戦姫絶唱シンフォギアTN   作:瑠和

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連日投稿です。意味はありません。Gのストーリー構想が3通りほどあり、どれにすべきか悩んでいます。


第八話 Hideous

東京スカイタワー周辺のノイズ討伐を終えた装者たちがリディアンに戻ってくると、校舎はほとんど破壊されていた。

 

「未来……未来ー!みんなー!!」

 

「リディアンが…」

 

絶望する三人の近くの建物の上に、桜井了子が現れた。

 

「桜井女史……」

 

「お前の仕業か!フィーネ!」

 

クリスの口から放たれた言葉に翼は驚いたが、別に信じられない話ではなかった。こんな惨状に一人、大した傷もなくこの場に立っている。それが証拠のようなものだ。

 

「そうなのか………桜井女史…」

 

「ククククク………ははははははははははは!!!」

 

「その笑いが答えか!桜井女史!」

 

了子は足元に置いてあった何か大きなものを持ち上げ、響たちのところへ投げた。それは全身ズダボロにされ、生きているか死んでいるかもわからない律叉だった。

 

「------っ!」

 

「…………り、律………律叉さぁん!!!!!」

 

響の悲鳴が夜の空に轟いた。響は地面に横たわる律叉を抱きしめた。

 

「しっかりしてください!律叉さん!律叉さん!!」

 

「………ヒデェ…」

 

「貴様ァァァァァァ!!!!」

 

怒り沸騰した翼がフィーネに叫ぶ。

 

「精々称えてやれ、意識を失うまでほぼ生身でこの私に抗い続けたのだ」

 

「…………ぅ」

 

響に抱かれた律叉が小さく声を出した。

 

「律叉さん!?」

 

「律叉!」

 

三人が律叉に集まる。律叉は僅かに左目を開き、目の前にいる三人に気づいた。ボロボロの身体を動かし、クリスの頬に手を添えた。

 

「雪………音…クリス……来てた…のか」

 

「なんだよ……いちゃ悪いかよ…」

 

「良かった…………お前、根はやさしいくせに…………今までのこと…で……誰も信用してない………から…俺が………助けな…きゃ………いけな………ごほっ」

 

「なめんな…余計なお世話なんだよ…」

 

「でも……よかった…立………花…響………こいつのこと……頼む」

 

「律叉さん……」

 

律叉の頼みを聞き、響は小さく頷いた。その反応を見て律叉は小さく微笑む。

 

「つば…さ………」

 

「………なんだ?」

 

もう息が僅かな律叉が翼に語り掛けた。翼は可能な限り優しく接してやる。

 

「俺、あんたの歌好きだ………いままで悪かった……あんたは…夢に向かって……………飛べ」

 

振り絞った笑顔で言ったその言葉を最期に、律叉は響にもたれかかるようにして倒れた。それが意味することは、皆理解していた。律叉はもう動かない。

 

動かなくなった律叉の手を掴み響は握りしめた。

 

「律叉さ…………ん……私まだ…律叉さんと、手を繋げてないのに………まだ、ちゃんと話…してない…のに…」

 

響は涙を流しながら律叉を抱きしめた。

 

「馬鹿野郎………………弱いくせに出しゃばってんじゃねぇよ………なんで、そうやってあたし等の為に…」

 

力なく響にもたれかかる律叉の姿が、翼の視界の中で、奏の死の瞬間に重なった。

 

「………あ…うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

「翼さん!」

 

その姿に恐怖し、怒り、戦慄した。そして怒りのままにフィーネに向かって走っていった。

 

「Imyuteus amenohabaki……うぐ!?」

 

天羽々斬のギアを纏い、フィーネを殺そうと突貫しようとした翼だったが、どこからか飛んできたコウモリもどきに邪魔されて翼は立ち止まった。

 

「なんだ!?」

 

コウモリもどきはフィーネの腕にとまる。フィーネはそのコウモリもどきを掴み、自らの腕を噛ませた。噛まれた部分から、ステンドグラスのような模様がフィーネの全身に走り、腰にベルトが生成された。

 

「変身」

 

精製されたベルトにコウモリもどきをセットするとフィーネの全身が光り、金色のネフシュタンの鎧が形成され、髪の色と瞳の色も金色になった。

 

