Fate stay night [Delusion version]   作:抜殻

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再戦

「遠...坂...」

「ちょっとあなた!何してるのよ!」

それはこちらが聞きたい。目まぐるしく変化する状況に、思考が全くついていかず、ただ眼前の出来事を見ることしかできなかった。

 

「おらぁ!」

巨大な戦輪を振り回す男と、さっき俺を襲ってきた小柄な男が戦っている。実力はほぼ互角。2人とも人間離れした動きをしており、地面や周りの壁を次々削り砕いていく。

一進一退の攻防が続く。戦輪を力任せに大きく振り回すが、それを素手で受け流し反撃する。しかし、その反撃も読まれていたのか空振りに終わり、両者ともかすり傷すら負う事はない。

「はっ、素手でここまでやるたぁ相変わらず器用な野郎だ」

「うぬこそ、もう殴り合いはせんのか?」

お互いにまだ余裕があるように見えるが、お互いに実力を出さないまま、この戦いは終わる事になる。

「引きますよ!これ以上、ここで戦う意味はない!」

さっきのスーツ姿の女性。彼女はこちらに僅かに視線を移しながらそう言い放つ。

「ぬっ、何故だマスター。マスターの正体までバレてしまったぞ。ここは奥の手を使ってでも殺るべきではないか?」

「ダメです。現状では勝率は五分。それに、数的不利を被るかも知れない」

「数的不利?ふむ、まぁ引けと言われれば引くがな」

こうして、戦いは中断された。

「おいおい!昨日みたいにまた流局かぁ!?」

「すまんな、マスターの命には逆えん。決着を着けたいのはのはやまやまだが、ここは引かせてもらおう」

去っていく二つの影。遠坂は、それを追うことはしなかった。俺は、このほんの数分の間だったが、何もする事が出来なかった。張り巡らされた空気と緊張が解け、俺がついさっきまで死の淵にいた事を思い出し、ドっと汗が吹き出す。あの男は確かに、俺を殺すつもりだった。

「ちょっとあなたって、ウチの制服...?」

それよりも、聞きたいことがタップリになってしまった。

 

×

 

「あなた衛宮くん!?一体何してるの!?」

「それよりも、今のは何なんだ!?この状況に、さっきのは誰だ!?」

「ハァー、衛宮くんは、この事に関して何も知らないのね」

「あ、ああ」

良かった。それなら...

「私の目を見て」

「えっ...」

次の瞬間、衛宮士郎は物言わぬ人形になった。

「いい、貴方は何も見てないし何も知らない。ここでの事は口にしないで、真っ直ぐ家に帰る。わかった?」

すると衛宮士郎は、さっきまでの騒がしさが嘘のように静かになり、無言で歩いて行った。

「何だ?今のは?」

「暗示...と言うより催眠ね。魔術師相手には全然効果無いけど、一般人相手なら、強力にやればこんなものね。それにしても、またあのサーヴァントと戦りあったわね」

昨日の夜、突然襲ってきたのも奴らだった。どうして私ばかりつけ狙うのかしら。

「それより、今のガキ殺らなくていいのか?俺らの事知られちまったぞ」

「確かに甘い選択なんだろうけど、無駄な殺しはしたく無いのよ」

この聖杯戦争に於いて、情報と言うのは値千金の価値を持つ。サーヴァントのクラスが分かるだけでも、かなり有利になる。だからと言って、同じ学校の、少しだけ顔を知ってる人を殺したくは無い。

「にしても、家の前がめちゃくちゃだわ。取り敢えず、入りましょ。やっと戻って来れたんだしシャワーでも浴びなきゃ」

 

×

 

「悪いな凛」

シャワーを浴びて戻って来ると、突然こんな事を言ってきた。

「どうしたのアーチャー。頭でもぶつけた?」

「さっきのガキの事だ」

真剣なアーチャーの口調に、何処か怪しさを感じる。

「だから何なの?私は衛宮くんを殺す気は無いって...」

「その事でな。凛はそう言うが、さっきの連中はどうだろうな。あの連中が、そんなに甘いようには見えなかったが」

この聖杯戦争、情報を得る事も重要だが守る事も重要だ。情報を守る為ならば、関係の無い人間を殺す者だっている。特に生粋の魔術師な程、その合理性を重視する。

「しまった...。アーチャー、あなた最初から気付いて黙ってたわね」

「だから言ったろ。悪いって。凛は殺らないなら、他の奴に任せるだけだ」

でもこれが、アーチャーの本意でもないのは、ほんの少しの付き合いだけど分かる。アーチャーは本来戦士であり、戦いを神聖視している。だから関係ない人間が巻き込まれるのは本意ではない筈だ。あくまで、サーヴァントに徹しようとしているのだと。

「...だが、今なら間に合うぞ」

「え?」

「今からなら、奴らとまた戦う事になるがあのガキは助けられる。凛が、例え不利益を被ってでもアイツを助けたいのなら、俺にそう命じろ。俺だって、マスターの方針を曲げたくねぇ」

つまりアーチャーは、自分は処理したいけど私がダメと言ったから、最後の判断は任せるって言いたいんだ。...全く、変なところ真面目なんだから。

「私の目的はね、聖杯を手に入れる事はなくて、聖杯戦争に勝つ事なの。私にとって勝つって事は、手段は選ばなくても、信念は曲げない事。そんなことで勝ったって、罪悪感だけ残って何も嬉しくない。だから私は、衛宮くんを助けるわ」

「...そうこなっくちゃなぁ!」

準備を持って急いで外に出る。使い魔を走らせ、衛宮くんの居場所を探る。

「...ありがとね、アーチャー」

「あ?なんか言ったか?」

「何も。場所が分かったわ。行くわよ、アーチャー」

走り出そうとした所に、腕を出して止めるアーチャー。その視線の先には、1組のサーヴァントとマスターがいた。

「まて凛。どうやら、客だ」

奇怪で、ヨボヨボの老人と、眼帯をした女のサーヴァント。行手を阻む老人は、愉快そうに笑う。

「何処へ行く、遠坂の娘よ。今宵は、良い月じゃな。戦いを始めるのに、ぴったりとは思わんかね」

空には、雲から顔を出した満月が浮かぶ。冷たい風が吹き抜けると、老人の姿は消え無数の蟲が現れた。一刻を争う状況の裏で、聖杯戦争は最後の英霊を迎えようとしていた。

 

そして、運命は動き出す。

 

 

 

 

 

 

 

 




こんな便利な魔術ありましたっけ?もはや魔眼レヴェルじゃ...。
まぁええか(適当)
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