ……よかった。本当に良かった………………」

 

律叉は怒りに震えながらナックルを掌に押し付けた。

 

『レ・デ・ィ』

 

「すぐに殺してやれるからな…………っ!」

 

『フ・ィ・ス・ト・オ・ン』

 

ナックルをベルトに装填し、アンクスを纏うやいなや律叉はフィーネに突貫した。

 

「ウォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!」

 

真っ直ぐに突っ込んでくる律叉に、フィーネは鞭を飛ばした。律叉はそれを躱し、右ストレートを繰り出したが避けられ、カウンター代わりの鞭を腹部に食らって壁に叩きつけられる。

 

「だぁぁぁぁぁぁ!」

 

律叉はすぐに立ち上がり、再度突っ込む。繰り出す攻撃はすべていなされるが決して諦めなかった。

 

「………せよ!!返せよ!父さんを!母さんを!妹を!………かな姉を返せよぉぉぉぉぉぉ!」

 

「煩わしい!」

 

鞭が律叉の足に絡み付き、転ばせる。そして律叉を縛り上げて持ち上げた。

 

「がぁ…」

 

「私とて目的の為に堪えぬ努力を続けてきたのだ!目的のためには時には犠牲もつきものだ!」

 

縛り上げた律叉をもう一つの鞭で切り刻みながらフィーネが叫んだ。

 

「ふざ…………けるなぁぁぁ!」

 

『ア・ン・ク・ス・ナ・ッ・ク・ル・ラ・イ・ズ・ア・ッ・プ』

 

縛られ、切られながらも律叉は笛型のアイテムをベルトに読み込ませる。

 

「そんな攻撃…っ!?」

 

いくらアンクスの必殺技と言えど、完全聖遺物相手に放つのでは大したダメージではない。フィーネはそう思ったが、その考えはすぐに変わる。

 

律叉の胸が輝いていたのだ。

 

「おぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

 

通常より威力が数倍上がったブロウクンファングをフィーネに放つ。その威力に耐え切れずフィーネは吹っ飛び、律叉も鞭から解放されて地面に転がる。

 

「くっ……ヤントラ・サルヴァスパの力か…っ!」

 

「はぁ、はぁ………だぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

律叉はすぐに立ち上がり、フィーネに向かっていった。

 

「なんの罪のない人を巻き込んで、何が目的のためだ!」

 

「犠牲なしに成し得る世界などありはしない!20年も生きていないガキが知った口をきくな!」

 

「犠牲と引き換えの世界なんて冗談じゃねぇ!フィィィィィィネェェェェェェ!!!!!」

 

しかし、ベルトから警告音が鳴り、アンクスから煙が噴き出した。地上で避難を手伝いながら戦っていたこともあり、もうリミットが来たのだ。

 

「あ、がっ………」

 

「フン、所詮は玩具にも劣るまがい物!」

 

フィーネは鞭を伸ばし、律叉の腹部を貫いた。それで終わったと思った。しかし律叉は自身の身体を貫いた鞭を掴む。

 

「っ!」

 

「捕まえた…」

 

そのまま鞭を力任せに引っ張り、フィーネを自身の方へ引き寄せる。予想外のパワーにフィーネは驚き、抵抗するのが一瞬遅れた。

 

「なにぃぃぃぃ!?」

 

「おらぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

引き寄せたフィーネを思いっきり殴り飛ばした。フィーネが吹っ飛ぶと同時に鞭が抜け、刺さっていた部分から血があふれ出す。

 

「がはっ………」

 

「貴様ぁぁ!」

 

律叉は傷口から手を離し、フィーネを見る。

 

「なんなんだその力は………もうアンクスのバッテリーも切れている筈…なのになぜ貴様は動ける!」

 

アンクスが損壊し、開いた傷から見える律叉の肌には青い炎が灯っていた。

 

「ヤントラ・サルヴァスパの力ではないな………ん?ふふ、そうかお前は「そう」だったな」

 

フィーネは律叉を見て怪しく微笑む。しかし、律叉はそんなことは気にせず自身に湧いて出た謎の力を握って立ち上がった。

 

「力がみなぎる……今なら負ける気がしねぇ…行くぞフィーネ………懺悔の用意はできているか!!!」

 

そう意気込む律叉の背後に、青い竜のシルエットが一瞬出現した。

 

「うぉりゃぁぁぁぁぁ!」

 

律叉はフィーネに殴りかかった。

 

 

 

 

続く

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