「私はフィーネ。超先史文明時代の巫女。私は自らの意思を遺伝子に刻印し、自身の血を引くものがアウフヴァッヘン波形に接触した際、その身にフィーネとしての記憶、能力が再起動する仕組みを施した。そして12年前アウフヴァッヘン波形に接触し、フィーネに覚醒したのが櫻井了子、その人物だったわけだ。お前たち四人には感謝しているぞ?風鳴翼は偶然天羽々斬の覚醒を起こし、私を目覚めさせ、雪音クリスは使えないながらも私の手足としてよく働いた。そして立花響、お前は聖遺物との融合例の後天的な装者兼融合症例として、天羽律叉は聖遺物との融合とアンクスの実験、両方によく尽くしてくれた」

 

「そんな…」

 

「なぜだ………なぜ律叉を巻き込んだ!アンクスの実験だけでなく!聖遺物との融合まで!」

 

「私が生きていた超先史文明期には人間の他に13の魔族が存在していた。ほとんどは時代の流れと共に数を減らし、今ではその末裔が人間に紛れて暮らしている程度だがな。その中でキバット族と呼ばれる種族は「魔皇力」の制御に優れていた。魔皇力の力があれば聖遺物の制御が成功する。私は現代にキバット族を機械的に蘇らせることで、体内に取り入れたネフシュタンの鎧の完全制御に成功した。アンクスはその試作品だ。私はどうしても聖遺物との融合症例とアンクスのデータが欲しかったのだよ」

 

今フィーネにベルトとしてくっついているキバット族は本物のキバット族ではなく機械で作られたキバット族。しかしフィーネの知識と技術で魔皇力の制御に優れた本物と変わりない力を持った人工モンスターだった。

 

そのために律叉は利用され続けてきたのだ。

 

「そのような戯れの為に!奏は………律叉は命を散らせたのか!!!!」

 

「あたしを拾ったり、アメリカの連中とつるんでいたのも、そいつが理由かよ!」

 

二人が叫ぶとフィーネは怪しく笑った。

 

「そう!すべてはカディンギルのため!!」

 

フィーネが叫ぶと「荷電粒子砲カディンギル」が地面から伸びてきた。二課内部やシェルターが次々と崩壊を始めた。シェルターの中で詩織、創世、弓美が地震に怯えていた。弓美はそっと律叉のマフラーを握りしめながら終わりを待った。

 

フィーネの目的は月を穿ち、ヴァラルの呪詛を解くことだった。だがそれは即ち世界をフィーネが支配するのと同意義だった

 

装者は歌う。世界を守るために。

 

「Balwisyall Nescell gungnir tron」

 

「Imyuteus amenohabakiri tron」

 

「Killter Ichaival tron」

 

三人は同時にギアを纏う。

 

「ごめんなさい律叉さん。少しだけ、待っててください」

 

響は律叉を少し離れたところに仰向けで寝かせた。

 

そして初撃はクリスのボウガンによる攻撃から始まった。しかし、フィーネはにやりと笑い、腰に装着していた赤い笛型のアイテムをキバットに吹かせた。

 

すると、特徴のある音楽を奏でる共に赤い光の波動を放つ。その波動に当たったクリスは全身がしびれたように動けなくなる。

 

「うぐっ!?なんだよこりゃぁ!」

 

「クリスちゃん!?」

 

さらにそれだけでなく、クリスのボウガン型のアームドギアがフィーネの元へ移動した。

 

「なっ!」

 

「ふっ」

 

フィーネはボウガンから矢型の光弾を響たちに向けて放った。ただの一撃ではない。クリスが放つときの数段火力が上がっていた。

 

「はっはっはっはっは!脆弱だなぁ!お前たちに感謝してはいるが……研究材料として、お前たちの役目は終わっている。この笛はフォニッスル。よく似たものを見たことがあるだろう?」

 

「あれは…」

 

「律叉さんの…」

 

アンクスがいつもブロウクンファングを放つときに使っていた笛型のアイテム。それはフォニッスルの試作品だった。

 

