Fate stay night [Delusion version] 作:抜殻
________熱い。
周りが、火に包まれている。ああ、またこの記憶か。
________熱い。
最近は何度この夢を見るのだろう。まるであの時を再体験しているかのようにリアルな夢は、周りの熱で肌が焼け、吸う息で喉を焦がすようだ。
________熱い。
いつもこの夢を見る時は、目覚めが近いのだ。早く目が覚めて欲しいと願うが、今日はいつもと何かが違う様な気がする。その違和感を確かめる為に、僅かな道を進んでいく。
しばらく進んだ先の終着点は、瓦礫の積もった小さな丘。足場の悪い丘を登り切ると、眼前には巨大な孔があり、そこから流れ落ちる泥は、周りのものを焼き尽くす。
その孔に向かって、見知った背中が進んでいる。あのくたびれたコートを羽織って出て行く姿を、何度見送った事だろう。
「切嗣!」
声は、届かない。切嗣は流れ出る泥へ向かって止まる事なく進んでいく。その後ろ姿を追いかけた。
「待ってくれ切嗣!聞きたいことがあるんだ!」
だが追いつけない。その差は縮まらず、なおも広がって行く。切嗣は止まることなく、振り返る事なく、孔へと向かっていく。
「俺は一体、どうすればいいんだ!教えてくれ!切嗣!」
泥に耐えきれず、体は炎上する。炭になり崩れ落ちそうになる体。心までも焼き尽くしそうな熱は、前を遮った彼女によって止められた。
俺を守るその背中は、さっきまでの悪夢を、忘れさせてくれた。
×
「ん...?」
目を開けると、いつもの天井が広がっている。いつの間に眠っていたのか思い出すことも出来ないまま、寝ぼけた体を起こし、
「!?いっ...」
体に走った痛みで、完全に目が覚めた。
そうだ。遠坂と協力関係を結んだ後、泊まるのは俺の気が気でなかったから、家まで戻ってきたんだ。そのままセイバーに勧められて部屋まで戻って寝たんだったか?
思えば昨日は、色んな事が起きすぎた。でも、夢ではない。体の痛みが、残酷に真実を訴えかける。
「10時か...学校...って今日は日曜だったな」
取り敢えずは、起きて飯でも済まそう。痛む体を無理やり動かして、台所へ向かう。
そういえばセイバーは何処にいるんだ?霊体化しているから何処にいるのかわかりづらいな。
「おーい、セイバー」
屋敷全体に届くよう大きく声を響かせる。するとセイバーは、すぐに俺の前に実体化してくれた。
「どうかしたのか、シロウ?」
「いや、別段用があったわけじゃないけど...傷の方はどうだ?セイバー」
「問題はない。リンの治療のおかげだな。それよりもシロウの方はどうだ?昨晩の傷は...」
「取り敢えずは大丈夫だ。まだ痛むけど、動くのには問題ない筈だ」
それは良かったと、胸を撫で下ろすセイバー。
「ところでなんだが...セイバーって苦手なものとかってあるか?」
「は?」
×
軽く食事を済ませてセイバーと向かい合う。サーヴァントに食事は必要ないと言われたが、セイバーが側にいるのに俺だけが食べると言うのも気まずかったので、二人分の食事を用意したら渋々席についてくれた。セイバーは元々王妃様だった訳で、舌に合うか心配だったが、反応を見る限り悪くはなかったのだろう。不満そうに席に着いたが、食後は実に幸せそうな顔をしておられた。
「それでシロウ。今後、聖杯戦争を戦っていくとして、方針は決まっているのか?」
そして現在、食事を終えた俺たちは、今後の方針についての話をしていた。
「今のところは、あまり...。だが、遠坂が言うには、聖杯戦争においてマスターの動きが活発になるのは夜になってから、だそうだ。だから、俺たちもそれに合わせて、動くなら夜だと思う」
「あまり勧めたくはないが...我々には情報もない。闇雲に動くのもどうかと思うが、このまま待っていても結局は後手に回るハメになるな」
「それで、だ。俺としては今夜からでも動きたい」
「ダメだな。私は反対だ」
即答だった。まさに光の速度とも言うべき速さで提案は却下された。
「なんでさ。こうしてる間にも、他のマスター達は自分が勝ち残る為の準備をしているかもしれないんだぞ。事が起こってからじゃ遅いんだ。だから俺たちだって一刻も早く...」
「シロウ。急ぐ事と焦る事は違う。貴方のは、明らかに後者だ。今の私たちの状況を考えて見てくれ」
確かに、俺もセイバーも怪我を負っている。だが、
「俺だって何も見つけ次第戦おうって訳じゃない。あくまで最悪の事態に備えるだけのつもりだ」
「それでも危険が大きすぎる。もし戦闘になった際、シロウを守り切れるか分からない。何より、リンの話を忘れたのか?共闘しているマスターに対抗する為に、リンと協力しているのだろう。もし今2対1にでもなったら、確実に私は負ける」
セイバーはあくまでも確実な手段を取っていきたいのだろう。生前指揮官だっただけあって、リターンよりもリスクを重視しているようだ。
「それに、あまり私を頼られても困る...」
「何言ってんだ、セイバー?」
セイバーを頼りにしなかったら、じゃあ俺は誰を頼ればいいのさ。サーヴァントに対抗できるのはサーヴァントだけってのは、昨日だけで嫌と言うほど経験した。
「この際だから言っておく。あまり、私を頼りすぎないでほしい。私は、いずれ何処かで致命的なミスをするかも知れない」
「?なんでさ?」
「そ、それは私が...」
RRRRRRRRRR
遮るように電話のベルが鳴った。こんな時に誰だ?もしかしたら藤ねえが、「弁当忘れたから届けてくれ〜」なんて言うんじゃなかろうか。
「はい、衛宮ですけど」
『衛宮くん!すぐにうちに来て!敵に襲われてる!』
そういえば最近初めて知ったんですけど、冬木の聖杯戦争だと、東洋のサーヴァントは呼ばれないらしいですね。全然知りませんでした。今更どうしようもありませんね(適当