Fate stay night [Delusion version]   作:抜殻

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久しぶりに投稿できました。


炎の試練

ガキンッ、と金属と金属がぶつかり合い、耳障りで甲高い音が火花と共に散る。一合、二合、三合...剣戟は留まることなく、炎の音に負けじと響き渡る。

狙撃に失敗したセイバーは、もはや姿を隠す必要なしと、木陰から飛び出してライダーに斬り掛かった。それは俺が、ライダーにいつ撃ち殺されてもおかしくない状況を、打破する為でもあったのだろう。結局俺はまた、セイバーに迷惑をかけてしまっている。

だが今回は、前回の様な失態を犯す気はない。魔術師として未熟な俺が、サーヴァントと戦っても邪魔なだけだ。何より、セイバーは、ライダーを圧倒している。流石にセイバー、剣の英雄のクラスだけあり、その剣技は目に見えて卓越している。ライダーはギリギリでセイバーの攻撃を受けきっているが、その実力差は明白だった。俺が介入する必要など初めから皆無。なら俺がするべき事は...

「慎二ぃ!」

慎二を倒す事、ないしは足止めする事。俺が慎二を倒せればそれでも良し、セイバーがライダーを討つまで足止めするも良し。手近にあった木片を拾い、すぐさま魔力を通していく。

「全工程完了...」

ランサーに襲われて以来、強化の成功率はこの上なく高い。土壇場で出来る様になるとは、漫画の様に現実感が無いが、ここで失敗して死にましたなんて笑い話にもならない。

「お前の相手は俺だ!慎二!」

慎二は、何やら本を片手にセイバーとライダーの戦いに介入しようとしていた。それを阻止する様に、声を張り上げて突進する。慎二はビクリと体を震わせて、慌ててこちらを向いた。

「なっ...。っ衛宮ぁ!」

慎二の足元から、膨らんだ影が勢いよく打ち出される。地面を裂きながら進む影を、強化した木片で弾く。威力自体は、大した事はない。速度はあるが、反応出来ない程じゃない。思考をクリーンにしたまま、さらに距離を詰める。

「ひっ、来るな!来るなぁぁぁぁ!」

慎二は次々と影を打ち出す。が、単調に打ち出すだけのそれは、もはや脅威にはなり得ない。馬鹿の一つ覚えの様に打ち出される影を、避け、弾き、距離を詰める。

そして最後の一撃、距離を詰めたせいで僅かに反応が遅れる。

「グッ!」

避けきれなかった影は、俺の体を掠めていく。この程度、何の問題もない。俺は慎二に肉薄し、そして...

慎二の頬に、拳をお見舞いする。さっきまでの勢いをそのままに殴りつけた一撃は、慎二を吹き飛ばして地面へと背をつけさせる。

「痛ぅ…」

体を起こした慎二を見下ろす。

「終わりだ、慎二」

慎二はすぐさま脇に目をやり、その視線の先に傷を負い膝を付くライダーを見た。

「ははっ…僕が、負けた…?っふざけるなよ!ライダァ!大口叩いといて何をやってるんだよ!今すぐ立って衛宮を殺せ!マスターの言うことが聞けないのか!」

慎二は激昂し、自らのサーヴァントに怒りをぶつける。それは不可能だ。ライダーではセイバーには勝てないし、あの傷ではできても逃げることが精一杯。それも、セイバーの追撃があれば潰える。そんな状況にあっても、慎二は自分の負けを認めようとはしなかった。

「今すぐ令呪を捨てて、この戦いを降りろ、慎二。もししないって言うんなら…」

手に握られた武器を強く握る。この戦いに参加すると決めた以上、こうすることは必然にも等しい。俺が正義の味方を目指すならば、なおのこと。それが例え、親しい友人であったとしても。