「このフォニッスルにはそれぞれお前たちのギアと同じアウフヴァッヘン波形、フォニックゲインを奏でる。お前たちのアームドギアと動きは思うがままだ………私は何か行動を起こす時は運以外の全ての要素を塗りつぶす主義でな。残念ながらお前たちに僅かにでも勝機があるものか!ははははははは!!」

 

「だったらぁぁぁぁぁ!」

 

クリスは飛び上り、腰部のアーマーを展開させてミサイルを放った。追尾ミサイルはフィーネに向かって飛んだがフィーネは再びフォニッスルを奏でた。赤い波動に当たったミサイルは標的を響たち三人に変えて飛んだ。

 

「!」

 

ミサイルは三人のいた場所に命中し爆炎と煙が巻き上がった。だが、その煙の奥から響と翼が突っ込んできた。

 

「でぇぇぇぇぇぇ!!」

 

「はぁぁぁぁぁ!!」

 

「フンっ」

 

フィーネは赤いフォニッスルから青いフォニッスルに変え、新たな音色を奏でた。青い波動が放たれ、翼のアームドギアが翼の手から離れて響に向かった。

 

「ぐ!」

 

響はフィーネにコントロールされた刀の攻撃を防いだが、直後にフィーネが放ったボウガンが響を襲う。

 

「あぁぁぁ!」

 

「立花!」

 

「よそ見をしてる場合か!」

 

翼もボウガンで撃ち抜かれる。そしてフィーネの手に翼の刀が飛んでくる。フィーネは軽く笑ってボウガンと刀を投げ捨てた。

 

「ふ、念には念を入れてと用意したが、使うまでもないか?」

 

「でやぁぁぁ!」

 

響は立ち上がり、フィーネに向かって走る。フィーネは黄色のフォニッスルを取り出し、キバットにガングニールのアウフヴァッヘン波形を奏でさせようとした。

 

「させるかよぉ!」

 

クリスは新たなボウガンアームドギアを出してフィーネの腕を狙って矢を放った。

 

矢は見事にフィーネの腕に当たり、フォニッスルを吹っ飛ばした。

 

「!」

 

「はぁぁぁぁぁぁ!」

 

響は腰のブースターを吹かしてフィーネに突進し、全力の一撃をフィーネの腹部に打った。

 

「っ!!!その程度…!」

 

「まだだ!!」

 

更に響を飛び越して地面に頭から飛び込むように翼が二人の間に割り込み、逆羅刹で攻撃を仕掛けるフィーネは鞭を回転させて逆羅刹の連撃を防ぐ。

 

「でぁぁぁぁぁ!」

 

横から響が殴りかかる。その拳は腕で防がれたが、重い一撃に耐え切れずにフィーネは一旦離れ、二人も飛んで離れた。

 

「本命はこっちだ!」

 

クリスはエネルギーを溜めて巨大ミサイルを2発用意し、1発をフィーネに向けて撃った。フィーネはそれを回避したが追尾システムで追いかける。フィーネは飛び回りながら避け続けた。

 

「スナイプ!」

 

「!」

 

「デストロォォォォォイ!!!!」

 

クリスは2発目をカディンギルに向けて撃った。

 

「させるかぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

フィーネは赤いフォニッスルを奏でてミサイルのコントロールを奪取し、響たちに向けて撃った。即座に翼がフィーネが捨てた刀を拾い上げ、蒼ノ一閃を放ってミサイルを破壊した

 

「もう一発は!?」

 

さっきまでフィーネを追っていたミサイルがいつの間にか姿を消している。辺りを見回すとミサイルは上空に向けて飛んでいた。クリスを乗せて。

 

「クリスちゃん!?」

 

(この距離ではフォニッスルは届かない………!)

 

フォニッスルの音色は距離制限があった。

 

「だが、所詮は玩具!カディンギルの発射を止めることなど!」

 

「Gatrandis babel ziggurat edenal Emustolronzen fine el baral zizzl Gatrandis babel ziggurat edenal Emustolronzen fine el zizzl」

 

クリスは絶唱を口にした。そのことにさすがのフィーネも驚愕する。

 

「この歌…絶唱……」

 

「なんのつもりだ!雪音!」

 

クリスはほぼ宇宙空間の中で絶唱の能力を発動させた。アームドギアを大型レーザー砲に変形させるとともに、多数のエネルギーリフレクターを展開し、エネルギーレーザーを反射・増幅した一点集中砲撃として転用させた。

