Fate stay night [Delusion version]   作:抜殻

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歪み始める日常

眼前には、ごうごうと炎が燃えている。人が、生きたまま焼かれ、死んだ後もこれでもかというほどの無慈悲さで消し炭にし、人の姿から遠ざけけていく。周りにあるのは死と炎だけ。むせ返るほどの死の香り、呼吸もできない熱さと煙、足場は悪くブニブニとした何かを踏みつける。助けを求める声と、助けることの出来ない自分。辛くなり、両手で耳を塞ぐ。それでも声は届いた。

やがて自らも力尽き、地に伏せる。それでも、生き汚く助かろうとし、空を見た。周りの炎を物ともせず、夜空は暗い。その暗さは、もはや俺が助からないと告げている様であり、俺はそこで生きる希望を捨てた。ただ、空を見つめ続ける。何も考えず、何も感じず、心はとうに死んでいた。

 

だがそこに、一筋の光が、差し込んだ。男は俺を抱き抱える。助けられた俺よりも、助けた男の方が嬉しそうだった。この時、俺は第二の生を得た。今までの俺は死に、新たに生きる希望を見つけた。

衛宮切嗣。俺を助け、身寄りを失った俺を養子として迎えてくれた。俺は、切嗣の遺志を継ぐために、生きている。俺は、皆を護りたい。人類すべてを護れるわけじゃない。目に見える範囲のちっぽけなもので、ただのエゴかも知れない。だがそれでも、俺はあの時の切嗣の顔を、忘れる事が出来なかった。

 

×

 

「おい衛宮!聞いているのか!」

ボーッとしていた俺は、柳洞一成の一喝でビクリとしながら現実に戻った。そういや、昼飯の途中だったっけ?

「えっ?すまん、聞いてなかった、一成」

「全く。昨日の晩に起きた殺人事件の事だ」

「殺人事件!?」

不意な一言に、俺はつい大きな声を出してしまった。幸い生徒会室で昼飯を食う様な奴は俺と柳洞ぐらいのものだから、誰かに聞かれたとかではないと思うが、あれは完全に廊下まで漏れてたな...。一成も少し引き気味だ。

「あ、ああ。知らんのか、衛宮?新都の路地裏で、撲殺された死体が見つかったと、昨日のニュースで言っていた。さらに、これも新都だが何でもガスの配管が爆発したとかで道路が抉られていたらしい。まったく、お陰で今日から暫くは部活動を中止して門限を早めるそうだ」

そんな物騒な事が、この街で起きてたのか。桜を遅くに帰すと危ないし、放課後にでも、今日からは真っ直ぐ家に帰る様に伝えとくか。

「さらに不可解な出来事がもうひと〜つ!」

急に大声を出す一成。さっきの俺の声よりでかいぞ。

「な、何だよ一成。どうしたんだよ」

「っ、失敬衛宮。実はな、遠坂凛、あの女狐が今日も無断欠席したそうだ」

「またか?昨日もじゃなかったか?」

「その通りだ。昨日に続き今日もまた何の連絡もせずに休むなど、あの女狐め。一体何を企んでいる」

遠坂が休み...。それも無断欠席なんて、優等生の遠坂らしくないな。

「あっ、そういえば今日慎二も休みだったな」

「そうだ衛宮。間桐慎二も、今日は無断欠席なのだ。怪しい。怪しすぎる。あの2人、もしかしてデキているのか?」

名探偵柳洞一成の、恐らくは全く当たっていないであろう推理に、思わず昼飯を吹き出しそうになった。

「ゲホッゴホッ、何言ってんだ一成?お前何か変じゃないか?」

「だがあの2人が何か怪しい事は事実だ。とはいえ、2人のプライベートな事に関わる気はない。あの2人が、よもや事件などに巻き込まれていないか心配なだけだ。あの2人も、穂村原の生徒なのだからな」

確かに、時折サボる慎二はまだしも、こんなタイミングで2日も無断で休むなんて遠坂らしくない。もしかしたらの事もあるけど、俺遠坂の家とか知らないしなぁ。それに全く接点が無いのに突然行くってのも...。とりあえず、放課後に桜と会って、今日からの事と慎二の事でも聞いてくるか。

 

 

 

 

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