Fate stay night [Delusion version]   作:抜殻

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召喚:アーチャー

「あぁ!?テメェが、俺のマスターか?」

遠坂凛によって召喚されたサーヴァントは、屋敷中に響きそうなほど大きい声で訊ねる。第一印象は、「赤い」だった。服装も髪色も雰囲気でさえも、まるで炎の様に赤かった。長身で、がっしりとした肉体。半裸の姿は鍛えられた肉体を露わにしている。凛はその目のやり場の無さと、耳を塞ぎたくなる程の大きい挨拶に、自身の感覚が戻った事を後悔する程だった。だが自らが召喚したサーヴァント。これから共に戦う相棒について、知らなければならない。

 

「そ、そうだけどあんた、何か態度とか声とか、大きくない?貴方は私の...」

「おぉ!悪かったな!それにしても、此処は何処だ?やけに陰気臭え場所だな、おい!」

(こいつ...人の話全然聞かないし...)

 

自らの(しもべ)に早くも不満タラタラな凛。頬を膨らませ、ジトッとサーヴァントを見ていると、ある事に気がついた。

「あれ?貴方、クラスは?」

そう、サーヴァントは剣を持っていなかったのである。代わりに持っているのはとても大きな戦輪(チャクラム)だった。

「あ?クラス?今回の俺ぁアーチャーで現界してるみてぇだな」

「そう...」

 

凛は、暗い声で小さく呟く。自身にとって、最高の召喚。それでも、狙いのクラスを召喚する事は出来なかった。

「んだよ、セイバーじゃなきゃ不満か?それとも、目当ての奴でも居たのか?」

「ううん、そういう訳じゃないわ。ただ、他人の手にセイバーが渡ると面倒ってだけ」

「あー、なるほどな。確かに、面倒な奴を仲間にできりゃそれだけ戦いはやり易いもんな」

「でも、別に後悔とかはないわ。私の全力で召喚したんだもの。それよりも、今後貴方とどうやって戦って行くかの方が大事よ」

「さっぱりした女だな。まっ、その方が俺もやり易い。これから宜しく頼むぜ、マスター」

スッと、手を伸ばすアーチャー。凛も手を伸ばし、握手を交わす。

「私、遠坂凛よ。凛でいいわ。よろしくね、アーチャー。それで、貴方の真名を教えて欲しいんだけど...」

「おぉ、まだ名乗ってなかったか。俺の名は_____」

 

×

 

「うっそ!貴方、とんでもない大英雄じゃない!」

真名を聞いた凛は、目を見開いてアーチャーを見る。

「あぁ!?そんな立派なもんじゃねえよ、俺は」

「これは幸先が良いわね。セイバーにも匹敵するレベルよ、貴方」

上機嫌に語りかける凛。アーチャーは少し照れ臭そうにしながらも軽くあしらう。

「でもそれなら、貴方の弓は何処?アーチャー何だから、弓くらい持ってるでしょ?」

「弓?弓は持ってきてねえな。ありゃ、使うのを禁じられてんだ。代わりにこいつが、俺の武器だ」

巨大な戦輪を、軽々と持ち上げるアーチャー。

「弓がない!?それじゃあ、貴方の何処がアーチャーなの!?」

「あぁ!んな事知らねぇよ聖杯にでも聞きやがれ!とにかく、俺の武器はこの戦輪一つだ。命令をくれりゃ、こいつで敵を挽肉にでもしてやるよ」

「やめてよね。そんな事されたら、しばらく食欲が無くなりそう。...とにかく、受け入れるしかないか。引いたサーヴァントは当たりだしね」

渋々ながらも納得した凛は、脱力感と気怠さを感じ大きな欠伸をする。

「とりあえず、今日はもう寝るわ。貴方の召喚で、相当魔力を使ったみたい。」

「そうか、んじゃリン。俺ぁどうすりゃ良いんだ。偵察にでも出るか?」

「くつろいでくれてていいわ。まだセイバーも召喚されてないし、戦いが起こるには早過ぎるしね」

「あーぁ。暇だなおい。早く戦わせてくれよ」

 

共に地下室を出て、居間に来たアーチャーは、近くのソファーにドカッと座る。凛は、自身の寝室へ向かおうとする途中、ふとある事を思い出した。

「アーチャー。貴方の願いって何なの?」

「あぁ?」

そう、聖杯戦争に呼ばれるサーヴァントには、サーヴァント自身の願いがある。願いを持たない者は、聖杯には選ばれない。それはマスターも、サーヴァントも同じであり、アーチャーにも何かしらの願いはあるのだ。

「それに貴方は神話の中では死んでいない事になっているわ。でも、サーヴァントととして呼ばれるって事は貴方は本当は死んでいた事になる。そのことが、願いに関係あるのかしら?それとも...」

アーチャーは、しばしの沈黙。デリケートな話題故に、怒鳴ってくるかと思っていた凛には、意外な反応だった。

「...悪いな。その話は、したくねえんだ」

「別に詮索する気はないわ。貴方の死因も、願いもね。ただ興味本位で聞いただけ。おやすみ、アーチャー」

そうして凛は、階段を上がっていった。

「あぁ...。夜は、苦手だな...」

小さな、悲嘆と、後悔と、僅かな怒りを含んだ呟きだった。

 

 

 

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