Fate stay night [Delusion version]   作:抜殻

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そういえばHF最終章が公開されましたね。本当は春に見たかったですが...。皆さんも映画館に行く時はコロナには気をつけて。
僕も早く見に行きたいです。


協力関係

「大丈夫か!セイバー!」

バーサーカーが引いていった後、セイバーに駆け寄る。セイバーは自らの血で、白い軍服を染めている。

「大丈夫だシロウ。とりあえずは、だが」

「セイバーの傷は深いけど、致命傷ではないわ。それよりも、私のアーチャーの方が危ないの。急いでついてきて、衛宮くん」

遠坂もセイバーの脇に立ち、傷を見ながら告げた。

「ついていくって、どこへ?」

「どこって私の家に決まってるじゃない。アーチャーはそこにいるんだから」

「遠坂の家に?でもなんで俺まで」

そこが疑問だった。俺がマスターとして戦うと言った以上、俺と遠坂は敵同士なのだ。遠坂もそれは分かっているはずだが...。

「セイバーの傷の手当てをしてあげるわ。衛宮君には借りができちゃったし、衛宮くんに話もあるから」

「話?」

「今は説明してる暇はないわ。急がないとアーチャーが死んじゃうわ」

とにかく、今はついて行くしかなさそうだ。走る遠坂の背を追い、再び遠坂の家へと向かい始めた。

 

×

 

遠坂の家に着いてから、遠坂は俺たちを居間に残してアーチャーが居るという部屋に篭ってしまった。治療が順調なのか知る術が無い俺は、居間でソワソワと遠坂を待ち続けた。

するとセイバーが、念話を使って俺に話しかけてきた。

「どうしたんだ、セイバー?」

(さっきの戦闘の事だ、シロウ。すまなかった。私がバーサーカーに手こずる余り、シロウに危険なことをさせてしまった)

さっきの...俺がバーサーカーに突っ込んでいった事か。でもあれは...

「セイバーが謝る事じゃ無い。逆に俺が余計なことをしたせいで、セイバーに傷を負わせちまった」

(私が傷を負うのは構わない。だがシロウ、もうあんな無茶な真似はしないでくれ。貴方はマスターなのだから、自分から危険を冒す必要などない)

俺に反論の余地はなかった。このセイバーの負傷の原因が俺にある以上、今後も考えなしの行動はできない。

「悪かった、セイバー。でも、俺だってセイバーに傷ついて欲しくない」

(それは何故だ?マスターが自分の命を顧みずにサーヴァントを助けるなど、本末転倒ではないか)

「でもセイバーは女性じゃないか!いや、そんなの関係なく誰かが傷つくのなんて見たくないだけだ」

(私が女だからだと!?冗談じゃない。貴方がどう思おうが、私にとって重要な事は貴方を守る事だ」

お互いの口調は激しくなってくる。どちらもが、自身の意志を貫こうとする余り、話は行き違う。だが、次のセイバーの一言は、あまりに悲しみがこもっており、俺は自分が何を言おうとしていたかを忘れてしまった。

「私はこれ以上、護るべきものを理不尽に奪われたくはない...」

霊体化していたため、その表情は分からなかったが、その言葉には後悔と悲しみが詰まっていた。セイバーは過去に一度、護るべきもの(それ)を失っているのだ。

俺とセイバーの話は、遠坂が勢いよく部屋から出てきた事で終わった。部屋を出た遠坂は、近場のソファーにドカリと腰を下ろす。

「アーチャーは?」

「とりあえず、山場は凌いだわ。酷い傷だったけど、何とか耐えてくれたわ。でもそのおかげで、ストックしてた宝石をかなり使っちゃった。次はセイバーね。セイバー、実体化してくれる?」

遠坂の前に現れたセイバーは、傷口を押さえている。遠坂はスッと立ち上がると、いくつかの言葉を紡いでいく。最後に魔力を放出すると、セイバーの傷口へ集約して行く。

「ふー、今の状態じゃ、傷口を塞ぐのがやっとね。無理するとすぐ開いちゃうから」

「なあ遠坂、どうしてセイバーの傷まで治してくれたんだ?」

「だから言ったでしょ、借りよ借り。セイバーが割って入らなければ、アーチャーは討たれて私も殺されてたわ」

「借りって言うなら、俺は遠坂に何度も助けられてるぞ」

「それは衛宮くんがマスターとして戦う前でしょ。それはノーカンで考えてるわ。だって衛宮くんは、バーサーカーに私を討たせるって言う選択をしなかったんだもの」

そんな事しないとは思うけどね、と言う遠坂。本当に遠坂はいい奴だな。

だが、ホッとしたのも束の間、俺はある事に気がついた。それは、

(俺って今、遠坂の家にいるのか!それもこんな遅くに!)

唐突に、意識してしまった。急に周りをキョロキョロとしだして、遠坂も頭の上に疑問符を浮かべている。

「どうしたの衛宮くん」

「なっ何でもない。そうだ話ってのはなんだよ」

キョドリながらも思い出した単語を発する。

「そうね。その話をしましょうか。今日の昼に調査してたんだけど、どうやら協力関係を結んでいるマスター達がいるの。それが誰なのかはまだ分からないけど...」

「協力?でも聖杯戦争は最後の1組まで続くんじゃ...」

「そうよ。でも、協力をするのは禁止されていない。それで話ってのはね、私と衛宮くんも協力関係を築かないかって話」

「俺と遠坂で...?」

「ええ、本当はこんなつもりじゃなかったんだけど...お互いサーヴァントが負傷しているじゃない?この状況で2対1だと勝ち目がない。だからお互いのサーヴァントが完治するまで、協力しましょうって話。いやなら、断ってくれて構わないわ」

「まさか。できるなら遠坂とは戦いたくなかったし、俺は聖杯戦争で戦って行く知識がほとんどない。断る理由はないな」

チラリと、未だ実体化していたセイバーの方を見ると、小さくコクリと頷いた。これで完全に決まりだな。

「よろしく、衛宮くん」

「ああ、よろしくな、遠坂」

お互いの手を握る。聖杯戦争初日の夜は遂に終わり、朝日が、街を薄暗く照らし始めようとしていた。

 

 

 

 

 

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