 

クリスの準備が完了した同時にカディンギルが発射された。

 

クリスもレーザー砲を発射する。その威力は瞬間的であるがカ・ディンギルからの一撃を真っ向から押し留める出力を発揮した。

 

「一点集束!押しとどめているだとぉ!?」

 

しかし、超巨大な砲塔、月を完全に破壊するほどの威力持つカディンギルの砲撃に耐えきれるはずもなく、クリスのレーザー砲の砲身は限界を突破し、徐々にひびが入る。

 

(ずっとあたしはパパとママのことが、大好きだった………だから、二人の夢を引き継ぐんだ…パパとママの代わりに、歌で平和を掴んで見せる…)

 

最初は何とか押しとどめていたが、クリスの砲撃はどんどんカディンギルの砲撃に飲まれていく。

 

(……あたしの歌は…そのために…)

 

そしてクリスはカディンギルの砲撃に飲み込まれた。クリスを飲み込んだ砲撃は、月に向かって一直線に飛んだ。

 

そして

 

月は、穿つことなく欠けた。

 

「し損ねただとぉ!?」

 

クリスの最期の抵抗はカディンギルの砲撃をわずかにずらし、月の完全破壊を防いだのだ。

 

クリスは空から落ち、森の中に墜落した。

 

「……………いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

響の悲鳴が夜の空にこだまする。そして、響は膝から崩れ落ち、地面に手を着いた。

 

「そんな………律叉さん続いて…クリスちゃんまで…………せっかく仲良くなれたのに…」

 

律叉の時は最期の言葉を聞いた。しかしクリスはそれすらできずに散った。このことで響の心は折れてしまったのだ。

 

「こんなの、ひどいよ……こんなの嘘だよぉ………もっとたくさん話したかったあんな風に喧嘩することも、今よりもっと仲良くなることもできないんだよぉ!!」

 

涙ながらに響は叫んだ。誰に訴えるでもない。ただただ感情のままに叫んだ。律叉が死んだときは敵を、仇を目の前にした時だった。悲しみに浸る時間もなかった。しかしそれが二回目ともなると、翼のように己の心までも鍛えていない響にとっては耐えがたかった。

 

「クリスちゃん夢があるって……私クリスちゃんの夢聞けてないままだよぉ……律叉さんとだって………まだちゃんとお話ししてない……肩を並べて戦えてないよ…」

 

「自分を殺して月への直撃を阻止したか……はっ、無駄なことを………見た夢も叶えられないとは飛んだ愚図だな」

 

月への直撃を玩具と呼んでいたものに阻止されたことをよっぽど根に持っているのか、フィーネは挑発するようにクリスの行動を貶した。

 

「笑ったか……命を燃やして、大切なものを守りぬくことを、お前は無駄と!せせら笑ったか!!雪音の、律叉の覚悟を!」

 

翼はあの日の奏を、そしてさっきの律叉を思い出して怒りに燃えた。

 

「それが………」

 

「!」

 

同じく怒り心頭であろう響が起き上がる。しかし、様子がおかしいことに翼が気づく。

 

「夢ごと命を!!握りつぶした奴の言うことかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

 

響の全身は黒く染まり、目は赤く光っていた。聖遺物との融合とシンフォギアシステムが引き起こす副作用の一つ、暴走だ。

 

「立花…」

 

「融合したガングニールの欠片が暴走を引き起こしているのだ。制御できない力に、やがて意識は塗り固められる」

 

「うがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

暴走した響はとりあえず目の前にいたフィーネに全力で襲い掛かる。もはや人の形をした破壊衝動と言っても過言ではない。単調な一直線の攻撃に対し、フィーネは鞭で軽くあしらおうとした。

 

しかし、横から何者かが響に向かって突貫し、響を瓦礫にぶっ飛ばした。

 

「!?」

 

「………」

 

「そんな………バカな……」

 

翼も、フィーネも響をふっ飛ばした人間に驚いた。

 

「律叉………」

 

身体から青い炎を灯し、身体の所々に謎の変化をもたらしている律叉、いや、律叉の姿をした、異形の何かだった。

 

 

 

続く

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