「ひっ…」

慎二は怯えながもなお、俺の事を睨み返した。

「慎二…」

_____やめてくれ。武器を大きく振りかぶる。_____こんなことはしたくない。武器を持つ手が震えた。俺は_____

「シロウ!危ない!」

セイバーが、俺を突き飛ばした。直後、俺が立っていた部分を何かが通りすぎ、地面へと深く突き刺さった。黒く塗られ闇に溶ける暗器が、炎に彩られる。

「何をやっておるか、慎二よ。安易に動くなと伝えたはずだが」

そして、声が響いた。乾き老いた、一声で老人のそれと分かる。声は木霊し、どこから発せられているのかは分からない。だがこれは…

「お、お爺さま…?」

「仕方のない孫だ。儂が加勢する故、早う退け」

マスターに違いない。だとすると今の攻撃はサーヴァントによるものか。

「気をつけろ、シロウ。どこにいるのか気配が全く掴めない」

炎が辺りを照らしていても、その存在はどこにいるのか視認できなかった。だが、ランサーに襲われたあの時と同じ、刃が喉元に押し付けられているかのような、死の気配に体が震える。

「間違いなく、アサシンのサーヴァント。シロウ、私のそばから離れるな」

「っ!待て!慎二!」

その隙に、慎二は逃げ去った。ライダーの姿も既にない。あの慎二がすぐさま言いつけを守るほど、この老人を恐れているということか。

「行ったか…。全く馬鹿な孫じゃな」

「何者だ、お前は」

「ふむ。セイバーのマスターよ。儂は間桐臓見。既に隠居した間桐の魔術師と言っておこうか」

間桐臓見。慎二から聞いたことすら無い名前だ。分かるのは、間桐臓見はマスターの一人であり、この闇に潜むサーヴァントを従えているということ。そして、敵であるということ。

「お前もマスターか。慎二の爺さんってことは、慎二と組んでるってことか」

セイバーと背を合わせ、いつ攻撃が来てもいいように全方向に集中を向ける。

「なに、今日は戦いに来たわけではない。孫がここで敗れては困る故に、助けに来ただけじゃ。お主が儂を追わぬなら、このまま締めとなるじゃろう。まあお主が遠坂の娘が心配でないというなら別じゃがの」

「遠坂は無事なのか」

「うむ、慎二はどうやら取り逃がしたらしい。全く、つくづく役に立たん。やるなら最後まで済ませて欲しいものじゃの」

ギリっと歯ぎしりをしながら虚空を睨みつける。だが、できることはなかった。今は何よりも、遠坂の安否が気になった。殺気が薄れる。張りつめた空気は萎み、炎の熱さを思い出した。

「シロウ。とにかくここを離れよう。いつ崩れてもおかしくない」

「……ああ」

敵は引いた。だが、俺には何ができた。崩れ落ちる屋敷を見つめながら、自分の無力さを悔いた。

 

×

 

戦いの後、一度家に戻ることにした。俺は遠坂を探そうとしたが、闇雲に探すよりはまず、一度戻り連絡がないかを確認するべきだとセイバーに言われたからだ。遠坂が無事ならば、何かしらのアプローチがあるはずだと。

そうして、家に戻る。足取りは重かった。戦いの重圧と、自身の不甲斐なさ。敵を退けたとはいえ、勝利には程遠い結末だった。結局は、慎二も取り逃がしてしまっている。大口を叩いた自分は、結局は何ができるのだろうか。

昨日よりも長い帰路に思えた。家につき、

「誰かいる…!」

違和感を覚えた。桜や、藤ねえではない。魔術師だ。セイバーも、サーヴァントの気配を感じ取っている。

ごくりと、生唾を飲む。侵入されている以上、敵が先手を取れるはずだ。慎重に扉を開ける。玄関に敵の姿はなかった。

慎重に廊下を進む。セイバーは既に抜剣し、臨戦態勢をとり後ろにいる。ここで戦うことを避けることはできない。

いる。障子の向こうに人の気配を感じる。隠れもせずに堂々と。セイバーに合図し、一気に部屋に入り、

「あら、衛宮君。帰ってきたのね」

何故か、遠坂がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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