Fate stay night [Delusion version] 作:抜殻
「遠坂先輩のお家、ですか?」
「ああ、もし知ってたら、教えてくれると助かるんだが」
放課後、今日からは家に来ずに、真っ直ぐ帰宅する様に桜に伝えに来たのだが、桜に猛反対されてしまい、何とか話を流そうとしたら、ついこんなことを聞いてしまった。
「一体どうしてですか、先輩?」
明らかに怪しんでいる桜。
「あー、その、最近遠坂が頻繁に休んでるらしくてさ。最近物騒だし、様子でも見に行こうかと思ったり」
「そんなに遠坂先輩と仲良かったんですか?」
何か、桜の口調が強い。少し雰囲気もいつもと違くないか?
「い、いや、そういうわけじゃ無いけど、少し気になってさ。知らなければ別に...」
「突然行って、どうするんですか?それだと遠坂先輩も困ると思いますけど」
しまった。話題を変える事には成功したが、より厄介な事になってないか...?
「まぁ、いいです。遠坂先輩のお家は、先輩のお家とは逆の住宅地の方にあります。...どうして私に聞いたんですか?」
「つ、ついでだよ。ついで。そっそうだ!慎二の事は何か知ってるか?」
「兄さんの...。いえ、すいません先輩、私は何も...」
突然、今までの勢いを失い小さくなる桜。
「そうか。まぁ慎二の事だし、明日にはひょっこり顔を出すだろ」
桜も、慎二の事が心配なのかも知れない。取り敢えず、桜を家に送ってから、遠坂の家に行ってみるか。...何か、手土産とかいるんだろうか?
×
桜を送り、そのままの足で遠坂の家に来た。桜に教えてもらったが、一回道を見間違えたせいで、余計に時間を食ってしまった。最近は日が落ちるのも早くなり、既に日の傾きで道の影は濃くなっている。
「これが、遠坂の家...」
それは立派な洋館だったが、何処か不気味な印象も感じられた。影が濃くて暗いせいだろうか。それよりも、早く用件を済ませよう。全く接点のなかった、それも同年代の女の子の家に訪れたのだ。門の前でやはり帰るべきか、等と悩んでる内にも時間は進む。
「うーむ、ええい!なる様になれ」
意を決して門に手をかけた所に
「君!その家の者と知り合いなのか?」
「うぅわあああ!」
いきなり声をかけられたせいで驚いてしまった。
「す、すまない。驚かすつもりは無かったのだが...」
「い、いえ、こっちこそ、いきなり大声を出してすいませんでした」
声をかけてきたのは、スーツを着た女性だった。男性の様な格好をしているが、その、あの膨らみはどう考えても...。でも、この人誰だ?遠坂の知り合いなのか?
「自分は、遠坂さんと同じ学校の者ですけど、貴方はいったい?」
「...失礼。あまり詳しくは話せませんが、まぁ、同業者みたいな者です」
同業者?遠坂、バイトでもしてたのか?何か、この人怪しいぞ。
「それよりも、あなた一体何のようでここにきたのですか?いくら同じ学校の人間と言っても、用がなければ訪れないでしょう」
こちらが質問する前に先をこされてしまった。見知らぬ相手に一から説明するのも面倒だし、適当な理由を言おうと思ったのだが、この僅かな沈黙を相手は警戒と捉えてしまった。
「...失礼ですが、あなたのお名前は?」
「えっ?衛宮士郎、ですけど」
「衛宮...?なるほど。あの魔術師殺しの...。これはもしかするかも知れません。ランサー。出てきて下さい」
?この人は何を言っているんだ?すると突然、目の前に人が現れた。明らかに突然。さっきまで、何もいなかったのに。
現れたのは中華の武術家然とした服装の男だった。身長は余り高く無いが、纏う雰囲気は素人目に見ても尋常ではなく、その姿を見ただけで衛宮士郎の全細胞が危険信号を鳴らしている。
「余り関係のない人間は巻き込みたくありませんが、今回の任務は今まで以上に過酷ですからね。悪いですが、可能性の段階で処理しておきます」
「やれやれ、また儂に無用な殺生をさせるか。今回のマスターは人使いの荒い事だ」
何を言って...
「運が無かったな。小僧」
一瞬だった。男が視界から消えたと思った時には、男は間合いに入っていた。その拳が撃ち込まれれば、俺の命はあっけなく尽きる。だが、抵抗する事はもう間に合わない。そして拳が、俺の心臓を穿とうとした時______
「オラァァァァァ!」
巨大な何かが、俺を襲う男を吹き飛ばしていった。
「ちょっとあなた!一体何やってるのよ!」
そして、僅かにだが聞き覚えのある声を聞いた。
「遠...坂...」
遠坂凛は自らの自宅の屋根の上に立ち、こちらを見下ろしていた。