Fate stay night [Delusion version]   作:抜殻

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束の間の一息

私は、護れなかった。かつての王国を。民たちを。侵略者共に理不尽に奪われ、反乱の仲間にも疎まれた。私は諦めなかったが、それで止められるほど簡単な事ではなかった。しかし、認める事は出来なかった。女子供も巻き込んでまで戦ったのには、意味がある。

私は、今度こそ護り抜くと決めたのだ。その為ならば、私はこの身を削り戦おう。その対象がなんであれ、私はこれ以上、無力な人間ではいたくないのだ。

 

×

 

「我が名はラクシュミー ・バーイー!ジャーンシー王国の王妃である!」

高らかに名乗りを上げるセイバー。ラクシュミー・バーイーと言うと、インドの大反乱の際に素人の軍を率いて戦った女傑だったか?敵方のイギリス軍でさえ、彼女を称賛し「インドのジャンヌ・ダルク」と称したという。でも彼女は、100年以上も前の人物だぞ!?セイバーがそうだって言うなら、セイバーは過去から来たとでもいうのか?

「本当に教えてくれるなんて...別に教えてくれなくても、襲う気はなかったのに。ハッタリよ、今の」

「「へ?」」

俺とセイバーは、同じタイミングで声を出した。とてもハッタリには聞こえなかったんだが...。セイバーも、やってしまったという様な顔をしている。

「衛宮くんが巻き込まれたマスターだって事は分かったわ。つまり、この聖杯戦争に関して何も知らないって事よね。そんな相手と戦っても、フェアじゃないもの」

遠坂は塀を降り、中庭を歩いて屋敷に向かう。

「とりあえず、中にでも入りましょ、衛宮くん。ついでにそこの窓も直してあげるわ」

「あ、あぁ」

とにかく、遠坂が襲ってくる事はなくなった。目まぐるしく状況が変化していたが、ようやく一息ついた時、全身に激痛が走った。さっきの殴られた痛みが、まだ残っていたのだ。

「衛宮くん、怪我してるの!?」

「シロウ、しっかり」

セイバーが肩を貸してくれる。そのまま屋敷の方へと戻って行く。遠坂には聞きたいことが山ほどある。

 

×

 

「とまぁ、これが聖杯戦争の簡単な説明ね。後の事は、監督役のところに行ってから聞くと良いわ」

怪我の手当てをしながら、簡潔な説明をされた。聖杯戦争とは、7人のマスターと7人のサーヴァントの計7組が聖杯を巡って争うもので、それは最後の1組になるまで続く。サーヴァントとは、過去の英雄や神話の英雄、果てには伝承のみの実在するかどうか怪しいものまでをクラス分けし、英霊の座と呼ばれる場所から召喚するのだという。

俺の読んだセイバー、ラクシュミーもそうだ。なんでもセイバーはサーヴァントの中でも最優らしく、遠坂には嫌味多めに説明されてしまった。当然ながら遠坂もマスターの一人であり、聖杯戦争に参加しているらしい。

「その監督役ってのは?」

「言葉通り、不祥事が起きないか監督している神父よ。この聖杯戦争は、勝つ為ならどんな手段でも使われる。それこそ、一般人を巻き込むものまでね。それが魔術によるものだと世間に知られるのはマズいし、度が過ぎるものは相応の対処をしなくちゃいけない。だからこの聖杯戦争について聞くなら、監督役のところへ行った方がいい」

「一般人を巻き込むって...。それじゃあ、最近起こったていう殺人事件なんかも」

「そうかもね。でも、今後さらに激化するとなるとより多くの人間が巻き込まれる事になるかも」

「そんな事があってたまるか!」

感情が昂って、大声を上げてしまった。自分の知らない所で、こんな事が起きていた事と、自分の無力さへの苛立ちが募る。

「と、とにかく聖杯戦争を正式に始める為にも、教会へは行った方がいい。それに衛宮くんみたいなマスターも、教会へ行ったほうがいいわ」

「?なんでだ?」

「それは行ってから直接聞いた方が早いわ。で、衛宮くん。どう?教会までは距離があるけど動けそう?」

状況を知った今、痛みなんて気にしていられない。一刻も早くこの馬鹿げた戦いを終わらせなければ。

「問題ない、遠坂。早く出発しよう」

痛みを我慢して立ち上がる。セイバーが再び肩を貸そうとしたが、今回は断った。なんだか、いい匂いがして、痛みは和らぎそうだが...。

「そうね。とりあえず、私もついて行くわ。言っとくけど、今回助けたのは貴方がまだ正式なマスターじゃないから。もし貴方が戦うなら、私は容赦しない」

今度は、間違いなく本気だ。遠坂にも、何か覚悟があるのだろう。

 

夜は更に深くなって行く。月が雲に隠れては現れ、再び大地を照らす。その先には、少女とそのサーヴァントが衛宮士郎を目指して歩いていた。聖杯戦争初日の夜は、まだ終わらない。

 

 

 

 

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